弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2014年 12月 20日 ( 2 )

大阪高判平成26年12月19日判決、旧奈良病院の産婦人科医の当直時間帯すべてが労働時間と判断

産経新聞「旧奈良病院の当直訴訟 二審も「全て労働時間」 産科医に割増賃金 大阪高裁」(2014年12月19日)は、次のとおり報じました.

「県立奈良病院(現奈良県総合医療センター)の産婦人科医の当直時間帯すべてが「労働時間」に当たるかが問われた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は19日、一審奈良地裁と同様に労働時間と判断し、病院側に未払いの割増賃金など計約1280万円の支払いを命じた。

 病院側は、患者の急変など業務に携わる時間だけを割増賃金の対象としてきたが、水上敏裁判長は判決理由で「当直の全時間を通じ病院長の指揮命令下にあり、十分な休息を確保する見込みはない」と退けた。

 訴えていたのは産科医2人。2006-07年、当直勤務をそれぞれ1200時間以上こなした。

 昨年9月の一審判決は奈良県に約1900万円の支払いを命じたが、控訴審は「医師数の増員など、病院側も労働密度の低下にある程度努力している」として、付加金(制裁金)を減額した。訴訟を引き継いだ県立病院機構は「判決を精査し対応する。今後も医師の処遇改善に取り組む」とコメントした。」


産科医師の当直業務の内容・実態に照らし、当然の判決でしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-20 02:16 | 医療

東京女子医科大学病院集中治療室においてプロポフォールを投与された小児患者における死亡例の検討結果報告

小児患者が東京女子医科大学病院集中治療室(ICU)内でプロポフォールの投与を受けて死亡した症例について、外部評価委員会は、プロポフォールと死因の関連性を検討し報告しました.

「東京女子医科大学病院集中治療室(ICU)においてプロポフォールを投与された小児患者における死亡例の検討結果報告」は東京女子医科大学病院のサイトに掲載されています.

外部評価委員会のメンバーは、賀藤均氏(国立成育医療研究センター病院長)、志馬伸朗氏(国立病院機構京都医療センター救命救急センター長)、鈴木康之氏(国立成育医療研究センター病院麻酔・集中治療部長)、益田宗孝氏(横浜市立大学医学部外科治療学教授)です.

◆ 小児に対する比較的大量かつ長期間の使用
死亡例全員で最大投与量が4.0mg/kg/hrを超えており、1Omg/kg/hr以上となった症例も5例存在していた。投与日数にいたっては、48時間(2日)以内で終了していた症例はなく、全員、長期使用例であった。90日以上が5例で、症例6では300日を超えていた。症例10では最大投与量17.9rag/kg/hrで、総投与日数が94日であった。」とのことです.
かなり大量のプロポフォールが、かなり長期間にわたって投与されていたことがわかります.

◆CKの計測はほとんどなされなかった 
小児に対して比較的大量かつ長期間の使用を行っているにもかかわらず、定期的なCKの計測はほとんどなされていなかった。」とのことです.そこで限られたデータから推察し、「死亡に直結する横紋筋融解はなかった」と判断したとのことです.

◆ PRIS(Propofol infusion syndrome、プロポフォール注入症候群)起因の代謝アシドーシス否定
外部評価委員会は,「1)代謝性アシドーシス、2)進行′性の心不全を伴う横紋筋融解の双方かどちらか一方が存在する場合」をPRISと定義しています.
PRISに起因すると考えられた代謝アシドーシスは、血液ガス分析結果とその前後における投与薬剤の種類をチェックすることで、全例でなかったと判断した。」とのことです.

◆ 感染リスク
プロポフォールには大豆油が含まれていて、投与時に感染の危険性が高まることを指摘しています.
4例について,感染症否定できず,と判定しています.

◆ 6系脂肪酸による病態の悪化
大豆油は6系脂肪酸を多く含む。この6系脂肪酸は、炎症反応を増強し、免疫能を低下させる脂質メデイエーターの材料となるアラキドン酸に代謝される。したがって高度な炎症を生じている患者や大きな侵襲を受けた患者に過剰なの6系脂肪酸が投与されることによって病態が悪化することがある。」と指摘しています.
病態の悪化は他の要因によっても生じますので、6系脂肪酸による病態の悪化がどの程度死亡に影響したかは、判定が難しいようです.
2例について,心機能低下否定できず,と判定しています.

◆ 肝臓への悪影響が否定できない
プロポフォールの大豆油の濃度は、静脈栄養のために使用する脂肪乳剤に比し低いが、長期過量した場合の肝臓網内系への影響は否定できない。特に、連続時間の使用日数が長期に渡った場合における影響は否定しきれない。」とのことです.

◆まとめ
外部評価委員会は、「診療スタッフにおいて、1)集中治療室における人工呼吸中の小児でのプロポフォール使用が禁忌とされていること、2)これは文献上報告されている重篤な合併症や危険性に関連していること、3)国内外文献で危険性が示唆されている用法・用量が存在すること、への認識が十分に存在しなかった可能性があった」と認定しています.

今回検討を行った11例は全て重症心疾患患者であり、プロポフォール投与がなされていなかったとしても最終的に患者が死亡していた可能性が決して低くはない、と委員全員が判断したことを付記する。」と結ばれています.
法的な事実的因果関係は、もしプロポフォールを投与しなかったら(適切な医療が行われていたなら)現実に死亡した時点で生存していた高度の蓋然性があるか否か、で判断されます.
報告書は、「最終的に」と記載しているところからすると、プロポフォールを投与しなかったら(適切な医療が行われていたなら)現実に死亡した時点で生存していた高度の蓋然性があると考えているようにも読めます.

なお、NHK「東京女子医大 「中央ICU」を閉鎖へ」(2014年12月19日)は、次のとおり報じました.


「東京女子医科大学病院でことし2月人工呼吸器を付けた子どもへの使用が原則、禁止されている鎮静薬を投与された男の子が死亡した医療事故について、病院は十分な医療体制が整っていなかったことが事故の背景にあったとして、男の子が治療を受けていた集中治療室をことしいっぱいで閉鎖することを決めました。

東京・新宿区の東京女子医科大学病院ではことし2月、首の腫瘍を取る手術を受けた当時2歳の男の子が、人工呼吸器を付けて集中治療が行われている子どもへの使用が原則、禁止されている鎮静薬「プロポフォール」を投与され死亡し、警視庁が業務上過失致死の疑いで捜査を進めています。
病院の関係者によりますと、男の子が治療を受けていた「中央集中治療室」では主治医と術後の管理を担当する医師、それに薬剤師などが薬の安全性や副作用についての情報を共有せず、4日間、薬が投与され続けていたということです。
病院は、医療スタッフが足りず、スタッフ間の連携も不足するなど十分な医療体制が整っていなかったことが事故の背景にあるとして、ことしいっぱいで中央集中治療室を閉鎖することを決めました。
病院ではこの医療事故のほかにもプロポフォールの投与と死亡との関係は直接認められなかったものの薬の投与が感染症などを引き起こしたり悪化させたりするなどの可能性が否定できないケースが5件報告されていて、今後、病院は中央集中治療室のほかに7つある集中治療室間での情報共有を進めるなどして医療の安全を確保していきたいとしています。」



谷直樹

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by medical-law | 2014-12-20 01:42 | 医療事故・医療裁判