弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 03月 07日 ( 3 )

日本看護協会,看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン

「看護職の安全と健康が患者の安全と健康を守る」という観点から,公益社団法人日本看護協会は、医療関係の職能団体として初めての「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」をまとめました

「医療界では初めての取り組みであり、画期的なものです。看護職は24 時間365 日、夜勤・交代制勤務を行って患者の健康と生命を守り働いています。一方で、夜勤・交代制勤務と生活の両立の難しさは離職の原因ともなり、過度な負担は心身への影響や医療事故のリスクを高めるという研究結果もあります。

本会は「看護職の安全と健康が、患者の安全と健康を守る」という基本認識の下、看護職が安全で健康に働き続けられる職場づくりを進めるため、現場の実態と労働科学の最新の知見を踏まえて、夜勤・交代制勤務の負担を軽減しリスクマネジメントに役立てるためのガイドラインを作成しました。ガイドラインでは、夜勤・交代制勤務の現状と課題を整理した上で、「組織で取り組む対策の提案」(第4 章)として、勤務編成の基準やマネジメントのポイント、人事労務管理の着眼点などを解説しています。また、一人一人の看護職が生活していく中で「個人で取り組む対策の提案」(第5 章)も紹介しています。

ガイドラインは全国の医療機関などに配布するとともに、全文を本会公式ホームページでご覧いただけます。また、資料を追加した有料頒布版を、5 月末に発売予定です。」


これを機に,看護職の労働環境が改善されることを期待いたします.

谷直樹

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by medical-law | 2013-03-07 23:45 | 医療

傷病者の搬送及び医療機関による受入れに約3時間かかり,その後死亡(報道)

NHK「埼玉 25の病院に断られ男性死亡」(2013年3月5日)は,次のとおり報じました.

「ことし1月、「呼吸するのが苦しい」と訴えた埼玉県久喜市の75歳の男性が救急車で運ばれましたが、25の病院に受け入れを断られて搬送先が決まるまで3時間近くかかり、その後、死亡していたことが分かりました。

久喜地区消防組合消防本部によりますと、ことし1月、久喜市に住む1人暮らしの75歳の男性から「呼吸するのが苦しい」と通報がありました。
男性は救急車で運ばれ、消防は久喜市のほか、さいたま市や茨城県古河市などの病院にも受け入れを要請しましたが、「空いているベッドがない」、「ほかの患者の処置中で受け入れられない」といった理由で、25の病院から36回にわたって受け入れを断られたということです。
男性は、当初は意識があり、救急隊員ともやりとりができていましたが、通報から3時間近くたって茨城県境町の病院に入院したときには意識がない状態で、その後、死亡が確認されたということです。
受け入れ先の病院は救急隊員が救急車の中から電話で探していたということです。
久喜地区消防組合消防本部は「こういう結果になり大変、残念です。今後は病院に10回以上受け入れを断られた場合は、消防本部からも受け入れ先を探すなどしたい」と話しています。

救急搬送の経緯

消防によりますと、男性から119番通報があったのは午後11時25分。
救急車で駆けつけた救急隊員が男性の受け入れを最初に要請したのは、午後11時38分、久喜市内の病院に対してでした。
この病院に受け入れを断られたあと、救急隊員は救急車の中から、おおむね2分から5分おきに、次々と病院に要請の電話をかけ続けました。
結局、久喜市内の4つの病院のほか、さいたま市や春日部市、それに茨城県古河市など14の市と町の25の病院に36回にわたって断られ続けました。
受け入れを断られた理由は▽「処置困難」が16件、▽「空いているいるベッドがない」が7件、▽「他の患者の治療中」が5件、▽「専門の医師がいない」が4件などで、中には3回にわたって要請を断った病院もあったということです。
結局、いったん断られた茨城県境町の茨城西南医療センターから男性を受け入れると回答があったのは、午前1時49分、救急車が病院に着いたのは午前2時15分でした。
男性の119番通報から3時間近くがたっていました。

病院「再発防止に努めたい」

男性の受け入れを断った病院の1つで埼玉県久喜市にある埼玉県済生会栗橋病院によりますと、男性の受け入れ要請があったとき、救急用のベッドが空いていなかったことに加え、当直の医師がほかの入院患者の治療などに当たっていたため、受け入れることができなかったということです。
遠藤康弘院長は「死亡した男性は私たちの病院に通院していた患者で、こうした事態が起きたことを重く受け止めています。
救急患者の受け入れが難しいという状況は日本全国にあり、地域の病院どうしのネットワークを強化するなどして再発防止に努めたい」と話しています。

30回以上断られたケースも毎年

埼玉県によりますと、救急車で搬送中に病院から患者の受け入れを断られるケースは増加傾向にあるということです。
このうち10回以上断られたのは平成19年は129件だったのに対し、おととしは176件と50件近く増えていて、今回のように30回以上断られたケースも毎年起きています。
この結果、受け入れ先が決まるまでに時間がかかる傾向が続いていて、おととしまでの5年間では最長で5時間余りもかかったケースもあったということです。
おととし7月には、さいたま市で乗用車にはねられた車いすの女性の受け入れ先が見つかるまでに2時間余りかかった末、女性が搬送先の病院で死亡しています。
埼玉県消防防災課の小林清剛課長は「病院側にも医師が治療中だったり、専門の医師がいなかったりして、受け入れたくても受け入れられない場合がある。
今回のケースもどこかに反省点があると思うので、消防と共に検証し、対策を考えていきたい」と話しています。」


傷病者の搬送及び医療機関による受入れの円滑化を図るため,「消防法の一部を改正する法律(平成21年法律第34号)」が平成21年5月1日に公布され,同年10月30日に施行されています.
改正消防法は,消防機関や医療機関等が参画する協議会による協議を経て,傷病者の搬送及び受入れに関する実施基準を策定することを各都道府県に義務付けています.

埼玉県は,平成22年12月,「傷病者の搬送及び受入れの実施に関する基準」を制定しています.

埼玉県の「傷病者の搬送及び受入れの実施に関する基準」は,次のとおり指摘しています.

「総務省消防庁と厚生労働省が合同で行った平成20年中の「救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査」によると、救急隊が現場に到着してから医療機関選定を終了して現場出発するまでに30分以上の時間を要した事案は、重症以上の傷病者の救急搬送約41万件のうち約1万7千件(約4.1%)、産科・周産期傷病者の救急搬送約1万6千件のうち約1千件(約6.3%)となっていて、傷病者の救急搬送及び医療機関収容は大変厳しい状況にある。
このような問題を解決するためには、救急医療に携わる十分な医師の確保、勤務条件の改善などの構造的な課題を解決しなければならないことが指摘されているが、当面の対応として、現状の医療資源を前提に消防機関と医療機関の連携を強化するための対策を講じる必要がある。
以上の状況に加え、近年の医療の進歩とともに、傷病の発生初期に実施すると効果的な医療技術が発達してきており、傷病者の救命率の向上、予後の改善等の観点から、救急搬送における医療機関選定から医療機関における救急医療の提供までの一連の行為を迅速かつ適切に実施することの重要性が増しているところである。」


埼玉県の救急医療情報システムは,おおよそ次のとおりです.

各医療機関が、一日2回(朝・夕),診療科目ごとの応需情報を入力する。各医療機関が,一日1回(夕方),当直医等の情報を入力する。 様々な事情により入力できない医療機関もある現実を踏まえ,当直医等の情報を各消防機関が入力し,共有する。
消防機関は,上記により入手した情報を資料として携行し,この情報を参考に医療機関を選定する。


ところが,本件は,電話をかけた25の病院に36回にわたって断られ,搬送に約3時間かかりました.
このようなことでは,本来助かる命も助からないことが起きるでしょう.
リアルタイムに情報把握が容易にできるシステムが求められています.インターネットの発達した時代ですから,それは技術的には可能と思います.
また,根本的には,医師の増員と救急施設の充実が必要と思います.


【追記】

NHK「救急受け入れ断られ死亡 体制の遅れ指摘」(2013年3月19日)は,次のとおり報じました.

ことし1月、救急車で運ばれていた埼玉県久喜市の男性が、25の病院に受け入れを断られて死亡した問題を受けて、県内の医療機関などが臨時の会議を開き、現場からは救急医療体制の整備を巡る行政の対応の遅れを指摘する声が相次ぎました。

ことし1月、呼吸困難を訴えて救急車で運ばれていた久喜市の75歳の男性が、25の病院から受け入れを断られ、その後、死亡しました。
この問題を受けて、18日夜、埼玉県内の救急医療機関や医師会、それに県内の消防で作る団体の担当者などが臨時に集まり、課題や当面の対応を話し合いました。
この中で、参加した医師からは、県内の病院で患者の受け入れが難しい場合に備えて、隣接する県の病院に患者を受け入れてもらう体制を、県が中心となって作るよう求める声が上がりました。
さらに、こうした問題は以前から指摘されていたにもかかわらず、医師の確保などの対策をしてこなかった行政の責任は大きいという、厳しい意見も出されました。
救急病院の院長で、今回の会議の部会長を務める原澤茂さんは、「現場の医師は大変疲弊しているなかで必死に頑張っている。救急搬送がスムーズにいくためのシステム作りを急ぐよう、県に求めていきたい」と話していました。」



谷直樹

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by medical-law | 2013-03-07 07:33 | 医療

日本医療安全調査機構運営委員会,診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業の法制化推進へ

CBニュース「事故調モデル事業の法制化策を検討へ-医療安全調査機構」(2013年3月6日)は,次のとおり報じました.

「日本医療安全調査機構の運営委員会は6日、同機構の「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を法律に基づく制度にするための施策についての議論を本格化させた。この中で、モデル事業を法制化することが、医療安全のための「第三者機関」の確立につながると、広くアピールしていく方針を決めた。

 このモデル事業は、厚生労働省予算と、日本外科学会といった学会などからの資金拠出で運営。診療行為に関連した死亡の原因を究明し、再発を防止することを目的として、現在は全国10の地域で死亡事例の調査分析を行っているが、今後、全国規模に拡大するための戦略を打ち出す考えだ。具体的な施策については、同機構に4月以降に設置される「推進委員会」で検討していくことになる。

 推進委員会が検討する項目としては、▽同機構の企画部会が昨年12月にまとめた「診療行為に関連した死亡の調査分析事業のあり方」が、臨床現場などでより理解されるための手だて▽医療機関の規模により解剖ができないことなどにより、申請しにくい状況にならないような環境整備▽調査費用を、調査を依頼する医療機関が負担するか▽非解剖事例への対応ーなどが挙げられた。

 このほか政府との関係で、厚労省だけでなく、警察庁などをどのように巻き込んで法制化に向けた制度設計を進めるかや、医療事故の調査制度については、各医療団体が相次ぎ独自案をまとめているため、他団体との柔軟な対応も、それぞれ重要課題に位置付けた。【君塚靖】」


全国規模への拡大戦略も結構ですが,現行モデル事業の質の担保も必要と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-07 01:33 | 医療事故・医療裁判