弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 12月 18日 ( 5 )

医療安全情報[No.73]放射線検査での患者取り違え

b0206085_1721489.jpg公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故防止事業部は,2012年12月17日,「医療安全情報[No.73](2012年12月)放射線検査での患者取り違え」を公表しました.

放射線検査での患者氏名の確認が不十分であったため,違う患者が入室したにもかかわらず,そのまま検査が行われた事例がが6件報告されています(集計期間:2008年1月1日~2012年10月31日、第19回報告書「個別のテーマの検討状況」(P131)に一部を掲載)。

1)患者に名乗ってもらう.
2)患者が持参した予約票等と患者氏名を照合する.
という二重のチェックが通常行われていると思いますが,報告例では,行うという取り決めがあっても守られず,とくに2)についてはそもそも行うという取り決めがなかった例すらもあります.

「◆ 事 例 1
レントゲン撮影を行うため、診療放射線技師は患者を名字のみで呼び入れた。その際、患者自身に氏名を名乗ってもらうことになっているが、確認しなかった。そのため、患者Aと患者Bを取り違えて、胸部レントゲンを撮影した。

◆ 事 例 2
PET検査のFDG(PET検査のため人体に投与するフルデオキシグルコース注射液)を投与するため、研修医が患者Aの氏名を呼んだところ、骨シンチ後に廊下で待機していた患者Bが注射室に入室した。注射室に呼び入れた際は、患者が持参する予約票、問診票を確認したうえで、患者に氏名を名乗ってもらうことになっているが、研修医はその手順を踏まずに患者Aの氏名を口頭で呼び、患者Bが肯いたので準備を始めた。指導医は研修医が決められた手順で確認した患者Aだと思い、患者BにFDGを投与した。FDG投与後に患者Bに問診票の提示を求めたところ、違う患者であることがわかった。

◆ 事例が発生した医療機関の取り組み
・必ず患者自身に氏名を名乗ってもらう。
・院内で取り決めた放射線検査時の患者の確認方法を徹底する。

 例)
・患者が持参した予約票や問診票などを確認する。
・検査種別ごとの色分けカードを作成し、患者に渡す。」


確認ミスは確認すれば防止できることなのですが,院内で取り決め(ルール)を作り,それが実際に守られているかしばしば点検することが必要と思います.
患者は,取り違えられないためには,自ら名乗り確認を求めることです.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-12-18 19:43 | 医療事故・医療裁判

泉佐野優人会病院,患者の点滴チューブ切断される(報道)

NHK「病院で点滴チューブ切断 警察が捜査」(2012年12月18日)は,次のとおり報じました.

「今月7日、大阪・泉佐野市の病院で、50代の女性患者が受けていた点滴のチューブが切断され、血液が逆流して大量に出血しているのが見つかり、警察は何者かがチューブを切断した疑いがあるとみて、傷害事件として捜査しています。

今月7日の午後7時ごろ、大阪・泉佐野市の「泉佐野優人会病院」の2階の病室で、重い脳の障害で意識がなく、寝たきりになっていた50代の女性患者が、ベッドで血だらけになっているのを病院の職員が見つけました。
警察の調べによりますと、女性が受けていた点滴のチューブが切断され、血液が逆流して大量に出血していたということです。
女性は命に別状はないということです。
警察は、何者かが故意に点滴チューブを切った疑いがあるとみて、傷害事件として捜査しています。
泉佐野優人会病院は「警察に相談しているため、取材には応じられない」としています。」


故意に患者の点滴チューブを切る人がいるとはにわかに信じ難いですが,状況からすると,その疑いがあります.療養型病院に何があったのでしょうか.

【追記】

読売新聞「点滴管切断の病棟で患者骨折も…昨年10月」 (2012年12月19日)は,次のとおり,報じました.

 「入院患者の点滴チューブが何者かに切断される事件があった大阪府泉佐野市の泉佐野優人会病院で、昨年10月、神経難病で身動きできない別の入院患者の女性(当時78歳)が、左腕を骨折していたことがわかった。

 女性がいたのは点滴チューブ切断事件が起きたのと同じ2階の療養病棟で、府警は、この骨折についても経緯を調べている。

 骨折した女性は、全身の筋肉が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)。顔の表情と右手の指2本を除いて、体は全く動かせない状態で、呼吸を確保するため、のどを切開しており、声も出せなかった。

 家族によると、女性は昨年10月、見舞いに来た家族に「腕にひびが入っているかもしれない」と、磁気を利用した簡易ボードに指で文字を書いて伝えた。

 別の病院の整形外科を受診すると、左上腕骨が折れており、医師は「強い力でねじられたような折れ方だ」と家族に説明した。

 優人会病院は骨折の原因を説明せず、家族も、ALS患者を受け入れる病院が少なく、行き場に困ることから追及しなかった。

 しかし今年春、家族が改めて尋ねると、女性は、スタッフを特定して「同じ人に嫌がらせをされていた。腕を強く引っ張られた」と答えた。それでも警察へ通報することは「怖い」といやがり、その後、ALSの病状が悪化。本人の意向で人工呼吸器は装着せず、5月に死亡した。

 女性は、複数のスタッフから「ナースコールの回数が多い」と、しばしば文句を言われていたという。

 読売新聞の取材に、優人会病院は「スタッフに尋ねると暴行を否定した。骨折の原因はわからないが、年をとると骨はもろくなる。虐待があったとは考えていない」としている。」


MBS毎日放送「点滴チューブ切断事件 警報ならない管を切断」(2012年12月20日)は,次のとおり報じました.

「大阪府泉佐野市の病院で入院患者の点滴チューブが切断された事件で、患者が受けていた2本の点滴チューブのうち、切断されたのは切れても警報が鳴らないほうのチューブだったことが分かりました。

 今月7日、泉佐野優人会病院で、重い脳障害で入院していた女性患者(59)が点滴チューブを切られて出血する傷害事件がありました。

 病院によりますと、この患者には栄養を点滴するチューブと水分を補給するためのチューブが使われていましたが、切断されていたのは切れても警報が鳴らない水分補給用のチューブだったということです。

 また被害にあった患者のベッドは、病室のドアを開けてもナースステーションから死角になる場所だということです。 警察は内部の事情に詳しい人物による犯行の可能性もあるとして、慎重に調べています。」



谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-12-18 18:41 | 医療事故・医療裁判

高知医療センター,睡眠薬盗まれる(報道)

高知放送「高知医療センターで睡眠薬盗まれる」(2012年12月17日)は,次のとおり報じました.

「高知県高知市病院企業団によると、今月10日、高知医療センターの病棟にある準備室で入院患者のために調剤した睡眠薬3.5錠のうち2錠がなくなっていることに看護師が気づいた。準備室は薬などを保管する場所で鍵はかかっていなかったという。この準備室では、ことし9月にも2回にわたって睡眠薬や抗うつ剤などがなくなっていて、医療センターでは盗まれた可能性が高いとして、今月14日警察に被害届を出し、警察では窃盗事件として捜査している。今回なくなった睡眠薬の量は少なく、一度に服用しても人体に影響はないという。武田明雄病院長は、医薬品の管理が不十分だったと認めた上で、再発防止に向け厳格な医薬品の安全管理に取り組むとコメントしている。」

1回でも問題ですが,3回目ともなると,厳重な対策が必要でしょう.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-12-18 18:29 | 医療

シマンテック調査,2012年に発生したデータ侵害の80%以上が医療,教育分野

b0206085_1335599.jpg

ITmedia「データ侵害の最多は「個人の実名」――シマンテック調べ」は,次のとおり伝えています.

「シマンテックは12月17日、11月度のセキュリティレポートを通じて、データ侵害の最多を「個人の実名」が占めたという調査結果を発表した。2012年に発生したデータ侵害の80%以上が医療や教育などの分野だったとしている。

 調査結果によると、2012年に発生したデータ侵害で最も多いのは「個人の実名」の55%。以下は「ユーザー名とパスワード」が40%、「政府機関発行のID番号」(33%)、「メールアドレス」(30%)などだった。」


しかも,攻撃者は,直ちに情報を悪用するとは限らず,収集した情報をもとにさらに情報を収集し,より貴重な情報を入手しようとすることもあるそうです.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-12-18 09:36 | 医療

国立大学法人高知大学医学部,エコチル調査参加者の個人情報を記録したUSBメモリを紛失

国立大学法人高知大学のサイトに,2012年12月13日,「個人情報が記録されたUSBメモリの紛失について(お詫び)」が掲載されました.

高知大学医学部は,環境省が計画した「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を実施するために医学部環境医学内に「高知ユニットセンター」を設置し,環境変化が子どもの健康に及ぼす影響を明らかにする調査を行っていた,とのことです.
そのエコチル調査で収集した個人情報が記録されたUSBメモリが紛失したとことです.
経過は,以下のとおりです.

「高知大学医学部内・エコチル調査高知ユニットセンターにおいて、平成24年3月21日、エコチル調査で収集した626組の親子に関する個人情報が記録されたUSBメモリが無くなっていることに気付きました。
同日から1週間ほど前に、平成23年7月1日から平成23年11月30日までに出生した子とその親626組の調査票をスキャンする作業を行っており、そのデータを専用コンピュータとUSBメモリに保存後、保管棚で保管しているつもりでした。
しかし、同日に、平成23年12月1日以降に出生した親子の調査票のスキャンを行うために保管棚を確認したところ、USBメモリがないことに気付きました。
なお、このUSBメモリには、ファイル暗号化やパスワードロックの設定は行っていませんでした。その後もスタッフ全員で捜しましたが見つからず、現在のところ発見されていません。」


個人情報が記録されたUSBメモリの保管方法(ファイル暗号化等がなされていない)に問題があります.
発表された「再発防止に向けた取組み」は以下のとおりです.

「1)エコチル調査の個人情報管理では、スキャンとコンピュータを連動させてUSBメモリの使用を中止させました。
2)調査票は施錠したアタッシュケースで運搬することにしました。
3)個人情報の管理体制を再点検し、再発防止を講ずると共に、教職員に対して個人情報の適正な管理の徹底を図るよう周知、注意喚起を行います。
4)研修等を通じて、教職員に対して個人情報の適切な取扱いについて、法令順守を徹底してまいります。」


平成24年3月21日の紛失事故を,同年12月13日になってはじめて公表したのも問題はないでしょうか.

◆ 昨年6月以降の個人電磁情報の紛失事故

2011年 6月
慶應義塾大学病院スポーツ医学総合センター
北海道大学病院

2011年7月
医療法人 柏堤会(財団) 戸塚共立第1病院
藤田保健衛生大学病院
昭和大学歯科病院

2011年8月
筑波メディカルセンター病院

2011年9月
千葉県精神科医療センター
鹿児島大学病院

2011年10月
JA茨城県厚生連茨城西南医療センター病院
独立行政法人国立病院機構三重中央医療センター
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院
大和市立病院

2011年11月
独立行政法人国立病院機構金沢医療センター

2012年1月
医療法人聖愛会
独立行政法人国立病院機構千葉医療センター
独立行政法人国立病院機構宇多野病院
東京女子医科大学附属八千代医療センター

2012年2月
京都府立洛南病院(ただし一時紛失)
岡山大学病院
藤沢市民病院
長崎大学病院

2012年3月
日本赤十字社医療センター
国立大学法人高知大学医学部

2012年4月
ごう在宅クリニック(札幌)
静岡県立病院機構静岡県立総合病院
広島大学病院
福岡大学病院

2012年5月
福岡大学病院

2012年7月
日本大学歯学部付属歯科病院

2012年8月
名古屋大学医学部附属病院

2012年9月
沖縄県立中部病院
福岡歯科大学医科歯科総合病院

2012年10月
医療法人社団恵仁会セントマーガレット病院
東京医科大学病院
昭和大学病院附属東病院
浜松医科大学医学部付属病院,浜松医療センター

2012年11月
九州大学病院
東京慈恵会医科大学附属柏病院

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-12-18 01:54 | 医療