弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2015年 05月 09日 ( 1 )

日本赤十字社が献血時の採血が原因の神経損傷事案について900万円支払う内容で大阪地裁にて和解(報道)

毎日新聞「日本赤十字社:献血で後遺症 解決金900万円で和解」(2015年5月8日)は,次のとおり報じました.

「献血をした大阪府の40代男性が、採血で腕の神経が傷つけられて後遺症が残ったとして、日本赤十字社(本社・東京都)に約2400万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こし、日赤が解決金900万円を支払う内容で和解したことが分かった。和解は今年4月14日付。

 訴状などによると、男性は2011年5月、大阪府茨木市内の日赤の施設で献血に参加。採血針を左腕に刺された時に激痛を感じ、痛みを訴えたが看護師は採血を続けたという。男性は痛みが治まらなかったため病院で受診し、「左腕の神経損傷」と診断された。

 男性は精密加工機器メーカーで主に金型のメンテナンス作業をしていたが、しびれが残る左腕での作業が難しくなり、同年10月に退社。日常生活でも左腕が上がらず、不便を強いられたという。

 日赤は当初、治療費や見舞金などを支払ったが13年1月に打ち切った。訴訟では「採血は正常に行われ止血措置もした」などと主張して争ったが、最終的に和解に応じた。日赤は取材に対し、「コメントは差し控える」としている。

 厚生労働省が作成した血液事業報告によると、献血時の採血が原因の神経損傷は、▽09年度188件▽10年度188件▽11年度128件。12年度は約525万人が献血し、121件の神経損傷が報告されている。

 一方、献血が原因となった健康被害を巡る訴訟では、採血針で神経が傷つけられ、後遺症で指が動きにくくなったとして北九州市の女性が日赤を相手に提訴し、04年に日赤側が300万円を支払うことで大阪地裁で和解したケースなどがある。【三上健太郎】」


産経新聞「献血で「腕の神経損傷」 男性と日赤が解決金900万円支払いで和解 大阪地裁」(2015年5月8日)は,次のとおり報じました.

 「献血で腕の神経を傷付けられ、後遺症で退職を余儀なくされたとして、大阪府内の40代男性が日本赤十字社(東京)に約2400万円の損害賠償を求めた訴訟で、日赤が男性側に解決金900万円を支払う内容で、大阪地裁(野田恵司裁判長)で和解したことが8日、分かった。和解は4月14日付。

 訴状によると、男性は平成23年5月、大阪府茨木市内で日赤の献血に協力。献血針を左腕に刺された際に激痛を感じて「痛い」と看護師に訴えたものの、採血は中止されなかった。男性は献血後も痛みが治まらず、受診した病院で「神経損傷」と診断された。

 男性は精密加工機器メーカーに勤めていたが、左腕の痛みやしびれで勤務を続けるのが難しく同年10月に退社。日赤は当初、治療費や見舞金などを支払っていたが、「献血とは無関係の障害」と判断して25年2月以降の支払いをやめた。」


 これは,私が担当した事案ではありませんが,参考になるケースと思います.
 一般に,注射による神経損傷の事案は少なくありませんが,(1)注射時に激痛を訴えたか否か,(2)注射が継続されたか中止されたか,(3)障害が生じた部位から合理的に推認される損傷された神経の部位,(4)神経損傷の継続・拡大,重篤化の原因が注射と相当因果関係があるか,(5)損害の金銭評価等の問題があります.
(1)(2)の事実経過について争いがあって立証が難しいケースもあります.深部にある正中神経が障害されたことが認定できれば,通常深部まで針を刺すことはありませんから,注意義務違反を認定しやすくなります.針が神経にあたり損傷しても,月単位の時間で治癒する人もいますので,当該事案における継続・拡大,重篤化の原因がどこにあるのか,争われます.
 注射針による神経損傷の場合,患者の主訴によって病態を認定することになり,その評価の問題,注射との相当因果関係のある範囲の問題等により,立証となると高い壁があります.
 報道された事案は,40代男性で仕事をやめざるをえなかったという被害事情からすれば,900万円での和解は低額とも言えますが,とことん争うと上級審までいくことも考えられますので,1000万円に近い和解金額は適切でしょう.
 私自身は最近注射による神経損傷事案を取り扱っていませんが,神経損傷の件数は多いので,献血で神経損傷がおきその神経損傷が重篤化した場合は,過失の有無を問わず,一定金額が支払われるようシステムを整備したほうがよいのではないでしょうか.そのような補償制度がないと,いずれ献血する人が少なくなってしまうでしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2015-05-09 01:54 | 医療事故・医療裁判