弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 05月 27日 ( 2 )

大垣市民病院,術後脳出血の責任を認め和解(報道)

中日新聞「大垣市民病院、医療ミスで患者側と和解 4060万円支払いへ」(2013年5月27日)は,次のとおり報じました.

 「岐阜県大垣市は27日、同県西濃地区の男性(81)が市民病院で手術を受けた後、脳に重い障害が残ったとして、男性側に4060万円の損害賠償金を支払うことで和解したと発表した。6月3日開会の市議会に関連議案を提出する。

 男性の家族は昨年4月、名古屋簡裁に調停を申し立てていた。

 病院によると、2010年9月、循環器科(現・循環器内科)で男性の右足付け根の血管を広げる手術を予定していたが、動脈硬化の進行を受け、当日になって両足の手術に変更。手術中に高血圧状態が続いたが、医師らが手術を早く終わらせることを優先し、降圧剤投与など適切な措置をしなかった。

 手術は成功したが、2時間ほどして脳出血を発症。現在も寝たきりで意識のはっきりしない状態が続いている。

 病院は、院外の医師や弁護士らによる第3者調査委員会を設置。手術変更がカルテ未記載だった点を問題視し、脳出血の危険性を考えて細かく血圧調整するべきだったと結論づけた。」



(1)手術中続いた高血圧状態について,降圧剤を投与するなどして適正な血圧を保つ注意義務があったにもかかわらず,降圧剤を投与しなかったこと(医師の注意義務違反)
(2)術後2時間ほどして発症した脳出血は,手術中降圧剤を投与するなどして適正な血圧を保っていれば,発症することがなかったこと(因果関係)
から,責任を認めた和解が成立したと考えられます.

谷直樹

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by medical-law | 2013-05-27 23:04 | 医療事故・医療裁判

日本外科学会・外科医労働環境改善委員会の調査,当直明けの日に手術の質が低下することが多い

NHK「外科医の当直明け手術 20%が「質低下」」(2013年5月26日)は,次のとおり報じました.

「外科医の4人に3人が病院に泊まり込む当直明けの日に手術に参加し、このうちのおよそ20%の医師が手術の質の低下を感じていることが日本外科学会の調査で分かりました。

日本外科学会は、会員の勤務の実態を調べるため、去年10月から12月にかけて全国の外科医8300人余りにアンケート調査を行いました。
それによりますと、この1、2年間に病院に泊まり込む当直明けの日に手術に参加したことがあるか尋ねたところ、▽「いつもある」が36%、▽「しばしばある」が25%、▽「まれにある」が13%で合わせて74%が「ある」と回答しました。
また、手術への影響について尋ねたところ、「出血が増えたり、時間が長くなったりするなど、手術の質が低下することが多い」と答えた外科医が19%に上りました。
さらに「疲労から医療事故を起こしたり、一歩間違うと医療事故につながるおそれを感じたりした経験がある」と答えた外科医が4%いました。
改善策としては70%以上の外科医が「当直明けは休みにするルールをつくるべきだ」と回答しました。
調査を行った日本外科学会の理事で九州大学病院の富永隆治教授は「当直明けの手術をやめると外科医不足のため手術ができなくなるのが実態だ。外科は負担の重さやリスクの高さから新たななり手が減る悪循環に陥っていて、労働環境を改善するなどの対策を考える必要がある」と話しています。

背景に急速な医師不足

厚生労働省によりますと、国内で外科に従事する医師の数は、平成18年には2万6470人で、この10年前より2400人減りました。
特に当直勤務や手術の中核を担う50歳未満の世代が2000人以上減り急速な医師不足に直面しています。
勤務時間の負担の重さや医療安全のリスクの高さから新たに外科医になる人が減り、それがさらに勤務の負担を増加させる悪循環に陥っているということです。
これに対して、手術の件数は高齢化に伴って増え続けていて、全身麻酔を伴う手術の件数は、平成23年度には1か月平均で20万4000件余りとこの15年前の1.6倍になっています。
厚生労働省は手術に対する診療報酬を増やすなどして、外科の医師数の増加を促していますが、勤務環境を十分改善させるには到っていません。


現場の病院の対応は

年間1000件以上の手術を行っている大阪市にある総合病院でも当直明けの手術をどう安全に行うか課題になってきました。
この病院では当直の勤務時間は午後5時から翌朝9時までです。
しかし、実際は当直する日の午前9時から診療活動を行っていて、当直明けのあとも勤務が続く日もあります。
病院が外科医に聞いたところ、集中力や根気がなくなり細かい手術操作が確実にできなかったとか、判断が鈍って時間が長引き患者に負担を掛けたといった声が上がりました。
このためこの病院では、2年前に新たな対策を取りました。
外科では患者の主治医は1人のため、当直明けでも主治医が手術をしなければなりませんでした。
そこで同じ程度の技術や経験のある外科医2人がコンビを組んで互いの患者も担当する「バディ制度」を導入しました。
当直明けは、原則、自分が担当する患者の情報と緊急呼び出し用のPHSをコンビを組む医師に引き継ぐことで、手術をしなくても済むようにしました。
また、当直中に搬送された救急患者の手術についても見直しました。
これまでは緊急性がなければ、体制が十分に整う当直明けまで待って手術を行っていましたが、外科医やスタッフに手当てを支払って当直中に手術を行うようにしました。
こうした対策を取ることで、いまでは特殊なケースを除いて当直明けで手術をすることはなくなったということです。

多根総合病院の丹羽英記院長は「人の命を預かっているので、患者からすると万全な体調でやってほしいというのは当然だ。きちんとリフレッシュしないと医師も体力がもたないが、医師が足りないので仕方ないというのが実態だ。職場環境を改善することで外科医も増えてきて、それが医療安全にもつながっておりよい循環になっている」と話しています。」


医師不足を否定し増員に反対する人もいますが,現実に医師不足で医師が過酷な労働環境におかれ,そのために医療の安全が脅かされていることは明らかです.
当直明けは休みにすべきで,医師を増員すべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-05-27 01:08 | 医療事故・医療裁判