弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 771 )

東京大学医科学研究所,別の教授のES細胞研究の論文にも不正疑惑(報道)

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東京大学は,9月20日,6研究室が発表した22本の論文に捏造やデータ改ざんなどの疑惑が指摘された問題で,予備調査の結果,調査委員会による本格的な調査に入ると発表していましたが,今回は,それとは別の教授の論文にも不正疑惑があり,調査委員会を設置すると発表しました.

読売新聞「東大新たに論文不正か…細胞研究、調査委設置へ」(2016年 11月5日)は,次のとおり報じました.

「東京大は4日、同大医科学研究所の男性教授らが執筆した科学論文1本の内容に疑義を示す告発が寄せられたとして、調査委員会の設置を決めた。

 1日には、実験データを示す画像に不自然な加工があることなどを理由に、掲載雑誌が論文の撤回を発表している。東大は学外の有識者を交え、原則150日以内に不正の有無を判断する。

 東大は今年9月、医学・生命科学系の別の教授らによる論文計22本についても調査委の設置を決めており、所属研究者による研究不正の疑いへの対応に追われている。

 関係者によると、医科研の論文は2011年に海外の科学誌に掲載されたES細胞(胚性幹細胞)の性質に関する研究で、今年10月までに2度の告発が東大や文部科学省に寄せられた。東大は告発内容を精査した結果、調査委による関係者の聞き取りや資料・実験データの検証が必要と判断した。」




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by medical-law | 2016-11-05 18:35 | 医療

日本生殖医学会、着床前遺伝子スクリーニング(受精卵検査、PGS)」を行った医師を処分

静岡新聞「着床前に受精卵検査 日本生殖医学会、浜松の専門医を処分」(2016年11月3日)は,次のとおり報じました.

「浜松市中区の不妊治療専門院「アクトタワークリニック」(A院長)が、国内の一般患者対象には認められていない「着床前遺伝子スクリーニング(受精卵検査、PGS)」を行っていたと公表したことについて、日本生殖医学会(苛原稔理事長)は2日、横浜市内で開いた理事会で、同会が認定していたA院長の生殖医療専門医資格を取り消す決定をした。

 理事会後の記者会見で発表した。苛原理事長は、同会の生殖医療専門医資格は日本産科婦人科学会(日産婦)が示す見解の順守が大前提とした上で、同院のPGS実施について「高い倫理観が求められる専門医として、ふさわしくない。生殖医療専門医に対する社会の誤解を招きかねず、厳正に対処せざるを得ない」と、資格取り消しの理由を述べた。A院長は今後、日産婦の見解を順守してPGSを実施しないと述べているという。

 同院が行っていたPGSは、不妊治療における体外受精で、受精卵を子宮に戻す前に染色体異常などを検査する技術。ダウン症などの可能性がある受精卵も選別の対象となるため、日産婦は会告で禁じている。

 同院はことし6月末、希望する30代の女性47人に検査を実施していたと公表した。日産婦はすでに、A院長に対して厳重注意処分を通達しているという。

 PGSは日産婦が流産歴や一定の不妊治療歴のある患者に対して臨床研究の準備を進めている段階。同会が認定する生殖医療専門医は全国に約600人いる。」


PGSを行うことは「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と書くこと,タレントにナチスSS風の黒服を着せることと同列ではないでしょうか.



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by medical-law | 2016-11-03 20:12 | 医療

厚生労働省、再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令

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厚生労働省は、平成28年10月28日、「医療法人社団慈涌会アクティクリニック」及び「医療法人社団慈涌会」(東京都港区)に対し、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号。以下「法」という。)第24条第1項及び第52条第2項に基づく立入検査を行ったところ、下記の法律違反が確認され、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると判断したため、10月31日付けで、法第22条及び第47条に基づき、再生医療等の提供の一時停止及び特定細胞加工物の製造の停止を命じました。

確認された法律違反】
「医療法人社団慈涌会アクティクリニック」
・再生医療等提供計画の変更の届出を行うことなく再生医療等の提供を行っていたこと(法第5条第1項違反)
・特定細胞加工物製造事業者でない者に対して特定細胞加工物の製造を委託していたこと(法第12条違反)

「医療法人社団慈涌会」
・特定細胞加工物の製造の許可を得ることなく特定細胞加工物の製造を行っていたこと(法第35条第1項違反)
・細胞培養加工施設の構造設備の基準を満たしていなかったこと(法第42条違反)

【提供の一時停止を命じた再生医療等】
・自家活性化リンパ球療法
・自家樹状細胞とIL12の併用療法
・自家フュージョン細胞ワクチンとIL12の併用療法(大野・キーフ法)
・自家腫瘍細胞特異的細胞傷害性Tリンパ球療法





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by medical-law | 2016-11-02 00:38 | 医療

横浜市が特定医療法人財団慈啓会大口病院にストレスチェック等を指導

横浜市は,特定医療法人財団慈啓会大口病院に,医療法に基づき過去に一部が紛失したカルテの厳重管理を求めたほか,ストレスチェックなどによる職員の健康管理,防犯カメラの増設,面会証の導入,常時3人以上の態勢の検討を指導した,と報じられています.
ちなみに,事件前の検査では,患者の骨折や院内感染などについて患者家族に説明した内容がカルテや看護記録に適切に記録されていなかったなど不適切な点があったとのことです.

ストレスチェックは、労働者が常時50名以上の事業場では法的義務ですが,労働者が50名未満の事業場では努力義務です.
平成27年12月より施行された心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)制度は,定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い,労働者にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し,個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに,検査結果を集団的に分析し職場環境の改善につなげるものです。
病院の職員は,心理的負担が大きい仕事に従事していますので,この検査は必要でしょう.
ちなみに,人事権のある職員(院長など)は,この検査を行うことができません.

(参考)
労働安全衛生法第六十六条の十  事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2  事業者は、前項の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行つた医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。
3  事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
4  事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
5  事業者は、第三項の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。
6  事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
7  厚生労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
8  厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。
9  国は、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持に及ぼす影響に関する医師等に対する研修を実施するよう努めるとともに、第二項の規定により通知された検査の結果を利用する労働者に対する健康相談の実施その他の当該労働者の健康の保持増進を図ることを促進するための措置を講ずるよう努めるものとする。



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by medical-law | 2016-10-30 08:28 | 医療

東地判平成28年10月28日,医療法人社団理事長・歯科医に医師法違反等の罪で懲役2年執行猶予4年等

朝日新聞「がん治療した歯科医に有罪判決 『危険、無責任の極み』」(2016年10月28日)は,次のとおり報じました.

「医師免許がないのに、がん患者に遺伝子治療と称して未承認薬を点滴したなどとして、医師法違反と法人税法違反の罪に問われた歯科医師のA被告(59)に対し、東京地裁は28日、懲役2年執行猶予4年、罰金800万円(求刑懲役2年、罰金1100万円)の判決を言い渡した。前田巌裁判官は「歯科医師の被告が行うべき緊急性や相当性はない。危険かつ、無責任の極みだ」と非難した。

 また、A被告が理事長を務めた医療法人に対しても、法人税法違反の罪で罰金200万円(求刑罰金300万円)を言い渡した。

 判決によると、A被告は2013~14年、経営していた東京都内のクリニック(閉院)で患者6人に点滴注射をした。また国税局OBで元税理士の男(71)=有罪確定=らと共謀して、架空経費を計上する手口で医療法人の法人税計約4300万円を脱税した。」


医療法人社団秀真会(現在は破産)の理事長・歯科医が自家製の「AJS2010」をがんの治療薬として投与し,その収益の一部が日本国内最大の反社会的勢力に流れたという事件です.
末期がん患者の藁にもすがる心情につけこんだ悪質な犯罪です.



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by medical-law | 2016-10-29 09:02 | 医療

世界医師会次期会長に横倉義武氏選出

台北市で開催された世界医師会総会で会長選が実施され、日本医師会の横倉義武会長が世界医師会の次期会長に就任することが決まったともことです
2017年10月の総会で会長に就任し任期は1年間とのことです.

世界医師会は、「タバコ製品の健康障害に関するWMA声明」等の声明を発表してきた団体です.
任期中に、タバコ製品規制について、一歩進んだ声明を採択していただきたいですね.



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by medical-law | 2016-10-25 02:12 | 医療

厚労省,「精神指定医」不正取得で数十人処分へ

読売新聞「『精神指定医』不正取得で数十人処分へ…厚労省」(2016年10月22日)は,次のとおり報じました.

「精神障害者の強制入院などを判断する「精神保健指定医」の資格を不正に取得したとして、厚生労働省は全国の数十人の医師について、資格の取り消しなどの処分を行う方針を固めた。」


不正は,聖マリアンナ医大病院だけではなかったのですね.それにしても数十人とは!


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by medical-law | 2016-10-24 12:37 | 医療

因果関係が否定できない急性腎不全が9人、うち1人死亡のため、「ヴィキラックス配合錠」の添付文書改訂

オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビルの添付文書が以下のとおり改訂されました.

[重要な基本的注意]の項に
「本剤投与前及び投与開始後は定期的に腎機能検査(血清クレアチニン、BUN等)を行うこと。特に、腎機能が低下している患者、Ca拮抗剤を併用している患者では、急激に腎機能が悪化することがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。」
を追記.

[副作用]の「重大な副作用」の項に
「急性腎不全:急性腎不全があらわれることがあるので、定期的に腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。」
を追記.

2015年11月の発売から2016年4月までに約3000人が使用し、急性腎不全関連症例 14 例中、薬との因果関係が否定できない急性腎不全が9例報告され、うち1人が死亡したためです.

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by medical-law | 2016-07-07 01:02 | 医療

日本医事新報「高齢者の意思確認ができていない場合のワクチン定期接種について考えられる問題点は?」

日本医事新報4810号(2016/7/2号)の「質疑応答」のコーナーに「高齢者の意思確認ができていない場合のワクチン定期接種について考えられる問題点は?」を書きました.関心のある方は,ご一読お願いします.


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by medical-law | 2016-07-06 14:42 | 医療

青森市民病院の医師が診療画像をユーチューブに投稿し訓告処分

読売新聞「青森市民病院の医師が診療画像 無断投稿」(2016年6月15日)は,次のとおり報じました.

「青森市勝田の青森市民病院で、医師が患者に無断で患者の診療画像などを動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿し、昨年5月に市から訓告の処分を受けていたことがわかった。14日の市議会一般質問で、市議の質問に答える形で市側が認めた。

 質問した共産党の村川みどり市議や市民病院などによると、昨年1月、動画サイトを見た患者の家族から「うちの家族の患部の画像ではないか」などと病院に問い合わせがあり、事実確認をした結果、同病院の医師による投稿だと発覚した。医師は投稿を認め、「学術的な研究のため、より見やすい環境にしたかった」などと話したという。

 画像は、患者個人が特定できるものではないが、患者の了承を取っておらず、すでに医師が患者に謝罪したという。同病院の安保明彦事務局長は「再発防止に努めたい」と話した。」


報道の件は,医師による投稿であって,病院としての利用ではありません.
また,投稿した医師は,病院に投稿についての許可を得ていないものと思われます.
病院が許可した投稿であれば,医師が訓告処分になることはないはずです.

「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日,その他の記述等により特定の個人を識別することができるものとされています.他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含みます.
病院としての利用であった場合でも,病院は,「個人を識別あるいは特定できない状態で利用する場合」等を除き利用目的の範囲を超えて利用することはできず,報道の件は,家族が動画を見て特定できたことから,個人を識別あるいは特定できない状態と言い切れる状態だったか,疑問があります.
また,論文に引用する場合とユーチューブに投稿する場合とでは利用の形態が異なり,それは違法性の判断に影響すると思います.


谷直樹



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by medical-law | 2016-06-16 09:23 | 医療