弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1142 )

原因分析報告書要約版(事例番号290397~290403)公表

公益財団法人日本医療機能評価機構は,産科医療補償制度の原因分析報告書要約版(事例番号290397~290403)を公表 しました.
以下のとおり問題点を指摘しています.

事例番号:290403
□ 学会・職能団体に対して
原因不明の脳性麻痺の事例集積を行い、その病態についての研究を推進することが望まれる。

事例番号:290402
〇 妊娠 39 週 0 日 9 時 27 分以降、胎児心拍数陣痛図で胎児心拍数基線頻脈、基線細変動減少、変動一過性徐脈および高度遅発一過性徐脈を認める状況で急速遂娩を実行せずに経過観察としたことは一般的ではない。

事例番号:290401
〇 分娩誘発に関する妊産婦への説明と同意について、「原因分析にかかる質問事項および回答書」によると口頭で行ったが診療録に記載しなかったとされており、メトロイリンテルの使用については基準内であるが、子宮収縮薬使用に関する説明と同意については一般的ではない。
〇 ジノプロスト注射液の投与量について診療録に記載がないことは一般的ではない。
〇 オキシトシン注射液の投与の開始時投与量(5%ブドウ糖注射液 500mL+オキシトシン注射液 5 単位を溶解し 30mL/時間で投与開始)、増量法(15mL/30-48 分で増量)は基準から逸脱している。
〇 回旋異常(後方後頭位)のため、子宮底圧迫法を併用した吸引分娩を実施したことは一般的ではない。
〇 分娩誘発の適応、吸引分娩の要約と実施時刻について、診療録の記載がないことは一般的ではない。
〇 出生後の新生児の処置は一般的であるが、9時に頻脈(心拍数170回/分)と多呼吸(102回/分)を認め、9時50分に筋緊張低下を認めており13時35分に高次医療機関NICUに新生児搬送したことは賛否両論がある。
〇 吸引分娩で出生し、頻脈、多呼吸を認める新生児の状況とその判断について診療録に医師の記載が乏しいことは一般的ではない。

事例番号:290400
□ 学会・職能団体に対して
妊娠後半期における異常な腹痛は、常位胎盤早期剥離や(切迫)子宮破裂などの際に起こるため、異常な腹痛を感じた際の医療機関への連絡等の対応について、妊産婦に周知することが望まれる。
□ 常位胎盤早期剥離は、最近の周産期管理においても予知が極めて困難であるため、周産期死亡や妊産婦死亡に密接に関与する。常位胎盤早期剥離の発生機序の解明、予防法、早期診断に関する研究を推進することが望まれる。

事例番号:290399
□ 学会・職能団体に対して
胎児心拍数陣痛図の劣化に関する対応についての指針を検討することが望まれる。
※ 本事例では、胎児心拍数陣痛図の劣化に伴い波形が読みにくかった。胎児心拍数陣痛図は、原因分析にあたりきわめて重要な資料であるため、劣化に関する対応についての指針を検討することが望まれる。

事例番号:290398
〇 生後 5 分にアプガースコア 3 点となってからの新生児蘇生(バッグ・マスクによる人工呼吸、気管挿管)は概ね一般的であるが、生後 10 分に心拍数 40 回/分であったが、生後 20 分に胸骨圧迫を開始したことは一般的ではない。

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-21 23:52 | 医療事故・医療裁判

中津市民病院が新生児の低血糖を見逃した事案で賠償へ(報道)

大分放送「中津市民病院が医療ミスで賠償へ」(2017年11月11日)は次のとおり報じました.

「中津市民病院で、医療ミスが原因で生まれた子どもが脳性まひになっていたことがわかり、市が母親側に約1億4,000万円の賠償金を支払う方針を決めました。関係者によりますと、2011年、中津市民病院で女性が出産した際、生まれた子どもが低血糖の状態が続き脳性まひになりました。女性から医療ミスを指摘され病院が調査した結果、医師が低血糖を見過ごしていたことがわかりました。病院側は適切な検査や処置をしていれば子どもに障害は残らなかったとして女性におよそ1億4,000万円を支払うことで和解したということです。市は12月の定例市議会で関連議案を提案する方針です。」

上記報道の件は私が担当したものではありません.
低血糖を見過ごすミスは,報道の件以外にも起きています.
例えば,広島地裁平成27年5月12日判決は記憶に新しいものです.,  
各病院はこれを他山の石として再発防止につとめていただきたく思います.

なお,中津市は大分県北西部に位置する人口約8万3千人の市で,生体腎移植を受けた演歌歌手の松原のぶえさんの出身地として知られています.
もし2011年市民病院で生まれ脳性麻痺になった子ども,というだけで特定が容易であれば,プライバシーが守られていないと受け取られこともあるかもしれません.
再発防止に役立つ情報はできるだけ具体的に,個人の特定につながる情報はできるだけ抽象的に,というのが発表の基本原則でしょう.


【追記】
NHK「 新生児に処置せず障害残る 市民病院 1億円余の賠償金」(11月13日)は次のとおり報じました.

「生まれたばかりの赤ちゃんの血糖値が低かったのに適切な処置をせず重い障害が残ったとして、大分県中津市が運営する市民病院は1億4000万円の賠償金を支払うことを決めました。
大分県中津市の中津市民病院によりますと、6年前に生まれた男の赤ちゃんは、出産直後の検査で血糖値が低いことがわかりましたが、心拍数や呼吸数などは正常の範囲だとして適切な処置を行わなかったということです。
赤ちゃんは生後12時間余りがたっておう吐やショック症状を起こし、改めて検査した結果、低酸素脳症が原因と見られる脳性まひと診断され、その後、手足のまひなどの重い障害が残ったということです。
両親はおととし、病院に損害賠償を求め、病院は「適切な管理を行わなかったことが脳性まひを引き起こした」として1億4000万円の賠償金を支払うことを決めました。
市は関連する議案を市議会に提案することにしています。
是永大輔院長は、「患者や家族の皆様に心よりおわび申し上げます。今回の事例を教訓に適切な診療を行っていきたい」と話しています。
一方、両親は、「一般の産院でもありえない対応により、生まれたばかりの子どもが重度の障害を被り、医療的な対応や療養を中心とした生活を送らざるを得なくなりました。市民病院には今後ともこのようなミスを起こさないとともに、公正適切な医療の提供を望みます」とするコメントを出しました。」


谷直樹

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by medical-law | 2017-11-11 20:25 | 医療事故・医療裁判

患者の遺族が群馬大学附属病院に情報公開の徹底等を求める

NHK「群大病院問題 患者の一部の家族が再発防止の申し入れ」(2017年11月9日)は,次のとおり報じました.

「群馬大学附属病院で、腹くう鏡などの手術を受けた患者18人が相次いで死亡した問題で、死亡した患者の一部の家族が病院側との和解に臨む条件として、家族の意見を聞きながら再発防止を進め、情報公開を徹底するよう申し入れたことがわかりました。

群馬大学附属病院では、平成26年までの5年間に40代の男性医師の腹くう鏡の手術を受けた患者8人が相次いで死亡したほか、同じ医師の開腹手術を受けた患者10人も死亡し、外部の調査委員会は、病院の診療体制の不備が背景にあったなどとする報告書をまとめています。
この問題を受けて、死亡した患者の一部の家族が9日、病院側に対し、再発防止に関する申し入れ書を送ったことがわかりました。

この中で、まずは家族の意見を聞きながら改革に向けた取り組みを進めるべきだとしています。そして病院で年に1度、「患者安全の日」を設けて改革の進捗(しんちょく)状況を公表し、再発防止策を打ち出すことや、病院のすべての医師について、手術による死亡率や障害の発生率などを公表するよう求めています。

家族側はこうした内容を病院側との和解に臨む条件としていて、代理人の梶浦明裕弁護士は「これまでの病院側の対応では遺族が置き去りにされかねない。病院には遺族参加型の取り組みを期待したい」と話しています。

申し入れ書について、群馬大学附属病院は「中身を見ていないのでコメントできない」としています。
問題の経緯と調査報告書
群馬大学附属病院では、平成26年までの5年間に、肝細胞がんを患うなどして腹くう鏡の手術を受けた60代から80代の患者の男女8人が相次いで死亡したほか、開腹手術を受けた60代から80代の男女10人も死亡し、いずれも同じ40代の男性医師が手術を担当していたことが明らかになりました。

この問題について、外部の専門家からなる調査委員会は去年7月、当時の診療科の体制や医療倫理を審査する体制など、病院の組織的な体制の不備が死亡例の続発につながったなどとする報告書をまとめました。

この中で調査委員会は、問題の背景として、手術のメリットやデメリットなどを事前に説明する「インフォームド・コンセント」が不十分だったことなど、患者中心の医療とはかけ離れた現場の実態があったとしています。そのうえで、事故の教訓を風化させないために少なくとも10年は再発防止に向けた取り組みを続け、改革の進捗状況を家族にも報告することなどを提言しています。

調査結果をまとめた報告書を受けて、群馬大学の平塚浩士学長は「再発防止に向けた提言を真摯(しんし)に受け止め、改善、改革に取り組みたい。ご家族の皆様には大変なご心痛とご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」と述べました。

この問題では、患者の死亡が相次いだ際に適切な対応を取らなかったとして、18人の手術を担当した男性医師や男性医師の元上司、それに当時の大学の理事ら合わせて9人が処分されています。

男性医師と上司だった元教授は、ことし8月までに一部の家族の求めに応じて面会し手術の経緯などを説明しましたが、家族側は、男性医師らが手術や患者への事前の説明などには問題はなかったという認識を示し、「反省の色が見られない」として、国に行政処分を求めています。」



群馬大学附属病院事件は未だ解決していません.

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-09 22:40 | 医療事故・医療裁判

産科医療補償制度,原因分析報告書<要約版>(事例番号290371~290396)を読んで

26件の原因分析報告書<要約版>(事例番号290371~290396)が2017年11月6日産科医療補償制度ののサイトに掲載されました.

原因分析報告書<要約版>(事例番号290371~290396)では,一般的ではない,逸脱している,などの指摘がある事案も少なくありません.しかも,事案は違っても同じような指摘がなされています.産科脳性麻痺の症例は、現在の医療ではいかんともし難いものもありますが、その医師、助産師の医療レベルが著しく低いために起きているものも少なくないことが分かります.産科医療の底上げを図ることが必要でしょう.
また,同時に、医療過誤に該当する事案は適切な賠償がなされることも必要と思います.3000万円の補償では十分ではありませんし,過失と因果関係のある医療過誤の事案が賠償されずに終わるとすればモラルハザードがおきますので,責任を負うべき事案は責任をとってもらう必要があるでしょう.

事例番号:290396
○ 妊娠39週4日15時10分からの胎児心拍数陣痛図で胎児頻脈を認める状況で15時35分に分娩監視装置を一旦終了したことは選択されることは少ない。
○ 胎児心拍数陣痛図の記録速度を1cm/分としたことは基準から逸脱している。

事例番号:290395
○ 分娩経過中の分娩監視装置の紙送り記録速度を1cm/分としたことは基準から逸脱している。
○ 子宮底圧迫法の施行については、広く産科診療で行われている処置であるが、子宮破裂等の有害事象も報告されている。「産婦人科診療ガイドライン-産科編2017」CQ406-2に示される施行時の注意点を順守するとともに、実施時の児頭の位置や開始・終了時間、実施回数についても診療録に記載する必要がある。

事例番号:290394
○ 胎児心拍数陣痛図にて反復する変動一過性徐脈、遷延一過性徐脈が認められた状態で、陣痛促進を開始したことについては賛否両論がある。
○ 陣痛促進の説明を口頭で行い、診療録に記載していないことは一般的ではない。
○ 妊娠40週2日の子宮収縮薬(オキシトシン注射液)の投与方法について、5%ブドウ糖注射液500mL+オキシトシン注射液5単位を20mL/時間で点滴投与を開始したことは一般的ではない。

事例番号:290394
○ 子宮口全開大後分娩遷延、最大で80拍/分、60秒の変動一過性徐脈頻発(胎児機能不全レベル3)と判断し、吸引分娩としたことは一般的であるが、診療録に子宮口全開大を確認した時刻および遷延分娩であると判断した時刻の記載がないことは一般的ではない。

事例番号:290392
○14時33分に分娩監視装置を終了したことは一般的ではない。
※ 胎児機能不全の診断で帝王切開を決定し帝王切開術の準備に時間を要する場合には、児の状態を適切に把握するために手術開始直前まで胎児心拍数モニタリングによる連続監視を実施することが望まれる。
○ 帝王切開決定から1時間48分後に児を娩出したことは選択されることは少ない。

事例番号:290391
○ 妊娠39週3日14時30分の破水後に分娩監視装置を装着せず、間欠的胎児心音聴取のみを実施したことは基準から逸脱している。
※ 破水時は、一定時間(20分以上)分娩監視装置を装着し胎児の健常性の評価を行うことが求められる。

事例番号:290390
○ 妊娠33週2日、当該分娩機関入院時に超音波断層法を実施したことは一般的であるが、連続モニタリング継続、絶飲食とし、16時29分に翌日帝王切開の予定としたことの医学的妥当性には賛否両論がある。

事例番号:290389
○ 妊娠35週の胎児発育不全と診断後、妊娠38週以降の超音波断層法所見(胎児推定体重、羊水量、臍帯動脈血流)について診療録に記載のないことは一般的ではない。
○ 胎児心拍数陣痛図所見を3時30分に胎児心拍数170拍/分、一過性頻脈少ないと判読し経過観察としたこと、4時15分に胎児心拍数160-170拍/分、基線細変動認めない、一過性頻脈認めないと判読したこと、および医師が経過観察の指示をしたことは一般的ではない。
○ 4時47分高度遷延一過性徐脈が認められる状況で、酸素投与にて経過観察したことは一般的ではない。

事例番号:290388
○ 子宮収縮薬投与中に連続モニタリングとしていないことは一般的ではない。

事例番号:290387
□ 学会・職能団体に対して
事例では先進児娩出後の当該児経腟分娩中に胎児機能不全の適応で帝王切開となった。双胎経腟分娩では先進児娩出後の後続児経腟分娩中に臍帯因子、子宮収縮による絨毛間腔の血流低下、胎盤剥離などで胎児が急速に低酸素状態に陥りやすいとされていることから安全性についての調査研究を行うことが望まれる。

事例番号:290386
○ 常位胎盤早期剥離の原因は、妊娠33週2日に実施された外回転術の可能性が高い。
○ 妊娠33週1日に超音波断層法で骨盤位を確認し、嘱託医療機関を介さずに外回転術についてA医療機関へ連絡をとったことは一般的ではない。
○ A医療機関妊娠33週2日の外回転術実施に際して、同意書を取得したことは基準内であるが、「家族からみた経過」によると、同意書の内容・外回転術の危険性については説明されていないとすれば基準から逸脱している。外回転術実施前後の胎児心拍について、胎児心拍数のみの記載であることは一般的ではない。
※ 助産所における妊産婦の管理においては、「助産業務ガイドライン2014」の「妊婦管理適応リスト」を遵守する必要がある。また、骨盤位の妊婦に対し外回転術などの医療介入を行う場合は嘱託医療機関と連携の上、方針決定する必要がある。

事例番号:290385
○ 妊娠38週3日、微弱陣痛と診断したことは一般的であるが、「原因分析に係る質問事項および回答書」によると、分娩促進に関する妊産婦への説明・同意は、口頭で行ったが診療録に記載しなかったとされており、妊産婦に説明し同意を得た内容について診療録に記載していないことは一般的ではない。
○ オキシトシン注射液使用中、分娩監視装置を用いて子宮収縮と胎児心拍を連続的にモニタリングしたことは一般的である。しかし、残440mLであった点滴内にオキシトシン注射液5単位1アンプルを溶解し15mL/時間で投与開始したことは基準から逸脱している。
○ 胎児心拍数50-60拍/分台、胎児心拍数の回復がないため吸引分娩を開始したこと、要約(子宮口全開大、児頭の位置Sp+2cm)は一般的であるが、吸引分娩における総牽引時間、総牽引回数について診療録に記載がないことは一般的ではない。
○ 出生直後から胸骨圧迫が実施されているが、バッグ・マスクによる人工呼吸を実施せず経過をみたこと、生後20分で10倍希釈アドレナリン注射液を筋肉内投与したことは一般的ではない。
○ 一連の新生児蘇生の経過について診療録へ詳細な記載がないことは一般的ではない。

事例番号:290384
□ 学会・職能団体に対して
入院前(陣痛開始前)に発症した異常が中枢神経障害を引き起こしたと推測される事例を集積し、原因や発症機序についての研究を推進することが望まれる。

事例番号:290383
〇 胎児心拍数波形の評価や対応について診療録に記載がないことは一般的ではない。分娩経過中の妊娠高血圧症候群の妊産婦の分娩監視方法は一般的ではない。
〇 妊娠40週5日陣痛促進前に文書による同意を得て微弱陣痛のため13時01分より子宮収縮薬(オキシトシン注射液)による陣痛促進を開始したことは一般的である。また開始時投与量および投与中の分娩監視方法は基準内である。
〇 妊娠40週5日13時40分以降の胎児心拍数陣痛図所見において、胎児心拍数波形が不明瞭で判読が困難であるものの、基線細変動の消失および遅発一過性徐脈を認めており、この状態で子宮収縮薬の減量(1/2以下量への)、あるいは投与中止をせずに経過をみたことは一般的ではない。

事例番号:290382
〇 ジノプロストン錠による陣痛誘発について、文書を用いて説明したことは一般的であるが、同意書を得ていないことは一般的ではない。
〇 妊娠41週0日8時31分に続発性微弱陣痛の適応で、オキシトシン注射液の投与を開始したことは一般的であるが、口頭による説明と同意を行ったことは一般的ではない。

事例番号:290381
〇 12時54分から14時42分までの胎児心拍数陣痛図、および15時4分以降の胎児心拍数陣痛図の所見で胎児心拍数波形レベル3に相当する状態に対し、微弱陣痛の適応でオキシトシン注射液による陣痛促進を勧め、投与を開始したことは選択されることの少ない対応である。
〇 15時15分以降の胎児心拍数陣痛図で基線細変動減少ないし消失に加え、高度変動一過性徐脈が出現している状況に対し、保存的処置の施行や原因検索を行わずにオキシトシン注射液を増量したこと、および経腟分娩を続行したことは一般的ではない。
〇 帝王切開施行に関する説明と同意を口頭のみで、診療録に記載しなかったことは一般的ではない。

事例番号:290380
〇 光線療法を終了後、総ビリルビン値が18.2mg/dLと上昇が認められている状態で生後8日に退院としたこと、および退院後早期の受診を指示せず経過観察としたことは一般的ではない。
※ 新生児の黄疸について、光線療法終了後に再度血中ビリルビン値の上昇が認められる場合には、退院の可否を検討することや、退院後早期の受診を促すこと等、高ビリルビン血症に対する管理に十分な注意を払う必要がある。

事例番号:290379
〇 微弱陣痛、児頭下降が不良のため、子宮底圧迫法を実施したことは選択肢のひとつであるが、開始・終了時刻について記載がないことは一般的ではない。
〇 出生直後の児の状態や処置についての記載がないことは一般的ではない。
※ 医学的に未解明の先天異常の可能性がある事例の集積を行い、その病態を解明する研究を推進することが望まれる。

事例番号:290378
〇 「胎児ジストレス」の診断で帝王切開の方針としてから5時間41分後に児を娩出したことは選択されることが少ない。

事例番号:290377
〇 搬送元分娩機関において、「原因分析に係る質問事項および回答書」によると妊産婦の出血の連絡に対し、すぐ来院するよう説明したとされており対応は適確であるが、診療録に記載がないことは一般的ではない。

事例番号:290376
□ 学会・職能団体に対して
妊産婦自身が無月経などの身体変化に早期に気付き適切な対応ができるような、相談窓口の設置や周知活動などの体制整備を行うことが望まれる。

事例番号:290375
〇 オキシトシン注射液の初回投与量(糖類製剤500mLにオキシトシン注射液5単位を溶解し、12mL/時間で投与を開始)は一般的であるが、増量方法(1時間49分で12mL/時間から48mL/時間へ増量)は基準から逸脱している。

事例番号:290374
〇 妊娠40週5日23時30分頃からの胎児心拍数陣痛図上、基線細変動減少を伴う高度遷延一過性徐脈を認める状況で、体位変換、酸素投与、超音波断層法の実施のみで急速遂娩を選択しなかったこと、および妊娠40週6日7時20分に微弱陣痛の診断でオキシトシン注射液を開始したことは一般的ではない。

事例番号:290373
〇 妊娠41週0日に分娩誘発を行ったことは一般的であるが、分娩誘発の適応が診療録に記載されていないことは一般的ではない。
〇 妊娠41週1日の13時から開始したオキシトシン注射液の開始時投与量は基準内であるが、増量法(10%マルトース水和物注射液500mLにオキシトシン注射液5単位を溶解したものを15-30分で増量したこと、21時10分以降10%マルトース水和物注射液500mLにオキシトシン注射液10単位を溶解したものを8mL/時間で増量したこと)は基準から逸脱している。
〇 吸引術の適応について診療録に記載がないことは一般的ではない。
〇 吸引術の方法(吸引術回数7回、総牽引時間20分以上)は、選択されることの少ない対応である。
〇 手術室入室まで1時間7分の間、分娩監視装置が装着されなかったことは選択されることの少ない対応である。

事例番号:290372
〇 妊娠40週5日にメトロイリンテル(40mL)を挿入後1時間以内にジノプロストン錠の内服投与を開始したことは基準から逸脱している。
〇 妊娠41週1日9時15分にオキシトシン注射液を開始したことは選択肢のひとつであるが、12時以降、急速遂娩の方針とせずオキシトシン注射液を継続・増量したことは医学的妥当性がない。

事例番号:290371
〇 妊娠38週0日11時30分に分娩監視装置を終了し、約2時間後に再装着したことは一般的ではない。
〇 妊娠38週0日13時45分からの胎児心拍数陣痛図において、胎児心拍数は回復良好と判読したことおよび「診療体制等に関する情報」にあるように、医師は立ち会っておらず助産師のみで分娩管理を行ったとすれば一般的ではない。

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-07 23:43 | 医療事故・医療裁判

最高裁(三小)平成28年7月19日判決,期待権侵害構成と相当程度の可能性論

大橋正春元最高裁判所裁判官が,10月20日,「最高裁判事から見た弁護活動のあり方」と題する講演を行いました.
その内容は,古賀克重先生がブログに詳細に書いています.


上告申立て(民訴法312条)と上告受理申立て(民訴法318条)の並行申立てはやめてほしいが,例外的に医療過誤訴訟では意味があることがあり,破棄した裁判例があった,とのことです.
それが,最高裁(三小)平成28年7月19日判決(判例秘書搭載)です.

高裁判決は,医師の注意義務違反と因果関係を認めなかったものの,「注意義務を尽くさなかったことにより適切な医療を受けるべき利益を侵害され、これにより精神的苦痛を受けていることが認められるから、上告人に同苦痛を慰謝すべき責任を負担させることが相当である」として1100万円の支払を命じました.
これは,適切な医療を受けるべき利益(いわゆる期待権)を侵害したという構成ですが,最高裁は,期待権侵害を認めたことは未だかつてありません.そこで,最高裁が採る,重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性を侵害されたという構成(相当程度の可能性論)での判断に正すために破棄した,とのことです.

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-04 17:16 | 医療事故・医療裁判

十分な説明がなく検査と手術が行われたとして置賜広域病院企業団が提訴される(報道)

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山形新聞「十分な説明なく検査・手術 長井の女性患者、置賜病院企業団を提訴」(2017年11月1日)は,次のとおり報じました.

 「公立置賜総合病院(川西町)で2016年4月、狭心症の検査と手術を受けた長井市の女性が、施術内容について医師から十分な説明がなかったのは義務違反だとして、同病院を運営する置賜広域病院企業団に慰謝料など220万円の損害賠償を求める訴訟を山形地裁に起こしたことが31日、分かった。

 訴状によると、女性は動悸(どうき)などの症状を訴えて救急搬送され、処置を受けた後に帰宅したが、病院の勧めなどから翌日に入院した。担当医師からの十分な説明がないまま検査と手術が行われ、医師からはその後、「ステント(血管を拡張するための金属製の筒)二つ入れました」と報告を受けたとしている。

 日本医師会の「医師の職業倫理指針」では、「医師は検査・治療の内容や方法などについて患者が理解できるよう説明する義務があり、患者の同意が不可欠である」とされているが、女性は「医師から十分な説明がなく、治療への同意もしていなかった」としている。手術後、異物感などに悩まされた上、治療の選択肢を奪われたことで「人格権、自己決定権を侵害され、精神的苦痛を受けた」と訴えている。」



報道の件は,私が担当したものではありません.
患者には,最善の医療を受ける権利だけではなく,説明を受ける権利があります
医療の内容が適切で最善の医療であっても,説明が不足していると説明義務違反が考えられます.
75%以上の狭窄があり,薬物治療の効果が認められないと,循環内科の医師はPCI治療を奨めることがことが多いと思います.とくに,症状があって救急搬送された後では,PCI治療を奨めるでしょう.説明がないままにPCI治療が行われることは普通ないのですが,医師がPCI治療が当然と考えると,他の選択肢を念頭においた説明が不足することがあるのかもしれません.

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-02 08:42 | 医療事故・医療裁判

東京地裁,調剤ミスで約360万円の支払いを命じる(報道)

共同通信「調剤ミス、薬局に賠償命令 薬に千倍の成分で意識障害」(2017年10月30日)は次のとおり報じました.

「適量の千倍の成分を含む飲み薬を誤って出され、意識障害を起こしたとして、東京都中央区の男性(51)が薬局に約7100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は30日、約360万円の支払いを命じた。

 後藤健裁判長は、薬局の調剤ミスを認め「原告の精神的苦痛は大きい」と指摘した。

 判決によると、男性は2007年3月、のどに違和感を訴え中央区の病院を受診。唾液や胃液の分泌を抑制する「硫酸アトロピン」を含む粉薬を処方された。

 処方箋は、1包当たりの硫酸アトロピンを0・5ミリグラムと指定したが、近くの薬局で薬剤師が単位を取り違え、0・5グラムとして調剤した。」


これは私が担当した事件ではありません.
調剤ミスは示談で解決することが多いので,判決は貴重です.



谷直樹

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by medical-law | 2017-10-31 09:06 | 医療事故・医療裁判

社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院が肝生検後の女児死亡で提訴される(報道)

朝日新聞「肝生検後に11カ月の女児死亡、両親が横浜の病院を提訴」(2017年10月27日)は,次のとおり報じました.

「横浜市鶴見区の横浜市東部病院で2010年、肝臓組織を採取する検査を受けた女児がその後死亡したことをめぐり、両親が26日、「病院の術後管理が不適切だったのが原因」などとして、病院側に約9千万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。両親の代理人弁護士が明らかにした。

 訴状によると、当時生後11カ月だった女児が10年9月1日、胸部から針を刺して肝臓組織を採取する検査(肝生検)を受けた後、容体が急変して同2日に死亡した。監察医による解剖の結果、女児の死因は肝生検による失血死とされた。

 両親側は、経験の浅い医師らの施術によって肝臓から出血した過失があったと主張。検査後に手足が冷たくなったり、唇が青白くなったりするなどの異常が現れたにもかかわらず、医師らが適切な対応をとらなかった、などと訴えている。

 横浜市東部病院は取材に対し、「見解は裁判で表明したい」とコメントした。」


報道の件は私が担当したものではありません.
監察医による解剖の結果死因が肝生検による失血死とされたこと等からすると病院に責任がありそうですが,裁判の結果に注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-10-28 10:03 | 医療事故・医療裁判

青森市民病院,患者の名前を確認せず血圧降下剤や高血圧治療薬を心不全患者に服用させ死亡させる(報道)

産経新聞「誤投与、80代女性死亡 青森市民病院」(2017年10月27日)は,次のとおり報じました.

「病院によると、女性患者は7月25日に心不全などの症状で入院した。9月24日朝、女性を担当していた20代の女性看護師が、別の患者向けの血圧降下剤や高血圧治療薬を服用させた。投与後すぐに気付き、女性患者はその後、集中治療室で治療を受けたが、10月14日に心不全で死亡した。

 看護師が薬を入れた容器に貼られた患者の名前を確認しなかったことが原因としている。病院は処分を検討する。

 病院は遺族に謝罪した上で、賠償などの協議に応じる方針。遠藤正章院長は記者会見で「遺族に心からおわび申し上げる。病院を挙げて安全な医療体制の構築に努める」と述べた。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
マニュアルは確認を求めています.ところがマニュアルを無視する看護師がいます.確認を必ず行わせるためには,研修,教育の徹底が必要でしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2017-10-28 09:50 | 医療事故・医療裁判

10月28日(土)医療問題弁護団40周年記念シンポジウム『医療現場の今日的課題』

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医療問題弁護団副代表の大森夏織先生から,昨日,電話があり,医療問題弁護団40周年記念シンポジウム「医療現場の今日的課題」に出席するか,聞かれました.
当然予定に入れておりましたので,出席します,と答えました.
医療問題弁護団のサイトには,以下のとおり掲載されています

日時:2017年10月28日(土)13:00~17:00
(開場12:30)
場所:イイノホール 4階 ルームA

私たち医療問題弁護団は、医療被害の救済・医療事故再発防止・患者の権利確立を目的として1977年に結成して以来、40周年を迎えました。
40年前、私たちは「医療に巣くう病根」を4つの視点から分析しました。40年後の現在、私たちが取り組んできた医療被害救済に関する事件活動もふまえ、医療現場に残された現代的課題について、団員の報告やパネルディスカッションを通じて探っていきたいと思います。

[プログラム]
第1部 報告 (13:00~14:30)
医療問題弁護団からの報告
~40年前の「医療に巣くう病根」と、医療現場の現代的課題~

第2部 パネルディスカッション (14:45~17:00 質疑応答含む)
<パネリスト>
豊田郁子氏(患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋 理事長)
浦松雅史氏(東京医科大学医学部 医療の質・安全管理学分野 専任講師)
隈本邦彦氏(江戸川大学教授)
児玉安司氏(弁護士)
安原幸彦(弁護士 医療問題弁護団代表)
<コーディネーター>
安東宏三(弁護士 医療問題弁護団幹事長)

お問い合わせ先
TEL03-3736-1141
東京南部法律事務所 弁護士 大森夏織


どなたでも事前申し込みなく参加できます.

【追記】

J-CAS「医療弁護団が40周年記念シンポジウム ミスや事故を防ぐ安全策を提言」(2017年11月13日)は,次のとおり報じました.

「患者側弁護士である医療問題弁護団 (安原幸彦代表、団員約 250人) の40周年記念シンポジウムが2017年10月28日、東京・イイノホールで開かれた。

1976年 9月の結成から医師と患者の関係や、医療関係者を取り巻く労働環境などを医療事故の原因と指摘してきたが、今回は40年の活動を「医療現場に残された現代的課題」のタイトルで分析、整理し、 8人の弁護士が発表、続いて患者団体代表、病院側弁護士なども交えたパネルディスカッションが行われた。

交通事故の 4倍の人が医療事故で亡くなっている

報告は多岐にわたった。たとえば、基本になる医師・患者関係については、米国からのインフォームド・コンセントは「説明と同意」という狭い意味にとどまり、今日まで、説明不十分が続いていると指摘した。そのうえ、事実上制限なしの長時間労働が医療現場の労働強化になり、「医療の安全」を脅かしていると分析。医師の 7割が「当直明けの手術で質の低下を感じる」、6 割が「長時間労働が医療ミスを誘引」と考えていることから、診療以外の業務を整理し、主治医制から交代制への転換なども提言した。

チーム医療や交代制では連携が重要だが、医師と看護師・薬剤師などの上下関係、医師と助産婦など業務範囲の重複、医師と技師の分担でミスが生じている。病院内のチェックシステムは進んできたが、医療安全室の権限がまだ弱いこと、事故調査制度などの不備で外部からの目はさらに届きにくい。安全施策に対する保険点数の配分など経済的手当ては不十分なままだ。

弁護団はまた、聖職者、弁護士と並ぶ医師のプロフェッション論を展開し、医療界全体が自己規律を高め、意識改革や相互チェック、さらには違反者への懲戒や再教育が必要とも提言した。

パネルディスカッションでは、元 NHK記者の隈本邦彦・江戸川大学教授が、全国で年間 2万2000人、交通事故の 4倍の人が医療事故で亡くなっていると推計し、患者を救うため国はヒト、モノ、カネをつぎ込むべきなのに、政治、社会の無理解、医療界の対応に問題がある、と鋭く指摘した。

(医療ジャーナリスト・田辺功)」


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-24 01:06 | 医療事故・医療裁判