弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2017年 01月 19日 ( 4 )

日弁連,AV出演拒否の女性に対する賠償請求提訴の代理人弁護士懲戒審査相当(報道)

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産経新聞「提訴の弁護士「懲戒審査相当」 AV出演拒否で女性に賠償請求 日弁連異例の決定 「正当な活動」反論も」(2017年1月19日)は次のとり報じました.

「アダルトビデオ(AV)出演を拒否した20代の女性に所属事務所が約2400万円の損害賠償を求めた訴訟をめぐり、日本弁護士連合会(日弁連)が、所属事務所の代理人を務めた60代の男性弁護士について「提訴は問題だった」として、「懲戒審査相当」の決定をしていたことが18日、関係者への取材で分かった。弁護士は依頼者の利益を代弁する職責を持つため、提訴を理由に懲戒審査に付されるのは異例だという。

 確定判決によると、女性は「タレントになれる」と18歳でスカウトされ、事務所と契約。その後、AV出演を求められ、拒否すると事務所から「違約金を支払え」などと脅された。女性が契約解除を求めると、事務所は男性弁護士を代理人として損害賠償訴訟を東京地裁に起こした。

 しかし平成27年9月の1審判決は「事務所は高額の違約金を盾にAV出演を迫った」と指摘。「女性には契約を解除するやむを得ない事情があった」として請求を退けた。事務所側は控訴せず、判決は確定した。

 この報道を知った東京都の男性が27年10月、「提訴は女性を恫喝(どうかつ)したAV出演強制を助長する行為で、弁護士の品位に反する」として、男性弁護士の懲戒を所属先の第2東京弁護士会(2弁)に請求した。請求した男性は女性や男性弁護士と面識はないという。

2弁の綱紀委員会は28年3月、「提訴は正当で、品位に反するとは言えない」として懲戒審査に付さないことを決定。男性は日弁連に異議を申し立てた。

 日弁連の綱紀委は28年12月、「訴訟活動は弁護士の本質的職務で、提訴が懲戒理由とされるのは極めて例外的な場合に限られるべきだ」としつつも、(1)提訴はこの女性や同様の立場にいる女性にAV出演を強制する行為とみなされる恐れがある(2)請求額の妥当性や、提訴が女性の心理に与える圧力などを十分に検討していない-などとも指摘。

 「訴えの正当性がないことを知りながら提訴するなどの『不当訴訟』とまでは言えないものの、提訴や訴訟内容に問題がなかったとは言えない」として2弁の決定を取り消した。このため2弁の懲戒委員会は今年1月、懲戒審査を始めた。

「男性弁護士は取材に「日弁連の決定は異例で納得できない。正当な訴訟活動で懲戒されれば弁護士全体の萎縮につながる。懲戒委で正当性を訴える」と話した。(小野田雄一)」



2弁(第二東京弁護士会)と日弁連(日本弁護士連合会)の考えが分かれたことは、この問題が微妙なことを示しています.
反社会的勢力に所属する被告人を弁護するのは弁護士として正当な活動ですが、それとは違い、代理人として活動するには一定の限界があると思います.
いわゆる「不当訴訟」でなければ「正当な訴訟活動」であるとはただちに言えないと思います.
弁護士職務基本規程31条は,「違法な事件」でもなく,「不当な事件」でもなく,「明らかに不当な事件」を受任してはならない,としています。
「明らかに不当な事件」とは何かが問題ですが,「不当訴訟」は「明らかに不当な事件」ですが,「明らかに不当な事件」は「不当訴訟」に限らないと考えます.
普通の弁護士の倫理観からするとこの損害賠償請求訴訟事件を受任することには相当に強い弁護士倫理的抵抗感があると思われること(報道に接したとき,私は。こんな事件を受ける弁護士がいることに驚きました.)から,アダルトビデオ(AV)出演を拒否した場合の損害賠償を請求することは,「明らかに不当な目的」にあたるのではないか,と思います.仮に「明らかに不当な目的」と言えなくても,手段方法において「明らかに不当」と言えるのではないか,と思います.私の全くの個人的意見ですが,報道の件は「明らかに不当な事件」の受任として31条違反にあたると考えます.
また,「品位を失うべき非行」についても,最近は広く解釈されていると思います.
2弁(第二東京弁護士会)の最終結論を注目したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-19 02:31 | 弁護士会

神奈川県弁護士会人権賞はハンセン病元患者石山春平氏と難民外国人支援の医師山村淳平氏へ

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「第21回神奈川県弁護士会人権賞」の贈呈式は、2017年1月21日(土)に行われます.

神奈川県弁護士会によれば、ハンセン病元患者の石山春平氏の受賞理由は以下のとおりです

「1936年に出生し、小学校6年生の時にハンセン病と診断され、1952年に療養所に強制入院させられた。1968年に社会復帰後、ハンセン病の回復者としてハンセン病の差別・偏見に対して実名で社会に訴える講演活動等を行い、川崎市で地域の障がい者活動のリーダーとしても活躍してきた。」

港町診療所の医師山村淳平氏の受賞理由は、以下のとおりです.

「医師として健康保険に加入していない外国人患者の診察に携わる中、在日外国人の人権侵害を認識し、強制送還された外国人を訪ねて証言を聞き取るなどして、入国管理局での長期収容、暴行、強制送還の実態などを明らかにした。その他、在日ビルマ人支援や、在留資格のない外国人の取締強化による人権侵害の調査などを行い、在日外国人を通した日本社会のあり方に問題を投げかけている。」

大変すばらしい選出です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-19 02:17 | 人権

歯科医が歯を削る際に使う医療器具を交換や滅菌処理をせずに使い回すケースがある(報道)

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佐賀新聞「歯科器具使い回し 国は交換、滅菌指導 感染対策コスト、手間省く?」(2017年1月16日)は次のとおり報じました.
 
「歯を削る際に使う医療器具を、歯科医師が使い回すケースがある。佐賀県医務課によると、不十分な滅菌処理が原因で院内感染が発生した事例は報告されていないものの、患者ごとに交換や滅菌処理をするように国は通達を出している。県歯科医師会も指導しているが、コストや手間を省く現場があるようだ。

 交換や滅菌処理をせずに使い回される事例があるのは、ドリルの持ち手部分の「ハンドピース」といわれる器具。厚生労働省は2014年6月、院内感染対策の徹底を図るため、「患者ごとに交換し、オートクレーブ(高圧蒸気)滅菌をすることを強く勧める」という通達を出している。

 県西部のある歯科医師は「都市部では滅菌が常識」とした上で、県内で複数の医院に勤務した経験がある歯科衛生士や、患者の話をもとに「佐賀では滅菌されていないケースが少なくない」と問題視する。5年に1度の立ち入り検査を担当する保健福祉事務所職員の一人も「聞き取りを担当した医療機関の約半数で適切な滅菌処理をしていない」と感じている。

 国立感染症研究所(東京都)細菌第一部の泉福英信室長の研究チームが14年、佐賀県を含まない複数の県の3152歯科医療機関を対象に実施した調査では、回答した891施設のうち「患者ごとに必ず交換」と答えたのは34%。一方、「交換していない」「時々交換」は66%に上った。

 泉福室長は別の調査結果も踏まえ、適切な滅菌をしていない医療機関は相当数に上るとみている。その上で「グローバル化でさまざまな感染症が国外から入ってきており、院内感染が今後も起きないとは言い切れない」と注意を促す。

 佐賀県東部の歯科医師の一人は、使い回す理由について「コストや手間が大変だからでは」と推測する。自身の医院では、高圧蒸気や滅菌用ガスで滅菌する機器を5台導入し、ハンドピースも約40本用意しているが、「正直、経済的な負担は大きい」と明かす。

 県医務課は「適切な処理をしていない歯科医師がいることは把握してる」とした上で、「指導しても、罰則を伴うような法律や規定はなく、業界のモラルに任せるしかない」と話す。

 県歯科医師会も問題視しているものの、会員への詳しい調査は実施しておらず「正確な実態は分からない」という。ただ、院内感染を防ぐ対策を記した冊子を会員に配布したり、定期的な講習会で滅菌処理の徹底を呼び掛けたりしており、林田俊彦理事は「一層の徹底を求めたい」と話している。」



これは佐賀県に限った問題ではないでしょう.
罰則を設けないと順守されないのでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-19 01:49 | 医療

後期研修を拒まれた医師が医療法人徳洲会と研修担当の医師2人を提訴(報道)

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朝日新聞「出産への配慮なく研修継続できず」女性が徳洲会を提訴」(2017年1月18日)は、次のとおり報じました.

 「出産への配慮がなく、研修医を続けられなかったとして、医師免許を持つ大阪府内の女性(31)が医療法人徳洲会と研修担当の医師2人に計3777万円の賠償を求め、大阪地裁に提訴した。18日に第1回口頭弁論があり、法人側は請求棄却を求めた。

 訴状によると、女性は関西にある徳洲会系列の病院で2014年4月から2年間の予定で初期研修に入った。その後、15年5月の第2子出産の前後に約3カ月休業し、2カ月遅れの16年5月末に研修を終えた。

 その後、専門医の資格取得のため、後期研修を希望したが、徳洲会側から特段の説明なく受け入れを拒まれたという。・・・」


前期研修医は、後期も同じ病院に勤務するとは限りません.
研修医の希望と医療機関の希望とのマッチング(医師臨床研修マッチング)で採用が決まります.都市部の人気病院は研修医の希望が多く、そうでない病院は希望が少ない、という傾向になります.
ただ、医師不足解消のためには、ワークライフバランスの実現が重要です.
報道の件は、判決となれば後期研修医採用についての裁判所の判断を示す先例となるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-19 00:54 | 人権