弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 08月 15日 ( 2 )

日本禁煙学会、映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについての要望書

日本禁煙学会は、2013年8月12日、映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについての要望書を発表しました.

「映画「風立ちぬ」なかでのタバコの描写について苦言があります。現在、我が国を含む177か国以上が批准している「タバコ規制枠組み条約」の13条であらゆるメディアによるタバコ広告・宣伝を禁止しています。この条項を順守すると、この作品は条約違反ということになります。(別冊をご参照ください)

教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面など、数え上げれば枚挙にいとまがありません。

特に、肺結核で伏している妻の手を握りながらの喫煙描写は問題です。夫婦間の、それも特に妻の心理を描写する目的があるとはいえ、なぜこの場面でタバコが使われなくてはならなかったのでしょうか。他の方法でも十分表現できたはずです。

また、学生が「タバコくれ」と友人にタバコをもらう場面などは未成年者の喫煙を助長し、国内法の「未成年者喫煙禁止法」にも抵触するおそれがあります。事実、公開中のこの映画には小学生も含む多くの子どもたちが映画館に足を運んでいます。過去の出来事とはいえ、さまざまな場面での喫煙シーンがこども達に与える影響は無視できません。

誰もが知っているような有名企業である貴社が法律や条約を無視することはいかがなものでしょうか。企業の社会的責任がいろいろな場面で取りざたされている昨今、貴社におきましてもぜひ法令遵守をした映画制作をお願いいたします。

なお、このお願いは貴社を誹謗中傷する目的は一切なく、貴社がますます繁栄し今後とも映画ファンが喜ぶ作品の制作に関わられることを心から希望しております。
どうぞその旨をご理解いただき、映画制作にあたってはタバコの扱いについて、特段の留意をされますことを心より要望いたします。」


ネットでは賛否両論があります.
ただ,いくら時代背景とは言え,タバコ依存症は,広告,販売促進活動やスポンサー活動を通じて広まりますので,タバコ規制枠組み条約13条の趣旨にかんがみれば,タバコ喫煙を勧めるCM以上の効果か期待できるこの映画の喫煙シーンには問題があるというべきでしょう.
「ハウルの動く城」を見て,カルシファーの焼いたベーコンエッグを食べたくなった,というように,映画は観客に影響を与えます.映画「風立ちぬ」がタバコ喫煙にどのような効果を及ぼすか,を考えると,日本禁煙学会の指摘は正しいと思います.
映画制作者の表現の自由が主張されますが,映画がタバコ依存症を広めるものになっているとき,その問題点を指摘することも表現の自由であり,また健康権から肯定されるところでしょう.



谷直樹

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by medical-law | 2013-08-15 01:48 | タバコ

シャーガス病感染の危険のある血液製剤11本が8医療機関で投与された可能性あり

日刊スポーツ「国内初、献血でシャーガス病陽性を確認」(2013年8月14日)は、次のとおり報じました.


「厚生労働省と日赤は14日、中南米出身の40代の男性が6月に献血した血液の検査で、中南米の感染症「シャーガス病」の抗体陽性を国内で初めて確認したと発表した。

 男性はこれまで、2006年ごろから日赤がシャーガス病対策を始めた昨年10月までの間に少なくとも9回献血し、日赤が保存している男性の血液を調べたところいずれも抗体陽性だった。

 6月の献血は血液製剤メーカーや医療機関への出荷を差し止めたが、過去の献血を基につくられた血液製剤11本が8医療機関で10人程度の患者に投与された可能性があることが判明。厚労省と日赤は患者の特定や感染の有無の調査を進めている。

 シャーガス病は、中南米に生息するカメムシの仲間「サシガメ」が人の血を吸う際、原虫が人体に入り込んで発症する。10~20年は症状がないまま推移するが、心臓が徐々に肥大し、心臓破裂で死亡することもある。国内にサシガメは生息していないが、母子感染や輸血、臓器移植による感染の可能性がある。

 抗体陽性と確認された男性は現在、連絡が取れない状態という。厚労省と日赤は国籍を明らかにしていない。

 日赤は昨年10月以降、献血時の問診で中南米諸国出身か、4週間以上の滞在歴があるかを尋ねている。該当者のうち同意が得られた人を対象に今年1~7月に抗体検査を実施し、結果が判明した2255人中、陽性はこの男性だけだった。(共同)」



日本赤十字社のサイトの「シャーガス病に係る安全対策について」は、次のとおりです.

「シャーガス病は、中南米地域に流行地をもつサシガメ(昆虫)が原虫トリパノソーマ・クルージを媒介することにより感染する病気です。
 日本においては、中南米地域から来られた方々が約30万人に及ぶと言われており、その中にシャーガス病のキャリア(感染者)がいることが研究者から指摘されておりました。
 現在、日本の献血では、シャーガス病の有無を確認する検査を実施しておりませんので、輸血による感染を防ぐことを目的とした予防的な措置を講じるため、以下(1)~(3)の質問に該当された方の献血血液は、血漿分画製剤の原料血漿のみに使用させていただくことといたしました。 


 なお、この安全対策により、献血の受入れが制限されることはありません。みなさまからのご協力をお待ちしております。

 中南米地域に滞在されたことのある方には、お手数をおかけして誠に申し訳ございませんが、ご理解とご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

<中南米地域※滞在歴に関する質問>
(1)中南米諸国で生まれた、又は育った。
(2)母親が、中南米諸国で生まれた、又は育った。
(3)上記(1)に該当しない人で、中南米諸国に通算4週間以上滞在した。」



つまり、検査ではなく、上記3つの質問でリスクの高い人の献血を選び出しています.
今回、検査してみたら、1名感染していたわけです.

血液製剤は、現在の最高水準の科学技術をもってしても、原料である血液に由来する感染症等の副作用の発生を完全には排除できないものであるにしても、技術の進歩や社会情勢の変化に即応した安全性確保のための不断の対策が必要です.
この人は過去の献血時点では感染していなかった可能性もありますが、もし感染していて血液製剤を介して感染被害が生じていたら、平成24年10月前は何ら対策が採られていなかったことについて国の責任が問われる可能性がありまります.


谷直樹

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by medical-law | 2013-08-15 01:39 | 医療