弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2015年 05月 10日 ( 2 )

胃部レントゲン(バリウム)検査中の落下事故で死亡(報道)

読売新聞「胃のレントゲン検査中、台から落下し女性死亡」(2015年5月9日)は,次のとおり報じました.

「8日午前11時25分頃、群馬県沼田市恩田町で、検診用のレントゲン撮影車で胃のレントゲン検査を受けていたブラジル国籍のアルバイト、マスコ・ロザリナ・ケイコさん(58)が診察台から落下し、頭を診察台と車の壁に挟まれて死亡した。」

台をかなり動かされる検査なので,検査を受ける人は落ちないために手すりをしっかり握ってしがみついなければなりません.60歳近くの女性の握力では,からだを支えきれなかったのでしょう.診察台と車の壁の距離等もふくめ,安全確保に問題はなかったのでしょうか.

ちなみに,握力のない私は1回受けて懲りたので,また放射線被爆線量も大きいので,その後は胃部レントゲン検査は受けずに,より精度が高い胃部内視鏡検査(胃カメラ検査)だけを受けています.

【追記】

一般財団法人全日本労働福祉協会胃部エックス線検査事故調査委員会は,平成27年6月26日,「一般財団法人全日本労働福祉協会胃部エックス線検査事故調査報告書」を公表しました.

「平成27年5月8日に発生した胃部エックス線検診中に受診者が透視台から滑落し死亡した事故
の原因は、個々の技師等の検査における注意不足、協会の健診事業に対する医療安全教育の徹底不足、個別の受診者に応じた対応の徹底不足、ならびに想定外の受診者の身体状況など、いくつかの要因が重なったことが考えられる。
健診事業者が受診者の安全・安心を担保していくことは、最も基本的なことであり、今後上記の諸対策を徹底する必要がある。本委員会としては、本事故の原因を明らかにするととともに再発防止策を提案し、全国の同様業務に従事している方々に対して僅少でもお役に立てることを願っている。」

とのことです.

事故要因は,以下のとおりとのことです.

「(1) 検査者側の要因
① Y技師は受診者の状況の目視、あるいは監視カメラによる監視モニター画面での観察を十分に行わなかった。
② 適切な画像を得るためとはいえ、受診者が体位変換の指示に従わなかった(あるいは従えなかった)ことから受動的に体位変換を繰り返し、受診者を疲労させた可能性がある。
③ 適切な画像を得るために、透視台を頭低位でさらに天板を回旋させて撮影し、結果として受診者の頭部方向への滑落を招いた。
④ 受診者が頭部方向への滑落を防ぐための天板の肩当てを外したまま検査を行った。
⑤ 胃部エックス線検査は診療放射線技師と補助者で行っているが、たまたま事故発生時点には補助者Zは胸部エックス線検査の補助をしていたため、胃部受診者の監視補助が十分でなかった可能性がある。

(2) 受診者側の要因
① 透視台が頭低位で天板を回旋させて撮影が行われた後、受診者が手すりを握っていた手が離れ、頭部が天板頭位端を超えて外部へ滑落した。
② 撮影室内の物音はスピーカーによって操作室に聞こえるようになっていたが、撮影技師は、物音、叫び声などの異常な音を感知していない。
③ 胃部エックス線検査中、受診者は撮影技師の指示による体位変換を自力で行うことが出来ず、2回にわたり技師が撮影室に入り、受診者の体位変換を介助して透視撮影を行った。
④ 検査に臨むA氏の状況は以下のとおり特段の問題はなかった。
A氏は糖尿病で薬物治療中であり、また、肥満(身長145.9cm、体重60kg、BMI28.1)があったが、過去7回にわたり全日本労働福祉協会による定期健康診断を受診し、胃部エックス線検査を受けていた。事故当日の健診では、胃部エックス線検査の約30分前に医師の診察を受けており、特段の異常は指摘されていない。医師の診察後、胸部のレントゲンを終え、胃部エックス線検査を受けた。

(3) 検診車の要因
① 透視台の頭位端と検診車の内壁との間隔は天板の傾斜角度によって拡大、狭小化する構造であった。」

事故防止対策は,以下のとおりです.

「(1) 全日本労働福祉協会の職員及び年間契約職員を対象にした注意
① 医療安全に対する教育の徹底。
② 健診事故防止のための医療安全委員会活動を本部・支部合同で実施し、支部における伝達、教育を徹底する。
③ 医療安全活動の再検討。
各部門からのヒヤリハット報告の提出を徹底することにより情報を共有化し、分析、結果のフ
ィードバックを一層努力して実施する。

(2) 胃部エックス線検査を担当する診療放射線技師への注意
① 毎日の始業点検において天板の肩当て設置を必ず確認する。
② 検査中、監視モニターによる受診者の監視を徹底して行う。
③ 頭低位となる透視台の傾斜角度は-30度以内とし、できれば-20度前後までとする。
④ 高血圧、肥満、糖尿病、意識喪失発作の既往者、その他検査上注意を要すると判断される受診者の検査は一層注意深く行い、頭低位検査はなるべく控える。

(3) 胃部エックス線検査受診者への注意
① 従来から待ち時間を利用して実施している胃部エックス線検査の口頭による注意事項の説明に加え、新たにビデオによる説明を実施し、よく注意して視聴するよう受診者に促す。
② 頭低位の場合は、身体が頭位方向にずり落ちる可能性があるので、手すりを保持することが困難あるいは不可能になった場合は、声を出して技師に知らせるように指導する。

(4) 胃部エックス線撮影装置への設備面の配慮
① 頭低位滑落防止のために、透視台を逆傾斜角度-30度でストッパーを設置する。
② 手すりの滑り止めを補強する。
③ 透視台が頭低位となる傾斜時に天板頭位端と検診車内壁との隙間が広がらないように、内壁の構造を補正する。」



谷直樹

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by medical-law | 2015-05-10 11:22 | 医療事故・医療裁判

ハンセン病市民学会総会・交流集会in東京・駿河〜当事者運動と市民のかかわり〜「バトンをつなごう」

昨日と本日,第11回ハンセン病市民学会総会・交流集会in東京・駿河〜当事者運動と市民のかかわり〜「バトンをつなごう」が開催されました.

毎日新聞「ハンセン病市民学会:「療養所に人権擁護委設置」を決議」(2015年5月9日)は,次のとおり報じました

「ハンセン病を巡る課題を元患者や支援者らが議論する第11回ハンセン病市民学会が9日、東京都内で開かれ、全国13のハンセン病療養所全てに、入所者の人権問題について調査・勧告する第三者機関「人権擁護委員会」(仮称)を設置するよう厚生労働省に求めることを全会一致で決議した。」
「徳田靖之弁護士は「入所者の平均年齢が84歳に迫り、各療養所の自治会は弱体化している。社会の関心も著しく低下した」と述べ、外部の有識者を加えて療養所から独立した人権擁護委の必要性を訴えた。」
「その後のシンポジウムでは、13療養所で唯一、人権擁護委を既に置いている邑久光明(おくこうみょう)園(岡山県瀬戸内市)の青木美憲(よしのり)園長が報告し、認知症が進む入所者に運転免許証を返納してもらう際に委員会の議論が役立ったことを紹介した。」


ハンセン病市民学会のサイトはコチラ

谷直樹


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by medical-law | 2015-05-10 10:31 | 人権