弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2016年 04月 04日 ( 2 )

東京消防庁,「死者のプライバシー」理由に救急記録の交付拒否(報道)

毎日新聞「<東京消防庁>救急記録の交付拒否 不搬送で認知症遺族に」(2016年4月4日)は,次のとおり報じました.

「東京都中野区の路上で倒れているのが見つかりながら救護されず死亡した認知症の男性(当時83歳)の遺族が、男性を救急搬送しなかった東京消防庁に救急記録の写しの提供を求めたところ、「死者のプライバシー」を理由に拒否されていることが分かった。記録の閲覧については4月1日に始めた新制度に基づき認められる見通しだが、全国の20政令市のうち19市の消防部局は写しも提供しており、専門家は「遺族の権利を無視している」と、東京消防庁の対応を厳しく批判している。【銭場裕司】

 ◇「死者のプライバシー」理由に

 男性は2014年8月19日、横浜市のデイサービス施設から行方不明になり、同21日にJR中野駅近くの路上で倒れているのが見つかったものの、駆けつけた中野消防署の救急隊は搬送せず、同23日に近くの公園で死亡した。東京消防庁は「搬送の必要性はあったが本人が拒否した」として、本人署名の同意書を取り、搬送しなかったことが判明している。

 男性の遺族は救急記録の閲覧や写しの提供を求めたが、東京消防庁は「死者のプライバシーの保護」などを理由に拒否し、不搬送の根拠とした同意書すら見せなかった。

 このため男性の長女(52)は個人情報保護条例に基づき開示請求したが、同庁は「あなた(長女)を本人とする情報ではない」として15年7月に却下。却下取り消し請求も東京都が同10月に棄却した。

 一方、死者の個人情報の提供について議論していた都情報公開・個人情報保護審議会は14年10月、請求対象者を「配偶者、子、父母」などとし、情報提供の方法を「口頭による説明、閲覧または写しの交付」とするモデル要領をまとめた。この要領と男性の案件などを受け、東京消防庁は今年3月に「死者に関する個人情報の提供基準」を作成し、4月から運用を始めた。同基準はモデル要領と同様に配偶者と子、父母らを請求対象者としたが、「写しの交付」は認めなかった。

 毎日新聞が全国20政令市の消防部局に死者の救急記録の写しを遺族に提供できるかを尋ねたところ、相模原のみ「ほとんどできない」とし、他の19市は「できる」または「おおむねできる」と回答した。過去約3年の写しの提供は名古屋26件、京都17件などで、相模原と「未把握」の横浜を除く18市で実績があった。

 東京消防庁の担当者は「他の自治体がいかように扱おうとも死者のプライバシーは守るものだという認識がある。提供した紙が第三者に渡れば死者のプライバシーを傷つけることが想定される」と説明。男性の長女は「父が最後に書いた署名を見たかった。ようやく閲覧できるようにはなったが、なぜ写しを提供できないのか」と憤っている。

 ◇処置適否判断に写し提供不可欠

 救急記録の項目は多岐にわたる上、対象者の容体や処置内容を専門用語で書いたものもあり、遺族による閲覧だけでは処置の適否などを判断できない可能性もある。遺族への救急記録開示を巡り、2012年に都に改善を求めた医療問題弁護団副幹事長の五十嵐裕美弁護士は「遺族は身近な人の最期の状況を知る権利があり、医師のカルテは国の指針に基づき提供されている」と指摘。「他の自治体は対応しているのに、都が死者のプライバシーを理由に提供しないのはおかしい。閲覧だけでは書き写しても原本と同じものとは確認できず、裁判などにも使えない」と批判している。」


死者のプライバシーを盾に遺族の知る権利を侵害している東京消防庁の取り扱いについては,司法による是正を検討してもよいのではないでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2016-04-04 09:32

山梨県都留市の診療所、前立腺がん検査用の針を使い回し

朝日新聞「前立腺がん検査用の針、洗浄して使い回す 山梨の診療所」(2016年4月2日)は、次のとおり報じました.

「山梨県都留市の診療所「東桂(ひがしかつら)メディカルクリニック」(A院長)が、前立腺がんの検査で用いる使い捨ての生検針を、複数の患者に洗浄したのち使い回し、県の指導後も使い回しの事実を多くの患者に伝えていないことがわかった。生検針の使い回しには、ウイルスや細菌などの病原体が身体に入り引き起こされる、様々な感染症のリスクがある。県は再調査を検討している。

 生検針は先端が2重の筒状で、くぼみがある。肛門(こうもん)から挿入し前立腺の組織を切り取るため出血することもある。製品の説明書で「再使用不可」とされている単回使用器材で、使い回しは禁止されている。厚生労働省の通知でも不適切とされている。

 山梨県は2013年7月の立ち入り調査で生検針の使い回しの実態を把握。診療所に対して、再使用を行ったすべての患者や家族に説明と謝罪をし、血液検査するよう指導した。診療所は同年12月、指摘のすべてを実施したという内容の改善報告書を、県に提出。再使用は診療所を開設した04年から13年3月まで行われ、163人が対象とされている。

 だが、生検針による検査を受けた患者のうち、今年2月時点で朝日新聞が接触できた28人は、使い回しに関する説明や謝罪はこれまで一切受けていないと話している。県内在住の男性患者(64)は、「検査後も何度も院長の診察を受けているのに、一切そんな話は出ていない。裏切られた気持ちでいっぱいだ」と憤る。」


診療所にとっては使い回しをしたほうが利潤があがるのでしょうが、患者にとっては感染の危険があります.
院長は、東京の4つの一流病院に勤務した経歴があり、違法性の認識がなかったはずはありません
「当クリニックは、今回の件を肝に銘じ、今後、厚労省及び保健所等の指導に従い、なお一層安全に十分な注意を払って医療を続けて参ります。」とのことですが、このような医師には、業務停止の処分ができないものでしょうか.
院長はもちろん、診療所の看護師も、不適切な行為であることは認識していたのではないでしょうか.看護師が不適切な行為と知りながら院長の指示にしたがっていたとすれば、それも問題でしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2016-04-04 00:40 | 医療事故・医療裁判