弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 11月 25日 ( 2 )

佐久市立国保浅間総合病院,羊水塞栓症による出血性ショック事案で提訴される(報道)

毎日新聞「損賠提訴:「佐久の病院が過失」 出産後、妻死亡で夫ら」(2013年11月23日)は,次のとおり報じました.

「2012年7月に横浜市の主婦(当時34歳)が、佐久市の市立国保浅間総合病院で長男を出産後、出血性ショックで死亡したのは医師の処置に過失があったとして、横浜市の主婦の夫(36)と長男(1)が22日、同病院を運営する佐久市に総額約7500万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。

 訴状によると、主婦は12年7月20日に同病院で長男を出産後、大量出血して心肺停止状態になり、出産から7時間20分後に死亡した。死因は羊水塞栓(そくせん)症による出血性ショックとされた。

 原告側は、担当した医師が、産科関連学会の設けた大量出血時の対応を示したガイドラインに基づく輸血などの措置を迅速に取らなかったため、「出血が続き死亡する結果を招いた」などと主張している。

 訴えに対し、村島隆太郎・佐久市病院事業管理者は「訴状が届いていないが、病院としては手を尽くして診療にあたった。裁判の過程で疑問点などの説明を尽くしていきたい」とコメントした。【武田博仁】」


損害賠償訴訟は,原告の住所地を管轄する裁判所に提訴することができます.

民事訴訟法第4条は 「訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。」と定めていますので, 被告の住所地を管轄する裁判所に提訴することができます.
また,民事訴訟法第5条第1項は,「次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。」とし,「一  財産権上の訴え  義務履行地」と定めています.
損害賠償債務は,持参債務(債務者が債権者の住所地に支払いのために赴く)ですので,債権者(原告)の住所地が義務履行地となります.そこで,原告の住所地を管轄する裁判所にも提訴することができるのです.
原告が便利なほうを選ぶことができます.

なお,民事訴訟法第17条は,「第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。」と定めていますので,裁判所の判断によっては,移送されることもあります.ただ,実際上,原告の住所地の裁判所で審理することが「訴訟の著しい遅滞」をひきおこすことは少ないでしょうし,移送することが「当事者間の衡平を図る」ことになる場合も少ないでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2013-11-25 23:04 | 医療事故・医療裁判

豊橋市民病院,産科の脳性麻痺事故1億5000万円で和解(報道)

名古屋テレビ「豊橋市民病院での医療事故で和解 損害賠償額決まる」(2013年11月25日)は,次のとおり報じました.

「豊橋市は、市民病院での際、医療ミスにより赤ちゃんに重い障害が残り、市に損害賠償を求めていた両親と、和解が成立したと発表しました。


豊橋市によりますと、2008年5月、愛知県の豊橋市民病院で30歳代の女性が出産した際、医療ミスが原因で赤ちゃんに、脳性マヒの後遺症が残りました。両親は豊橋市に損害賠償を求め訴えていましたが、9月、市が1億5000万円を両親へ支払うことで和解が成立したということです。赤ちゃんの母親は、「今後、同じような事故がおこらないよう医療体制を整えてほしい」とコメントしています。一方、市民病院は、「産婦人科の医師の数を増やし、教育を徹底するなどして再発防止に努めたい」としています。」


産科医療補償制度は,2009年1月1日以降に出生した児が対象ですので,2008年5月出生のこの件には産科医療補償制度が適用されません.
裁判所で,1億5000万円の和解が成立したというのですから,患者側が過失,因果関係,損害の3要件を立証したとみてよいでしょう.

【追記】

中日新聞 「分娩ミスで障害 豊橋市民病院、1億5000万円で和解へ」(2013年11月26日)は,つぎのとおり報じました.

「子宮内で圧迫、仮死状態に

 愛知県の豊橋市民病院で2008年5月、出産時に医師が適切な処置をしなかったため、女児に脳性まひが残る医療事故が起きていた。女児の両親は損害賠償を求めて提訴し、名古屋地裁が和解案を提示。豊橋市は25日、1億5千万円を支払って和解する議案を市議会に提出すると発表した。

 病院によると、08年5月中旬の深夜、愛知県外に暮らす30代の女性が里帰り出産した。分娩(ぶんべん)を担当した20代の女性医師は、胎児の心拍数が遅くなっていることに気付いたが、「このまま出産は可能」と考え、帝王切開などはしなかった。

 別の出産に対応するため、45分、その場を離れた。この間、30分間は女性1人となり、残る15分は助産師が付き添った。女性医師が戻り、女児が生まれたが、心肺停止の仮死状態だった。

 出産前、女児の体が子宮内で圧迫されたため、仮死状態になったとみられる。脳性まひのため、5歳になった今も自力では歩けず、常に介護が必要という。

 女性医師は当時、医師免許を取得し四年目。産婦人科に配属されて2年目だった。病院は当直体制で、ほかに産婦人科医師はいなかった。

 女児の両親は11年12月、2億7千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴。市は医療事故と認め、地裁の和解案に応じることを決めた。

 会見した岡村正造院長は「担当医は速やかに帝王切開などの判断をすべきだった。夜間緊急時の診療体制が万全でなく、母体と胎児の監視が不十分だった。申し訳ない」と謝罪した。

 女児の母親は弁護士を通じ、「今後は同じような事故が起こらないように医療体制を整えて、より安心して出産ができるよう努めてほしい」とコメントした。」



谷直樹

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by medical-law | 2013-11-25 22:00 | 医療事故・医療裁判