弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2017年 08月 22日 ( 1 )

腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害を有する83歳の男性に経口腸管洗浄剤を服用させた事案の第1回期日

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今週は,裁判期日が4件入っています.
その1つが,腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害を有する83歳の男性に経口腸管洗浄剤を投与した事案の第1回期日です.
京都地裁,8月24日(木曜)午前11時00分です.

医療事故により亡くなった患者は,京都市の83歳の男性でした.1級技能士資格及び職業訓練指導員免許をもつベテラン表具師で,元氣に仕事をしていました.
原告は,京都市在住の患者の妻,長男と仙台市在住の次男です.
被告の病院は,京都市中京区の総合病院(公的病院)です.

【事案】
大腸検査前処置の医療過誤です.
医師は,大腸検査の前夜に下剤ラキソベロンを服用し,検査当日に経口腸管洗浄剤ムーベンを服用する,という手順を指示しました.
83歳の男性は,腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害があり,検査前夜に指示に従い下剤ラキソベロンを服用しましたが,排便はありませんでした.

その状態で,経口腸管洗浄剤ムーベンを服用させるのは大変危険です.
ムーベンの添付文書の警告欄には,【禁忌(次の患者には投与しないこと)】として,「腸管に閉塞のある患者又はその疑いのある患者(大腸検査前処置に用いる場合)[腸管蠕動運動の亢進により腸管の閉塞による症状が増悪し、腸管穿孔に至るおそれがある.]」と記載されています.
医学文献 「腸疾患診療-プロセスとノウハウ」には,「腸管に狭窄病変のある患者に投与すると腸閉塞や腸管穿孔を起こし,重篤な状態を引き起こす可能性があり,投与前の問診や診察が重要である」(125~126頁)と記載されています.

患者に腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害があることを医師は知っていたはずですから,医師にはムーベン投与前に問診,診察を行ない,とくに排便状況について把握し,ムーベンを投与しない注意義務があったはずです.
にもかかわらず,医師は,ムーベン投与前に問診,診察を行いませんでした.
そのために,患者がムーベンによる糞便大腸イレウスを発症してショック状態となり,腸管虚血が遷延し,S状結腸の穿孔を来し,穿孔により汎発性腹膜炎を発症し,死亡しました.

この件は,医療事故調査が行われており,平成28年5月12日の「医療事故調査報告書」にも,「本患者のように慎重投与例に対しての排便状況の把握は不十分だった.また,詳細な手順書は整備されていなかった」,「ムーベン服用を契機に糞便による大腸イレウスを発症しショック状態となった.その後,腸管虚血が遷延し,S状結腸の穿孔を来し汎発性腹膜炎を発症,死亡に至った」と書かれています.

本件患者がショック状態に陥った後,被告病院は,すみやかに近くに住む妻と長男に連絡しなかったので.家族は,午後2時頃急変している状況を知らずに訪室し,本件患者が苦痛表情を呈していた姿を見て,いっそう大きな精神的苦痛を被りました.
事故後の対応にも問題のある事案と思います.

この裁判が適正に解決し,医療事故の再発防止に役立つよう,力を尽くしたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-22 06:10 | 医療事故・医療裁判