弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2016年 04月 27日 ( 1 )

松江地判平成28年4月25日,薬の過量投与によるせん妄を認め,60万円の慰謝料支払いを命じる

読売新聞「せき止め薬10倍投与、病院に60万支払い命令」(2016年4月26日)は次のとおり報じました.

 「2012年に島根県東部の80歳代の男性が肺がんの治療で松江医療センター(松江市)に入院中、投薬ミスで抗がん剤治療が受けられず、死亡時期が早まったなどとして、遺族が病院を運営する独立行政法人・国立病院機構に約2640万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、松江地裁であった。

 杉山順一裁判長は、投薬ミスと死亡などとの因果関係は認めなかったが、投薬ミスで男性が精神的苦痛を受けたとして、機構側に慰謝料60万円の支払いを命じた。

 判決などによると、男性は12年7月に入院中、薬剤師らのミスで適正量の10倍のせき止め薬を20日間近く投与された。その後、男性は全身の状態が悪化し、予定されていた抗がん剤治療が中止され、同年12月、肺がんのため82歳で死亡した。機構側は投薬ミスの事実は認めていた。

 杉山裁判長は判決で、薬の過剰投与と治療の中止や死亡時期が早まったことなどとの関係性を否定した。一方で、薬の過剰投与が原因で幻覚などが生じる「せん妄」状態になり、看護師らに体を拘束されるなど精神的な苦痛を受けたと認定した。

 判決について松江医療センターの上甲尚史事務部長は「(控訴は)判決文を見て相談したい」とし、原告側の代理人弁護士は「控訴は原告と検討したい」と話した。」


これは,私が担当した事件ではありません.

「薬の過剰投与」と「体調悪化」の因果関係が立証できないと,「体調悪化」と「抗癌剤治療の中止」との因果関係,「抗癌剤治療の中止」と「死亡時期が早まったこと」との因果関係を立証しても,薬の過剰投与と死亡との因果関係が否定されます.したがって,この判決は,一般的に「抗癌剤治療の中止」と死亡との因果関係を否定するものではありません.(抗癌剤の効果については統計に基づく報告がありますので,「抗癌剤治療の中止」と死亡との因果関係は一般に認められます.)

薬の過剰投与が原因で「せん妄」状態になり、看護師らに体を拘束されるなど精神的な苦痛を受けた,として60万円の賠償を認めたことは,重要です.
薬の過量投与が過失にあたること,薬の過量投与によってせん妄が生じたこと,及びせん妄によって拘束されたことを立証できれば,賠償責任を追及することができることが示されたからです.


谷直樹


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by medical-law | 2016-04-27 02:45 | 医療事故・医療裁判