弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2017年 03月 15日 ( 2 )

京都府立医科大学附属病院と虚偽診断書作成罪の成否~BKウイルス腎炎の併発の事実の有無~

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京都新聞「収監逃れ、疑惑解明遠く 京都府立医大強制捜査1ヵ月」(2017年03月14日)は,次のとおり報じました.


「指定暴力団A組系B一家(大津市)のC受刑者(60)は2014年7月当時は公判中で、腎臓疾患で人工透析を受け、保釈されていた。府立医大付属病院によると、同月に生体腎移植を受けた。D院長や講師はC受刑者の病状について、判決確定後の15年8月、検察庁からの照会に対し、腎疾患で「拘禁に耐えられない」と病院長名で回答書を作成し、提出した。


 京都新聞社が入手したこの回答書によると、検察側は、病名や治療状況、入院の必要性など13項目について質問している。病院側は病名を「移植腎拒絶反応」とし、拘禁に耐えられない理由に「BKウイルス腎炎の併発で、免疫抑制療法の厳重な調整を継続する必要があり、改善に2年を要する」などと記載。治療に必要なものとして、免疫抑制剤の血中濃度の測定装置や、血中・尿中ウイルスの定量検査などを挙げている。


 法務省は、C受刑者が収監された大阪刑務所など、全国の刑務所など矯正施設のうち約10カ所で人工透析治療装置を設置。腎疾患患者も収監しており、「病態によるが、移植患者だから収監できない、ということはない」としている。

 D院長は会見で、C受刑者が移植後約1年で入院した際、血中クレアチニン(アミノ酸の一種)の値が100ミリリットル当たり1・06ミリグラムから1・17ミリグラムに上昇したとのデータを示し、感染症の危険性を指摘。「テレビなどで想像し、衛生状態の不確かな刑事施設では感染症にかかる可能性が高いと考えた」と説明した。院長の代理人弁護士によると、収容施設の設備環境や診察態勢の詳細な説明は検察側からはなかったという。」



報道の件は,私が担当している案件ではありません.


結核の集団感染は,学校でも事業所でもときどき起きていましたが,2015年3月1日に,NHKが「札幌刑務所などで結核の集団感染」を報じていました.そのようなテレビを見て刑事施設では感染症にかかる可能性が高いと考えたのかもしれません.
ただ,免疫抑制薬の使用量が多い移植後3ヶ月以内がとくに感染症に注意を要する時期です,
それ以降は,一生,血中・尿中ウイルスの定量検査を行い,血中濃度を測定してカルシニューリン阻害剤を必要最小限に調整していきます.それは,刑務所に収容してもできることではないでしょうか.(そうでないと,移植を受けた人を刑務所に収容することができなくなります.)


2年とした理由は,報道からすると,「BKウイルス腎炎の併発」のようです.
BKウイルス自体は多くの人がもっており,免疫抑制薬の使用により活性化することがあり,BKウイルス腎炎を発症すると治療は困難です.
もし,BKウイルス腎炎併発が真実であれば,虚偽診断書作成罪は成立しないでしょう.
もし,BKウイルス腎炎併発が虚偽であれば,虚偽診断書作成罪の成立が問われ得るでしょう.


血中クレアチニン値の基準値の成人男性0.66~1.13 mg/dlなどとされており,本件の1.17 mg/dlはそれを越えていますが,軽度です.血中クレアチニン値は,筋肉量などによって個人差があり,食事によっても左右されます.1.06 mg/dlが1.17 mg/dlに上昇したことだけでは腎炎の疑いをもつことはできてもBKウイルス腎炎と診断はできないでしょう.
そもそも,BKウイルスの量は,診断当時どれくらいで推移していたのでしょうか.
診断から2年たたない2017年2月14日に大阪刑務所に収容されたそうですが,BKウイルス腎炎治療はどのように行われ,BKウイルスの量は,診断当時からどのように変化し,BKウイルス腎炎はどうなっていたのでしょうか.病態が改善し収容可能となった可能性も考えられます.医学的に厳正な調査が必要でしょう.


なお,学長が学長室でC総長と会い先斗町と祇園で接待を受けていたことが診断書の記載に影響した可能性も疑われますが、診断書の内容が虚偽でなければ、虚偽診断書作成罪は成立しません.


指定暴力団A組系B一家のC総長は、京都市に本部を置く指定暴力団E会の四代目組長の長男で大学を卒業し民族系金融機関に就職しB一家を起こした人で,その影響力が大きなことが推測できますが、犯罪構成要件は厳正に判断されねばなりません.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-15 06:59 | 医療事故・医療裁判

鹿児島地判平成29年3月14日,数日前から症状があった急性肺血栓塞栓症で霧島記念病院に賠償命令

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産経新聞 「「治療怠る」患者死亡で病院に賠償命令 鹿児島地裁」(2017年31月14日)は,つぎのとおり報じました.
 
「医療法人健康会が開設する霧島記念病院(鹿児島県霧島市)が、肺に血栓が詰まる肺塞栓の検査や治療を怠ったとして、死亡した男性患者=当時(76)=の遺族が計約4270万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁(鎌野真敬裁判長)は14日、病院側に計約2470万円の支払いを命じた。平成24年11月13日、脳内出血で同病院に搬送されて入院、翌月に急性肺血栓塞栓症で死亡した。

 鎌野裁判長は判決で「遅くとも死亡の数日前までには症状が認められたのに、必要な検査と治療を怠る過失があった」と指摘した。」



これは私が担当したものではありません.
肺血栓塞栓症についてはこのように治療の不作為について責任が認められるケースがあります.
発症確率が低くても,警戒すべき疾患についてその兆候を見逃した場合,注意義務違反が問われると考えるべきでしょう.また,予防,治療の付実施との因果関係についても高度の蓋然性が認められるケースが増えているように思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-03-15 03:57 | 医療事故・医療裁判