弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 761 )

患者の権利法と医療基本法

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患者の権利法」も「医療基本法」も.今ある法律ではありません,これからつくろうとしている法律です.

◆ 患者の権利

患者の権利には,(1)人権としての「患者の権利」と,(2)契約上の「患者の権利」があります.

◆ 人権としての患者の権利

人権は,国等の関係で,人が人として尊重されることです.
(1)の患者の権利は,国等との関係で問題となります.これについては,「患者の権利法をつくる会 」の「患者の権利法要綱案 」が参考になります.

◆ 契約上の患者の権利

(2)については,医療機関の開設者と患者との診療契約(医療契約)により内容が定まります.
契約は自由ですが,人権を尊重する内容でなければなりませんので,(1)の趣旨にそうものでなければなりません.これについては,愛知県弁護士会のモデル契約書案 が参考になります.

◆ 医療基本法

基本法は,国の制度,政策等に関する基本方針を明示するものです.基本法から直ちに具体的な権利義務が導き出されるものではありませんが,基本法は,憲法を具体化し.具体的な法律の制定,解釈の指針となります.

医療は,公共的性格をもち,国政の重要な分野です.そこで,国の医療政策の基本方針を定める医療基本法が必要である,という意見が多くなっています.医療基本法については,諸外国を参考にするなどして,具体的なものをつくらねばなりません.

医療は患者のためですから,医療政策の中軸は,「患者の権利」を実際に保障することです.
真に患者のための医療を実現するのは,計画的な人材養成,配置,財政的な裏づけも必要ですし,医療労働者の権利を保障することも必要です.「患者の権利」は,この医療基本法の重要な部分を構成することになるでしょう.

その意味で,「患者の権利法」と「医療基本法」は実質的に重なる部分が少なくない,と言えるでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-03 15:19 | 医療

後期高齢者医療制度に代わる新高齢者医療の問題

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今日(1月2日)のお昼のNHKニュースで,「新高齢者医療 法案提出に曲折」と述べていました.

「厚生労働省は、後期高齢者医療制度を廃止し、新たな制度を実施するための法案をことしの通常国会に提出する方針ですが、民主党内や地方から、これに反対する意見が出ており、法案の提出までには、う余曲折が予想されます。

厚生労働省は、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度を廃止し、平成25年3月から新たな制度を導入する方針で、先月、75歳以上はサラリーマンに扶養されている人たちなどを除いて、自営業者らが加入する国民健康保険に入るとした最終案を取りまとめました。厚生労働省は、新たな制度を実施するための法案をことしの通常国会に提出する方針ですが、民主党内からは、案の中に70歳から74歳までの医療機関での窓口負担を引き上げる内容が盛り込まれていることに、高齢者の負担を増やすべきではないと反対する意見が出ています。また全国知事会も、制度の安定的な運営に必要な国費の拡充が不十分だと反対しています。厚生労働省は、今月地方側と協議を行い、理解を得たいとしていますが、法案の提出までには、う余曲折が予想されます。」

後期高齢者医療制度は,75歳以上の高齢者を別枠にして.公費5割,現役世代4割,75歳以上の高齢者1割という負担割合を定めた制度です.
政府は,後期高齢者医療制度を廃止し,新しい高齢者医療制度をつくろうとしていますが,これには,以下の問題があります.

後期高齢者医療制度は,75歳以上の高齢者を別枠にして,75歳以上の高齢者の負担と給付を関連付けようとするものです.新しい高齢者医療制度もそこは基本的に変わっていません.

新しい高齢者医療制度は,一言で言うと,国が負担する医療費を減らし,家計と地方自治体の負担を増やそうという内容です.
70~74歳までの負担は倍増となります.
75歳以上の低所得者の保険料軽減措置は段階的に縮小されます.
現役世代の1人当たり保険料は増加します.

さらに,2018年度から国保の都道府県単位化を掲げています.これが実現すると,都道府県が責任を負う(国は責任を負わない)ことになります.

新しい高齢者医療制度は,国が負担する医療費を減らすことはできますが,そのしわよせが家計と地方自治体にきます.
医療を受ける権利が実質的に侵害されるという事態になりかねません.
後期高齢者医療制度廃止は,民主党のマニフェストですが,廃止後の制度については,医療を受ける権利が侵害されることのないように,論議を尽くしていただきたいものです.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-02 18:23 | 医療

糖尿病薬インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の問題

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インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)は,アメリカドクトカゲにヒントを得て食後の血糖値を上がらないようにした糖尿病の新しい治療薬です.
検査値が健康な人と同じくらいまで低く抑えられるとして,注目されています.
しかし,低血糖,.高血糖,心疾患リスクについて安全性が確認されていると言える薬ではありません.

インスリン療法を中止してGLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名ビクトーザ)に切り替えた症例で糖尿病ケトアシドーシスを発症し死亡した2例のほかに,著明な高血糖をきたした7例が報告されています.

「インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会」 は,12月17日,次の【追記情報】を発表しました。

「GLP-1受容体作動薬に分類されるエキセナチド(12月17日発売「バイエッタ」)はインスリンの代替とはならない」
「エキセナチドは適応がSU薬併用(ビグアナイド系薬剤又はチアゾリジン系薬剤との併用を含む)となっているため、低血糖についての注意も必要である。国内臨床試験においては、1回5μgでの投与開始時、及び1回10μgへの増量時に低血糖の発現頻度が増加する傾向が報告された。」
「エキセナチドは透析患者を含む重度腎機能障害のある患者では禁忌となっている。 軽度、中等度の腎機能障害のある患者においても臨床試験の結果から低血糖の発現割合が高い傾向が報告されることから慎重に投与する必要がある。」

薬害オンブズパースン会議は,12月24日,厚生労働大臣宛に「糖尿病治療薬インクレチン関連薬に関する要望書」を提出しました.
以下の2つの問題を指摘しています.
 ① DPP-4阻害薬(ジャヌビア錠・グラクティブ錠)使用症例で生じた低血糖や重篤な低血糖による意識障害に関する問題
 ② GLP-1受容体作動薬(ビクトーザ皮下注)使用症例で生じた糖尿病ケトアシドーシス(死亡事例2)や顕著な高血糖の問題

そして,安全性に関する詳細な調査を行い,機序を解明して,対策を講じるべきである,としています.

また,米国のFDA(食品医薬品局)が,糖尿病新薬に,心血管系へのリスク評価のための臨床試験を承認前に求めているのに対し,日本のガイドラインはこれを求めず,製造販売後の調査(努力目標)に委ねるとしています.
要望書は,「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に,心血管系疾患のリスク評価のための臨床試験を加えるべきである,としています.

とくに,血糖降下薬は,心血管系疾患に対する抑制効果を証明できていない(かえって心血管系疾患のリスクを高める可能性を有している)にも拘わらず,リスク評価がなされていないことを指摘しています.

さらに,要望書は,承認済みのインクレチン関連薬には製造販売後の臨床試験の実施を求めています.

谷直樹
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by medical-law | 2010-12-29 22:17 | 医療

医薬品副作用被害救済制度を知っていますか?

b0206085_1834615.jpg昨日,今日と今年最後の出張でした.このような時期に時間をさいて会ってくださる医師にはひたすら感謝です.

医薬品医療機器総合機構(PMDA)は,12月24日,「平成22年度医薬品副作用被害救済制度に関する認知度調査(一般国民)」の結果を発表しました.

医薬品副作用被害救済制度」は,医薬品(病院、診療所で投薬されたものの他に薬局で購入したものも含まれます.)を適正に使用したにもかかわらず,副作用によって一定レベル以上の健康被害が生じた場合に,医療費等の諸給付を行う制度です.

成人2万1000人を対象のインターネット調査の結果.
「医薬品副作用被害救済制度を知っている」(確実認知):5.1%
「名前は聞いたことがある」(曖昧認知):13.8%

昨年より減っていますが,昨年の対象が3000人であること,聞き方がちがっていることもあり,単純に比較できない,とのことです.

過去1年以内の医療機関の受診者では
「医薬品副作用被害救済制度を知っている」(確実認知): 5.8%
「名前は聞いたことがある」(曖昧認知):14.9%

過去1年以内の医療機関の非受診者では,
「医薬品副作用被害救済制度を知っている」(確実認知): 2.7%
「名前は聞いたことがある」(曖昧認知):10.0%

このことから,PMDAは「相対的に、受診者の認知率が非受診者を上回っていることは、病院や薬局などにおいて制度の周知が功を奏しているものと考えられる。」と評価しています.

しかし,「医薬品副作用被害救済制度」ができてから8年たっても,この数字ですから.未だにあまりよく知られていない,というべきでしょう.
副作用によって一定レベル以上の健康被害が生じた場合には、医療機関の方から,積極的にこの制度があることを教え,協力すべきでしょう.
また,医療事故,医療過誤の相談にあたる弁護士も,薬の副作用が問題になるときは,必ずこの制度のことを念頭において,助言していただきたく思います.


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by medical-law | 2010-12-28 18:35 | 医療

「ヘルパーからの医行為相談に訪看も悲鳴」

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写真は,新宿御苑です.

たんの吸引は,現行法上医行為です.そこで,ヘルパーがたんの吸引を行うのは,原則として保健師助産師看護師法第31条に違反します.
もっとも,介護現場における必要性から,在宅・特別養護老人ホーム・特別支援学校において介護職員等がたんの吸引等のうちのALS患者の在宅療養支援など一定の行為を実施することが一定の要件の下に例外的に運用によって認められてきました。

さらに,それ以外でもより広く,介護現場における必要性があり,対応が必要ではないか,として,「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」で検討されてきました.
その検討結果が,「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方について 中間まとめ」として,2010年12月13日,発表されました. 

◆ 「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方について 中間まとめ」

平成24年度の実施を目指す,としている内容は,次のとおりです.

「1 介護職員等によるたんの吸引等の実施
○ たんの吸引等の実施のために必要な知識及び技能を身につけた介護職員等は、一定の条件の下に、たんの吸引等を行うことができることとする。
○ 介護職員等が実施できる行為の範囲については、これまで運用により許容されてきた範囲を基本として、以下の行為とする。
・ たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)
* 口腔内・鼻腔内については、咽頭の手前までを限度とする。
・ 経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)
* 胃ろう・腸ろうの状態確認、経鼻経管栄養のチューブ挿入状態の確認は、看護職員が行う。
○ たんの吸引のみ、あるいは経管栄養のみといったように、実施可能な行為及び実施のための研修に複数の類型を設ける。
○ まずは、たんの吸引及び経管栄養を対象として制度化を行うが、将来的な拡大の可能性も視野に入れた仕組みとする。ただし、その際には、関係者を含めた議論を経て判断することが必要である。」

◆ 考え方

「安全性の確保については、医学や医療の観点からはもちろん、利用者の視点や社会的な観点からも納得できる仕組みによるものとする。」 とされていますが,医行為の安全性を確保するという観点をおろそかにすることはできません.
2010年10月から「試行事業」が実施されていますが,事故防止のために必要な仕組みをつくる必要があります.

医行為を介護職が行えるというのは現行の法制度上違和感が強いので,そもそもたんの吸引等を「医行為」から外そうという意見もありますが,「中間まとめ」では「安全性の確保という観点からは、医療的なコントロールの下に行われることが重要であるほか、医事法制上は、安全性を確保するための教育・研修を義務付ける必要がある行為を「医行為ではない行為」と整理することはできないのではないかとの意見があった。」と整理されています.

◆ 町田保健所の調査報告 

東京都主催の「第6回東京都福祉保健医療学会」(12月17日)で,町田保健所の加藤由紀さんは,管内の筋萎縮性側索硬化症(ALS)療養者22人の調査結果が発表しました.
この内容が,ケアマネジメントオンラインの12月21日の記事「ヘルパーからの医行為相談に訪看も悲鳴」で紹介されています.

年齢:30代から70代(平均63.7歳)、
療養期間;平均9.7年
発症から人工呼吸器装着までの期間;平均4.2年
主介護者;22人中20人が家族と同居し在宅で療養しているが、本人と主介護者との2人世帯が6割を占めており、主介護者は77%が配偶者

「22人中、要介護者が17人で,要介護4以上が12人。うち6人が訪問看護を利用しており、人工呼吸器を装着している人が半数近くいる。」
「ヘルパーが吸引を行っている療養者は6人(27%)いる.」

◆ 安全性を確保しつつケアが行われるために

町田保健所の加藤由紀さんが「『医療依存度の高い療養者の長期療養を支えるため、ヘルパーによる吸引や夜間のサービス提供が地域で実施されているが、事業所が複数あり、看護師などから研修を受けたヘルパーがいても交替してしまうなどサービスの質に均一性がない。安全性を確保しつつケアが行われるために必要な支援のあり方は、今後の地域での重要な課題』と述べて、ケアマネジャーと定期的な関わりを持つなど、福祉分野との連携を図る必要性も訴えた。」と紹介されています.


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by medical-law | 2010-12-25 11:41 | 医療

「緩和ケアのガイドラインーこの子のためにできることー」

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がんの子供を守る会」は,日本小児がん学会の医師らと作成した「緩和ケアのガイドラインーこの子のためにできることー」を,2010年12月19日(日)午後大阪国際会議場での公開シンポジウムで発表しました.

◆ 朝日新聞の記事

12月19日の朝日新聞に「小児がん終末期ケア、医師と患者が共同指針 19日発表」という記事が載っていました。引用します。

 「指針では、子どもにとっての死の概念や、親や家族ができることなどを解説している。モルヒネの使用など、痛みの和らげ方にも触れているが、医学的な説明よりも緩和ケアの理念などに力点を置いた。5千部を発行し、全国の病院に配布する。

 以前は、ほぼ助からない病気だった小児がんは、年間2千~3千人が発症する。現在は抗がん剤治療が進み約8割は治るが、それでも10~14歳の死因の1位、5~9歳でも2位を占めている。

 指針作成の委員長を務めた聖路加国際病院の細谷亮太副院長は、がんと告知された時点でこの指針を家族に渡すことを想定している。「ほとんど助かる見込みがなくても、副作用のきつい治療に走る現状がある。子どもにとって何が一番幸せなのか、医師らと話し合う際に役立てて欲しい」と話す。(岡崎明子)

■小児がん「緩和ケアガイドライン」の主な内容
(1)子どもに伝えるべき情報
(2)子どもの心に寄り添う方法
(3)子どもの年齢による死のとらえ方の違い
(4)治療を選択するときの家族の考え方
(5)患者のきょうだいへのケア
(6)学校や友達とつながることの重要性
(7)支えてくれる医療チームの紹介
(8)身体的、精神的な痛みの和らげ方
(9)病院や自宅での終末期の過ごし方
(10)遺族のグリーフケア(悲嘆回復) 」

◆ 患者団体

「がんの子供を守る会」は,患者団体の1つです。

患者団体について,患者の権利オンブズマン東京のホームページに,以下の説明が載っています。

「戦後の日本では自らの命と生活の保障を求めて、いくつもの患者団体が生まれました。昭和23年には結核療養所の患者たちが「日本患者同盟」に結集し、その後朝日訴訟に見られるように生活保護の権利を求めて成果を上げ、同26年にはハンセン病患者の「全患協(現全療協)」が結成され、長い運動の末ハンセン病患者の人権回復にたどり着いています。

 患者団体の性格としては、①このようにやむにやまれぬ要求から出発したものの他、②難病患者に多く見られるような医師と共同して治療法を探求・勉強するもの、③がん・脳卒中・遺族ケア関係に多い素朴に同じ病気の悩みを語り合い、生きる力を支え合うグループ、そして④薬害や医療被害者を主とした連絡組織の4つの性格に大きく分類できます。しかしながら相談など互助的活動と運動的な活動は強弱の差はあっても全てのグループに内包されています。
(中略)
 スウェーデンに本部がある世界患者団体には44団体40万人の会員が所属し、患者・障害者は社会の資源であると宣言して、自主的な活動を通じ社会に貢献しています。
 患者の権利を促進するためにはこうした患者団体の発展が期待されます。」

「がんの子供を守る会」の活動は,②の一種ですが,終末期ケアに関する点で一歩踏み出したものとなっています。

患者団体(患者会)は,患者家族が連携し情報を共有することで,患者の権利を促進し社会に貢献しています.
患者家族の方には,患者団体(患者会)への参加をおすすめします.


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by medical-law | 2010-12-20 22:14 | 医療

米国の医療保険改革法に初の違憲判断

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米国バージニア州リッチモンドの連邦地裁(ヘンリー・ハドソン判事)は,12月13日,医療保険改革法について、大半の国民に原則として医療保険の加入を義務付け,非加入者に事実上の罰金を科す条項は合衆国憲法に違反するとの判断を下しました.

CNNは,「米医療保険改革法に初の違憲判断 バージニア」として,12月14日,次のとおり報じています.

「米バージニア州の連邦地裁は13日、今年3月に成立した医療保険改革法について、2014年までに大半の国民に医療保険の加入を義務づける条項は憲法に違反するとの判断を下した。司法省は控訴するとみられており、最終判断は最高裁に委ねられることになりそうだ。

判断を下したヘンリー・ハドソン判事は、民間のサービス提供事業者から医療保険を購入するかしないかを決める判断は憲法のこれまでの適用範囲を超えていると指摘した。
これを受けてギブズ大統領報道官は、医療保険改革法は持病のある人への差別に対応するものだとして、地裁の判断に反論した。そのうえで、すべての法的論争が終結すれば同法は支持されるはずだと語った。司法省の報道官も、最終的には政権が法的勝利を収めることになると自信を示した。

医療保険改革は民主党が長年推し進めてきた政策だ。政府の推計では、昨年時点で米国では国民の約15%に当たる4500万人が医療保険に未加入だったとされる。今年3月に成立した医療保険改革法は、オバマ大統領の任期前半における重要な実績と評価されている。

しかし、共和党などからは増税やサービスの質の低下につながるとして批判があがっており、全国の連邦裁判所で同法を不服とする訴訟が20件程度起こされている。
今月にはバージニア州の連邦裁判所が同法を合憲とする判断を下しており、10月にはミシガン州の裁判所でも同様の判断がなされている。」

米国は先進国で唯一国民皆保険制度がない国です.無保険者は約4600万人とも3200万人とも言われています.
バラク・オバマ大統領は,無保険者の救済のために,当初新たな公的医療保険制度の創設を掲げていましたが,反対が強く実現が困難でした.
そこで,医療改革法は,保険加入者に補助金を支出し,保険会社への規制を強め民間保険への加入条件を緩和することで,保険を購入しやすくするという妥協的内容で,それも僅差で3月に成立しました.
保険加入条件の緩和義務化は2014年からで,現在83%に過ぎない米国民の医療保険加入率が95%まで上がるとみられています.
義務化条項は医療改革法の要になるものですが,ヘンリー・ハドソン判事は,この義務化条項について,保険商品を購入するか否かの個人の選択の権利との関係で,憲法が規定する議会の権限の範囲を超えると判断しました.最終的には,連邦最高裁で判断されると思いますが,この保険商品への規制を違憲とは言えないと思います.

ヘンリー・ハドソン判事は,共和党のブッシュ前大統領に指名された判事です.
今後10年間で約9400億ドル(約76兆円)の多額の税金が投入される(これはイラク戦争7年間に米国が費やした戦費約7040億ドルを上回ります)とのことです.米国は,医療を市場原理の支配に委ね,伝統的に小さな連邦政府を維持してきましたので,共和党は,医療改革法案に反対しています.
共和党は,医療改革法を縮小ないし廃止しようとしていますので,この動きに拍車がかかることでしょう.

日本でも,小さい政府・市場経済を指向し,規制を緩和しようという動きがあります.混合診療解禁などがその例です.医療の公共的性格からすれば,日本が米国を指向するのは誤りと思います.


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by medical-law | 2010-12-16 11:58 | 医療

中国は美容整形医療取り締まりを強化

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写真は,新宿御苑です.

◆ ミス成都の美容整形死亡事故

元ミス成都の王貝(ワン・ベイ)さんが,2010年11月15日,下あごを細くする手術中に多量の出血をし血液が気管に詰まって窒息死しました.これを受けて,中国衛生当局は,美容整形医療機関の取り締まりを強化すると発表したそうです.

エクスプロア上海は,「中国衛生当局、美容整形医療の取り締まり強化へ」〔2010年12月12日掲載〕として次のとおり報じています.

 「芸能人が美容整形手術をして死亡した事件を受けて、中国衛生当局は、中国全国を対象にした美容整形医療機関の取り締まりを強化すると発表した。
 その主な内容は、美容整形業界の発展計画を作成し、関連する法整備を急ぎ、政府による管理を強化するというもの。また、美容整形分野への人材育成にも力を入れるという。また、各分野の医療機関が行える美容整形手術の範囲も定める。
 現在、中国では韓国の美容整形などの名前を借りた医療機関が急増、業界の混乱が指摘されていた。(岸田賢治)」

◆ 日本での美容整形事故の報道

日本では,美容整形分野の事故が報道されることは少ないのですが,2009年12月,東京都豊島区南池袋の或る美容外科で腹部脂肪吸引の手術を受けた70代の女性が手術から2日後に死亡した事故が報じられました.
なお,札幌美容外科の本間院長のブログによると,「美容外科の手術で亡くなられた方が、実名を公表されて…遺影までTVで報道されるのは、極めて異例なことです。知らないところで、事故が起こり、そのまま示談で解決されているケースも私は何件か知っています。」とのことです.

◆ 国民生活センターの報告

一部の腋臭治療,包茎手術は保険適用があるのにその説明を怠った,後から追加料金を求められた,キャンセルをしたら高額な違約金の請求を受けた,キャンペーン価格を理由に高額な施術の契約をせかされた等,消費者契約被害類型の相談と,後述の医療事故類型の相談とがあります.

国民生活センターによると,「プチ整形」「レーザー脱毛」「豊胸」「脂肪吸引」等の広告が目につき,販売方法や広告に問題のあるものや,医師が行う美容施術において皮膚障害や熱傷など危害を受けたという苦情相談が寄せられている,とのことです.
相談は増加傾向にあり,危害に関する相談(医療事故類型)は, 201件(2005年), 239件(2006年), 235件(2007年), 238件(2008年), 287件(2009年)と増えています.2010年は,途中ですが,128件(前年同期119件)と増加傾向がみてとれます.

相談者の申出内容をもとに,国民生活センターがまとめた医療事故類型の「最近の事例」は,以下のとおりです.

● 顔の肝斑(かんぱん)を除くためのレーザー治療を受けたが、内出血しあざができてしまった。医師には「よくあること」と言われた。納得できない。
•美容外科での脱毛によって白斑ができ、医師が一度は落ち度を認めたもののその後、他院の診断書をもらうようにと態度をくつがえした。
● 二重まぶた手術を受けたが、まぶたが化膿して腫れ、目が開けられない。再度診療を受けたが悪化している。
● 数年前に美容外科医院で腋臭と多汗症の施術を受けたら、傷痕がケロイド状になった。きれいに治してその費用を請求したい。
● 病院で足と腕のレーザー脱毛を受けたが、3週間経つのに炎症が治まらずかゆみもある。別の皮膚科で火傷と診断された。返金してほしい。

術前によく説明を受けることはもちろんですが,消費者契約被害類型でも,医療事故類型でも,疑問を感じたら,国民生活センター或いは弁護士に相談した方がよいでしょう.


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by medical-law | 2010-12-13 11:56 | 医療

産科医療補償~原因分析報告書

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写真は,新宿御苑です.

産科医療補償の原因分析委員会は,分娩機関から提出された診療録等に記載されている情報,保護者の意見に基づき、医学的な観点から原因分析を行います.6つの部会があり,各部会は、産科医3 名、小児科医(新生児科医を含む) 1 名、助産師1 名、弁護士2名の計7 名の委員から構成されています.

今朝の日本経済新聞に「出産での新生児脳性まひ、目立つ指針逸脱の診療行為」という記事が載っていました. 
原因分析報告書14件のうち半数で胎児の心拍の監視が不十分で,陣痛促進剤の投与方法や出産後の蘇生法などで学会の指針から逸脱する治療も目立った,という内容です.

11月8日の朝日新聞, 11月27日の読売新聞にも同様の記事が載っていました.

原因分析報告書<要約版>は,財団法人日本医療機能評価機構のホームページに,現時点で14件公表されています.

再び同様な事故が起きないように,信頼できる公正な原因分析が期待されます.


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by medical-law | 2010-12-06 12:37 | 医療

産科医療補償制度の現状

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写真は,新宿御苑です.

11月15日の第42回社会保障審議会医療保険部会に,「産科医療補償制度」の現状が報告されました.それによると,「産科医療補償制度」は,年間800件程度の申請があると見込まれていましたが,実際は94件しかなかったそうです.2009年の支払備金が約262億円となり,保険料引き下げを求める声がでたとのことです.
5歳になるまで申請できるので余剰があるとは断定できませんが,もし余剰があるなら,むしろ補償対象範囲を2009年前の出産に拡大し,また補償金額を引き上げるべきと思います.

◆ 「産科医療補償制度」の目的

「産科医療補償制度」の目的は,次のとおりです.
1)分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児およびその家族の経済的負担を速やかに補償する.
2)原因分析を行い、将来の同種事例の防止に役立つ情報を提供する.
3)これらにより,紛争の防止・早期解決や、産科医療の質の向上を図る.

◆ 補償対象

補償対象は,次のとおりです.
1)産科医療保障制度の加入分娩機関の管理下における分娩であること
2)出生体重が2000g以上かつ在胎週数33週以上で出生したこと
3)身体障害者等級の1級または2級に相当する重度脳性麻痺が発生したこと
4)運営組織が補償の対象として認定したこと

ただし,出生体重・在胎週数の基準を下回る場合でも,在胎週数28週以上の児については,分娩に関連して発症した脳性麻痺に該当するか否かという観点から個別審査が行われます.
なお,先天性要因等の除外基準によって発生した脳性麻痺については,補償対象として認定されません.

申請は,生後6カ月から満5歳になるまでです.
申請は,出産した病院などが行います.
重度脳性麻痺障害が分娩に関連して発症したと思われる場合は,出産した病院に届出た方がよいでしょう.

◆ 原因分析委員会・再発防止委員会

原因分析委員会の報告をもとに,再発防止委員会が分析し,来年4月には再発防止のための中間的な報告書がだされる予定です.


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by medical-law | 2010-12-03 18:26 | 医療