弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2015年 07月 10日 ( 2 )

高血圧患者がベンチプレスで脳出血

ゆかし「高齢者のフィットネスブーム、特に高血圧は筋トレには要注意」(2015年7月9日)は,次のとおり伝えています.

「昨年8月、高血圧の持病がある東京都内の50代後半の女性が、都内のジムでベンチプレスのトレーニング中にろれつが回らなくなり病院に運ばれ、脳出血による右口角下垂と構音障害と診断され入8日間の入院を要した。

 その後も左右のバランスが取れない、小さい文字が書けない、ろれつが回らないなどの後遺症が残っているという。そのため、女性はジムが安全配慮義務に違反しているなどとして、ライザップの運営会社を相手取って、入院治療費や行為障害による逸失利益など約640万円の損害賠償を請求する訴訟を東京地裁に起こしている。」


高血圧患者(収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上)の運動強度は古くて新しい問題です.
 
「高血圧治療ガイドライン2014」は,高血圧患者では運動が推奨される,としています.

「有酸素運動の降圧効果は確立されている。身体活動の増加は血圧低下のみならず,体重,体脂肪,ウエスト周囲長の減少,インスリン感受性や血清脂質の改善が指摘されている。さらに,身体活動の低下は心血管病のリスクを上昇させる。運動療法によって酸素摂取量を増加させることが予後改善に寄与するのかもしれない。したがって,高血圧患者では生活習慣の修正の一つとして運動が推奨される。高血圧などの生活習慣病の予防や治療には速歩のような有酸素運動が優れている。

ここまでは異論はないのですが...

運動強度については論文によって,その評価の尺度が一定していない。エビデンスレベルは高くないが,最大酸素摂取量の50%としている指針が多く,これは自覚的所見から推定するボルグ・スケールでは「ややきつい」程度である。

しかし,米国スポーツ医学協会(ACSM)/AHAの一般人向けの勧告では,強い運動を中等度の運動に交えて行うほうが心血管病リスク減少には有用であると記載されている。

とはいえ,運動強度が強すぎると高血圧患者においては運動中の血圧上昇が顕著で,正常血圧者と異なり予後が悪いという報告もあるので,高血圧患者における激しい運動は慎重に行うべきである。

「運動は定期的に(できれば毎日30分以上)行うことが目標である。一般向けのACSM/AHAの勧告では,少なくとも10分以上の運動で,合計して1日30分を超えればよいとされている。有酸素運動に加えて,レジスタンス運動やストレッチ運動を補助的に組み合わせると,前者は除脂肪体重の増加や骨粗鬆症・腰痛の防止,後者は関節の可動域や機能の向上が期待でき,有用である。最近,レジスタンス運動に降圧効果があるというメタアナリシスが報告されている。


レジスタンス運動とは,筋力トレーニング(筋トレ)のことです.
筋トレといってもいろいろです.
例えば,omronの「かんたん・健康エクササイズ」

http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/exercise/


運動療法の対象者はⅡ度以下の血圧値(Ⅲ度を超える血圧の者は降圧後に運動療法を施行する)で心血管病のない高血圧患者である。リスクの高い患者は事前にメディカルチェックを行い,必要に応じて運動の制限や禁止などの対策を講じる。単に高齢者であるからといって運動を制限すべきではないが,高齢者では特に事前のメディカルチェックは必須である。」
とされています.

また,「減塩・減量・運動・節酒にさらにDASH食を組み合わせると,より降圧の得られることも報告されている。したがって,生活習慣の修正は複合的に行うことが推奨される。なお,生活習慣の修正は幼小児期から行い,高血圧を含めた生活習慣病の予防に努めるべきである。」とされています.


なお,腎機能障害,糖尿病等の人には,DASH(Dietari Approach to Stop Hypertension)食療法はあてはまりません.
最近の若い人は驚くほど健康志向です.
食事に気をつけ,スポーツジムに通っている弁護士が多いです.
私は,先月の健康診断で軽度高血圧でしたので,有酸素運動を行うよう心がけています.
子どもの頃から運動が苦手だった私には,スポーツジムはハードルが高く,入会を躊躇していますが...



谷直樹


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by medical-law | 2015-07-10 22:53 | 日常

東京高裁、伊勢崎市民病院の控訴棄却(報道)

東京新聞「伊勢崎市民病院の医療ミス 市に3600万円 控訴審も賠償命令」 (2015年7月9日)は、次のとおり報じました.

「伊勢崎市民病院でリンパ節を摘出する手術を受けたブラジル国籍の二十代の女性が、医師のミスで左腕が上がらなくなる後遺症を負ったとして、病院を運営する伊勢崎市に約四千百万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は八日、約三千六百万円の支払いを命じた一審判決を支持し、市側の控訴を棄却した。
 大竹たかし裁判長は昨年十二月の一審前橋地裁判決に続き、手術の際、女性の左副神経が誤って切断されたとして、病院側の過失を認定した。
 判決によると、女性は二〇〇九年五月、手術を受けた。別の病院で再手術を受けたが、十分に回復しなかった。
 伊勢崎市民病院は「判決を精査して対応を考えたい」とコメントした。」

 
本件は私が担当したものではありません.
プロゴルファーを目指していた女性が、2009年5月に首のリンパ節の腫れが悪性リンパ腫かを調べるための手術を受けたところ、担当医がリンパ節付近を走る副神経を損傷させ、左腕が上がらない状態になったという、手術ミスの事案です.副神経は、胸鎖乳突筋や僧帽筋を支配する運動性の神経で、副神経が損傷されると腕が水平より挙がらないなどの障害がおきます.報道の件は時間的関係からしても副神経を傷害した原因は手術以外に考えがたく、副神経を傷つけないという注意義務に違反したものと考えられます.この手術ミスの事案で、そもそも控訴は無理だったのではないでしょうか.

 
谷直樹


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by medical-law | 2015-07-10 00:29 | 医療事故・医療裁判