弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 771 )

「手術数でわかるいい病院2011」(週刊朝日MOOK)

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週刊朝日MOOKの「手術数でわかるいい病院」は結構読まれているようです.

手術の症例数を調査してランキングを決めることには,抵抗を感じる医師,医療機関も多いと思いますが,患者にとっては分かりやすい参考指標です.
手術数の多い病院は,患者が集まっている病院で,いい病院だから患者が集まっている,また同種手術経験を積んだ医師がいる,という推定は,あながち間違いではないでしょう.
これで決めるというのではなく,「参考」という見方をするかぎり,また手術をするその医師の経験に注目するかぎり,有用と思います.

取材に応じ,「Q 医療事故にあったらどうすればいいの?」に対し,(弁護士に相談するのは知っていると思いますので)「A 弁護士への相談以外にも解決できる方法がある」という答えをしました.事故調査委員会,医療ADRという解決方法もあることをお話しました.
私の話は287頁に載っています.機会があったら見てください.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-25 14:18 | 医療

2月26日第8回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム

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明日2月26日,第8回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラムが開かれるそうです.
重篤な疾患を持つ子どもの治療方針決定のあり方─話し合いのガイドラインの提案─」がテーマです.

事前申し込み不要で,誰でも参加できます.

日時:2011年2月26日(土曜日)13時30分~17時(開場:13時)
会場:早稲田大学総合学術情報センター 国際会議場 井深大記念ホール
主催:日本小児科学会倫理委員会


第I部 日本小児科学会終末期医療ガイドラインワーキンググループ(13時30分~14時50分)

司会:加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)・河原 直人(早稲田大学総合研究機構・研究院)

加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)
「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」:提案までの経過
鍛冶 有登(大阪市立総合医療センター救命救急センター)
「子どもの死と向き合う-救急の立場から」
辰井 聡子(明治学院大学法学部)「小児終末期医療と法」
野辺 明子(先天性四肢障害児父母の会)「子どものいのちを守り、家族を支えるために」

第II部 指定討論(成育医療研究委託費「小児における看取りの医療に関する研究」班)(15時~15時50分)

司会:伊藤 龍子(独立行政法人国立看護大学校)

西畠  信(総合病院鹿児島生協病院)「小児の看取りの医療に関する調査報告 一次・二次調査結果」
清水 称喜(兵庫県立子ども病院)「小児の看取りの医療における看護」
阪井 裕一(国立成育医療研究センター・主任研究者)「小児の看取りの医療に関する提言に向けて」

第III部 総合討論(16時~17時)

司会:加部 一彦(恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院)・河原 直人(早稲田大学総合研究機構・研究院)

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-25 08:55 | 医療

「国民皆保険50周年~その未来に向けて」

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日本医師会主催の平成22年度医療政策シンポジウム「国民皆保険50周年~その未来に向けて」のレジュメと動画が日本医師会のホームページに掲載されています.

とくに, 二木立日本福祉大学教授の講演「医療への市場原理導入論の30年-民間活力導入論から医療産業化論へ」は,必見必読です.
パワーポイントなどは使わない,ということで,詳細なレジュメと資料がついています.

二木立教授は,民主党政権の「医療産業化」論は,医療への市場原理導入論の部分的復活であることを指摘しています.

民主党政権の医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業化するための施策について,①混合診療の拡大はごく限定的で,「数十億程度のマージナル」な市場拡大でしかない,②医療ツーリズムの市場予測は超過大,この分野の先進国に太刀打ちできない,③健康関連サービス産業は,1980~1990年代の失敗で決着済み,と指摘しています.マクロ経済的には,医療は「経済の下支え」で「成長牽引産業」は過大評価とのことです.

今後の見通しとして,混合診療全面(原則)解禁論等,医療への市場原理導入論はゾンビのように復活するが,医療への市場原理導入の全面実施はありえず,日本の医療制度の2つの柱(国民皆保険制度と非営利医療機関主体の医療提供制度)は,今後も維持される,とのことです.

医療への市場原理導入がめざす「二段階医療」化は,日本社会の統合性・安定性を損なう,公的医療費の拡大による日本医療の質の引き上げと医療へのアクセスの確保は,国民皆保険制度を守るだけでなく,日本社会の安定性・統合性を維持・向上させる上でも不可欠,と指摘しています.

詳細を知るには,二木立教授の『民主党政権の医療政策』(勁草書房,2011月2月10日発行)を読むとよいようです.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-18 15:54 | 医療

日本再生医療学会,正規の手続きを経ず不適切な幹細胞治療が行われていることに警鐘

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日本再生医療学会は,ヒト幹細胞を用いた医療について,平成23年1月26日「声明文」を発表しました.マスコミ各社が報道しています.
日本再生医療学会は,ヒト幹細胞を用いた医療は、まだまだ安全性を含む色々な課題を持っていることから、科学的根拠が低く安全性を考慮しない所謂、『未承認の再生・細胞医療』であると述べ現状に憂慮を表明しています.

◆ 現状

「国内の医療現場においては、『医師の裁量権』を根拠に、ヒト幹指針の遵守や薬事法に基づく治験等の申請といった安全性の確保等のための正規の手続きを経ず、幹細胞の輸注、投与、移植等の所謂、再生・細胞医療と称する行為が行われている実態があります。また、不適切な幹細胞治療が行われ、その結果、種々の医療事故等が発生しています。」

「世界には『tax haven』と呼ばれる租税回避地として利用される国がありますが、日本が他国から幹細胞治療分野において『therapeutic haven』として利用される(既にされつつある)ことが非常に危惧されます。」

◆ 会員医師に対し

「本会会員に対しては、患者の安全性の確保と早期の再生医療の適正な実用化のために各種法令、通知、告示、ガイドライン等を遵守し、未認可の幹細胞を用いた医療行為に関与しないことを求めます。 」

◆ 患者.家族に対し

 「根拠なく所謂、『未承認の再生・細胞医療』を謳う診療行為を安易に受診せず、治療を行う医療機関が当該治療に関して公的機関から承認されているか、もしくは臨床研究や治験の承認等を受けていることを確認した上で判断されることを推奨します。」

さらに,「幹細胞治療について患者ハンドブック」の日本語版PDFファイルを紹介しています.
http://www.isscr.org/clinical_trans/pdfs/ISSCR_PatientPrimerHndbk_Japanese_FNL.pdf

◆ 行政に対し

「未だ研究段階である自家細胞・組織等を用いた再生・細胞医療等に対して、臨床研究から治験、診療報酬評価に至る遅滞ない推進を可能とする体制・制度を確立し国民への早期の技術還元の実現を図ることを要望します。また、前述のような患者の安全性を無視し日本医療の信頼を根幹から揺るがすような所謂、「未承認の再生・細胞医療」に対して医療法、薬事法等の改正等を推進し適切な新しい医療提供体制の構築による患者(国民)の安全性を早急に確保することを強く切望します。」(以上「声明文」より),


このように患者の安全性を考慮するのは学会として当然のことですが,イレッサについての2学会の対応とは好対照です.


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谷直樹
by medical-law | 2011-02-06 22:39 | 医療

子どもの終末期医療の指針案

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2月26日の「第8回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラム」にむけて,すでに毎日新聞が1月27日「末期医療:子どもの意思尊重 小児科学会が指針案作成、『治療中止検討』明記」と報じていましたが,今日2月3日,NHKも,「子どもの終末期医療の指針案」と報じました.

「重い病気で回復の見込みがない子どもの治療方針を決める際に、保護者と医療スタッフがどのように話し合いを進めるべきか示すガイドラインの案を、日本小児科学会の作業グループが作成しました。

これは、日本小児科学会の終末期医療ガイドラインの作業グループが作成したもので、『治療方針の決定は子どもの最善の利益に基づく』などとする基本精神をはじめ、話し合いのあり方や治療の中止の検討などについて、11の原則を示しています。この中で、保護者や医療スタッフなどは、生命を維持する治療の差し控えや中止を提案できるとしたうえで、限られた医療スタッフによる独断を避け、透明化を図るため、話し合いの経過や内容は記録に残すとしています。こうした原則が実際の決定に反映できるよう、具体的な手続きを一つ一つ確認するためのチェックリストも提案されています。一方で、話し合いの過程が最も重視されるべきだとして、対象となる病気の種類や進み具合、また、治療を控えたり中止したりする基準については示しませんでした。作業グループの委員長を務めた加部一彦医師は、『透明性を確保して全員で決めるという当たり前のことがしっかり行われるきっかけにしてほしい』と話しています。日本小児科学会では一般にも意見を求めたうえで、最終的なガイドラインをまとめることにしています。」(NHK)

話し合いの過程が最も重視されるべきだ,というのは,正論です.
話し合いを真に内容のあるものにするために,ガイドラインが作成され,活用されることを期待します.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-03 10:45 | 医療

米国の医療保険改革法に再び違憲判断

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早いもので,今日から2月です.

昨年12月13日,米国バージニア州リッチモンドRichmondの連邦地裁(ヘンリー・ハドソン判事)は,医療保険改革法について,大半の国民に原則として医療保険の加入を義務付け,非加入者に事実上の罰金を科す条項は合衆国憲法に違反するとの判断を下していました.

そして,1月31日,フロリダ州ペンサコラ Pensacolaの連邦地裁(ロジャー・ビンソン判事)は医療保険改革法全体を違憲と判断しました.18歳以上の国民に医療保険への加入を義務付ける条項が違憲で,これを切り離すことが不可能である以上,医療改革法全体が違憲無効とせざるをえない,としました.

最終的には,連邦最高裁の判断するところとなります.
古典的自由主義の見地から,社会保障立法の合憲,違憲を判断することができるのか,が問題です.

CNNの「フロリダ州の連邦地裁、米医療保険改革法に違憲判決」参照.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-01 10:11 | 医療

カルテ,書くべきか,書かざるべきか

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◆ 医師のカルテ記載義務

医師法24条1項は,「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と定めています.
保険医療機関及び保険医療養担当規則で,カルテに記載がない診療は保険請求できないことになっています.
厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」では,「医療従事者等は、適正な医療を提供するという利用目的の達成に必要な範囲内において、診療記録を正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。」とされています.
したがって,医師は,カルテを遅滞なく正確に書くべき義務があります.

◆ カルテに書くと不利?

ところが,医療裁判ではカルテの記載により医療側に不利な認定がされることがあるので,記載に留意するよう言われることもあります.
事実の記載に限り,医師の考え,判断は記載しないよう,指導する医療側の弁護士もいるようです.それは,疑ったのに検査を行っていない,診断したのに治療を行っていない,となると責任を問われかねないからでしょう.

私は,この指導は適切ではない,と思います.
圧倒的多数の医師は,疑ったら検査を行いますし,診断したら治療を行います.また,そのことを説明するのが常です.適切な医療行為が行われている限り,カルテ記載は,適切な医療行為が行われた証拠になりますから,医療者に有利です.

医療行為は,①症状・検査結果から或る疾患を疑う(判断)⇒②説明する⇒③検査を行う⇒④暫定診断(判断)する⇒⑤説明する⇒⑥治療する⇒⑦治療後の症状・検査結果に基づき治療の効果を判定する⇒⑧診断(判断)する⇒⑨説明する⇒⑩診断に基づき治療する⇒⑪治療後の症状・検査結果に基づき治療の効果を判定する,⑫説明する,という流れで行われます.

医師の判断をカルテに記載し,説明することで,患者家族との紛争が予防されます.医師の判断をカルテに記載してあると,患者家族が後日カルテ開示により入手したカルテを見たとき,きちんとした適切な診療が行われていたことを知ることができます.

万一,医師の判断が結果的に不適切だったとしても,その時点で判明した症状,検査結果に基づくものですから,その時点の判断として合理性があれば,注意義務違反にはなりません.

医師の判断がその時点の判断としても不適切だったとすれば,注意義務違反が認定されますが,実際に注意義務違反がある以上,これは当然のことです.そのような例外的な医療過誤を想定し,その立証を防ぐために,通常の診療経過における判断を記載しないのは.むしろマイナスです.

◆ カルテ記載の意義,効用

医師がカルテは記載することの意義,効用は,4点あります.
1) 言語化することで医師自身が,診療の問題点を意識し注意することができます.
2) 医師は,記載することで,医療情報を他の医療者,明日の自分へ伝えることができ,伝達ミスを防止します.
3) 患者家族への説明の際,カルテに基づき懇切丁寧な説明を行うことができます.そのことで,紛争が予防されます.
4) 付随的な効用ですが,医療裁判では,医師が業務上作成したカルテは信用性が高く,重要な証拠とされていますから,医療過誤のない場合の訴訟対策にもなります.(なお,医療ミスがある場合の訴訟対策は,ミスを認め謝罪することです.)

というような内容で,25日,病院に行き講演してきました.

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by medical-law | 2011-01-27 19:50 | 医療

医療観察法下の高い自殺率が示唆するもの

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今朝の東京新聞は,「医療観察法下 高い自殺率 5年で17人」と報じています.

 「殺人や傷害事件などを起こし、心神喪失などで不起訴処分や無罪になった場合に適用される「医療観察法」で入院、通院の処遇を受けた人は二〇〇五年七月の法施行から五年間で千四百二人に上り、うち十七人が自殺していたことが分かった。」
 「一年前に精神保健指定医の研修会で発表された資料によると、同法で入院中の自殺未遂件数は既遂の約十倍という指摘もあった。
 全処遇者の1%を超える自殺者数について、法務省保護局の担当者は『事件後という特殊な状況で、一般精神障害者の自殺とは比較できない』と話す。
 だが、精神科医療史研究会の世話人を務める岡田靖雄医師は『高い自殺率』と評した上で、『事件当時を無理に振り返らせる治療法などに重大な欠陥があるのでは』と詳しい検証を求めている。」と報じています.

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(医療観察法)は,2003年に成立し,2005年7月15日から施行されました.
同法成立前から,重大な人権侵害の懸念が表明され,「らい予防法」の過ちを繰り返すことになるという意見もありました.

同法第1条は「この法律は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう。以下同じ。)を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする。」と規定しています.
社会復帰を目的とした適切な医療が行われる建前なのです.
しかし,その実態は明らかにされていません.

根本的に強制医療の問題があるうえに,高い自殺率は,実際に行われている医療が適切ではない可能性があることを示唆しています.
基本的に廃止すべき法律ですが,すくなくとも自殺に至る過程を明らかにし,第三者が医療の実態・合理性を検証する必要があるように思います.


谷直樹
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by medical-law | 2011-01-22 09:33 | 医療

『小児救急』

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今日は今年初めての出張でした.新年早々お時間をとっていただいた先生には,心から感謝申し上げます.

鈴木敦秋著『小児救急』(講談社文庫)を紹介します.
著者は,ジャーナリストです.

◆ 3つの命

これは,小児医療の問題によって失われた3つの命の物語です.

1 激務によってうつ病を患い,1999年8月16日に自殺した44歳の小児科医中原利郎さんの命.
2 夜間に小児科医のいる病院がみつからす,2002年9月4日に亡くなった7か月の頼ちゃんの命.
3 救急病院で誤診と引き継ぎミスのため,2003年3月9日に亡くなった5歳の理貴ちゃんの命.

これらは,1999年から2003年の出来事ですが,残念ながら,地域,病院,医師によっては明日にも起こりうることです.

◆ 飯倉洋治先生のこと

小児には
1 発達があり,
2 未来があり.
3 病気が治る可能性がある

と飯倉洋治先生が講義する場面も描かれています.

飯倉先生が胃がんで亡くなる前の年に,飯倉先生から,若く血気盛んな弁護士鈴木利廣先生が同じように若く血気盛んな飯倉先生の研究室を訪ねたときのエピソードを拝聴したことを思い出しました.

◆ 小児医療に人権を

「第4章私たちのできること」では,
日本小児科学会の空白の14年の後,中澤誠先生が,小児救急プロジェクトチームを立ち上げ,飯倉洋二先生,藤村正哲先生,市川光太郎先生,田中哲郎先生,阪井裕一先生ら錚々たるメンバーを集めたことも書かれています.
2004年12月5日の日本小児科学会主催のフォーラムで,中澤誠先生に呼ばれた(第1章から第3章の)遺族は,それそれ10分ちかくスピーチします.

命のために私たちができることは何か.
小児医療における人権保障の視点,人権保障のための医療政策の視点から,本書に書かれた出来事をみていくと,一本の道筋がみえてくるように思いました.

昨今,医療訴訟が疲弊した医療現場をさらに疲弊させる,という主張がなされることがありますが,それなら訴訟以前に誠実に対応し解決すべきで,泣き寝入りを強いるのはおかしく,さらに声をあげた被害者をバッシングするのは,正しい道ではありません.医療事故が表に出ることを阻止しても,医療事故自体は減りません.医療を良くするためには,患者の力が必要です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-06 22:43 | 医療

『うそをつかない医療』

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司法修習生のとき綺麗な鳥の写真を撮り,刑事部の裁判官に見せたところ,鷽(ウソ)の写真を撮るとは何事だ,と叱られました。私は,裁判官が鷽を知っていたことに驚きましたが...その裁判官は,高裁を任期終了退官し,今は簡易裁判所判事になっています.

さて,『うそをつかない医療』という本の話です.
著者の豊田郁子さんは,医療事故により長男を亡くした医療被害者です.さらに,事故後の対応で深く傷つきました.その後,新葛飾病院にセーフティー・マネージャーとして入り,医療安全と患者支援の仕事をし,患者と医療者をつなぐ仕事をしています.

新葛飾病院の清水院長の3原則は次のとおりです.

うそをつかない
情報を開示する
ミスがあれば謝罪する

明快です。
現実には,これができていない病院がまだまだあるようですが.

医療事故は,被害者に強い心理的負担を及ぼします.医療者も傷つきます.両者にケアが必要です.そのケアは,同じ事故に向き合う被害者と医療者のコミュニケーションによって実現されます.安全対策担当者,相談員は,そのコミュニケーションの媒介役として必要とされています.病院が,事故調査を行い,問題を掘り下げ,再発防止の措置をとる,そして,それを知ることで,被害者の気持は変わります.

もし,このことが分からないリスクマネージャーがいたら,何1つ解決することはできないでしょう.病院が,逃げている,ごまかしている,と感じさせるような対応をしたら,誰でも不信を募らせるでしょう.

この本は,何をどうすればいいのか,明確な道を示しています。
医療にかかわる人,とくに医療紛争にかかわる人すべてに読んでほしい本です.

患者側弁護士の仕事を損害賠償と誤解しているむきもあるようですが,そうではありません.
患者側弁護士は,まず事実を明らかにして,医療事故の原因を解明し,医療側に責任があれば謝罪を求める,不充分なところがあれば事故の再発防止を提案する,など解決のために活動しています.その1つとして,金銭賠償も含まれるのです.
豊田さんの仕事と私の仕事とは,本質的に大きな違いはないと思いました.

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by medical-law | 2011-01-05 21:36 | 医療