弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 10月 24日 ( 1 )

『疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する中間取りまとめ』に関する意見書

薬害オンブズパースン会議は,2013年10月23日,「『疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する中間取りまとめ』に関する意見書」(パブリックコメント)を提出しました。

意見の趣旨は,以下のとおりです.

1 法律による規制

 倫理指針ではなく、被験者の権利を保護し、臨床研究を管理するための基本法を制定して、臨床研究を法律によって規制するべきである。

2 臨床試験の登録の義務付けと登録・公開の範囲の拡大  

上記法律には、被験者の権利、臨床研究登録の義務を明記して、臨床試験登録を義務づけるべきである。
 また、登録範囲を拡大し、被験者募集開始時点までには、プロトコールが登録・公開され、試験計画書に変更があった場合には、変更時期も含め変更内容が登録・公開されるようにし、結果の登録・公開も義務付けるべきである。

3 臨床試験の質の担保

 医療上の必要性ではなく商業的な目的等から必要性の乏しい臨床試験が行われたり、起こりうるリスクを上回る利益が期待されなかったり、プラセボ、代理エンドポイント、非劣性試験が過剰に使用されるなど、科学的妥当性や倫理性を欠く設計の臨床試験が実施されることのないように、臨床試験の実施が正当化されるのはどのような場合なのかについて、基本的な考え方(要件)を明記するべきである。

4 こどもに対する臨床試験

 こどもを被験者とする臨床試験の実施が正当化されるのはどのような場合なのか、基本的な考え方(要件)を明記するべきである。」


意見書は,1の理由について,次のとおり述べています.

「わが国では、治験は法によって規制されているが、治験以外の臨床試験には、法律に基づき事前の届け出や審査等を行う制度はない。
 この点について、「中間とりまとめ」では、「当面、現行の臨床研究倫理指針にあるとおり、研究計画は倫理審査委員会で審査することとする。」(論点9見直しの方向性③)とし、治験は法律によって規制するが、治験以外の臨床研究については、これまでどおり法律ではなく倫理指針によって規律することとしている。」

「しかし、被験者保護の観点からすれば、治験と臨床研究を峻別して扱うことに正当性は全くない。
 
そこで、当会議は、このような現行法規制の問題点を指摘し、臨床研究全体を規制する「臨床研究基本法」を制定して臨床試験を法律によって規制することの必要性を提言してきた。

 臨床試験を法律によって規制することについては、2000年の臨床研究指針の改定の際にも課題として検討されながら見送られた経緯があるが、その後の、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会最終提言(2010年)、厚生科学審議会医薬品等制度改正部会の取りまとめ(2012年)、臨床研究・治験活性化5カ年計画2012は、いずれも法制化に向けた検討を求めている。
 ICH3極の中で、治験と臨床試験を峻別して治験以外の臨床研究を法的規制の外においているのは日本だけである。近年、法的規制をしている米国やフランスにおいてもリスクの低い臨床研究については規制を緩和する方向の検討がなされているとの報告もあるが、それはあくまで基本的な法的規制があることを前提としたうえでの対応であって、基本的な法的規制が不要であるとする理由にはならない。」

「ノバルティスファーマ社の高血圧治療薬バルサルタンをめぐる不正事件では、実施施設の倫理委員会が、臨床試験の質や手続の担保、利益相反の管理においても全く機能していないことが明らかになった。倫理委員会の質の向上が図られるべきことは当然であるが、それにも増して、この事件は、医療界の自律的対応に委ねることの限界を示している。

 もとより、法的規制をすると同時に臨床試験の支援体制を整備することも必要である。臨床試験の資金を企業に頼らざるを得ない現状が、深刻な利益相反を生み、商業的利益には結びつかないが医療上必要な臨床試験が実施されない一方で、医療上の必要性や科学的妥当性を欠いた臨床試験が行われる事態を生んでいるのであるから、当会議や、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会が提唱した「公的基金」を創設して臨床試験の資金を提供することが求められる。また、法的制度の設計に当たっては煩雑な手続的負担を軽減する配慮も必要であろう。

 臨床研究の規制は、日本の臨床研究に対する国際的信頼にかかわる問題であるとともに、何より被験者の権利保護に関する問題である。法律によって規制をしたうえで、真に必要な臨床試験が実施できるよう、臨床試験の支援体制を整備するのがあるべき姿である。」



臨床研究についても,治験と同様に,法のルールによって被験者を守ることが必要と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2013-10-24 06:21 | 医療