弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 08月 31日 ( 3 )

予備罪の時効成立を見逃した東京高裁判決

MSN産経「時効気付かず有罪判決 ウナギ稚魚密輸事件で東京高裁」(2013年8月28日)は,次のとおり報じました.

「ウナギの稚魚を中国に密輸しようとしたとして関税法違反(無許可輸出未遂)の罪に問われた神奈川県三浦市の男(59)の控訴審で、東京高裁が時効が成立していることに気づかず有罪判決を言い渡していたことが28日、分かった。高裁は「未遂」よりも刑が軽い「予備」の罪にとどまると判断したが、予備の公訴時効は3年で未遂の5年より短く、起訴時点で時効が成立していた。関係者によると、本来なら予備罪と判断すれば免訴を言い渡さなければならなかったという。

 6日付の判決によると、男は平成20年3月、成田空港から稚魚の入ったスーツケースを香港行きの航空機に持ち込もうとしたが、税関職員に見つかり昨年12月に略式起訴された。

 一審千葉地裁は未遂罪で罰金88万円の有罪判決を言い渡したが、高裁の山崎学裁判長は「税関職員に気付かれたのはスーツケースを航空会社職員に預ける前で密輸の実行には着手していない」と指摘、予備罪にとどまるとして罰金50万円を言い渡した。」


弁護人弁護士は,実行の着手がなく,予備罪にとどまり,3年の時効成立により免訴,という主張を行っていなかったのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2013-08-31 07:49 | 司法

総務省,医療安全対策に関する行政評価・監視<結果に基づく勧告>,事故情報収集等事業の実施状況

総務省が抽出調査した結果,29医療機関(報告義務対象医療機関17機関,参加登録申請医療機関12機関)では,発生した医療事故8,570件のうち319件しか日本医療評価機構に報告していないこと(報告率3.7%)が明らかになりました.全く報告していないのは4医療機関で,全て報告しているのは12医療機関でした.

なお,日本医療評価機構は,2013年8月28日,「医療事故情報収集等事業平成2 4 年年報」を発表し,その医療事故の件数は最多でしたが,きわめて低い報告率が多少上向いた結果とみるべきでしょう.

日本医療評価機構の医療事故情報収集等事業が実効的に機能するためには,事故報告義務を課せられている医療機関の独自の解釈を許さないよう,報告範囲を周知徹底する必要があります.

医療安全対策に関する行政評価・監視<結果に基づく勧告>」の医療事故情報収集等事業の実効性の確保についての調査結果と所見は,次のとおりです.

「【調査結果】

今回、事故情報収集等事業の実施状況等について、厚生労働省本省、評価機構及び143医療機関を調査した結果、次のような状況がみられた。
143医療機関のうち、事故情報収集等事業に参加しているのは45機関(報告義務対象医療機関26機関、参加登録申請医療機関19機関)ある。それら45医療機関による平成23年度の評価機構への報告状況をみると、
ⅰ) 当該医療機関で発生した医療事故に相当する事案を全て報告しているものが12機関(報告義務対象医療機関9機関、参加登録申請医療機関3機関)、
ⅱ) 当該医療機関で発生した医療事故に相当する事案のうち、当該医療機関の医療安全管理委員会等での審議を経て、その一部のみを報告しているものが29機関(報告義務対象医療機関17機関、参加登録申請医療機関12機関)、
ⅲ) 業務多忙による失念等により全く報告していないのが4機関(いずれも参加登録申請医療機関) となっており、評価機構では医療事故の発生状況が十分に収集・把握できていない状況となっている。

また、上記ⅱ)に該当する29医療機関では、発生した医療事故8,570件のうち、319件しか評価機構に報告しておらず、その理由として、
ⅰ)評価機構が求める基準のうち「医療機関内における事故の発生の予防及び再発の防止に資する事例」のみが報告対象であると解していたため(1機関)、
ⅱ)医療事故の内容が高度(又は初歩的)であるものは、他の医療機関における発生予防や再発防止につながらないとして報告から除外していたため(2機関)などとしている。

このように、一部の医療機関には、法令等で定める事故等事案の内容が十分に浸透しているとは言えない状況となっている。

さらに、厚生労働省は、「特に報告を求める事例」については、医療機関からの照会を踏まえて修正している一方で、事故等事案の内容を具体化したものとして示した「報告範囲の考え方」及び「事故報告範囲具体例」については、平成16年度の事故情報収集等事業開始の際に、各都道府県等を通じて医療機関に周知し、それ以降見直しを行っていない。
しかし、調査した医療機関からは、ⅰ)具体的にどのような事例を報告すべきか判断に苦慮している(1機関)、ⅱ)報告すべき事案について、より具体的な内容の提示をしてほしい(2機関)といった報告範囲の具体化についての意見が聴かれた。
このため、事故情報収集等事業による事例の蓄積を踏まえて、報告が必要なものの新たな具体例の提示も含めた報告範囲の医療機関への周知徹底に引き続き取り組んでいくことが重要である。

【所見】

したがって、厚生労働省は、事故情報収集等事業の実効性を確保する観点から、医療機関に対し、それぞれの機関によって判断が異なることがないように法令等で定める事故等事案の内容を注意喚起するとともに、事故等事案の報告範囲について、事故情報収集等事業による事例の蓄積を踏まえた新たな具体例の提示を行うなど、その周知徹底に引き続き取り組む必要がある。 」


谷直樹

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by medical-law | 2013-08-31 05:51 | 医療事故・医療裁判

総務省,医療安全対策に関する行政評価・監視<結果に基づく勧告>,事故の再発防止について

総務省は,2013年8月30日,医療安全対策の推進を図る観点から,医療機関における医療安全体制の確保状況,国等による医療安全対策の実施状況等を調査し,その結果を「医療安全対策に関する行政評価・監視<結果に基づく勧告>」として取りまとめ,必要な改善措置について勧告,公表しました.

91医療機関のうち5機関(全て病院)では,形式的に事故件数等を報告しても意味がないなどとして,医療安全管理委員会への医療事故の報告を一部のものに限定していたとのことです.
しかも,そのうち2機関では,再発防止策の周知や情報共有が医療安全管理部門と事故が発生した部署でしか行われておらず,病院全体での再発防止策の把握や情報共有が行われていなかったとのことです.
また,10医療機関では,策定された再発防止策が遵守されていなかった,と報告されています.
行政が再発防止作の遵守について点検確認していない現状も明らかになりました.

医療事故の再発防止についての調査結果と所見は,次のとおりです.

「【調査結果】

今回、医療安全管理体制の確保に係る措置の実施状況について、19都道府県、都道府県が設置する21保健所、市又は特別区が設置する19保健所及び143医療機関(病院69機関、有床診療所56機関、無床診療所18機関)を調査した結果、次のような状況がみられた。

ア 医療安全管理体制の確保の現状
(ア) 医療安全管理指針の整備状況(平成24年11月末現在) 医療安全管理指針については、143医療機関のうち、131機関が整備している。
(イ) 医療安全管理委員会の開催状況等(平成23年度) 医療安全管理委員会については、設置義務のない無床診療所18機関を除く125医療機関のうち、121機関が設置・開催している。
(ウ) 医療安全管理研修の実施状況(平成23年度) 医療安全管理研修については、実施状況が不明である12機関を除く131医療機関のうち、111機関が実施している。
(エ) 医療安全の確保を目的とした改善方策(平成23年度平成23年度には、143医療機関のうち、91機関(病院66機関、有床診療所23機関、無床診療所2機関)で医療事故が発生し、発生件数は1万75件(病院9,671件、有床診療所399件、無床診療所5件)となっている。 当該91機関のうち、86機関は医療事故全件を医療安全管理委員会に報告している。しかし、その他の5機関(全て病院)では、形式的に事故件数等を報告しても意味がないなどとして、医療安全管理委員会への医療事故の報告を一部のものに限定しており、そのうち2機関では、再発防止策の周知や情報共有が医療安全管理部門と事故が発生した部署でしか行われておらず、病院全体での再発防止策の把握や情報共有が行われていない。

イ 従業者による再発防止策の遵守の徹底 医療事故が発生した医療機関における再発防止策の遵守状況等をみると、143医療機関のうち10機関(病院7機関、有床診療所2機関、無床診療所1機関)で、医療事故が発生したことにより策定した再発防止策が遵守されていないものが10事例あった。

再発防止策が遵守されていない理由として、当該10機関からは、
ⅰ)再発防止策は策定していたが、その周知が従業者一人一人まで行き届いていたとは言えなかった(1機関)、
ⅱ)再発防止策を策定し、各部署で実施していたが、その効果を把握していなかった(1機関)、
ⅲ) ) 再発防止策を従業者に周知するのみであり、当該事故に基づく研修を実施していなかった(1機関)
など、医療機関における再発防止策の周知や実施状況の把握・確認等が不十分であったことが挙げられている。

また、当該10機関に対する都道府県等による立入検査の実施状況についてみると、医療事故が発生した後の立入検査において、いずれも院内での再発防止策の周知状況や遵守状況についての指摘は行われていない。
医療事故の発生した医療機関に対する都道府県等の立入検査において、院内の再発防止策の周知状況や遵守状況についての指摘等が行われていない原因の1つとして19年3月通知において、医療安全管理委員会で策定された改善策の実施状況については、同委員会が必要に応じて調査し、見直しを行うこととされていることもあると考えられる。
実際、調査した59機関(19都道府県、都道府県が設置する21保健所、市又は特別区が設置する19保健所)のうち8機関(2都道府県、都道府県が設置する3保健所、市又は特別区が設置する3保健所)においては、立入検査時に使用する検査表等において、医療安全管理委員会で策定された改善策の実施状況を必須の検査事項としていなかった。
さらに、厚生労働省は、医療機関における再発防止策の周知及び遵守状況に係る都道府県等の立入検査の実施結果について、都道府県等からの報告を特段要請していない。

【所見】

したがって、厚生労働省は、医療機関における医療事故の再発防止を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
① 医療安全管理委員会には、当該医療機関で発生した医療事故の全てが報告され、策定された再発防止策が当該医療機関全体で情報共有されるよう必要な措置を講ずること。
② 都道府県等を通じ、医療機関に対して、発生した医療事故に係る研修の実施や再発防止策の効果の把握などにより、医療機関の従業者による再発防止策の遵守が徹底されるよう要請すること。
③ 都道府県等に対して、医療事故が発生した医療機関に立入検査を実施する際には、再発防止策の策定状況の検査だけではなく、再発防止策の周知及び遵守状況まで確実に検査するよう要請すること。 また、都道府県等に対して、立入検査の実施結果について報告を要請すること。」


谷直樹

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by medical-law | 2013-08-31 05:30 | 医療事故・医療裁判