弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2017年 10月 07日 ( 2 )

和泉市の産婦人科医院院長を今年1月の無痛分娩事故について業務上過失致死の疑いで書類送検(報道)

NHK「無痛分べんで死亡 人工呼吸など不十分か 院長を書類送検」(10月6日)は,次のとおり報じました.

「ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院で「無痛分べん」で出産した31歳の女性が死亡した事故で、警察は女性が呼吸ができなくなった時に人工呼吸を行うなど十分な対応をしていなかったとして院長を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

書類送検されたのは大阪・和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」の老木正彰院長(59)です。

ことし1月、クリニックで大阪・枚方市の長村千惠さん(31)が麻酔で陣痛の痛みを和らげる無痛分べんで出産中に意識不明の状態になりました。
女の子の赤ちゃんは産まれましたが長村さんは10日後に低酸素脳症で死亡しました。
警察によりますと、院長が局所麻酔をした際に針が深く刺さりすぎて麻酔が余分に効いてしまい呼吸ができなくなったと見られ、長村さんは途中で「息がしにくい」と訴えていたということです。

また複数の専門医に意見を聞くなど捜査を進めた結果、警察は、呼吸ができなくなった時に院長が強制的に肺に酸素を送る人工呼吸を行うなど十分な対応を取らなかったため死亡した疑いがあるとして、6日、業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

警察のこれまでの調べに対し院長は「容体の変化が早く対応が追いつかなかった。パニックになった」などと説明しているということです。
院長の代理人の弁護士はNHKの取材に対し「現時点でコメントすることはありません」と話しています。
父親「娘の死をむだにしないで」
院長が書類送検されたことを受け、亡くなった長村千惠さんの父親の安東雄志さん(68)が大阪市内で会見し「娘の死をむだにせず、二度とこのようなことが無いようにしてほしい」と訴えました。

安東さんは三女の千惠さんについて、幼い頃から頑張り屋でしっかり者だったので、無痛分べんができる病院として老木レディスクリニックを選んだことについても「千惠がやることだったらと安心しきっていた」と話しました。
千恵さんの容体が分べん中に悪化してから救急車で運ばれるまで心肺停止の状態が続いていたということで、安東さんは「なぜ救命措置ができなかったのか」とクリニックの対応に疑問を呈しました。
千惠さんが亡くなったあと2歳の長女は夜中に急に泣き出して「ママに会いたい。ママに会いたい」と繰り返していたということですが、最近は笑顔を見せるようになってきたということです。
安東さんは麻酔医が立ち会うなど体制が整っている病院以外では無痛分べんをやるべきではないと指摘し「娘の死をむだにしないようにこういうことが二度と起こらないようにしてもらいたい」と述べました。
人気高まる無痛分べん
無痛分べんは出産の際に麻酔を使って陣痛を和らげる分べん方法で、近年人気が高まっています。
厚生労働省の研究班が10年前に行った調査では、無痛分べんが実施された割合はすべての出産の2.6%と推計されていました。
しかし、ことし日本産婦人科医会がおよそ2400の施設を対象に行った調査では、昨年度行われた無痛分べんは全国で3万6000件余りで全体の6.1%で、増える傾向にあります。

また、このうちの5割が病院ではなく、規模が小さい今回のような「診療所」で行われていたということです。
トラブル相次ぎ産婦人科医会などが対策
無痛分べんの事故やトラブルが相次いでいることを受け、国や専門家の間では対策が検討されています。

日本産婦人科医会はことし4月、無痛分べんを行う際には十分な医療態勢を整えることを医療機関に求める緊急提言を行ったほか、全国およそ2400の分べん施設を対象に実態調査を行い、無痛分べんによる事故が全国で何件起きているのかなど調査と分析を進めています。
厚生労働省もことし8月、産科や麻酔科の医師などでつくる研究班を立ち上げ、無痛分べんの安全な実施手順の作成や、医師への研修態勢の整備などを進めています。
専門家「トラブルに難しい対応必要なことも」
これまで1000件以上の無痛分べんを手がけた経験のある大阪大学大学院麻酔・集中治療医学教室の大瀧千代講師は、無痛分べんは正しい安全管理のもとで行えば非常に効果的な医療行為だと話しています。
その一方で「無痛分べんでは分べん中ずっと麻酔の管理に注意する必要があり、何かトラブルが生じた場合には難しい対応が必要になることもある。十分な医療態勢が整わない場合は事故につながるリスクがある」と述べ、無痛分べんでは安全のために十分な態勢を整えることが必要だと指摘しました。」


朝日新聞「無痛分娩めぐる死亡事故、父親が医院側を提訴へ 大阪」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老木(おいき)レディスクリニック」で1月、麻酔で痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で出産中の長村千恵さん(当時31)=同府枚方市=が意識不明になり、その後死亡した事故で、父親の安東雄志さん(68)=同府富田林市=が6日、大阪市内で記者会見を開き、「娘の死を無駄にせず、事故が二度とないようにしてほしい」と訴えた。医院側に損害賠償を求める訴訟を起こすことも明らかにした。

 安東さんは、同クリニックでの出産について、「千恵が選んだのなら間違いないだろうと思った。後悔している」と声を詰まらせた。生まれた次女は間もなく9カ月。「自分の命に代えて産んでくれた。元気に育ってほしい」と話した。

 府警は6日、院長(59)を業務上過失致死容疑で書類送検している。損害賠償訴訟では、千恵さんが呼吸困難に陥った後に適切な処置がなされなかったとされる点や、麻酔科医が立ち会っていなかったことなどについて問う方針という。」


産経新聞「娘の死、無駄にしないで」無痛分娩の死亡女性の父が会見」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老(おい)木(き)レディスクリニック」で1月、出産時の痛みを麻酔で和らげる「無痛分(ぶん)娩(べん)」で出産した長(なが)村(むら)千恵さん=当時(31)=が死亡した事件で、クリニックの院長(59)が業務上過失致死容疑で書類送検されたことを受け、父親の安東雄志さん(68)が6日、大阪市内で会見した。麻酔ミスから呼吸困難となり、亡くなった千恵さんについての思いを語り、「娘の死を無駄にしないでほしい」と再発防止を訴えた。

 1月10日の出産当日、クリニックまで送る車内での会話が最後になった。腰痛を抱えていた千恵さんは、負担の少ない無痛分娩を選択。クリニックの評判がいいことを熱っぽく語っていた。「今考えると、本人も不安だったんだと思う」と安東さんは唇をかんだ。

 千恵さんの死後、自ら院長に聞き取りをするなど原因を追いかけ続けてきた。大阪府警の捜査では、呼吸不全の千恵さんに対し人工呼吸すら行われなかったことが判明。「なぜ蘇生措置ができなかったのか」と疑問は消えない。

 千恵さんは三女で「頑張り屋で、しっかりした娘だった」という。結婚して、3年前に第1子となる女児を出産。孫を連れて実家に顔を出してくれることが、安東さんにとって何よりの楽しみだった。

 帝王切開で生まれた千恵さんの次女は、元気に育っているという。「千恵が自分の命に代えて空気を子供に送ったのでは」と話し、「同じことが二度と起こらないよう娘の死を医療の発展につなげてほしい」と述べた。

 一方、会見に同席した安東さんの代理人弁護士は、クリニック側への損害賠償請求訴訟を検討することを明らかにした。」


毎日新聞「無痛分娩 遺族「再発防止を」 院長書類送検」(2017年10月7日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老木(おいき)レディスクリニック」で無痛分娩(ぶんべん)に臨んだ長村千恵さん(当時31歳)=同府枚方市=が死亡した事故で、大阪府警が院長(59)を業務上過失致死容疑で書類送検したことを受け、長村さんの父親の安東雄志さん(68)=同府富田林市=が6日、大阪市内で記者会見した。安東さんは「娘の死を無駄にせず、二度と悲惨な事故が起きないようにしてほしい」と訴えた。

 院長から当時、「やれることは尽くした」と言われたという安東さんは会見で「それでも娘は亡くなった。落ち度があったと院長に考えてもらいたい」と話し、「残された2歳の孫は夜中に『ママ』と泣き出す。可哀そうだ」と涙ぐんだ。

 同席した山口健一弁護士は「麻酔が効きすぎて呼吸困難になっていたのに、アレルギー反応と院長が誤解した。呼吸回復の措置が遅れた上、人工呼吸器なども使わなかった」と対応を批判。医院の体制についても「麻酔科医が常駐していないのに、複数常駐しているかのようにホームページでアピールしていた」と疑問視した。損害賠償を求め提訴も検討しているという。【村田拓也】」


読売新聞「無痛分娩死で院長「パニックで人工呼吸できず」」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「 老木 レディスクリニック」で1月、麻酔で出産の痛みを和らげる無痛 分娩 をした女性が死亡した事故で、担当した男性院長(59)が府警の調べに、「人工呼吸をしようとしたが、パニックになりできなかった」と供述していることが、捜査関係者への取材でわかった。

 府警は、救命に必要な処置を怠ったとして、6日に院長を業務上過失致死容疑で書類送検する。

 無痛分娩を巡り、医師が書類送検されるのは異例。院長は容疑を認めている。

 捜査関係者によると、女性は同府枚方市の長村千恵さん(当時31歳)。院長は1月10日、長村さんに局所麻酔を実施。長村さんが呼吸困難を訴えたのに、経過観察を怠って容体急変の兆候を見逃したうえ、急変後も人工呼吸を行わず、同20日、搬送先の病院で、低酸素脳症で死亡させた疑いが持たれている。

 院長は「容体変化が急で、対応が追いつかなかった」とも話しているという。子どもは搬送前に帝王切開で生まれ、無事だった。

 司法解剖結果などから、長村さんは麻酔が効き過ぎて呼吸困難に陥ったことが判明。こうした場合、器具を使って人工呼吸を行えば回復が見込めるが、院長は帝王切開を優先したという。」


読売新聞「容体急変に対応できず、ミス重ねる…無痛分娩死」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「見落としや誤診、判断ミス――。

 大阪府和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で無痛分娩をした女性が死亡した事故で、書類送検された老木正彰容疑者(59)が容体急変などに対応できず、ミスを重ねていたことが、府警の捜査などで明らかになった。重大事故が相次いで発覚し、安全対策の検討が始まった無痛分娩。専門家からは早期の対応を求める声も上がる。

 「息がしにくい」。第2子のお産に臨んだ長村千恵さん(当時31歳)は1月10日午後3時32分、局所麻酔を受けた後に呼吸苦を訴えた。スタッフから「すぐに楽になるから」と声をかけられてうなずいたが、意識を失った。

 老木容疑者は、麻酔薬に対する急性アレルギーが起きたと判断。治療薬を投与したが、血圧や脈拍などは下がり続けた。長村さんにじんましんや血管拡張などのアレルギー症状はみられず、医療関係者は「明らかな誤診だった」とする。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.(私が担当したのは神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故の件です.こちらは示談で解決済みです.)
上記報道の2017年1月の老木(おいき)レディスクリニックの無痛分娩事故は,報道で判断する限り,明らかに有責で,院長が責任を負うべきと思われます.
また,単にこの院長が責任を負うだけではなく,同様の事故が起きることのないよう,無痛分娩実施のあり方を整備していくことも必要と思います.

【追記】

読売新聞「無痛分娩死、急変時処置「蘇生に有効と言えず」(2017年10月08日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で1月、無痛分娩をした女性が死亡した事件で、専門医らでつくる医療事故調査委員会が報告書をまとめ、院長・老木正彰容疑者(59)(業務上過失致死容疑で書類送検)による容体急変時の処置について「蘇生に有効とはいえなかった」と指摘していたことが、わかった。

 府警も緊急対応に過失があったとしており、医学的見地からもミスが裏付けられた。

 2015年に始まった医療事故調査制度に基づき、第三者機関「医療事故調査・支援センター」(日本医療安全調査機構)が実施。産婦人科医や麻酔科医らが、老木容疑者らから聞き取りなどを行った。

 読売新聞が入手した報告書によると、同医院で出産に臨んだ長村千恵さん(当時31歳)は、局所麻酔が効き過ぎたために容体が急変した。老木容疑者は呼吸を確保するため、気道に管を通す気管内挿管を実施したが失敗し、母体の血流を改善させるために帝王切開を実施。この判断について「(血流の)改善が主たる効果で、蘇生のための気道確保に有効とはいえない」とした。また、器具による人工呼吸が行われておらず、「著しい低酸素状態が(病院への)搬送まで持続していた」とも指摘。人工呼吸が優先されるべきだったとした。」



谷直樹

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by medical-law | 2017-10-07 11:09 | 無痛分娩事故

千葉大学医学部附属病院,同一フロアの入院患者4人が死亡(報道)

千葉大学医学部附属病院のサイトに「多剤耐性緑膿菌の検出について」が掲載されました

千葉日報「4人死亡、院内感染か 菌検出、関連を調査 千葉大病院」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.
 
「千葉大学医学部付属病院(千葉市中央区)で8月下旬以降に同一フロアの入院患者4人が死亡し、患者から抗生物質が効かなくなる多剤耐性緑膿菌が検出されていたことが5日、千葉日報社の取材で分かった。同病院は院内感染の可能性があるとみて、同菌の検出と死亡との因果関係や、同一の遺伝子の菌かどうかなど、詳しい状況を調べている。

 同病院によると、4人は、いずれも重篤な状況で治療中だった。生前に感染症を疑い検査を実施したところ、4人から多剤耐性緑膿菌が検出されたという。

 9月15日に同病院から千葉市保健所へ「院内感染の疑いがある」などと報告があったという。また市保健所は菌の検査について依頼を受けており、結果判明後に病院側へ報告する予定。病院側も調査結果がまとまり次第、保健所に報告する。

 死亡を受け、同病院は職員への研修や講習を実施し、院内感染への予防対策の徹底を周知している。」


院内感染は,感染,発症,治療の3段階が問題になります.
感染については,病院の感染防止策が徹底していたかが問題になります.重症患者を取り扱う部署では,とくに徹底した感染防止策が求められます.一般には,医療従事者の手洗いを徹底すると感染症が減少すると言われています.
発症については,患者の属性が重要です.重症で抵抗力が弱っている患者では発症しやすい傾向があります.
治療については,早期治療のほうが有利ですが,重症で抵抗力が弱っている患者では標準的治療を行っても奏効しない場合もあります.

谷直樹

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by medical-law | 2017-10-07 02:17 | 医療事故・医療裁判