弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2016年 12月 10日 ( 1 )

高知地判平成28年12月9日,胎児心拍悪化にもかかわらず帝王切開に着手しなかった件で約1億8000万円賠償命令

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朝日新聞「出産時の過失で子に障害、病院側に1億8千万円賠償命令」(2016年12月9日)は,次のとおり報じました.


「生まれたばかりの乳児が脳性まひになったのは、医師らの過失だったとして、両親らが高知赤十字病院(高知市)を運営する日本赤十字社に介護費用など約2億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、高知地裁であった。石丸将利裁判長は「帝王切開などに着手していれば、障害を負わなかったと推認できる」とし、約1億8千万円の支払いを命じた。

 判決によると、母親は数年前、高知赤十字病院の分娩(ぶんべん)室に入室。その際、担当医は胎児の心拍数などから低酸素状態が悪化していることを認識できたが、帝王切開などは検討せず、そのまま陣痛促進薬による分娩を続けた。判決は「出産時の過失が原因で生じた後遺障害であることから、母親の精神的苦痛は特に強い」と指摘した。

 判決を受け、両親は弁護士を通じ、「親の責任を少しは果たすことができた。二度とこのような医療過誤が起きないようにしていただきたい」とコメント。高知赤十字病院は「原告側のプライバシーがあるので、コメントは差し控える。控訴するかは未定」としている。」


産経新聞「出産で重い後遺症、病院側に1億8千万円賠償命令 高知地裁」(2016年12月9日)は,次のとおり報じました.


「高知赤十字病院(高知市)で生まれた子どもに重い脳性まひが残ったのは、医師らによる分娩時のミスが原因だったとして、高知県内に住む本人と両親が運営元の日本赤十字社に計2億円余りの損害賠償を求めた訴訟の判決で、高知地裁は9日、1億8千万円余りの支払いを命じた。

 石丸将利裁判長は、医師は出産直前のデータから子どもが低酸素の状態にあり、悪化していることを認識できたと指摘。自然分娩を継続した場合は脳性まひなどの後遺症が生じることも予見可能で、帝王切開などの検討、実施をしなかった過失があったと判断した。

 その上で、子どもに対しては将来にわたって必要となる介護関連費用のほか、逸失利益や慰謝料など計約1億7400万円を、両親には慰謝料計770万円を支払うべきだと結論付けた。

 原告側の代理人弁護士によると、子どもは約4年前に高知赤十字病院で出生。現在は家族らが在宅介護している。」



この報道の件は,私が担当したものではありませんが,産科事件は,私もけっこう担当しています,.
産科医療補償ができてから,3000万円の補償が支払われるようになり,原因分析が検討されるようになったことはよいのですが,原因分析調査報告書の記載がときに因果関係判断を難しくしていることがあります.
たとえば,帝王切開の遅れがなければどうであったか,という仮定の判断については,産科医学的判断からは不明であるとされたとしも,産科医学的判断がそのまま法的判断である因果関係判断に直結するものではありません.その意味で,帝王切開に着手したかったことと結果との間の因果関係を認めたこの判決は,正しく因果関係を認定したものと思います.
ちなみに,石丸将利判事は私の同期です.司法修習49期の判事も裁判長に補されるようになってきています.
本件が判例雑誌等に掲載されたら,丁寧に読んでみたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2016-12-10 11:40 | 医療事故・医療裁判