弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2017年 05月 09日 ( 2 )

患者側弁護士のdiversity~証拠保全とカルテ開示

b0206085_1820187.jpg
患者側弁護士はdiversity(多様性)があります.
同じ案件でも,患者側弁護士によって,見立てが違う場合がありますので,患者側弁護士のセカンドオピニオンを聞くことは有用と思います.

或る弁護士が責任追及困難と判断した事案を別の弁護士が検討して責任追及可能という判断になる場合もありますし,逆の場合もあります.
なお,私は,攻めるタイプとみられがちなのですが,自分では,冷静に中庸の判断を行っているつもりです.

医療事件の進め方にも,弁護士のdiversityがあります.

《証拠保全とカルテ開示》
診療記録の入手方法には,証拠保全とカルテ開示があります.
最近,「証拠保全が原則です。」という患者側弁護士の記事を読みました.
これは,オーソドックスな考え方で,今でも当然ある考え方です.
私は,証拠保全かカルテ開示かは一概には決められませんが,原則は「カルテ開示」と考えています.あらためて私の考え方を書きます..

《証拠保全のメリットその1 改ざん防止》
証拠保全のメリットは,一般に,改ざん防止と言われます.
そもそも,今はカルテは開示請求されるものという意識で書かれていますので,不利な事実は最初から記入されていないことも多く,改ざんすることは少ないと思います.
電子カルテの場合,改ざんは履歴に残りますので,履歴も改ざんしないと完全ではありません.電子カルテの改ざんは不可能ではありませんが,一般的には困難である,と言えるでしょう.
また,証拠保全でも改ざんが確実に防止でjきるというものでもありません.私は,証拠保全を行って入手したカルテに改ざんがあった経験があります.ちなみに,この改ざんは判決で認定されています.

《証拠保全のメリットその2 完全な記録の入手》
次に,証拠保全のメリットは,一般に,もれなく完全な記録を入手できることと言われます.
たしかに,カルテ開示請求で,当然あるはずの重要な記録を出してこない場合もあります.
患者側弁護士が代理人に就いて損害賠償請求を行ったとたんに,カルテ開示請求で出なかった重要な記録が,出てきたことも結構あります.
カルテ開示請求の段階では医療機関の担当者が出さないほうがよいと判断して出さなかった記録が,医療機関の代理人に就いた弁護士の指導で出てきたのかもしれませんし,あるいは単なる手違いなのかもしれません.
ただ,これは,確信犯的に行っている場合は,証拠保全でも同じです.証拠保全後に,担当医師の部屋にあったとして,追加記録が任意提出された経験もあります.

《証拠保全のデメリット 費用と時間》

証拠保全のデメリットは,カルテ開示に比べ,費用と時間がかかることです.


《私の方針》

医療機関により,改ざん,隠蔽の可能性について高低がありますので,私は,原則は「カルテ開示」で,例外的に,改ざん,隠蔽の可能性の高い医療機関については証拠保全を行うようにしています.

10年前はカルテがないと判断ができないので証拠保全ばかり行っていましたが,証拠保全で入手したカルテをみると医療過誤ではないことが明白な場合も少なくありませんでした.医療過誤でないことをご理解いただき気持ちに整理をつけることも大切なことですが,依頼者に何十万円もの費用のご負担をかけることは申し訳なく思っていました.
カルテ開示が普及した今は,相談のときに,カルテをおもちいただくと,相談費用のみで一応の見立てができます.カルテをみると医療過誤の可能性の高低が分かり,その後の方針が立てやすく,最小の時間と費用で進めることができます.
医療事件は,どうしても費用と時間がかかります.私は,スタート時点での費用と時間はできる限り節約したい(医療過誤であれば,もっと有意義なところに費用と時間をかけたい)と思い,「カルテ開示」を原則としています.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2017-05-09 21:56 | 医療事故・医療裁判

整形外科病院が肘の靱帯再建手術の過誤で引退を余儀なくされた元ラグビー選手と約6千万円で和解(報道)

私が担当したものではありませんが,ラグビー元日本代表の真羽闘力さんが,2013年に,福岡市内の整形外科病院で負傷した左肘の靱帯再建手術を受け,手術の過誤により指が動かなくなる障害が残り,引退した件で,さいたま地裁で行われていた裁判が,2017年4月26日に,病院側が約6千万円を支払う内容で和解していたことが報じられました.

産経スポーツ「手術失敗で引退」のラグビー元日本代表、6000万円で和解」(2017年5月8日)ご参照

これは,野球選手が受けることの多い手術ですが,失敗はほとんど聞かないので,また靱帯再建手術で運動神経を損傷するのは回避可能のはずですから,この件は医師の不注意によるもので,医療過誤であることは明らかな事案でしょう.

争点は損害の評価でしょう.
指が動かなくなる障害は,その程度に応じて障害等級が判断されますが,逸失利益の算定にあたっては,職業が考慮されます.裁判例では,ピアノ教師,画家などの事案があります.
ラグビー選手(元日本代表)の場合,具体的にどのように算定するのか,一応の参考になる金額と思います.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2017-05-09 00:36 | 医療事故・医療裁判