弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2015年 06月 30日 ( 1 )

カンファレンス鑑定

医療訴訟においては,専門的医学知見と事案へのあてはめが重要になります.
多くの場合,原告,被告は,医学文献を提出し,それぞれが依頼した専門家医師の医学意見書を提出し,医学意見書を書いた医師が専門家証人として出廷し,証言します.それで,裁判所が,医学知見と事案へのあてはめができ,判決を書けるようになります.

ただ,それでも,医学知見と事案へのあてはめの立証が十分ではない場合,あるいは形勢不利と感じる側から,裁判所が指定する鑑定人による鑑定(裁判所鑑定)が申請され,裁判所鑑定が行われる場合があります.
裁判所が,鑑定事項の決定,鑑定人の指定等を行う前に,原告,被告がそれぞれ意見を述べ,裁判所が調整し決定しますので,裁判所鑑定実施まで時間が結構かかります.
民訴法上は,鑑定人の意見は,書面でも口頭でもよいので,裁判所によって書面によるところと口頭によるところがあります.
鑑定人は,1人でも複数でもよいのですが,私の経験では複数鑑定が圧倒的に多いです.

東京地方裁判所では,都内の13医科大学の推薦で3人の鑑定人を指定し,出廷いただきお互いの意見を聞きながら口頭による鑑定が行われます.口頭による鑑定の前に簡単な意見書をだしていただいております.
それを「カンファレンス鑑定」と呼んでいます.
鑑定人に対する質問は,鑑定意見の趣旨を明確にするために行われます.どのような事実を前提にしているのか,その意見の根拠は何か,たとえば可能性があるというのはどの程度のことなのか等,具体的に聞かなければ正確な意見の趣旨が明らかにならないこともありますので,詳細に質問することになります.

東京地裁以外にも,横浜地方裁判所,さいたま地方裁判所が,東京地方裁判所方式の「カンファレンス鑑定」を所在尋問の形で行う場合があります.

昨日は,そのカンファレンス鑑定でした.
カンファレンス鑑定の鑑定事項,鑑定人,期日が決まったあとに,原告代理人が交代となり,あらたに原告代理人に就任したため準備は大変でしたし,鑑定事項に本来盛り込むべき事項が盛り込まれていないという問題がありましたが,相代理人と相当の時間をかけ膨大な記録を読みこみ検討しましたし,鑑定人とは別の,個人的に親しい優秀な専門家医師に画像,診療記録を見ていただき,有益なアドバイスをいただいていたこともあり,適切な質問ができたと思っています.鑑定人3名もそれぞれ真摯に答えていたと思います.
なお,昨日のカンファレンス鑑定では,質問の順序は,鑑定の申出をした被告代理人、原告代理人,裁判所の順でした.医療事件に慣れている代理人が原告被告双方に就いている場合は,このほうが円滑で適切なように思います.
また,カンファレンス鑑定が始まった初期のころは,代理人が鑑定人に対し弾劾的になるあまり礼を失した質問が行われるのではないかという心配が裁判所にあったようで,裁判所がほとんどの時間を使って質問することもありましたが,医療事件に慣れた代理人がそのような質問をすることは考えられませんので,昨日のように代理人の質問時間を長めにとっていただくのがよいと思います.

(参考)
民訴法第213条1項  鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する。
民訴法第215条  裁判長は、鑑定人に、書面又は口頭で、意見を述べさせることができる。
2  裁判所は、鑑定人に意見を述べさせた場合において、当該意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、鑑定人に更に意見を述べさせることができる。
民訴法第215条の2  裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問をすることができる。
2  前項の質問は、裁判長、その鑑定の申出をした当事者、他の当事者の順序でする。
3  裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
4  当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。



谷直樹

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by medical-law | 2015-06-30 03:41 | 医療事故・医療裁判