弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2015年 02月 19日 ( 3 )

水戸地裁平成27年2月19日判決,救急搬送先病院の診断ミスと転院先病院の無承諾検査に賠償を命じる(報道)

産経新聞「尿管結石患者死亡 「診断ミス」と病院側に3千万円賠償命令 水戸地裁」(2015年2月19日)は,次のとおり報じました.

「救急搬送先の病院での診断ミスと転院先での検査で女性患者が死亡したとして、遺族が双方の病院側に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は19日、診断ミスによる死亡と認め、救急搬送先の石岡第一病院(茨城県石岡市)側に約3千万円の支払いを命じた。

 検査は脳死かどうかを調べる「無呼吸テスト」で、死亡との因果関係は認められないとしたが、新谷晋司裁判長は「家族の承諾を得ておらず、患者の人格的利益を違法に侵害した」と認定。転院先の土浦協同病院(同県土浦市)側に約60万円の支払いを命じた。

 判決によると、平成23年2月、女性=当時(56)=は尿管結石で救急搬送され入院した。その後、容体が悪化して転院。自発呼吸がない状態で、無呼吸テストを受けた。同年3月、敗血症性ショックが原因の低酸素脳症で死亡した。」


 報道では経緯がよくわかりませんが,敗血症性ショックが原因の低酸素脳症で死亡したとのことですから,土浦協同病院の診断ミス(過失)はおそらく敗血症の見逃しで,それがなければ敗血症性ショックが原因の低酸素脳症で死亡することはなかったと因果関係を認定し,約3000万円の賠償を認めたのでしょう.この判決は,立証のハードルが高い敗血症性ショックについて参考になるでしょう.
2つの病院に賠償を命じるのは多いことではありません.無承諾の検査について人格権侵害を認めた点も今後の事案に参考となります.

  谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-02-19 19:30 | 医療事故・医療裁判

東京都と北区が医療法人岩江クリニックに不適切な拘束を改善するよう勧告

東京都福祉保健局は、平成27年2月17日、医療法人岩江クリニックに対し、介護保険法第76条の2第1項第3号及び第83条の2第1項第2号の規定に基づき、当該事業者が運営する指定居宅介護支援事業所及び指定訪問介護事業所に対して、身体拘束について改善勧告を行ったとのことです.
勧告内容は以下のとおりです.

「(1) 西ケ丘居宅介護支援事業所(居宅介護支援)

 (勧告要件:法第83条の2第1項第2号)
 当該事業所においては、利用者に身体拘束(※)を行う際に「身体拘束ゼロへの手引き」に定められた「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たしているか慎重に検討することなく、主治医からの指示であるという理由により、介護支援専門員が身体拘束を前提とした居宅サービス計画を作成している事実が東京都の監査において認められた。
<東京都指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準に関する条例(平成26年3月31日条例第52号)第3条第1項、第20条第4項>

(2) 西ケ丘訪問介護事業所(訪問介護)

 (勧告要件:法第76条の2第1項第3号)
 当該事業所においては、利用者に身体拘束を行う際に「身体拘束ゼロへの手引き」に定められた「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件について慎重に検討することなく、主治医からの指示であるという理由により、訪問介護員が身体拘束を前提としたサービスの提供を行っていた事実が東京都の監査において認められた。
<東京都指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営の基準に関する条例(平成24年10月11日条例第111号)第4条、第27条第1項第1号及び第3号>

※身体拘束は緊急やむを得ない場合以外は決して許されず、また緊急やむを得ない場合であっても「身体拘束ゼロへの手引き」に定められた「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限定して認められるものである。」


北区のシニアマンション3棟の入居者約130人を拘束していたあの事案です.
医療法人と連携する不動産業者が家賃を受け取り、医療法人の事業所が介護サービス料を受け取り、医療法人が医療費を受け取り、親族の会社が食事と家事の対価を受けとる、というように分業化されていた関係で、有料老人ホームに該当しないので指導ができないという解釈もあって、指導が遅れましたが、ついに上記のとおり改善勧告が行われました.法の網をかいくぐることはできなかったわけです.


  谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-02-19 02:38 | 福祉

最高裁が大法廷回付、民法750条と733条について憲法判断へ

民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定めています.平成八年二月二十六日法制審議会総会決定の「民法の一部を改正する法律案要綱」は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。」となっていますが、未だに改正は実現していません.東京高裁は民法第750条について違憲ではないと判決し、上告されました.

民法第733条は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と定めています.平成八年二月二十六日法制審議会総会決定の「民法の一部を改正する法律案要綱」は「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができないものとする。」となっていますが、未だに改正は実現していません.広島高裁岡山支部は民法第733条について過剰な制約とは言えず違憲ではないと判決し、上告されました.


最高裁第3小法廷は、平成27年2月18日、それぞれの訴訟について大法廷に回付し、大法廷で審理することにした、と報道されています.
最高裁大法廷で、上記条文の違憲性について判断するようです.

毎日新聞「最高裁大法廷回付:家族の規定に泣いた原告「実情見て」(2015年2月18日)は、次のとおり代理人弁護士のコメントを報じました. 

「夫婦別姓には「家族の一体感が損なわれる」との反対意見が根強いが、国連からも是正を促され続けている。榊原富士子・弁護団長は「一歩進み、うれしい気持ちでいっぱい。『憲法違反』と最高裁に書いてもらいたいのが切なる気持ちだ」と話した。」
「一方、再婚禁止期間の見直しを求めた訴訟を起こした岡山県総社市の女性は、大法廷回付の知らせを聞くと「自分のようにつらい思いをする人がいなくなってほしいと訴訟を起こした。夢に一歩近づいたかな」と喜んだという。暴力を振るう前夫と裁判を経て離婚したが、再婚まで7カ月かかった。代理人の作花(さっか)知志弁護士は「明治期の遺産を、家族観が変わった今にふさわしい憲法判断で改めてほしい」と期待を寄せた。」


NHK「夫婦別姓 最高裁大法廷が憲法判断へ」(2015年2月18日)は、次のとおり代理人弁護士のコメントを報じました.

「弁護団の榊原富士子団長は「結論がどうなるかは分からないが、最高裁の積極的な姿勢を感じる。夫婦別姓のニーズは高まっているので、憲法判断が変わる機は熟していると思う」と話していました。」

別姓訴訟を支える会のサイト」ご参照
弁護士作花知志のブログ」ご参照

法の下の平等(憲法14条)は、とても重要な権利です.
現行民法750条は国際的にも非常に特殊な立法です.
現行民法733条の「六箇月」に根拠はありません.100日で十分です.
時代遅れの民法の規定に憲法違反の判断が下されることを期待します.

  谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-02-19 01:40 | 人権