弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2015年 05月 21日 ( 3 )

鳥取県立中央病院,抗がん剤による大腸穿孔についての説明義務違反を認め70万円支払(報道)

毎日新聞 「県立中央病院:患者へ副作用説明せず 70万円損害賠償 /鳥取」(2015年5月20日)は,次のとおり報じました.

「鳥取市の県立中央病院(日野理彦院長)は19日、2014年に鳥取市の男性患者に抗がん剤を投与した際、大腸に穴が開く可能性がある副作用を説明していなかったとして70万円の損害賠償金を支払うと発表した。男性は抗がん剤治療を受けた後、腸に穴が開いたことによる腹膜炎が起きたという。」

上記には抗癌剤名について具体的に書かれていませんので,また私が担当した事案ではありませんので,推測になりますが,例えばベバシズマブ(アバスチン)による消化管穿孔はよく知られています.アバスチンの添付文書には「消化管穿孔があらわれ、死亡に至る例が報告されている。本剤の投与中に、消化管穿孔と診断された場合は、本剤の投与を中止し、適切な処置を行い、以降、本剤を再投与しないこと」と警告されています.
アバスチンの添付文書には消化管穿孔の頻度が0.9%と記載されています.
0.9%でも重大な副作用は説明義務の対象になると考えられます.


谷直樹


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by medical-law | 2015-05-21 04:58 | 医療事故・医療裁判

医師が診断結果に関する意見書を適切に作成しないとして患者が法務局に人権救済を申立て(報道)

毎日新聞「人権救済:「県立中央病院、医師の対応不誠実」 兵庫の男性が申し立て /鳥取」(2015年5月11日)は次のとおり報じました.
 
「県立中央病院(鳥取市)の医師が、患者の求めにもかかわらず診断結果に関する意見書を適切に作成しないのは人権侵害に当たるとして、京都府内のJR西日本の関連会社に勤める兵庫県新温泉町の男性(54)が11日、鳥取地方法務局に人権救済を申し立てた。
 申立書などによると、男性は2014年6〜12月、同病院の医師から複数回、ストレス障害と診断された。男性は職場の上司によ... 」


 医師が診断結果についての意見書を作成するにあたっては,その医師自身の判断,裁量がありますので,医師が適切に作成しないことを裁判で立証するのは一般的にはかなり難しいと思います.
 これに対し,法務局では,人権侵害の疑いのある場合,救済手続を開始し,調査を行った場合,調査結果に基づき人権侵害が認められるかどうかを判断します(認められないという結果になることもありますが)ので,本人で人権救済申立てができます.また,裁判では損害賠償請求となりますが,法務局の救済手続きでは,人権侵害が認められた場合,援助,調整,説示・勧告,要請等の方法をとることができます.


谷直樹


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by medical-law | 2015-05-21 04:19 | 人権

東北の2件の提訴報道に接して

盛岡地裁と仙台地裁への提訴報道に接しました.

毎日新聞「訴訟:中央病院で死亡、県に賠償求める 遺族が提訴 /岩手」(2015年5月20日)は次のとおり報じました.

「県立中央病院(盛岡市上田1)に入院していた盛岡市の女性(当時89歳)が亡くなったのは、病院側が適切な対応をしていなかったためとして、女性の遺族3人が県に慰謝料など計880万円の損害賠償を求める訴訟を、盛岡地裁に起こした。提訴は4月5日付。
 訴状などによると、女性は心臓の筋肉が肥大して血管を圧迫する「肥大型心筋症」などを発症して、2013年4月に同病院に入院... 」


肥大型心筋症の89歳の女性患者の遺族が提訴した訴訟です.
報道で知る限りですが,請求金額等を考えると盛岡に医療ADRがあれば提訴前に解決できた可能性があった事案ではないか,と思いました.

河北新報「「拘束解除で呼吸器外れる」遺族が塩釜の病院提訴」(2015年5月12日)は次のとおり報じました.

「坂総合病院(塩釜市)に入院中だった宮城県利府町の男性=当時(75)=が遷延性意識障害(植物状態)になり死亡したのは、病院が男性の身体拘束を解いたために呼吸器を外してしまったからだとして、遺族3人が11日、病院を運営する宮城厚生協会(多賀城市)に2000万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
 訴えによると、男性は昨年2月上旬、靴擦れによって左足親指が壊死(えし)したため入院。治療中に感染症にかかって呼吸器が必要となったが、呼吸器が外れ、約4カ月間の植物状態を経てことし2月、心拍低下などで死亡した。
 男性の両手には当初、拘束用ミトンが付けられていたが、病院が拘束を解除。男性が自分で呼吸器を外したとみられる。
 遺族側は「病院は当時、『いつまでも拘束するのはかわいそうだった』と説明したが、生命維持に必要な呼吸器は厳格に管理すべきだ」と主張している。」


 これも報道で知る限りですが,拘束を解除した時点で患者が自分で呼吸器を外してしまうことを標準的な医師が予見できたか否かがポイントとなると思います.

【追記】

河北新報「拘束解除と死亡無関係」病院側が反論」(2015年6月19日)は,次のとおり報じました.

「坂総合病院(塩釜市)に入院中だった宮城県利府町の男性=当時(75)=が死亡したのは、病院が男性の身体拘束を解いたために酸素チューブを外したことが原因だとして、遺族3人が病院を運営する宮城厚生協会(多賀城市)に約2010万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、仙台地裁であった。協会は請求の棄却を求めた。
 協会側は「身体拘束は必要な範囲で実施していた。男性は当時、自発呼吸をしており、酸素チューブが外れたことが命に関わる状態につながったとは言えない」と反論した。
 訴えによると、男性は昨年2月上旬、左足親指の壊死(えし)のため入院。入院中、呼吸器が外れ、約4カ月間の遷延性意識障害(植物状態)を経てことし2月、心拍低下などで死亡した。
 遺族側は「病院は男性の身体拘束を解くべきではなかった」と主張している。」


 そもそもの機序,因果関係についても争いがあるのですね.病院は,死亡の原因を何と主張しているのでしょうか.

谷直樹


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by medical-law | 2015-05-21 04:10 | 医療事故・医療裁判