弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2014年 02月 17日 ( 4 )

信濃毎日新聞社説,医療事故調査 透明化へ課題は多い

信濃毎日新聞社説「医療事故調査 透明化へ課題は多い」(2014年2月17日)は,次のとおり論じました. 

「調査の仕組みに透明性が十分確保されないと、遺族の不信感は解消されない。具体的には厚生労働省令で定めることになっているが、実効性を持たせるために詰めるべき点は多い。」

「問題は入り口にある。
 センターへの届け出や院内調査の基準となる「予期せぬ死亡」を医療機関自身が判断することだ。

 検査や手術に伴って一定の確率で避けられないとされる症状は「合併症」と呼ばれる。患者の死亡が合併症によるものと判断すれば、届け出や調査は必要ない。
 医療機関側が「合併症」を隠れみのにしないとは限らない。これまでも遺族との間でもめる場合が多かったのは、ミスなのか合併症なのかだ。合併症の判断にどう客観性を持たせるのかが重要だ。

 「予期せぬ死亡」と判断して、院内調査を行う場合にも客観性の課題がある。
 院内調査には原則として外部の医療専門家を入れる。その専門家の派遣元と想定されているのが医師会や大学病院などだ。
 外部とはいえ、“仲間同士”のかばい合いにならないか。医療事故に詳しい弁護士や被害者団体などの目も必要だろう。

 医療事故の中でも死亡に至るのは一部にすぎない。後遺症が出た場合などに対象を広げていく検討も欠かせない。」


医療版事故調を真に実効的なものにできるかは,これからの活動にかかっています.




弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-02-17 21:05 | 医療事故・医療裁判

高知新聞社説,【医療事故調査】鍵を握る実効性の確保

高知新聞社説「【医療事故調査】鍵を握る実効性の確保」(2014年2月17日)は,次のとおり論じています.

「これまで、残念ながら訴訟を想定した医療機関側の情報開示が不十分で、遺族側の不信感を招くケースも多かった。それだけに、第三者機関がきちんと検証機能を発揮できるかが制度の鍵を握っていよう。
 この点、新制度には懸念もある。
 調査対象は発生を予期できなかった死亡事故に限っているが、想定が可能だったかどうかの判断自体が問題となるケースもあり得る。その場合、高い専門性も壁となり、患者側にとってその妥当性は検証しがたいに違いない。死には至らなかった重大事故への対応も課題として残る。
 院内調査が難しい小規模施設については、地域の医師会や大学、学会が支援する枠組みを整える。この場合も人選によっては「身内」の調査になりかねない。中立性や透明性を確保するルールづくりが求められよう。
 食品や製品での事故を取り扱う消費者安全調査委員会は人員不足もあって、当初の目標ほど調査機能を発揮できていない。厚生労働省の試算では、国内で医療関連の死亡事例は年間1300~2千件に上るという。十分な調査体制を構築して、患者本位の医療につなげる必要がある。」


医療事故死は,年間数万人とも言われています.厚労省の試算は,かなり低めです.
医療版事故調には,公正・中立性,独立性,透明性,専門性,実効性が必要だと思います.

弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-02-17 09:46 | 医療事故・医療裁判

勝村久司氏、医療事故調査制度の創設に向けて 医療界に正直文化を育てよう

勝村久司氏(元中央社会保険医療協議会委員)が、「都立広尾病院事件から15年 医療事故調査制度の創設に向けて 医療界に正直文化を育てよう」(2014年02月11日)で、広尾病院事件では、病院側は当初、遺族に対して事故原因について曖昧な説明を繰り返すのみで、後日、病院側が事故を公表する際にも、本当の事実経過と異なる説明がされたりしたことを記憶喚起し、医療界の「事故を隠そうとする隠蔽体質」を指摘しています.勝村氏は、「被害者達は、子どもを育てるように、医療が健全に育ってほしいと願っています。それは、事故から学び、再発防止につなげていくシステムを医療界に構築してほしいという願いです。」と述べています.
紆余曲折を経て、医療版事故調が創設されることになりましたが、勝村氏は、次のとおり指摘しています.

「現在の厚生労働省の原案は非常にシンプルな骨格のイメージのみとなっていて、次のような多くの大切な論点が残されています。

一つ目は、届け出や調査の対象範囲についてです。

 原案では、医療機関が医療事故調査の第三者機関に届け出る対象の事故について「当該事案の発生を予期しなかったものに限る」という要件がつけられています。

 医療行為には合併症があり、薬には副作用がありますが、「手術の合併症に出血多量がある」「陣痛促進剤の副作用欄に子宮破裂が記載されている」から、出血多量や子宮破裂で死亡するようなケースでも、「予期できる範囲だから届け出をしない」というような理屈になってしまわないかが気になります。

 二つ目は、実施主体を都道府県単位としている点です。

 原案では、病院の内部で事故調査をする際のサポートや、第三者機関による事故調査の実施は、都道府県単位で登録された「支援法人・組織」(都道府県医師会、医療関係団体、大学病院、学術団体等)が行うこととされています。

 しかし、このような都道府県単位では、調査メンバーを、同じ大学や同じ医師会に属しない人にすることができず、かばいあいのない公正中立な事故調査にはなりにくいと思います。実際、死因究明のモデル事業や、医療機関の評価をするシステムでは、もっと広い範囲をカバーするブロック制を敷いて、実際の調査メンバーは他の都道府県の人が担当するという工夫がされています。

 他にも、医療機関が第三者機関に事故調査を申請しないと決めても、遺族が申請をして調査をしてほしいと願う場合の仕組み、調査費用の当事者負担の問題、医師法21条にある、異状死を医療機関が警察に届け出る義務との関係、など、いくつもの論点がありますが、被害者や遺族たちがこだわってきた最も大切なことは何でしょうか。」

と問いかけ、

「それは、医療界の隠蔽体質をなくすことです。事故を隠すのではなく、事故の原因分析をして再発防止につなげる仕組みを構築することです。

 そのために被害者らが願っていることは、事故を起こしたことより、それを隠したりごまかしたりした方が罪が重い、とする価値観や文化の醸成です。なぜなら、起きてしまった事故は再発防止につなげてもらうことで唯一生かされますし、隠蔽はその再発防止への道を閉ざしてしまうからです。」

と述べています.

これから、医療版事故調を活かすためには、隠蔽につながるような抜け道を作らないことが大事だと思います.

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by medical-law | 2014-02-17 02:29 | 医療事故・医療裁判

がんとの戦いに勝つには治療だけではなく、法的規制も重要

国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer),のプレスリリースN°224
Global battle against cancer won’t be won with treatment alone Effective prevention measures urgently needed to prevent cancer crisis」は、次のとおり法的規制の重要性を述べています.

「Adequate legislation to reduce exposure and risk behaviours

Lessons from cancer control measures in high-income countries show that prevention works but that health promotion alone is insufficient. Adequate legislation plays an important role in reducing exposure and risk behaviours.

For instance, the first international treaty sponsored by WHO, the Framework Convention on Tobacco Control, has been critical in reducing tobacco consumption through taxes, advertising restrictions, and other regulations and measures to control and discourage the use of tobacco.」


つまり、Framework Convention on Tobacco Control(FCTC、lタバコ規制枠組み条約)は、課税、広告規制等の法的規制によってタバコ消費を削減することで、がんとの戦いを勝利するために重要な役割を果たしています.


弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-02-17 02:10 | タバコ