弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2014年 05月 17日 ( 3 )

宮崎地判平成26年5月16日、十分な検査をしない抗癌剤投与で医療法人春光会に患者死亡の責任を認める(報道)

西日本新聞「抗がん剤で死亡、病院に賠で償命令 宮崎地裁判決」(2014年05月17日)は、次のとおり報じました.

「宮崎市の女性=当時(70)=が乳がん治療中に死亡したのは、副作用の検査を十分にせず抗がん剤を投与されたことが原因として、夫など遺族が医療法人春光会(宮崎市、宮路重和理事長)を相手取り慰謝料など約8700万円を求めた訴訟で、宮崎地裁は16日、病院側の過失を認め約4900万円の支払いを命じた。

 判決理由で内藤裕之裁判長は「高齢で血糖値の高かった女性は、抗がん剤による副作用が起きる危険性が高かった。十分な検査をしないまま抗がん剤を投与した医師の行為は注意義務違反に該当」と指摘。「医師の行為と死亡には相当の因果関係がある」と判断した。

 判決によると、女性は2011年7月、同法人宮路医院で乳がん摘出手術を受け入院。放射線療法の後、再発防止のために抗がん剤治療を始めたが、10月27日、急性呼吸循環不全で死亡した。」


抗がん剤治療の注意義務違反、死亡との因果関係を肯定した点で、注目すべき判決です.

弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-05-17 01:56 | 医療事故・医療裁判

1週間に8裁判期日

医療事件は、裁判より、示談交渉、医療ADRで解決するのが望ましいと考えていますが、相手のあることですので、どうしても裁判にせざるを得ない場合もあります.今週も産科医療事件を1件提訴しました.

私の場合裁判は普通週に3~4期日なのですが、今週は5日間に8つの裁判期日あり、大変でした.5月の大型連休の影響で、裁判期日が今週に多くなったためです.遠方の裁判所の期日、同日同時刻の裁判期日もありましたが、共同受任をしている弁護士と手分けして出頭しました.
民事裁判の期日は通常4週間程度の間隔で指定されますが、医療裁判の期日は専門的知見を要する準備が必要なため6~8週程度の間隔で指定されます.そのため次回期日も同じ週に集中しがちです.


弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-05-17 01:25 | 医療事故・医療裁判

札幌東徳洲会病院、「臨床研究に関する倫理指針」に反する重大な違反行為、調査委員会設置へ(報道)

医療法人徳洲会札幌東徳洲会病院(院長清水洋三氏)は、2014年5月16日、「倫理指針」に違反した臨床研究が行われていたことについてのお詫びとご報告」を発表しました.

「当院の腎臓内科 部長が行っていた臨床研究につきまして、厚生労働省が定める「臨床研究に関する倫理指針」に反する重大な違反行為を行っていたことが判明致しましたので、ご報告いたします。
 私たちはこのような事態を招く結果となったことを深く反省し、多くの患者様をはじめ、臨床研究にご協力いただいた皆様のご厚意や信頼を損なう事態を招きましたこと、そして当院が社会的な信頼を大きく損ねてしまいましたことを厳粛に受け止め、ここに改めて謹んで深くお詫び申し上げます。  
 今後は、研究者倫理のより一層の徹底を図り、再発の防止と公正な研究活動の確保に努めていく所存でございます。」


毎日新聞「貧血薬臨床試験:販売元に個人情報提供…病院、陳謝 札幌」2(014年5月17日)は、次のとおり報じました.

「貧血治療薬の臨床試験を巡り、札幌東徳洲会病院(札幌市)で腎臓内科部長の医師=諭旨退職処分=による国の指針違反があった問題で、この医師は販売元の協和発酵キリン(東京)の社員に患者の個人情報を渡していた。病院が発表した。個人情報保護法違反の可能性がある。社員は試験の関連書類の作成やデータ解析などで不適切に関与していた。

 臨床試験は薬の投与による血液中のホルモンの変動を調べる目的で、2012年から13年にかけて行われた。

 16日の病院の記者会見によると、13年6月に試験計画の変更の申請があったことを機に経緯を調べたところ、医師は病院の倫理審査委員会が承認する2週間以上前から試験を始めていたことが発覚。当初予定の2倍にあたる30人の患者を対象にしていた上、患者の氏名などの個人情報を社員に提供していた。

 試験の実施計画書では社員が関与するとの記載は無かったが、複数の社員が試験の実施計画書や患者の同意説明文書の作成、データの解析を行っていた。また、同社から50万円の奨学寄付金を受けていた。清水洋三院長は記者会見で「社会的な信頼を大きく損ねたことを厳粛に受け止め、深くおわびする」と陳謝した。

 一方、協和発酵キリンも東京都内で記者会見。試験への社員の関与を営業部門が13年9月に確認しながら、今年4月までコンプライアンス(法令順守)の担当役員に届け出ていなかったことを明かした。社員の関与は、社内や業界団体の規則に違反する可能性があるとの認識を示し、「不適切な臨床研究への関与が発覚したことは申し訳無い」と謝罪した。弁護士による社外調査委員会を設置し、問題点の解明や再発防止策を検討する。

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑を受け、日本製薬工業協会は4月、自社製品を対象にした臨床試験への奨学寄付金の提供やデータ解析などへの社員の関与を禁止すると加盟72社に通知した。【八田浩輔、江連能弘】」


北海道新聞「倫理委承認前に臨床研究 札幌東徳洲会病院 協和発酵キリンの薬 関与の医師処分」(2014年5月16日)は、 16次のとおり報じました.

「札幌東徳洲会病院は16日、同病院の60代の男性腎臓内科部長が、製薬会社「協和発酵キリン」(東京)の貧血改善薬の臨床研究を、院内倫理委員会の承認前に開始するなど、厚生労働省の倫理指針への重大な違反があったと発表した。健康被害はなかったという。同病院は3月末付でこの医師を諭旨退職処分としている。

 同病院などによると、医師は同社の貧血治療薬「ネスプ注射液」について、効果などに関する論文を作成するため、臨床研究を計画。厚労省の倫理指針に反し、院内倫理委員会で研究についての審議が行われた2012年12月18日以前に研究に着手した。

 倫理委員会には予定症例を15人としていたが、実際には30人を調査。患者の氏名などの個人情報も同社に流していた。医師は研究に関し同社から受けた50万円の寄付金をデータ測定の費用などに充てたとされる。

 院内倫理委員会によると、医師は聴取に対し「倫理指針への理解が足りなかった」と説明。同委は患者数を増やしたことについて、当初の計画では十分なデータを得られなかったため、人数を増やしデータの価値を高める意図があったとみている。データの捏造(ねつぞう)は確認されていないという。

 13年6月に研究計画の変更申請があり、院内で実施状況を確認したことをきっかけに違反が発覚。同病院は患者本人や遺族に対する経緯説明、謝罪を始めている。」


NHK「徳洲会病院の医師 届け出と異なる臨床研究」(2014年5月16日 は、次のとおり報じました.

「札幌市の札幌東徳洲会病院で腎臓内科部長だった医師が事前の届け出と異なる内容の臨床研究を行ったほか、研究費用の寄付を受けた製薬会社側に患者の個人情報を無断で提供していたことが分かりました。
病院側は厚生労働省の倫理指針に違反しているとして、この医師を諭旨退職の処分にしました。

札幌東徳洲会病院によりますと、腎臓内科部長だった63歳の医師は、おととし透析患者の貧血を改善する薬剤の効果を調べるため臨床研究を行うとした計画書を病院の倫理委員会に提出しました。
しかし、実際には委員会の承認前に研究を始めたほか、計画の倍の30人に薬剤を投与するなど、事前の届け出と内容が異なっていたということです。
さらに研究には、東京に本社のある製薬会社、「協和発酵キリン」が寄付した50万円が使われていましたが、この会社の社員が研究の計画書や患者に同意を求める説明書の作成に関与していたほか、医師が製薬会社側に患者の個人情報を無断で提供していたことが分かったということです。
患者に健康被害はないということですが、病院側はこれらの行為は厚生労働省の倫理指針に違反しているとして、ことし3月、この医師を諭旨退職の処分にしました。
札幌東徳洲会病院の清水洋三院長は記者会見し、「不適切な関係が疑われ、常識ではありえないこと。信頼を大きく損なう事態を招いたことを深くおわびします」と述べ、謝罪しました。

社外調査委員会を設置

協和発酵キリンは東京都内で記者会見し、当時、札幌支店で営業や研究の担当をしていた2人の社員がこの問題に直接関与していたことを明らかにしました。
そのうえで、2人が製薬会社の社員として研究に関わっていたことや、患者の個人情報を受け取って保管していたことが、社内や日本製薬工業協会などの規程に違反する疑いがあるとしています。
このため協和発酵キリンは、3人の弁護士で作る社外調査委員会を設置して、来月下旬をめどに詳細な調査結果を公表することにしています。
協和発酵キリンコーポレートコミュニケーション部の諸富滋部長は記者会見で、「社員が臨床研究に不適切に関与した疑いがあることについて大変申し訳なく思います。調査の結果を踏まえて関係する社員の処分を行うとともに、再発防止策を策定したい」と述べました。
一方、50万円を寄付していたことについては「病院側に『奨学金』として提供したもので、手続き上、問題ない」としていますが、社内や業界団体の規程に違反しないかどうか、社外調査委員会で調査するとしています。」

これは、氷山の一角なのかもしれません.
もし、日本では臨床研究が製薬会社と癒着して実施して行われている例が少なくないとすると、日本の臨床研究結果全体の信用性が揺らぐことになります.すべての臨床研究で指針の徹底をはかる必要があるでしょう.

弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-05-17 01:05 | コンプライアンス