弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 750 )

フランスでの臨床試験で脳死等の事故発生

バイアル(Bial)社から委託されたバイオトライアル(Biotrial)社の鎮痛剤の臨床試験で被験者に脳死(その後死亡)を含む重篤な結果が発生したことが報じられています.
5日目に症状がでて,6日目に1人が昏睡,脳死状態になり,5人が集中治療室に入れた,と報じられています.被験者は90人と伝えられています.
臨床試験は,有効性と安全性が確認されていない薬の候補物質を投与するものですから,リスクは大きいと言えます.

AFP「フランス治験事故、脳死の男性が死亡」(2016年1月18日)は,次のとおり報じました.

「フランスで行われた新薬の治験で起きた事故で、深刻な副作用のために脳死状態に陥っていた被験者の男性が17日、死亡した。男性が入院していた病院が明らかにした。

 1週間前に起きた事故では、さらに5人の被験者が入院しているが、仏北西部レンヌ(Rennes)にある同病院の声明によると、いずれの容体も「安定している」という。

 問題の新薬は、痛みと気分障害の治療を目的としたもので、ポルトガルの製薬会社バイアル(Bial)が開発。同社の委託を受けた民間研究機関バイオトライアル(Biotrial)が、「第1相臨床試験」と呼ばれる試験で、初めて人体に対する安全性試験を行った。

 計108人の被験者が治験に参加し、うち90人に異なる量の薬が投与され、残りの被験者には偽薬が与えられた。入院した6人は28~49歳の男性で、最も多い投与量を受けたグループに属していた。

 レンヌの病院のピエールジル・エダン(Pierre-Gilles Edan)神経科部長は15日、このうち3人に「不可逆的である恐れのある障害」が生じ、さらに1人に神経障害が生じたと述べていた。6人目の被験者には症状がないものの、観察下に置かれている。」


谷直樹


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by medical-law | 2016-01-18 07:38 | 医療

横紋筋融解症と劇症肝炎でアジルサルタン,アムロジピンベシル酸塩とその合剤の添付文書改訂

医薬品医療機器総合機構(PMDA)は,昨年12月に添付文書改訂が検討されていることを発表していましたが,厚生労働省は,2016年1月12日,「アジルサルタン」「アムロジピンベシル酸塩」とそれを含む製剤で,横紋筋融解症を18人が発症し,アムロジピンベシル酸塩の投与を受けた2人が劇症肝炎で死亡(このうち1人は副作用で死亡した可能性が否定できない)と発表し,添付文書改訂を指示しました.

これらは,カルシウム拮抗薬のなかでも,L型チャンネルに作用し血管を拡張するという特徴があり,半減期が39時間と長く1日1回の服用ですみ,副作用も少ないことから,現在,よく使われている降圧薬です.
劇症肝炎は,亜急性が多く,「観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」と改訂しましたが,服薬している患者の数が多いので,すべての患者が風邪のような発熱,だるい,ぼんやりしている,という程度の異常に対応できるか,難しいものがあるのではないでしょうか.厚生労働省は「アムロジピンベシル酸塩は、患者向医薬品ガイドを作成する医薬品に特定する。」とのことですが.

今後,L型,T型のチャンネルに作用するカルブロック(アゼルニジピン)などへのシフトが検討されるかもしれません.


谷直樹


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by medical-law | 2016-01-13 05:32 | 医療

宇和島市立宇和島病院,看護師が興味本位でカルテ閲覧(報道)

愛媛新聞「市立宇和島病院、患者個人情報漏えい 目的外閲覧」(2016年1月9日)は,次のとおり報じました.

「愛媛県宇和島市御殿町の市立宇和島病院は8日、患者の電子カルテを業務目的とは関係ない理由で閲覧して個人情報を院外に漏えいさせたとして30代と40代の女性看護師を停職4カ月に、同患者のカルテを目的外閲覧したとして別の女性看護師4人を減給10分の1、1カ月の懲戒処分にしたと発表した。処分は2015年12月1日付。発表が遅れた理由について病院は「当該患者の公表可否やその範囲の確認などに時間を要した」とし、漏えいした情報の内容を明らかにしていない。
 病院によると、看護師6人は15年9月中旬、救急外来を受診した市内の女性患者の電子カルテを正当な理由なく閲覧。30代と40代の看護師2人が家族に患者の個人情報を口外して院外に拡散した。6人と患者は共通の知人で、漏えいした情報は第三者らを介して患者の耳にも届いた。6人は「興味本位で見た」と説明しているという。
 管理監督責任を問い、梶原伸介院長を文書注意、看護部長と看護師長を訓告、別の看護師長を口頭注意とした。石橋寛久市長は市川管理者を文書注意した。」 


不正閲覧事件は,大崎市民病院だけではなかったのですね.宇和島市立宇和島病院でも同様のことがあったということは,もっとあるのかもしれません.

谷直樹


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by medical-law | 2016-01-09 22:32 | 医療

SMOのエシック社のCRCが不正

SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)のエシック社は,エシック社CRC(Crinical Research Coordinator。治験コーディネーター)が患者日誌の数値、時刻を7カ所書き換え、空欄のチェックボックスにチェックを入れる不正を行ったことを認めました.

「<概要>
本件は1試験、1医療機関で発生し、直接関与した CRC は 2 名(CRC -AおよびCRC-B)で、他に、CRC-Bの要請で他の担当施設から手伝いに来て、不適切行為を見ながらその旨を上司に報告しなかった CRCが1 名(CRC -C)おります。
CRC -Aは、被験者が記載すべき患者日誌において、被験者が鉛筆で下書きした部分を上書きしました。その後、長期休暇に入ったCRC -Aの後任であるCRC-Bは、CRC -Aにより上書きされた患者日誌を新しい患者日誌の用紙に、同様な内容となるように書き直すことを被験者に依頼するとともに、元の患者日誌を廃棄しました。また、CRC -Bは、患者日誌の空欄のチェックボックスにチェックを記載し、さらに臨床試験に係るカルテシール注2・患者日誌に記載されている数値や日時の変更・追記計7件を、記載した本人である医師や被験者に依頼せずに、自らが行いました。
CRC -Cは、CRC -Bによる患者日誌の書き直し依頼の際に、CRC-Bが他被験者対応で席を外すために同席依頼を受けたものです。 」


CRCの不正は,最近,よく聞きます.
CRCを監視し,治験を点検する役割(モニター)が重要となります.


谷直樹


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by medical-law | 2015-12-12 00:27 | 医療

日本肝胆膵外科学会,死亡率8%以上の関東地方の大学病院と東海地方の市民病院について認定を更新せず

NHK「肝臓がん手術などで認定の2機関 死亡率4倍」(11月28日)は,「関東地方の大学病院と東海地方の市民病院で過去3年間の手術の死亡率が8%以上と認定施設の平均の4倍にのぼり、手術中の出血量が多いなど技量も十分ではなかったなどとして認定を取り消していたことが分かりました。」と報じました.

日本経済新聞「腹腔鏡手術の死亡例、5病院の10件に問題 学会が対応検討」(2015年11月28日)は,次のとおり報じました.

「肝臓、膵臓の2011~14年の死亡率は平均で0.5%以下だが、5病院は4%以上だった。
 学会が6月以降、死亡例の詳細な経過を集めたところ、腹腔鏡を使うべき手術かどうかなど計10例で判断に問題があった可能性が浮かんだという。

 これとは別に毎年行っている調査で、腹腔鏡の使用の有無を問わず12~14年の死亡率が5%以上だった病院が8施設あり、うち8%以上だった2施設は死亡例を検討した上で高度な技術を持つ施設認定の更新を認めなかった。残りの病院への対応は今後決める。〔共同〕」


やはり,外科手術の死亡率には施設間に大きな格差があったのですね.


谷直樹


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by medical-law | 2015-11-29 20:49 | 医療

血液製剤,ワクチンを不正製造し,製造記録を偽造した化血研の第三者委員会の調査報告まもなく公表へ

一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)が第三者委員会の調査報告を11月25日に受領し,12月上旬に開催予定の平成27年度第7回薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会運営委員会に報告した後,ホームページで開示すると発表ました.

化血研は,ワクチンのシェアも大きく,血液製剤では国内トップの製薬企業です.
ところが,化血研は,1990年頃から,製造承認書とは異なった成分を加えるなどして医薬品を不正に製造し,PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の調査には,承認書通りに製造したとする偽造の製造記録を示していました.
承認書と異なった成分の医薬品は,安全性が確認できませんし,その製造は違法です.
製造記録を偽造するなど,きわめて悪質な事案です.
化血研は,HIV訴訟の被告企業で,あの裁判のときに不正製造を行っていたのです.

【追記】
朝日新聞「化血研、110日間の業務停止へ 厚労省方針」(2015年12月30日)次のとおり報じました.

 「化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)が国の承認とは異なる方法で血液製剤をつくっていた問題で、厚生労働省は、医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づく化血研への業務停止命令の期間について、最長となる110日間とする方針を固めた。厚労省はすでに化血研に処分方針を伝えており、弁明を聞いたうえで年明けに最終決定する。

 厚労省によると、化血研の歴代理事長ら上層部が不正製造や記録の偽造を認識し、長年にわたって組織的に続けられてきたことを重くみた。製造販売許可の取り消しも検討したが、血液製剤やワクチンが供給されなくなると、患者への影響が大きいため、許可取り消しに次いで重い業務停止とし、期間も最長とすることにしたという。

 業務停止期間がこれまでで最も長かったのは、抗がん剤との併用による副作用で死亡が相次いだ抗ウイルス剤「ソリブジン」の問題で、製造元の日本商事(当時)が1994年に受けた105日間。」



谷直樹


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by medical-law | 2015-11-28 07:45 | 医療

認知症の薬を規定通りに投与すると患者が興奮したり怒りっぽくなるなどの副作用が起きることがある

テレビ朝日「認知症の薬に“副作用の恐れ”か 専門医らが指摘」(2015年 11月23日)は、次のとおり報じました.

「23日、専門医らが設立した団体によりますと、現在、国内で認知症の進行を抑える薬は4種類承認されていて、いずれも少量から始め、最大4倍程度まで増やすことが可能と規定されています。しかし、「適量に個人差があり、規定通りに投与すると患者が興奮したり怒りっぽくなるなどの副作用の恐れがある」ということです。団体は、全国の医師や患者家族から副作用とみられる実例を集め、来年の夏までに調査を取りまとめる予定です。」

これは、「抗認知症薬の適量処方を実現する会」(代表長尾和宏医師)が創立総会で発表したものです.


谷直樹


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by medical-law | 2015-11-23 23:54 | 医療

11月23日,シンポジウム 「子宮頸がんワクチン」問題を考える -海外からの報告を踏まえて-

明日,シンポジウム 「子宮頸がんワクチン」問題を考える -海外からの報告を踏まえて-」が開かれます.

「HPVワクチン接種後の被害の発生は、日本だけではありません。日本および海外の被害者から被害実態の報告を受けるとともに、デンマークと日本でいち早く多くの被害者の診察に当たり、研究の最先端にいる医師の方々をお招きして、「子宮頸がんワクチン」問題の本質に迫ります。

■日時 2015年11月23日(祝) 13:30~17:30(13:00開場)

■会場 東京大学鉄門記念講堂
    (地下鉄「本郷三丁目」徒歩10分、「東大前」徒歩15分)
     東大赤門入り,最初の右手に見える建物を過ぎたら右折、突当り建物左隣ビルの14階

●事前申込不要・同時通訳付・資料代500円

<プログラム>
■第1部 基調講演
    Louise Brinth (Frederiksberg 病院医師)
    西岡  久寿樹(東京医科大学医学総合研究所所長)
    横田   俊平(横浜市立大学名誉教授)

■第2部 被害実態
    全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会
    海外の被害者(ビデオレター)

■第3部 パネルディスカッション
    パネリスト Louise Brinth 西岡久寿樹 横田俊平 被害者
    コーディネーター 隈本邦彦 水口真寿美
   
主 催
 薬害オンブズパースン会議
 全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会
 国民の医薬シンポジウム実行委員会

問合先 薬害オンブズパースン会議事務局  TEL 03-3350-0607



谷直樹


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by medical-law | 2015-11-22 20:39 | 医療

薬害オンブズパースン,「医薬品の臨床試験の実施の基準 に関する省令」一部改正の骨子(案) に対する意見

薬害オンブズパースン会議は,2015年11月11日,「「医薬品の臨床試験の実施の基準 に関する省令」一部改正の骨子(案) に対する意見 」を発表しました.

意見の趣旨は,「人道的見地からの治験は、医薬品医療機器等法が予定する「治験」に該当しないものであり、これを治験として行うことは同法に違反する。未承認薬への例外的アクセスを許容するコンパッショネートユース制度の導入については、医薬品医療機器等法の改正ないし新たな立法措置が必要である。 現在予定されている人道的見地からの治験制度は違法であり、これを前提とする本省令改正に反対する。 」というものです.

理由は,「人道的見地からの治験は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律2条17項の定める「治験」に該当しない。医薬品承認制度という、法の定める医薬品行政の大原則の例外となるものである以上、コンパッショネートユース制度をどのような要件の下に認めるのかについては、国会において十分に審議のうえ決定することが必要であり、その導入は医薬品医療機器等法の改正ないし新規立法によらなければならない。」というものです.


谷直樹


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by medical-law | 2015-11-19 02:51 | 医療

急性弛緩性麻痺/急性弛緩性脊髄炎ならびに喘息様症状を認める急性呼吸不全症例の多発について

公益社団法人日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は, 平成27年10月23日,会員に「急性弛緩性麻痺/急性弛緩性脊髄炎ならびに喘息様症状を認める急性呼吸不全症例の多発について」を発しました.

「今年8月末頃から9月をピークに、全国各地で喘息様症状を呈する下気道炎患者が急増し、中にはICU入室、人工呼吸管理、ECMO管理が必要となる急性呼吸不全症例が発生しています。また、一部の症例からはEV-D68が検出されたとの報告があります。

また、上記とほぼ同時期に、急性弛緩性麻痺症状を呈する急性弛緩性脊髄炎症例が全国から相次いで報告され、日本小児神経学会を中心に情報共有と検討が進んでいます。一部の症例の咽頭ぬぐい液からはEV-D68が検出されており、エコーウイルス、コクサッキーウイルス等、その他のウイルスが検出されている症例もあり、感染拡大予防法、治療法等を確立するためには原因究明が急がれます。2015年9月の本学会雑誌には、2013年に発症したエンテロウイルスD68型が検出された急性呼吸不全と急性弛緩性麻痺を来した1例が症例報告されました。」


そこで,「2015年10月21日に厚生労働省から発出された下記「急性弛緩性麻痺(AFP)を認める症例の実態把握について(協力依頼)」をご確認いただき、このような患者さんを診療された会員におかれましては、最寄りの自治体(保健所)に別添の事務連絡の最後の頁にある「別添様式:医療機関記入様式」によりご連絡くださいますようお願い申し上げます。」と呼びかけています.
  
NHK「都内の病院 20人以上からエンテロウイルス」(2015年10月29日)は,次のとおり報じています.

「都立小児総合医療センターでは先月中旬から今月初めにかけて150人ほどの子どもがぜんそくに似た症状を訴えて入院し、これまでに20人以上から「エンテロウイルスD68」が検出されたということです。」
「子どもの治療にあたった都立小児総合医療センター感染症科の堀越裕歩医長は「呼吸器の症状を訴える子どもは、例年であれば秋から冬にかけてが多く、おかしいなと感じた。子どもたちの中には、数は少ないが集中治療室に入って人工呼吸器をつけなければならないケースもあった。パニックになる必要はないが、かかったことがない人は症状が重くなることもあるので、手洗いやせきエチケットなどの対策を徹底してほしい」と話していました。」


これから寒くなると,呼吸器の症状を訴える小児がふえ,小児科医はその対応に追われることになるでしょうが,EV-D68によるものを見逃さないようにお願いしたいと思います.患者側も,いったん帰されても症状が続く場合は,早めに再受診するほうがよいでしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2015-10-30 07:40 | 医療