弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 01月 09日 ( 3 )

名古屋地裁平成24年12月13日判決,マンションベランダからの受動喫煙被害で喫煙者に賠償を命じる(報道)

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昨年12月28日に中日新聞,東京新聞等が報じていた判決ですが,昨日の読売新聞「「ホタル族」喫煙、賠償命令…階上女性が提訴」でも報じられています.

名古屋地裁平成24年12月13日判決は,近隣住民に配慮しない喫煙の仕方は違法であるとして,マンションベランダで喫煙を続けた階下の61歳男性に対し慰謝料5万円の支払いを命じました.
この判決は確定しております.
原告代理人弁護士は,名古屋弁護士会副会長の北條政郎先生です。

このようなマンションベランダでのホタル族による受動喫煙被害は,非常に多く,大変困っている,という話をよく聞きます.喫煙者が考える以上に,受動喫煙者は深刻な被害を受けているのです.

判決で有害なタバコの煙が近隣住民に及ぶような喫煙の仕方が違法であると確認されたことを受けて,行政,立法によって近隣住民にタバコの煙が及ぶ形態でのマンションベランダでの喫煙,換気扇下での喫煙が規制されることを期待いたします.

中日新聞「ベランダ喫煙で慰謝料 下階の男性に支払い命令  名古屋地裁 」(2012年12月28日)は,次のとおり報じました.

近隣住民に配慮せず違法

 マンションの下の階に住む男性(61)がベランダで吸うたばこの煙で体調を崩したとして、名古屋市瑞穂区の女性(74)が男性に150万円を求めた訴訟で、名古屋地裁(堀内照美裁判官)は、近隣住民に配慮しない喫煙の違法性を認め、精神的な損害への慰謝料として5万円の支払いを命じた。判決は13日。

 原告側は「たばこの受動喫煙を訴えた訴訟で和解例はあるが、原告勝訴の判決は初めてでは」としている。

 判決によると、女性は5階、男性はすぐ下の階に居住。家族がいるときは外でたばこを吸う習慣だった。

 女性にはぜんそくの持病があり、下から流れてくるたばこの煙をストレスに感じ、帯状疱疹(ほうしん)を発症した。扇風機や空気清浄器を付けても煙が気になり、手紙や電話で喫煙をやめるよう男性に求めたが、応じなかった。

 男性側は、女性の体調悪化と煙の因果関係は認められず、マンションの規則でベランダでの喫煙は禁じられていないこと、たばこを吸いながら景色を眺める楽しさや私生活の自由を挙げ、「違法性はない」と反論した。

 判決は、川に面した景色の良さから、女性がたばこの煙を防ぐため「日常的に窓を閉め切るような環境ではない」とし、他の居住者に著しい不利益を与えながら、防止策をとらないことは不法行為に当たると認めた。 

 原告側の北條政郎弁護士は「他人に配慮し、お互いの生活を尊重し合うことの必要性を認めてくれた画期的な判決」と話した。」


Jキャスニュースト「マンションの「ホタル族」は風前の灯 ベランダ喫煙でトラブル多発、換気扇にも苦情」(2013年1月 9日) は,次のとおり報じました.

マンションのベランダで61歳の男性がタバコを吸い、その煙で体調が悪くなったとして、同じマンションに住む74歳の女性が訴えを起こし、名古屋地裁が男性に賠償金5万円の支払いを命じていた。

喫煙問題に詳しい谷直樹弁護士によれば、ここ数年で ベランダでの喫煙に関する苦情の相談が「山のように」来る様になっている。換気扇で煙を外に出すのも含め、マンションの自宅からタバコの煙を出してはいけない時代になっているという。

ベランダで喫煙した男性に5万円の支払いを命じる
女性が名古屋地裁に訴えたのは、マンションの階下にすむ男性がベランダで喫煙しその煙が自宅マンションの室内まで入ってくるため、喫煙をやめるよう何度も申し入れたが男性はそれを無視した。それが約1年半続いたため体調が悪化したとして、150万円の賠償を求めた。判決が2012年12月13日に出て、女性の精神的損害を認め男性に5万円の支払いを命じた。

この報道があった2013年1月9日にネットでは「もうベランダでタバコは吸えないということか?」「そもそもベランダで吸ってもらっては困る!」などと大騒ぎになった。実は3年ほど前からベランダでの喫煙や、換気扇から吐き出されるタバコの煙に関する苦情と、それは容認されるべきだといった議論が活発に行われていた。

今回の判決についてNPO法人の「全国マンション管理組合連合会」川上湛永事務局長は、

「ベランダでの喫煙で裁判まで行くのは非常に稀なケースだ」
と驚いている。一般的なマンションのベランダは、災害時にそこを通って避難ができるといった共用部分であり、マンションや住民全体のもの。ただし、日常的には専用使用が認められていて、洗濯物を干したり、鉢植えを置いたり、ペットのトイレを置いたりなどができ、もちろんそこでタバコを吸っても、マンション内で特別な取り決めが無い限りは自由なのだという。

「共同住宅であるマンションではタバコを吸ってはいけない」
今回問題なのは、何度も注意されたのにベランダで喫煙を続けたこと。マンションは「共同住宅」のため、住民同士がお互いに気を使い合いながら生活しなければならない。

「お互い話し合い解決するのが普通で、タバコの煙の苦情が来たら、ベランダでは吸わないことにする、そういう気遣いが必要なんです」
と川上事務局長は説明した。

喫煙問題に詳しい谷直樹弁護士によれば、ベランダの喫煙に関する苦情の相談が数年前から「山のように」来るようになり、そのあまりの多さで対応できないほど、と打ち明ける。家族に喫煙を嫌われベランダに追い出されたお父さんを「ホタル族」などと同情したのは昔の話で、マンションでの喫煙に対する意識が全く変わってきたという。

つまり、家族に嫌われたタバコの煙をベランダや換気扇で外に出して、他人の自分たちに吸わせようとしている「全くもって無神経な人間だ」ということになってしまう。そして、名古屋での判決はようやく出てきた正しいものであり、これを機に国などが喫煙者のいるマンションからタバコの煙を出してはいけない、という行政指導を行って行くべきだ、と指摘する。そして、

「共同住宅であるマンションではタバコを吸ってはいけない、そういう時代に入っていると思うんです。タバコを吸う人は少数になっていますし、喘息だったり、タバコの臭いに敏感な人には毒ガスのようなもので、肉体的にも精神的にも追い詰められることになりますからね」

と話している。」


【追記】

受動喫煙被害でお困りのかたは,医師に「受動喫煙症」の診断書を書いてもらい,喫煙加害者にそのコピーを渡し,タバコの受動喫煙で症状が悪化することを伝えるとよいでしょう.その際,管理会社や警察など第三者の立ち会いで行うほうがよいでしょう.
なお,日本禁煙学会のサイトには,「受動喫煙症診断基準」,「受動喫煙症の診断可能な医療機関」の一覧が掲載されています。
参考にしてください。

受動喫煙の相談に応じる弁護士のHPも参照してください.


谷直樹

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by medical-law | 2013-01-09 17:41 | タバコ

ストレスを和らげるのは,喫煙ではなく,禁煙でした

喫煙がストレスを和らげると思っている人にとって,興味深いのが,イギリス保健省の提供した禁煙プログラムの参加者への調査です.

QLifePro医療ニュース「ストレス解消には禁煙か喫煙か」(2013年1月5日)は,次のとおり報じています.

「プログラム開始から、6ヶ月が経過したあと、禁煙を続けていられた人は、491人中68人でしたが、この人たちは以前よりも不安や心配が9ポイント減ったとしていました。一方で、禁煙できなかった人では、3ポイント増。そして、禁煙できなかった人の多くが喫煙理由で不安の軽減を挙げていました。

ストレスを和らげるのは喫煙ではなく、禁煙だったのです。ストレスフルな毎日で煙草をやめられない人は、こんな調査結果があることを頭に置いて、もう一度禁煙にチャレンジしてみてはいかがでしょうか」



British Journal of Psychiatry

Abstract

Background

Despite a lack of empirical evidence, many smokers and health professionals believe that tobacco smoking reduces anxiety, which may deter smoking cessation.

Aims

The study aim was to assess whether successful smoking cessation or relapse to smoking after a quit attempt are associated with changes in anxiety.

Method

A total of 491 smokers attending National Health Service smoking cessation clinics in England were followed up 6 months after enrolment in a trial of pharmacogenetic tailoring of nicotine replacement therapy (ISRCTN14352545).

Results

There was a points difference of 11.8 (95% CI 7.7–16.0) in anxiety score 6 months after cessation between people who relapsed to smoking and people who attained abstinence. This reflected a three-point increase in anxiety from baseline for participants who relapsed and a nine-point decrease for participants who abstained. The increase in anxiety in those who relapsed was largest for those with a current diagnosis of psychiatric disorder and whose main reason for smoking was to cope with stress. The decrease in anxiety on abstinence was larger for these groups also.

Conclusions

People who achieve abstinence experience a marked reduction in anxiety whereas those who fail to quit experience a modest increase in the long term. These data contradict the assumption that smoking is a stress reliever, but suggest that failure of a quit attempt may generate anxiety.


谷直樹

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by medical-law | 2013-01-09 01:43 | タバコ

喫煙が脳に与える影響,mGluR5が最大で30%も減少

ベルン大学のハスラー教授らが,脳の中で最も重要な神経伝達物質の一つで,記憶・学習などの脳高次機能に重要な役割を果たしている脳内のグルタミン酸の受容体の一つmGluR5が,喫煙によって最大で30%も減少することをつきとめました.

QLifePro医療ニュース「ニコチンにより脳内のグルタミン酸受容体mGluR5が減少」(2013年1月5日)は,次のとおり報じています.

「喫煙は、考えていたよりも脳内に強い影響を与えることが判明した。スイス・ベルン大学の研究者は、喫煙によって脳内のグルタミン酸受容体mGluR5の数が減少することを、米国科学アカデミーの「Proceedings」に12月17日、報告した。

世界保健機関(WHO)によると、タバコの主成分であるニコチンはアヘン類、大麻、コカインと同列の依存性薬物であり、現喫煙者の7割がニコチン依存症といわれている。

ベルン大学のハスラー教授は、今回の発見がニコチン依存症のための新薬開発に役立つとみている。」

「喫煙者は非喫煙者と比較して、グルタミン酸受容体mGluR5が平均で20%少なかった。前頭葉下部や大脳基底核などの個々の脳領域においては最大で30%も少なかった。平均で約2年禁煙している元喫煙者では、10~20%の減少がみられた。」


ベルン大学のプレスリリース


米国科学アカデミーの「Proceedings」

Abstract

Nicotine addiction is a major public health problem, resulting in primary glutamatergic dysfunction. We measured the glutamate receptor binding in the human brain and provided direct evidence for the abnormal glutamate system in smokers. Because antagonism of the metabotropic glutamate receptor 5 (mGluR5) reduced nicotine self-administration in rats and mice, mGluR5 is suggested to be involved in nicotine addiction. mGluR5 receptor binding specifically to an allosteric site was observed by using positron emission tomography with [11C]ABP688. We found a marked global reduction (20.6%; P < 0.0001) in the mGluR5 distribution volume ratio (DVR) in the gray matter of 14 smokers. The most prominent reductions were found in the bilateral medial orbitofrontal cortex. Compared with 14 nonsmokers, 14 ex-smokers had global reductions in the average gray matter mGluR5 DVR (11.5%; P < 0.005), and there was a significant difference in average gray matter mGluR5 DVR between smokers and ex-smokers (9.2%; P < 0.01). Clinical variables reflecting current nicotine consumption, dependence and abstinence were not correlated with mGluR5 DVR. This decrease in mGluR5 receptor binding may be an adaptation to chronic increases in glutamate induced by chronic nicotine administration, and the decreased down-regulation seen in the ex-smokers could be due to incomplete recovery of the receptors, especially because the ex-smokers were abstinent for only 25 wk on average. These results encourage the development and testing of drugs against addiction that directly target the glutamatergic system.

谷直樹

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by medical-law | 2013-01-09 00:55 | タバコ