弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 06月 14日 ( 2 )

中間利息控除率について考える

1 中間利息控除

将来の損害の賠償については,将来損害を現在の価額に換算して,先に損害賠償金を受け取る仕組みになっています.
将来損害を現在価額に換算するために,運用利益を控除します.
運用利益を控除するには,平均的な市場金利で中間利息を控除することが必要です.

2 民事法定利率

ところで,民法は,金銭消費貸借において,貸主・借主が利率を定めなかった場合の利率(これを民事法定利率と言います)を定めています.
民法は,年5%の民事法定利率を定めています(民法404条).この年5%という利率は,民法制定当時の平均的な市場金利を反映したものだそうです.民法の制定に当たって参考とされたヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利や法定利率,我が国の一般的な貸付金利を踏まえ,民法制定当時,金銭は通常の利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからだそうです.

3 中間利息控除率イコール民事法定利率

現民法に中間利息控除率を定める条文はありません.
最高裁(三小)平成17年6月14日判決(金谷利廣,濱田邦夫,上田豊三,藤田宙靖)は,中間利息控除率を民事法定利率と同率と解釈しています.
現民法の建前では,民事法定利率イコール平均的な市場金利ですから,平均的な市場金利であるべき中間利息控除率は民事法定利率と等しい,ということになるからです.

年5%は,現在では,平均的な市場金利からかけ離れて,著しく高率です。そのため,過大な中間利息控除によって,平均的な人には絶対に運用不可能な利率で中間控除がなされ,将来損害の賠償金が著しく目減りするという不合理な事態が生じています.この不合理な事態は,中間利息控除率イコール民事法定利率であるからではなく,民事法定利率が平均的な市場金利からかけ離れていることに起因します.

4  「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」について

ところで,法定利率が平均的な市場金利からかけ離れているのを正すために,民事法定利率を年3%に引き下げ,さらに一定期間の平均的な市場利率と連動するものにしよう,という民法(債権関係)改正が提案がなされています.適切な改正だと思います.

ただ「損害賠償額の算定に当たって中間利息控除を行う場合には,それに用いる割合は,年[5パーセント]とするものとする」として,中間利息控除率だけは現状通り年5%を維持しようとしています.これは問題です.

中間利息控除率は,上述のとおり運用利益を控除(中間利息を複利計算で控除)するものですから,法体系上平均的な市場金利を反映するはずの民事法定利率と同率であるべきです.
民事法定利率について,平均的な市場金利に近づけるための改正が行われようとしているのに,中間利息控除率だけを年5%と維持とするのは,法体系上整合しませんし,実際上も著しい目減りを放置することになり著しく不合理です.

なお,現民法は,中間利息控除率を定める法文をおいていませんが,この機会に,中間利息控除率について(平均的な市場金利を反映するはずの)民事法定利率と同率とする旨の規定をおくべきと考えます.

また,別な問題になりますが,民法419条1項本文「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める」についての改正を検討すべきではないしょうか.


民法(債権関係)の改正に関する中間試案」に関する意見募集の締め切りは,2013年6月17日です.


谷直樹

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by medical-law | 2013-06-14 05:10 | 医療事故・医療裁判

京都地判平成25年6月13日,京都第一赤十字病院,麻酔薬による術後の窒息死・見回り不十分(報道)

時事通信「日赤に3750万円賠償命令=医療ミスで74歳死亡-京都地裁」(2013年6月13日)は,次のとおり報じました.

「京都第一赤十字病院(京都市東山区)で首の手術を受けた翌日に死亡した男性=当時(74)=の遺族が、医療ミスがあったとして病院を運営する日本赤十字社を相手に約5150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は13日、約3750万円の支払いを命じた。
 橋詰均裁判長は「呼吸障害の副作用がある麻酔薬を使ったのに、手術後に十分な注意を払わなかった」と指摘。男性の死因を、たんが詰まったことによる窒息死と認定した。病院側は男性が手術前から服用していた向精神薬による不整脈と主張していた。
 判決によると、男性は頸椎(けいつい)が異常に増殖して食道などを圧迫する「フォレスター病」と診断され、2007年12月5日に手術を受けた。手術直後に呼吸困難の状態になったが、病院側は夜間の付き添いを希望する家族を帰らせ、十分な見回りをしなかった。
 京都第一赤十字病院総務課の話 判決文を確認しておらず、コメントは差し控える。」


手術直後に呼吸困難の状態になったが、病院側は夜間の付き添いを希望する家族を帰らせ、十分な見回りをしなかったという注意義務違反(過失)だけで,損害賠償責任が認められるわけでではありません.
損害賠償責任が認められるためには,注意義務違反(過失)によって結果(死亡結果)が発生したという因果関係があることも必要です.

後日判例雑誌等に公表される判決文をみないと正確なことは言えませんが,おそらく,病院側が主張する「向精神薬の副作用→不整脈→心停止→死亡」という機序と患者側が主張する「麻酔薬の副作用→呼吸障害→たん詰まり→窒息→死亡」という機序について争われ,裁判所は後者を認定し,注意義務違反(過失)との因果関係があるとされたのでしょう.

なお,モニターを着けていたとれすば,モニターのアラームはどうなっていたか,知りたいところです.

谷直樹

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by medical-law | 2013-06-14 02:19 | 医療事故・医療裁判