弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 08月 01日 ( 4 )

バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書

ノバルティスファーマ(スイス本社)は、バルサルタンの5つの医師主導臨床研究にノバルティスファーマの社員の関与があった可能性につき調査するため、2013 年 4 月 22 日、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所/伊藤見富法律事務所(外国法共同事業事務所)に調査を委託いたしました.その結果、2013 年 7 月 29 日、「バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書」が公表されました.

バルサルタンの5つの医師主導臨床研究は、次のとおりです.
 東京慈恵会医科大学による「JIKEI Heart Study」 (“JHS”)
 千葉大学による「Valsartan Amlodipine Randomized Trial」(“VART”)
 京都府立医科大学による「KYOTO Heart Study」(“KHS”)
 滋賀医科大学による「Shiga Micro Albuminuria Reduction Trial」(“SMART”)
 名古屋大学による「NAGOYA Heart Study」(“NHS”)

調査は、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所/伊藤見富法律事務所(外国法共同事業事務所)の17 名の弁護士と法務専門家から構成されるチームにより実施された、とのことです.
しかし、調査には限界がありました.
重要な社員の多くが退社し聴き取り調査に応じなかったうえ、関連文書もある時期のものは入手することができず、5つの医師主導臨床研究に大幅に関与していた元社員に対しては、辞職前の2回計約 4 時間半の聴き取りを行ったのみで、辞職後は聴取できず、個人所有のコンピュータに保存されている業務活動の記録を調査することを拒まれた、とのことです.
また、ノバルティスファーマは研究データや被験者のカルテを入手する立場にないため、研究論文で導かれている結論の整合性を確認するための独立した分析は行われなかった、とのことです.

そのようなものとして、「バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書」を読むべきでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2013-08-01 23:09 | 医療

バルサルタンを用いた大規模臨床試験に関する諸問題に対する日本高血圧学会の対応の経緯説明

日本高血圧学会は、2013年7月26日、会員向けに「バルサルタンを用いた大規模臨床試験に関する諸問題に対する 日本高血圧学会の対応の経緯説明」を発表しました.会員向けなので、残念ながら一般には読めませんが、ミクス「日本高血圧学会 ディオバン問題でガイドライン改訂への影響も示唆」(2013年7月31日)は、次のとおり、その内容を報じました.

「ARB・ディオバン(一般名:バルサルタン)の臨床研究をめぐり、2014年に予定される高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)の改訂に影響する可能性が出てきた。日本高血圧学会は、7月26日付で、「バルサルタンを用いた大規模臨床試験に関する諸問題に対する日本高血圧学会の対応の経緯説明」と題する文書を学会会員に公表した。


現行ガイドラインであるJSH2009では、Jikei Heart Study(東京慈恵会医科大学)の結果が引用されている。一方で、その後実施された、「VART(千葉大学)」、「Kyoto Heart Study(京都府立医科大学)」、「SMART(滋賀医科大学)」、「Nagoya Heart Study(名古屋大学)」の4研究は引用されていない。


経緯説明では、日本高血圧学会は2012年12月の理事会で、疑義が指摘された論文に関して、“ガイドラインで引用可能な論文かどうか”については理事会で検討することとし、審査対象や資料、判定する基準を明確にしていると説明。「Kyoto Heart Study(京都府立大)」について、「2012年12月の理事会で、疑義を指摘された論文への対処の原則が決定され、Kyoto Heart Studyはその段階で基準をクリアできていない」とした。


一方、ほかの4試験については「第三者機関による検証と高血圧学会の判断により採用の可否を決めること」をJSH2014策定の方針としているとした。


◎VART 解析データセットと原資料の詳細調査も進行中


Jikei Heart Studyについては、同試験の「引用もARB選択に強い影響を持っているものではなく、高血圧学会として、あるいは、ガイドラインにおいて、一部の研究成果だけを基にARBを推奨することも、特にバルサルタンを推奨することもしていない」とした。
Kyoto Heart Studyについては、「学会役員などがKyoto Heart Studyの論評をしたことによって企業の宣伝活動に関与したとする指摘があるが、学会として論文内容を論評したことはない」と説明。「権威ある学会誌に掲載された研究発表の内容については、称賛することも批判することもあるのが学問の世界であり、その都度、個人の考えを述べているものと認識している」とした。


一方、VARTについては、すでに第三者委員会が外部機関に委託し、血圧値およびエンドポイントの数は同じであることが分かっている。さらに、「詳細な検証のための解析データセットと原資料(カルテやイベント報告書、イベント評価委員会資料など)との照合については高血圧学会から千葉大学に調査を依頼し、現在調整中であるとの報告を受けている」とした。


そのほか、ガイドライン作成委員の利益相反(COI)についても、▽作成委員全員にCOI提出を求め、2013年1月10日に日本高血圧学会COI委員会が内容を審査、問題がないことを確認▽ガイドラインにおけるCOIは公開予定▽引用される各臨床研究に対し、エビデンスレベルをつけ、147名の作成委員の判断で総合的に推奨を決定している――としている。


なお、理事会で決定された“ガイドラインで引用可能な論文かどうか”の審査対象は、①英文誌においてpeer review を受けて発表された論文やLetterなどのコメントにおいて疑義が指摘された論文②高血圧学会学会誌のHypertension Researchに掲載された論文――のうち、高血圧学会理事会、JSH2013ガイドライン作成委員会に審議依頼があった論文。


判定は、審議過程の開示を求められた場合に開示に足るかどうかを考慮して行う。統計解析に基づく指摘では、論文著者や使用薬剤の製薬企業と利益相反のない統計専門家の意見や解析を参考に審議することが望ましいとしている。検討の資料としては、学会誌や商業誌などに掲載された論文、総説、letterなど、公に公開されたものを原則とした。ただし、相当する資料がない場合、学会から疑義の提示されている論文の責任者に意見を求めることとしている。」


現行ガイドラインであるJSH2009に引用されている東京慈恵会医科大学の「JIKEI Heart Study」 (JHS)でもデータの操作が行われていたにもかからわず、「引用もARB選択に強い影響を持っているものではなく、高血圧学会として、あるいは、ガイドラインにおいて、一部の研究成果だけを基にARBを推奨することも、特にバルサルタンを推奨することもしていない」としていますが、データ操作が行われた研究を引用すること自体、いかがなものでしょうか.
日本高血圧学会の動向が注目されます.


谷直樹

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by medical-law | 2013-08-01 01:47 | 医療

阿部円香さん・文 さとみさん・絵「ママ、なんで? びょうきのママにききたいの」

侃侃房のサイトによれば、

子育て真っ最中に発病した現役医師が、各専門家および闘病ママ&家族たちと共に作りあげた、病気のママ・パパ・ご家族への応援メッセージ。病気になって知りたかったこと、知ってよかったことを、3歳の子どもにもつたえられる“ 親の病気の説明絵本”です。
2013年8月上旬全国書店にて発売。

<本の構成>
【絵本パート(子ども向け27 ページ)】
【メッセージパート(大人向け21 ページ)】
・この絵本ができるまで
・専門家よりのアドバイス
・闘病ママ&家族たちよりのメッセージ
・あとがきに代えて

アドバイスいただいた専門家
牛島定信(精神科医/日本児童青年精神医学会元理事長)
白石恵子(九州がんセンターサイコオンコロジー科 臨床心理士)
大沢かおり(東京共済病院がん相談支援センター ソーシャルワーカー)
武田飛呂城(NPO 法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会事務局長)
西山和子(札幌神経内科クリニック看護部長)


西日本新聞「ママの病気 絵本で伝え 難病の阿部さん 子ども向けに説明本」(2013年7月30日)は、次のとおり伝えています.

「親が病気になると、子どもは心細くなる。「少しでも不安を和らげてあげたい」との思いを込めて、福岡市の医師、阿部円香さん(41)が一冊の絵本を完成させた。「ママ、なんで? びょうきのママにききたいの」(1260円、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう))=写真。子どもが受け止められるよう、病気のことを易しく説明する内容だ。自身も難病を患っており、同じ立場で子育て中の親たちに「役立ててもらえれば」と願っている。・・・

谷直樹

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by medical-law | 2013-08-01 01:19 | 医療

JPA、混合診療のなし崩し的な解禁に反対する~必要な医療は保険適用が原則~

一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)は、2013 年 7 月 18 日、「混合診療のなし崩し的な解禁に反対する ~必要な医療は保険適用が原則~」を発表しました.

「政府は 6 月 14 日、規制改革実施計画を閣議決定し、再生医療の推進のために、先進医療(保険外併用療養費)の対象範囲を大幅に拡大することを発表しまし
た。
その後も混合診療問題に関する記事や全面解禁論などが一部報道機関にも出ていることから、あらためてこの問題についての考えを表明します。

保険外併用療養費制度は、最新治療による高額な医療費の部分(先進医療)は全額患者負担となっています。先進医療は速やかな保険収載を前提とすべき
であり、安易な拡大は、難病に苦しむ多くの患者が公平に最新の医療を受ける権利を奪うものとなりかねません。私たちは、この制度の安易な拡大が、混合診療のなし崩し的な解禁につながるものとして強い懸念を表明します。

再生医療などの高度先進医療は、多くの国費を投じた研究の成果でもあり、事実上、一部の経済的な余裕のある裕福な患者だけが受けることができる医療となるのは、同じ国民として極めて不公平であり、公正性を欠く施策と言わざるを得ません。また、自由診療が安易に認められるのは、十分な安全性と治療としてのエビデンスが確立していない段階で治療が行われる道を公的に認めるものであり、治療の効果の確認だけではなく、患者の生命や健康に大きな危険をもたらしかねないものであることも懸念するものです。

わが国は国民皆保険制度の下で保険診療を基本とし、混合診療の原則禁止を国是としています。法的な規制や監視も及ばない医師の裁量による自由診療による医療を野放しにすることは、現在国際的にも日本が置かれている立場と信頼を損なうものともなりかねない危険性もはらむものです。

これらの懸念は架空のものではなく、すでに日本の再生医療の現状が各種報道・出版物や最近の NHK の報道でも明らかにされているように、すでに 100件近くのクリニック等によって自由診療として行われており、およそ 1 万人の患者に施術が施され、少なくない健康被害も続出しているといわれています。

しかも先進諸国では日本が唯一、エビデンスのない治療を自由に受けられる国となっているとのことです。しかも患者の藁にもすがる思いを逆手にとった法外な医療費負担を強いられる実態があります。

保険外併用療養費の安易な拡大が認められるならば、事実上の混合診療のなし崩し解禁となり、高額な患者負担を前提とした自由診療が激増することも想像に難くありません。

私たちは、政府が混合診療の原則禁止の方針を堅持し、わが国が到達した高度な先進医療が、その効果と安全性が確認されたのち、速やかに医療保険の適用となり、みんなが等しく必要な治療が受けられることを強く願うものです。」


混合診療解禁の流れは、患者のためのように言われることがありますが、それは一部の富裕層患者のためにしかなりません.
普通の患者にとっては、保険医療の中で安全で有用な医療が行われることが必要です.



谷直樹

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by medical-law | 2013-08-01 00:56 | 医療