弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2017年 10月 03日 ( 4 )

京都大学医学部附属病院,医師の処方箋の738倍のセレンで患者死亡(報道)

産経新聞「京大病院、調剤ミスか 60代患者死亡 7百倍注射薬」(2017年10月3日)は,次のとおり報じました.

「京都大付属病院は3日、薬剤師が調剤した注射薬を自宅で投与した60代の女性患者が死亡したと発表した。薬は通常の700倍超の濃度で、調剤を誤った可能性が高いという。稲垣暢也院長は「このような事態を招き、心よりおわび申し上げる」と謝罪した。

 女性が投与した前日に、一緒に調剤された注射薬を使った別の患者は、色の異常に気づき、投与を途中で止めていたという。病院は報告を受けたものの、死亡した患者に使用中止を伝えていなかった。病院側は「この時点では原因が分かっていなかった」と釈明している。

 京大病院によると、注射薬は「セレン注製剤」。8月28日、医師の処方箋に従って薬剤師2人が調剤した。9月26日夕、患者が自宅で投与し、約3時間後に背中に痛みを感じたため、翌27日午前に同病院で処置を受けたが、死亡した。病院が調べたところ、通常の738倍の濃度のセレンが含まれていたことが判明した。

 別の患者は9月25日にセレン注製剤を使用したが「薬の色が赤みを帯びている」と途中で投与を中止したうえで、病院に報告していた。

 調剤した薬剤師は、1人がキャリア十数年、もう1人は5年未満だった。

 セレンは体内に存在する微量元素で、欠乏するとさまざまな症状をきたす。医薬品として販売していないため京大病院では薬剤師が注射薬を調剤していた。

 病院は厚生労働省や京都府警に事故を届けた。今後、調査委員会で詳しく検証する方針。」


セレンは,食物などに含まれる金属です.生命活動に欠かせない必須微量元素の1つです.
セレン(セレニウム)は,サプリメントとしても販売されていますが,毒性が強く,推奨料と中毒量の差が小さく,注意が必要です.

そのセレンを,医師の処方箋の738倍も調剤したのは,重大な過誤と言えるでしょう.
また,別の患者の報告を受けて病院が本件患者に連絡し中止させていたならと思うと非常に残念です.
徹底した原因解明と有効な再発防止策の策定を期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-03 20:35 | 医療事故・医療裁判

不適切な薬剤投与のために患者が死亡した事案で,高石藤井病院が大阪高裁で1億円和解(報道)

共同通信「点滴で急死、1億円支払いで和解 死亡生徒の両親と病院、大阪」(2017年10月03日)は,次のとおり報じました.

「大阪府高石市の高石藤井病院で2015年、点滴を受けた堺市の高校3年の女子生徒=当時(18)=が急死したのは不適切な薬剤投与が原因だとして、両親が病院を運営する医療法人「良秀会」(堺市)と医師に約1億2700万円の損害賠償を求めた訴訟があり、大阪地裁で3日までに和解した。病院側が診療に落ち度があったと謝罪し、1億円を支払う。

 9月26日付の和解条項には、病院側が再発防止策に取り組むことも盛り込まれた。

 生徒は15年12月29日夜、食後に目が腫れ、高石藤井病院の救急外来を受診。点滴を受けた直後に頭や胸の痛みを訴えて意識を失い、約3時間後に死亡した。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
点滴した薬剤,過誤の内容は報じられていませんが,1億円の示談金は責任を認められる事案であることを示しています.
責任が明らかな事案は東京では訴訟前に示談で解決することが多いのですが,大阪では訴訟まで進むことが多いのかもしれません.


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-03 19:52 | 医療事故・医療裁判

12のがん診療の拠点病院が効果未確認の免疫療法を一昨年実施していたことが判明(報道)

NHK「効果未確認の免疫療法 12のがん拠点病院が実施」(10月2日)は,次のとおり報じました.

「厚生労働省が地域のがん治療の中核に指定している拠点病院のうち全国の少なくとも12の病院が、がん治療の効果が国によって確認されておらず保険診療が適用されていない免疫療法をおととし実施していたことが、NHKの取材でわかりました。厚生労働省は「拠点病院の治療としてふさわしいかどうか議論を始めたい」としています。」

「国が効果を確認しておらず、保険適用されていない免疫療法も多くあります。がん患者の血液から特定の細胞を取り出して薬剤などを加えて培養し、再び患者の体に戻すなどの治療法は、効果や安全性が確認されていないため医療保険が適用されず、治療費は患者が全額自己負担となります。日本臨床腫瘍学会は、去年12月、免疫療法のガイドラインを作成し、オプジーボなど医療保険が適用された一部の治療法以外で推奨できる免疫療法はないとしています。」

「国立がん研究センターの若尾文彦医師は「拠点病院は有効性や安全性が確認された標準治療を提供することになっていて、科学的な根拠が確認されていない免疫療法は、臨床研究として行う以外、実施するべきではない」と指摘しています。また、こうした免疫療法を受けたいと考えている患者がいることについては「がんを治したいという強い気持ちはわかるが、効果が認められていないことを正しく理解し、治療を受けるかどうか冷静に判断してほしい」と話しています。」


有効性や安全性が確認された標準治療は保険診療で受けることができます.
保険診療に入っていない新しい「治療法」は,有効であるかもしれませんが,有効でないかもしれません.
保険診療に入っていない新しい「治療法」は,安全であるかもしれませんが,安全でないかもしれません.
保険診療に入っていない新しい「治療法」は,高額です.
標準治療法が有効でなかった患者には,選択肢の1つになるかもしれませんが,がん拠点病院が提供することはないと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-03 00:45

広島高裁長官が川合昌幸氏から菊池洋一氏へ

広島高裁長官川合昌幸氏(司法修習29期)が10月22日に定年退官します
私が修習生だったころ,川合昌幸氏の刑事分野の実務裁判官としての実力は所内でよく知られていました.
新しい広島高裁長官には,現東京高裁部総括判事(その前は京都地裁所長)の菊池洋一氏(司法修習30期)が就任します
そして,東京高裁部総括判事には,現札幌地裁所長の甲斐哲彦氏(司法修習35期)が就任します.司法研修所教官もつとめていましたので,ご存じの方も多いのではないでしょうか.川合昌幸氏が札幌にいたころ,甲斐哲彦氏も札幌にいました.
そして,札幌地裁所長には,現東京高裁部総括判事の定塚誠氏(司法修習37期)が就任します.司法行政分野での経歴が長い方です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-03 00:00