弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2016年 10月 05日 ( 1 )

厚生労働省,一般財団法人化学及血清療法研究所に対し日本脳炎ワクチンについて報告命令等

厚生労働省は、9月6日及び7日に一般財団法人化学及血清療法研究所に無通告で立入検査を行い、その結果を精査した結果、エンセバック皮下注用(一般的名称:乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)について、製造販売承認書の記載と一部異なる製造を行っていたことが確認されたため、10月4日、般財団法人化学及血清療法研究所に対し、報告命令等を行いました

「(1)医薬品医療機器法第69条第1項の規定に基づき、別紙1及び別紙2のとおり報告を命じました。
(2)医薬品医療機器法第72条第2項の規定に基づき、改善命令を行うため、行政手続法第13条第1項第2号の規定に基づき、別紙3のとおり弁明の機会の付与として弁明通知書を発出しました。
(3)遺伝子組換え生物の不適切な取扱いについて、別紙4のとおり指導を行いました。 1)医薬品医療機器法第69条第1項の規定に基づき、報告を命じました。」

別紙1の報告事項は次のとおりです.
「貴所が製造販売しているエンセバック皮下注用(一般的名称:乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン。以下「本件製品」という。)について、次の事項について調査し、結果を報告すること。
1. セル・バンク及びウイルス・バンクの作製において、製造販売承認書に記載された一部の病原体不活化処理工程を経ていない原材料を用いた製造(以下「本件行為」という。)行われた経緯について、本件製品の開発の時点まで遡って調査し、その結果を報告すること。
2. 貴所内において本件行為が発覚又は認識されるに至った経緯及び認識後の貴所の対応に関して、文書、電子メール等の客観的証拠とともに時系列に沿った形で整理して報告すること。特に以下の各項目については当該報告の中で明らかにすること。
(1) 本件行為に関し、昨年9月(昨年9月1日付けで報告命令を発出し報告を求めた後同9月18 日に立入検査を行った)以降製造販売承認事項の一部変更承認(本年2月26 日)までの間、
(ア)本件行為に関し、担当者及び担当部署が認識して以降、どのような経緯を経て貴所として組織的に本件行為を認識するに至ったのか。
(イ)貴所として組織的に本件行為を認識して以降、製造販売承認事項の一部変更承認申請が必要でないと誰がどの時点で判断したのか。
(2) 本件行為に関し、本年2月26 日以降これまでの間、
(ア)担当者及び担当部署がいつ再認識し、その後、どのような経緯を経て貴所として組織的に本件行為を認識するに至ったのか。
(イ)貴所として組織的に本件行為を認識して以降、製造販売承認事項の一部変更承認申請が必要であることを誰がどの時点で認識したのか。
(ウ)上記(1)の後、貴所内において組織的にどのような経緯をたどり、当該製造販売承認事項の一部変更承認申請について厚生労働省に相談するに至ったのか。
3. 本件行為についての、上記2.(1)及び(2)のそれぞれについて、役員(現役員に限らず本件製品の開発以降の全ての役員)の関与等を網羅的に調査し、報告すること(具体的には以下の各項目)。
(1) 各役員はいつ知ったのか。
(2) どの役員がいつどのような報告を受けたのか。
(3) どの役員がいつどのような責任においてどのような判断をしたのか。
(4) どの役員がいつどのような指示をしたのか。
(5) 各役員について貴所のコンプライアンス規定に反する行為はなかったのか。

以上の報告にあたっては、特に証拠の添付を求めている事項以外の事項についても、その報告の根拠となる資料を添付すること。

なお、貴所においては、長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが、貴所が製造している血液製剤及びワクチンの中には、国民の健康確保や医療に不可欠なものが含まれていたこと、貴所自ら事業譲渡の交渉を行い、合意を目指すと意思表明していたこと等を総合的に勘案し、平成28 年1月8日付け業務停止命令により、同年1月18 日から同年5月6日までの過去最長の110 日間にわたり第一種医薬品製造販売業の許可等に係る業務を停止するよう命じた。以上のような経緯にもかかわらず、今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。貴所において、本報告命令を踏まえ、また過去の経緯も踏まえた迅速かつ誠実な対応がとられず、このような事態が続く場合には、医薬品製造販売業許可の取消処分に進展する可能性があること。」

別紙2の報告事項は次のとおりです.
「貴所が製造販売及び製造している下記の各製品(以下「本件各製品」という。)について、
次の事項について調査し、結果を報告すること。
1.平成28 年10 月4日時点において、製造販売承認書の内容とは異なる製造を行っている事実(以下「承認書と製造実態の齟齬」という。)の有無について本件各製品を網羅的に調査し、調査の結果を報告すること。なお、調査における調査手法及び調査体制についても、併せて報告すること。
2.1.において承認書と製造実態の齟齬が確認された場合、それぞれの製品ごとにその根本的な原因を分析し、報告すること。
以上の報告に当たっては、その報告の根拠となる資料を添付すること。
なお、貴所においては、長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが、貴所が製造している血液製剤及びワクチンの中には、国民の健康確保や医療に不可欠なものが含まれていたこと、貴所自ら事業譲渡の交渉を行い、合意を目指すと意思表明していたこと等を総合的に勘案し、平成28 年1月8日付け業務停止命令により、同年1月18 日から同年5月6日までの過去最長の110 日間にわたり第一種医薬品製造販売業の許可等に係る業務を停止するよう命じた。以上のような経緯にもかかわらず、今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。貴所において、本報告命令を踏まえ、また過去の経緯も踏まえた迅速かつ誠実な対応がとられず、このような事態が続く場合には、医薬品製造販売業許可の取消処分に進展する可能性があること。

乾燥濃縮人活性化プロテインC
乾燥スルホ化人免疫グロブリン
乾燥ペプシン処理人免疫グロブリン
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅷ因子
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅸ因子
乾燥濃縮人アンチトロンビンⅢ
人免疫グロブリン
生体組織接着剤
ヒスタミン加人免疫グロブリン(乾燥)
トロンビン
人血清アルブミン
抗HBs 人免疫グロブリン(抗HBs 抗体)
抗破傷風人免疫グロブリン(破傷風抗毒素)
インフルエンザHAワクチン
沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン
組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)
乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン
乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン
乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン
乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチン(H5N1株)
乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチン(プロトタイプ)
沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)
乾燥細胞培養痘そうワクチン
沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン
沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド
沈降破傷風トキソイド
乾燥はぶ抗毒素
乾燥まむし抗毒素
乾燥ガスえそウマ抗毒素
乾燥ジフテリアウマ抗毒素
乾燥ボツリヌスウマ抗毒素
乾燥ボツリヌスウマ抗毒素(E型)
ペントスタチン
メカセルミン(遺伝子組換え)」


別紙3の違反事実等は次のとおりです.
「2.違反事実
エンセバック皮下注用(一般的名称:乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)について、セル・バンク及びウイルス・バンクの作製において、製造販売承認書に記載された一部の病原体不活化処理工程を経ていない原材料を使用し、かつ、これにより生物由来原料基準に適合しないおそれのある製品を製造したこと。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35 年法律第145 号。以下「法」という。)第56 条第3号及び第68条の20 違反)

3.予定される処分の内容
別添3参照(第一種医薬品製造販売業及び医薬品製造業の許可に係る製造販売業務及び製造業務に対する改善命令(法第72 条第2項))
4.その他
「3.予定される処分の内容」を踏まえ、同(1)から(3)までについての是正措置及び再発防止策に係る改善計画を策定して、本命令発出後1か月以内に、厚生労働省に提出すること。また、同(1)については、本命令発出後2週間以内に、承認書と製造実態の齟齬を解消するための製造販売承認事項の一部変更に係る承認申請を行い、その対応状況を含めた是正措置の内容を改善計画に盛り込むこと。
なお、策定した改善計画に則り、所要の組織体制及び運営体制の構築を進めるに際しては、厚生労働省と十分な連絡・相談を行うこと。
おって、本命令に基づく業務改善計画については、公表する可能性があることを申し添える。
また、貴所においては、長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが、貴所が製造している血液製剤及びワクチンの中には、国民の健康確保や医療に不可欠なものが含まれていたこと、貴所自ら事業譲渡の交渉を行い、合意を目指すと意思表明していたこと等を総合的に勘案し、平成28 年1月8日付け業務停止命令により、同年1月18 日から同年5月6日までの過去最長の110 日間にわたり第一種医薬品製造販売業の許可等に係る業務を停止するよう命じた。以上のような経緯にもかかわらず、今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。貴所において、本改善命令を踏まえ、また過去の経緯も踏まえた迅速かつ誠実な対応がとられず、このような事態が続く場合には、医薬品製造販売業許可の取消処分に進展する可能性があること。」

別紙4の厳重注意内容等は次のとおりです.
「2.厳重注意内容遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97 号。以下「カルタヘナ法」という。)に基づく遺伝子組換え生物等の使用等において、不適切な対応があったため、ここに厳重に注意する。
今後、貴所より平成28 年9月5日付けで提出された文書に記載された再発防止策を徹底し、再びこのようなことが生じることのないよう、十分に注意されたい。
3.厳重注意を行う理由
遺伝子組換え大腸菌及び酵母(以下「組換え体」という。)を使用する施設の配管について、厚生労働省への確認申請資料と異なる配管材質を使用していたこと、組換え体が付着している可能性のある部品の洗浄水の配管が、不活化設備を経由しない移送タンクにつながっていたことが確認された。これらはカルタヘナ法の遵守の観点から不適切であるため、貴所に対して、再発防止のための措置を徹底するよう文書による厳重注意
行う。」


厚生労働省は,長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが,特別に業務停止ですませたにもかかわらず,今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。と指摘しています.
これは化学及血清療法研究所の体質なのでしょうか.

【追記】

厚生労働省は,10月7日,「一般財団法人化学及血清療法研究所による10月4日付のプレスリリースについて」を発表しました.

「厚生労働省では、10月4日に一般財団法人化学及血清療法研究所に対し、エンセバック皮下注用について製造販売承認書の記載と一部異なる製造を行っていた事実に係る報告命令の行政処分を行ったほか、業務改善命令に係る弁明の機会の付与を行いました。
  これを受けて、同日付で一般財団法人化学及血清療法研究所が同所ホームページ上に掲載したプレスリリースにおいては、厚生労働省の事実認識が誤っているかの如き印象を与える表現がありますが、厚生労働省の認識とは大きく異なるものでありますのでお知らせいたします。」





谷直樹


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by medical-law | 2016-10-05 11:49 | コンプライアンス