弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 11月 18日 ( 2 )

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が病気を持つ者への差別であること

公益社団法人日本精神神経学会、一般社団法人日本てんかん学会、日本うつ病学会、日本認知症学会、特定非営利活動法人日本不整脈学会、一般社団法人日本睡眠学会、一般社団法人日本神経学会と一般社団法人日本脳卒中学会は、平成25年11月6日、参議院法務委員会に、以下の「「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に関する再要望」を提出しました.

「平成25年11月5日、衆議院本会議にて「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が可決されました。
同法案は危険運転致死傷罪の対象として一定の病気注1を取り上げる予定とされています(第三条第二項)。
しかし、これらの病気による事故率が他の要因と比較して高いという医学的根拠はなく、同条項は法の下の平等に反し、これらの病気に対する差別を助長し、病気の早期発見や適切な治療を妨げるものであり、同時に、これらの病気を有する人にいたずらに不安を与え、社会生活に重大な影響を与えることから、私たちは同条項の削除を要望しました(関連6学会による平成25年9月30日付け衆議院法務委員長あて「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に関する要望書)。
本法案は衆議院にて原案のまま可決されましたが、同条項の適用は特定の病気に対してではなく、症状に着目してなされることが本法の趣旨であるはずです(法制審議会刑事法部会での議論、衆議院法務委員会における政府・法務大臣の答弁)。
しかし、法案条文では「病気として政令で定めるものの影響により」と、適用用件を特定の病気に限定しており、特定の病気を持ちながらも症状を有しないものに対する不当な不利益や特定の病気を持つものへの差別を生ずるおそれがあります。
以上より私たちは、以下を求めます。

                               記

1.第三条第二項の危険運転致死傷罪の対象となる「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」を、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気の症状として政令で定めるもの」と修正すべきである。

                                             以    上

注1:統合失調症、てんかん、再発性失神、無自覚性の低血糖症、躁うつ病(法令において「躁うつ病」はうつ病と双極性障害を含む)、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」



3条2項は、「 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。」というものです.前項と同様というのは、「十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。」という意味です.

参議院法務委員会では、11月12日、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案(第百八十三回国会閣法第五二号)(衆議院送付)について谷垣法務大臣、奥野法務副大臣及び政府参考人に対する質疑が行われました.
11月14日には、参考人京都大学大学院法学研究科教授塩見淳氏、京都交通事故被害者の会古都の翼小谷真樹氏、公益社団法人日本てんかん協会副会長久保田英幹氏及び公益社団法人日本精神神経学会法委員会主担当理事三野進氏からの意見聴取の後、各参考人に対する質疑が行われました.

参議院で、この法案が病気を持つ者への差別となることのないよう、修正が行われることを期待します.

谷直樹

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by medical-law | 2013-11-18 03:06 | 人権

医療安全情報No.84~誤った処方の不十分な確認

公益財団法人日本医療機能評価機構は、2013年11月15日、医療事故情報収集等事業医療安全情報No.84を発表しました.

薬剤師は処方に疑問を持ったが、疑義照会の際にその内容が伝わらなかったため、処方が修正されず過量投与した事例が3件報告されています(集計期間:2010年1月1日~2013年9月30日)とのことです.

「事 例 1
医師は患者にプレドニゾロンとして1日27mgを処方する際、プレドニゾロン散1% 1日27g(有効成分として270mg) 1日2回 7日間と誤って処方した。
調剤薬局の薬剤師は疑義照会の際、「プレドニゾロンの量の確認をお願いします」と聞いた。
病院のスタッフは、FAXの処方せんが読みづらいという意味だと思い、電子カルテの処方内容を読み上げた。
薬剤師は疑問が解決しなかったが、そのままの量で調剤し、患者に交付した。
患者から薬剤の量が多いと問い合わせがあり、医師は過量投与に気付いた。

事 例 2
循環器内科医師は、抗凝固療法のため、「ヘパリン2千単位1日1回静脈注射」と口頭で指示した。
リウマチ ・ 膠原病内科主治医は2千単位を2万単位と思い込み、ノボ ・ ヘパリン注5千単位/5mL 4Vを1日1回静脈注射と処方した。
院内の薬剤師は疑義照会の際、「ノボ ・ ヘパリン2万単位の処方量でよろしいですか」と聞いた。
薬剤師の照会の意図が伝わらず、主治医は処方を修正しなかった。
静脈注射を実施後、APTT値が延長し、過量投与に気付いた。

総合評価部会の意見、
・薬剤師は処方について疑義照会する際、疑問点を明確にするため、疑問内容を具体的に明示して確認する。
・医師は処方の疑義照会を受けた際、薬剤師の照会したい内容を理解した上で処方を確認し、回答する。」


総合評価部会の意見はきわめて当然のことですが、これが実行されていない場合があったわけです.

谷直樹

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by medical-law | 2013-11-18 02:15 | 医療事故・医療裁判