弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 12月 25日 ( 2 )

日弁連,精神保健福祉法の抜本的改正に向けた意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年12月20日,「精神保健福祉法の抜本的改正に向けた意見書」を,厚生労働大臣に提出しました.ご一読をお奨めいたします.

「現行法は,保護者に過重な負担を負わせ,特に保護者の同意を要件とする医療保護入院制度は,地域精神医療及び保健福祉態勢等が十分でない中で保護者に入院の責任を負わせる構造になっている。そもそも,患者の意思に基づかない強制入院制度は,患者から自由を奪い,患者の地域で生活する権利を侵害するものであることから,患者が長期入院によって地域で生活できなくなるような事態にならぬよう必要最小限のものとして設定されなければならない。このような患者の権利擁護の観点から,現行の医療保護入院制度に対する反省を踏まえて,本意見書は,現在厚生労働省で検討されている医療保護入院制度の改正について警鐘を鳴らすとともに,保護者の義務負担の軽減,精神医療審査会の充実,地域精神医療及び保健福祉態勢
の充実など,精神保健福祉法の抜本的改正を求めるものである。

なお,当連合会は,現行法上の措置入院制度及び緊急措置入院制度についても,社会的入院さらには保安処分になりかねない重大な問題を含むものとして,かねてより強制入院制度を一本化の上,その改善を求める意見を述べているところであるが,今回の意見書は,改正が検討されている医療保護入院制度についてのみ対象とするものである。」


「精神保健福祉法の抜本的改正に向けた意見書」の趣旨は以下のとおりです.

「1 現行精神保健福祉法は、保護者に過重な負担を負わせるだけでなく、患者を強制的に入院させるという制度の責任の所在を曖昧にし、事実上保護者の不同意により退院できずに社会的入院が生じているという現状に鑑み、保護者の義務規定及び医療保護入院における保護者同意の要件を速やかに廃止すべきである。

2 保護者同意の要件を廃止した後に想定すべき入院制度(以下「改正入院制度」という。)は、精神疾患の治療は通院治療によることが原則であることを踏まえ、慎重に制度設計がされることが不可欠であり、(病識がないこと等から医療の必要性を判断できない患者に対しても)医療を受ける権利を保障し、通院治療により地域で生活できる状態の回復を図ることを制度の目的とし、この目的達成のための必要最小限のものとすべきである。

3 したがって、改正入院制度は、入院時の審査として、次の実体的要件及び手続的要件を満たさなければならない。

(1) 実体的要件
① 精神疾患が重篤であり、判断力が阻害されていること。
② 治療反応性があることを前提に、入院治療させなければ病状が悪化し、自己決定権の行使が長期間困難になることが見込まれる場合であること。

(2)手続的要件
① 医師は、患者に対して現在の病状並びに治療の方針、効果及び見通しを説明すること。
② (1) の要件判断は指定医2名による判定を必要とし、うち1名は当該入院先精神科病院の常勤又は非常勤の医師でない者によること。
③ 急を要する場合、入院時には少なくとも1名の医師による判定で足りるが、入院から72時間以内に2名の医師によって判定がなされること。
④ 前記の指定医2名の「判定意見」、入院先精神科病院作成による「治療計画及び退院計画の記載された入院届」を、入院時から10日以内に当該都道府県に設置された精神医療審査会に提出するものとし、同審査会は、入院届の提出から1週間以内に入院の必要性について審査し結論を出すこと。
この審査においては、審査会の構成員が患者から直接意見を聴取しなければならないこと。
⑤ 入院に当たっては、患者に必ず代弁者を付けること。


4 改正入院制度における入院期間の設定は、当初は3か月以内とし、3か月を超えて入院させる必要がある場合には、当初の治療計画及び退院計画の修正が必要な理由、修正後の治療計画及び退院計画の提出を受け、再度、前項の精神医療審査会の審査を受けるものとすること。
再審査によって入院継続が認められた場合の入院期間は、当初の入院時から最長1年間を超えることができないものとすること。

5 入院患者に対しては、入院直後から退院のための環境整備に向けた専門家を付け、具体的に退院に向けた活動がなされること。

6 改正入院制度における実効性ある審査のため、現在の各都道府県の精神医療審査会の態勢を抜本的に拡充し、審査会の機動性及び権限強化を図るとともに、審査会の決定に対する裁判所への不服申立制度を創設する等、審査手続における患者の適正手続の保障を全うすること。

7 改正入院制度の費用負担は公費によることを明らかにし,患者から徴収しないこと。

8 患者の地域で暮らす権利を実質的に保障し,入院を必要以上に長期化させないため,患者が地域で生活できるよう居住環境を具体的に整備し,また,アウトリーチ支援を充実させるなど,地域精神医療体制や保健福祉政策を充実させるよう,地域精神医療及び保健・福祉の総合的な計画を企画・遂行すること。」


谷直樹

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by medical-law | 2012-12-25 22:04 | 弁護士会

新宿クリニック博多院の,韓国の人への幹細胞投与問題(報道)

毎日新聞は,ソウルのバイオベンチャー「RNLバイオ」は,韓国では禁じられている幹細胞投与を希望する患者ら約3700人を,福岡市博多区の「新宿クリニック博多院」に紹介した,と報じました.韓国政府は事実関係を確認した上で「法令違反があれば、適切な措置を取る,とのことです.

毎日新聞「幹細胞投与:韓国政府がバイオ企業調査へ…現地紙報道」(2012年12月24日)は,RNLバイオ社の主張を次のとおり伝えています.

「R社は同紙(朝鮮日報)に対し「日本の医療機関への紹介は容疑なしとされた。無許可で医薬品を使用した点に関してのみ現在も捜査中だ」と説明。さらに「当時は幹細胞を韓国で培養したことが問題になった。今回は日本で培養しているため、韓国の薬事法には触れない」と話している。」

「R社は24日、▽自社の幹細胞治療剤は安全性が確認されており、有効性に関する確証試験中だ▽幹細胞の培養・投与は日本では禁止されていない▽韓国の医療法が禁じているのは「国内の病院へのあっせん、紹介」だけだ▽日本の病院に協力金を支払ってはいない−−などと主張する文書を発表した。」


しかし,博多院はR社側から協力金を受け取って投与していることを認めています.

博多院の榎並寿男医師は,「日本人は治療していない。韓国の人で勉強させてもらっている。医学の追究ですよ。利益なんてしれているが、山中先生は大した人ですけど(治療した人は)ゼロですが、僕なんか喜んだ患者をいっぱい診ている。副作用は考えていないが、長い意味で何年後にどうだと聞かれたらそこまでは分からない。」と述べています.

日本の法規制の甘さ(医療裁量の広さ)を衝かれた事件です.
規制を急ぐ必要があると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2012-12-25 01:16 | 医療