弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 06月 15日 ( 1 )

厚労省,子宮頸がんワクチン積極勧奨を一時中止

NHK「子宮頸がんワクチン 接種呼びかけ中止へ」(2013年6月14日)は,次のとおり報じました.


「子宮頸(けい)がんワクチンについて厚生労働省の専門家会議は、「接種のあと原因不明の体中の痛みを訴えるケースが30例以上報告され、回復していない例もある」などとして、積極的に接種を呼びかけるのを、一時中止すべきだという意見をまとめました。
厚生労働省は、近く全国の自治体に対して積極的に接種を呼びかけるのを中止するよう求めることにしています。

これは14日に開かれた、厚生労働省のワクチンの安全性を検討する専門家会議で決まったものです。
会議では、ことし4月に法律に基づく定期接種に追加され、小学6年生から高校1年生までの女子を対象に接種が行われている子宮頸がんワクチンについて議論が行われました。
この中で、接種したあと体中の痛みを訴えるケースが33例あり、このうち8例は回復していないことが報告され、専門家会議は「接種との因果関係も否定できない」と判断しました。
そのうえで、接種は継続するものの、「体中の痛みを訴えるケースは原因不明のため、国民に注意点を説明することができない」として、積極的に接種を呼びかけるのを、一時中止すべきだという意見をまとめました。

これを受けて厚生労働省は、近く全国の自治体に対して対象者に積極的に接種を呼びかけるのを中止するよう求めることにしています。
国が定期接種の対象としているワクチンについて接種の呼びかけを中止するのは、平成17年の日本脳炎のワクチン以来2回目で、極めて異例です。
厚生労働省によりますと、接種を希望する人に対しては、これまでどおり公費で接種が受けられるほか、副作用の被害が認められた際の救済制度の対象になるということです。

専門家会議の座長で、国際医療福祉大学の桃井眞里子副学長は「臨床試験のときには分からなかった全身の慢性の痛みが二桁程度でていて、未回復のものもあることを重視した結果だ。安全性に問題があるという判断ではなく、国民に対して責任ある対応をするために情報収集を行い、再び積極的な勧奨ができる状態にしていくということだと理解してほしい。がん予防のメリットを選びたい人については接種してもらっても構わない」と話していました。

子宮頸がんワクチンで重い副作用が起きたと訴えている子どもの保護者などで作る連絡会の代表で、東京・杉並区の松藤美香さんは「積極的な勧奨を差し控えるという結論は、接種を受けるかどうかは親の判断に任せてもらえるということで、ありがたい。会議では子どもたちの症状に対する調査も行うとされており、子どもたちが苦しんでいるなかで治療を考えていくという方針は大きな一歩だ」と話していました。」


今回,接種したあと体中の痛みを訴えるケースが33例あり,このうち8例が回復していないことから,積極的勧奨の暫定的中止となったのですが,4月に定期予防接種の対象としたことが適切だったかが問われるでしょう.

子宮頸がんワクチンについて,副作用情報の報告・収集が不十分で,どれくらいの害作用・被害があるのか不明な状況で,積極的勧奨が行われてきました.
2009年の販売開始から2013年3月までに,重篤な副作用報告が「サーバリックス」で301件,「ガーダシル」で56件報告されています.分母となる接種件数が大きなことを考慮しても無視できる数字ではありません.定期予防接種の対象となった今年4月以降は接種件数がふえているでしょうから,副作用被害も多くなっているでしょう.

そもそも,子宮頸がんワクチンは,HPV16型及び18型以外の癌原性(発がんの原因になる)HPV感染に起因する子宮頸がんおよびその前がん病変に対する予防効果は確認されていません.
子宮頸がんワクチンは,接種の時点ですでに感染しているHPVを排除したり、すでに発症しているHPV関連の病変の進行を予防する効果は期待できません。
子宮頸がんワクチンの予防効果がどのくらい持続するかについては、わかっていません.
子宮頸がんワクチン接種を受けた人が,安心して子宮頸がん検診を受けないことになれば,むしろマイナスのほうが大きいと思います.

このような子宮頸がんワクチンの有効性と危険性を考えると,子宮頸がんワクチン接種を勧奨するより,子宮頸がん検診の定期的受診を勧奨するほうが,よりよいのではないでしょうか.


【追記】

薬害オンブズパースン会議は,2013年9月25日,「『子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン)』に関する要望書」を公表しました.要望の趣旨は次のとおりです.

「1 厚生労働大臣に対する要望
(1)定期接種を中止すること。
(2)任意接種後の副反応被害についても,予防接種法の定める救済制度と同等の補償をすること。

2 厚生労働大臣,各製薬会社及び各学会に対する要望
(1)副反応症例を重点的に調査し,その結果を公表すること。
(2)有効性及び安全性に関する情報を医療機関,医療従事者。」及び接種希望者に分かりやすい方法で提供すること。」


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2013-06-15 04:54 | 医療