弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2017年 12月 03日 ( 2 )

旧優生保護法下の不妊手術違憲訴訟,仙台の弁護士が提訴へ(報道)

仙台の弁護士新里宏二先生らが代理人となって,旧優生保護法下の不妊手術の違憲性を主張し,国に損害賠償を求める訴訟を提起するそうです.
毎日新聞が伝えるようにハードルもありますが,期待したいと思います.

毎日新聞「旧優生保護法 不妊手術強制、初の国提訴「尊厳を侵害」」(2017年12月3日)は,次のとおり報じました.

「ナチス・ドイツの「断種法」をモデルとした国民優生法を前身とする旧優生保護法(1948~96年)の下で、国が知的障害などを理由に不妊手術を強制したのは個人の尊厳や幸福追求の権利を保障する憲法に違反するとして、当時10代だった宮城県内の60代女性が国を相手に国家賠償と謝罪を求めて来年1月にも仙台地裁へ提訴することが分かった。女性は不妊手術を理由に縁談が破棄された経緯があり、現在も独身。旧優生保護法に基づく障害者らへの不妊手術は全国で約2万5000件確認されているが、国への提訴は初めて。

 女性の代理人弁護士らによると、女性には重い知的障害があり、生理が始まった10代で不妊手術を受けた。しかし、事前に国や宮城県側から手術について説明を受けたり、同意を求められたりした記憶はない。

 女性は手術後、腹部にたびたび違和や痛みを覚え、20代で入院。卵巣の組織が癒着する悪性の卵巣囊腫(のうしゅ)と診断され、右卵巣の摘出を余儀なくされた。さらに、不妊手術が原因で縁談もなくなったという。

 女性は今年6月、県に対し、当時の「優生手術台帳」の情報開示を請求した。開示された資料には、不妊手術は、県の審査を経て72年12月に「遺伝性精神薄弱」を理由に行ったと明記。県北部の病院で、卵巣と子宮を結ぶ卵管の峡部(きょうぶ)を縛る処置が施されていた。

 優生保護法は、医師が必要と判断すれば、都道府県が作る審査会での決定を経て遺伝性の疾患や精神障害のある男女らの不妊手術を「優生手術」と呼び強制できるとしていた。

 だが、2016年に国連女性差別撤廃委員会が被害の実態調査と補償を行うよう日本政府に勧告。今年2月には、日本弁護士連合会が「優生思想に基づく不妊手術や人工妊娠中絶は自己決定権などを侵害し、遺伝性疾患や精神障害などを理由とする差別」との意見書を発表し、国へ謝罪や補償などを求めている。

 女性が提訴に踏み切るのは、こうした時代の変化を受けたもので、女性側は取材に「憲法13条に定められた幸福追求権などをないがしろにしており違憲。当時は適法だったとの言い分は到底受け入れられない」と主張している。請求額は今後詰めるという。

相談窓口を設置

 女性の弁護団は提訴に合わせ、旧優生保護法の下で不妊手術を受けた当事者らのための電話相談窓口を設置する。女性と同様の訴えが集まれば、集団訴訟も検討するとしている。【遠藤大志】」


毎日新聞「旧優生保護法 差別半世紀、違憲問う」(2017年12月3日)は,次のとおり報じました.

「1996年に優生保護法が母体保護法に改定され、20年以上がすぎた。裁判には大きな障壁が二つある。

 一つは、不法行為から一定期間が経過すれば賠償請求の権利が消えるという「除斥期間」の存在。民法724条は、不法行為のあった時点から20年をすぎれば損害賠償請求権が消滅すると定めている。ただ、予防接種の副作用で重い障害を負った男性が国に賠償を求めた予防接種禍訴訟で、最高裁は98年に「著しく正義、公平の理念に反する場合は除斥期間の適用を制限できる」という初判断を示した。被害者が心神喪失の場合には救済が必要との理由からで、弁護団はこの判断を支えにしたい考えだ。

 もう一つは、批判があったとはいえ、現憲法下で半世紀近くも存在した法律の違憲性を問えるのかどうか。弁護団はここにこそ問題の本質があるとみる。

 不妊手術を受けた人たちは、提訴予定の女性と同様に意思を伝えるのが難しく、泣き寝入りしていた可能性が高い。女性代理人の新里宏二弁護士らは「被害者たちは社会的にも最も声を上げにくい人たちだった。優生保護法は、そのことを幸いにして続いた法律だった。訴訟を通じ、全国に問題提起したい」と語る。

 弁護団は、当事者を対象にした電話相談窓口を設置する。埋もれた幾多の被害者を救済し、差別を助長してきた歴史の暗部に光を当てるためだ。【遠藤大志】」


谷直樹

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by medical-law | 2017-12-03 19:36

石川県立中央病院,感染症に気づかず抗がん剤治療を行い患者が死亡した事案で示談(報道)

石川県立中央病院は,2016年7月に感染症に気づかず抗がん剤治療を開始した患者が死亡する医療事故について,損害賠償金700万円を支払う示談が成立したとのことです.

毎日新聞「県立中央病院 患者死亡、700万円賠償 責任認め示談」(2017年12月2日)は,次のとおり報じました .

「病院側によると、患者は県内の60代の女性。昨年5月20日に同病院で子宮がんの摘出手術を受け、同6月29日にはがんが転移したリンパ節の摘出手術を受けた。翌日の血液検査で「経過良好」とみなされ、同7月4日に抗がん剤治療を受けた後に吐血。肺に血が入り、同6日に呼吸不全で死亡した。

 遺族側は、手術後に発症した感染症に病院側が気づかず抗がん剤治療を行ったため、女性は体力が低下し吐血したと主張。病院側も、治療が適切に行われていれば死亡しなかった可能性を認めた。

 同病院は再発防止策として、化学療法を行う際には術後2週間の経過観察を義務づける規定を設けた。【石川将来】」


報道の件は,私が担当したものではありません.
がん治療は標準化した治療方法が実施されますが,反面,治療が流れ作業のようになってしまうと,個々の患者の状態をみることがおろそかになる場合があります.
感染に対し白血球等の数値が上昇するまでの時間差を考えると,上翌日の血液検査だけで感染なしとは判断できません.手術から抗がん剤治療までが,流れ作業のなっていたのではないでしょうか.
抗がん剤治療は抵抗力を低下させますので,感染症が悪化しがちです.
術後2週間の経過観察を義務づけること自体はよいですが,患者の状態は個々に違いますので,個々の患者をよくみて臨機応変に対応していただきたいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-12-03 08:10 | 医療事故・医療裁判