弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 03月 08日 ( 2 )

熊本県弁護士会,「菊池事件」について検察官による再審請求を求める会長声明

熊本県弁護士会は,2013年3月6日,「「菊池事件」について検察官による再審請求を求める会長声明」を発表しました.

「平成24(2012)年11月7日、いわゆる「菊池事件」について、ハンセン病元患者3団体から、検察官が再審請求することを求める旨の検事総長宛の要請書が、熊本地方検察庁に提出された。

 同事件は、ハンセン病患者とされた藤本松夫氏(被告人)が、自分の病気を熊本県衛生課に通報した村役場職員を逆恨みして殺害した等として、昭和28(1953)年8月29日に死刑判決の宣告を受け、同37(1962)年9月14日に死刑執行された事件である。

 同事件の訴訟手続は、「らい予防法」により一般社会とは隔離されていた国立療養所菊池恵楓園、あるいは、ハンセン病患者のみの受刑者が収容される菊池医療刑務支所に仮設された「特別法廷」において非公開で行われており、かつ、この「特別法廷」内においては、裁判官、検察官、弁護人がいずれも予防衣と呼ばれる白衣を着用し、記録や証拠物等を手袋をした上で火箸等で扱うなど、ハンセン病に対する差別、偏見に満ちた取り扱いがなされた。
さらには、被告人が殺人の公訴事実を一貫して否認しているにもかかわらず、第一審の弁護人は、罪状認否において「現段階では別段申し上げることはない」として争わず、また、検察官提出証拠に全て同意するなど、実質的に「弁護不在」の審理がなされている。

 このような同事件の訴訟手続が、裁判の公開(憲法第82条)、平等・公平な裁判(憲法第37条1項)、適正な刑事手続(憲法第31条)、弁護人による弁護(憲法第34条)を保障した憲法の規定に反し、被告人の裁判を受ける権利等を侵害するものであることは明らかであり、同事件は、本来人権を守るべき責務を負っている裁判官、検察官及び弁護人という法曹三者が、ハンセン病に対する差別・偏見により、自ら取り返しのつかない人権侵害を犯したものと言わざるを得ない。
また、実体的にも、確定判決における証拠関係には多数の重大な問題点が存在し、とりわけ凶器とされた短刀による被害者の創傷形成可能性については重大な疑問があるため、これに関する鑑定等が実施されることにより(新証拠)、実体的再審事由(刑事訴訟法第435条6号)も存在すると認められる。

 憲法違反の訴訟手続によって判決がなされて確定した場合、これを是正すべきは国家の責務であり、かかる観点から刑事訴訟法439条1項は検察官を再審請求者の筆頭に挙げている。
すなわち検察官には、公益の代表者として訴訟手続の過ちを正すことが期待されているのであって、今なお残るハンセン病に対する差別・偏見等から、被告人の遺族による再審請求が困難な同事件においてはなおさらである。

 当会は、同事件の裁判が行われた地の弁護士会として、法曹の責任を痛感するとともに、検察官が同事件について再審請求を行うことにより、憲法違反の手続による裁判を是正すべき責務を果たされることを強く求めるものである。」


全国ハンセン病療養所入所者協議会は,2012 年11月に,検察官による再審請求を求める要請書を熊本地検に提出しましたが,未だに動きがありません.
法律家の責任において,再審が行われ,偏見と差別による不当な判決が正されることを期待いたします.


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-08 08:52 | 弁護士会

「ミフェプレックス」「ミフェジン」「息隠」「保諾」を絶対に個人輸入で購入,使用してはいけない

独立行政法人国民生活センターは,2013年3月7日,「経口妊娠中絶薬の安易な個人輸入や使用は危険!」と発表しました.

 「経口妊娠中絶薬は、膣からの出血や重大な感染症等の健康被害を引き起こすおそれがあることから、平成16年に厚生労働省が注意喚起を行い、数量に関係なく、医師の処方または指示書に基づいて必要な手続きを行った場合に限り輸入が可能となるよう、個人輸入が制限されている。また、指定医師以外の者(妊娠中の女子を含む)が堕胎する行為は刑法の堕胎の罪に問われるおそれがある。

 医療機関を受診せずに経口妊娠中絶薬を購入、使用することは、法律に抵触するおそれがあるだけでなく、重篤な健康被害につながるおそれもあることから、被害の未然防止のため、消費者へ注意喚起することとした。

主な事例
【事例】安全に中絶を行えるという携帯サイトを見て経口妊娠中絶薬を購入した。
 携帯のインターネット海外サイト日本語版に、手術ではなく中絶できると書かれていた。妊娠49日以内ならば3日間服用するだけで自然流産の状態で安全に中絶を行える等の記載があった。中絶後ケアの抗生物質と止血剤を含む中絶薬セットを注文し代金を振り込んだ。インターネットの書き込み等に危険性が載っていたので購入を取り消したい。

消費者へのアドバイス
経口妊娠中絶薬とされている「ミフェプレックス」「ミフェジン」「息隠」「保諾」(一般名「ミフェプリストン」)を絶対に個人輸入で購入、使用してはいけない。」



刑法は,次のとおり堕胎の罪を定めています.

「第二百十二条  妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。

第二百十三条  女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、二年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

第二百十四条  医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。

第二百十五条  女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
2  前項の罪の未遂は、罰する。

第二百十六条  前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 」



母体保護法14条は,次のとおり指定医師による人工妊娠中絶を認めています.
この方法によるときは,正当業務行為ですから,堕胎罪にはなりません.


「第十四条  都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一  妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二  暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
2  前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。」


以上から,個人輸入の薬剤で堕胎したときは,堕胎罪の構成要件にあたることになり,特別事情が認定されない限り違法性もあり,堕胎罪として処罰される可能性があります.

刑法による処罰をさておいても,個人輸入の経口妊娠中絶薬薬剤で重篤な健康被害が生じるおそれがあります.

谷直樹

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by medical-law | 2013-03-08 07:37 | 医療