弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1088 )

高知市の医療法人西武クリニックの偽医師事件で2人逮捕(報道)

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FNN「100人超に整形手術 偽医師逮捕」(2017年5日23日)は,次のとおり報じました

「医師免許を持っていないのに美容整形手術をしたとして、61歳の偽医師と、クリニックのオーナーが逮捕された事件で、偽医師の男は、容疑を認めていることがわかった。
医師法違反の疑いで逮捕されたのは、高知市の医療法人「西武クリニック」の職員●●容疑者(61)と、オーナーの△△△△容疑者(71)。
警察によると、2人は共謀し、2016年2月、高知市の女性に対し、医師免許がないのに麻酔注射を打ち、二重まぶたの整形手術を行った疑いが持たれている。
●容疑者は逮捕前、FNNのカメラの前で、「(医師免許が必要な手術をした?)しました。(何人に?)100人以上。(整形手術の技術はどこで?)見よう見まねで覚えた」と語っていた。
森容疑者は、事務員として働いていた愛知・名古屋市の病院での経験を基に、高知市のクリニックで、10年間で100人以上に美容整形手術をしたと語った。
調べに対し、●容疑者は「間違いありません」と容疑を認め、△△容疑者は「全く知りません」と否認している。 (高知さんさんテレビ)」


これは私は担当した事件ではありました.
偽医師が10年も発覚なかったのは驚きです.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-24 12:42 | 医療事故・医療裁判

名古屋大学医学部附属病院,10年前に作成した頚部手術後管理ガイドラインが共有されず患者が死亡(報道)

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朝日新聞「甲状腺の手術後に患者窒息死 術後の対応ミス 名大病院」(2017年5月24日)は,次のとおり報じました.

「名古屋大学病院(名古屋市昭和区)は23日、甲状腺がんの手術翌日に患者が死亡する医療事故があったと発表した。過去にあった同様の死亡事故を受け、手術後の対応を定めた院内ガイドラインがあったが、徹底されていなかった。石黒直樹病院長は「組織として教訓が生かされていないのは全く情けなく、本当に申し訳ない」と陳謝した。

 名大病院によると、患者は三重県在住の20代男性。2015年7月に甲状腺を摘出し、右の頸部(けいぶ)リンパ節を取り除く手術を受けた。

 手術翌日の午前7時ごろ、患者の首に腫れがあると看護師から連絡を受け、執刀医とは別の専門医が診察。聴診や触診などで術後の浮腫と判断し、経過観察とした。その際、ガイドラインで挙げている超音波検査や、手術の傷口を一部開けて出血状態を確認するなどの対応をしなかった。

 患者はその約1時間50分後に呼吸困難を訴え、心肺停止。蘇生措置が行われたが死亡した。術後に首の内側で起こった出血で血腫ができ、気道が塞がれたことによる窒息が死因だった。出血部位は分からなかったという。

 名大病院では1983年と06年にも、首の手術後にできた血腫を見落とし患者が死亡。07年にガイドラインをまとめ、関連部署に閲覧を指示していた。しかし、担当科の医師の多くが専門外の医師向けのものと誤解し、読んでいなかったという。名大病院は、手術には問題なかったが、ガイドライン通りに対応していれば防げたとして、医療事故と結論づけた。」


読売新聞 「名大病院 手術翌日 男性死亡」(2017年5月24日)は,次のとおり報じました.

「発表によると、患者は同病院で15年7月、甲状腺乳頭がんを切除する手術を受けた。手術翌日の午前6時頃、首がはれているのがわかったが、乳腺・内分泌外科の当直医は炎症と判断して経過観察とした。患者はその後、呼吸困難を訴え、内出血による窒息状態で死亡した。同病院の調査委員会は手術自体に問題はなかったとする一方、マニュアルでは、はれが見つかった場合は縫合した傷口を開き、血腫の有無などを確認するよう求めていたとして、当直医の対応を不適切と認定した。当直医は手術には加わっていなかったという。

 マニュアルは、同種の医療ミスが1983年と2006年にあったことを重く見て07年、乳腺・内分泌外科主導で作成されていた。調査委の聞き取りに対し、当直医ら同科の医師は「自分たちは専門家なので、精読の必要はないと思っていた」と話したという。」


これは私が担当した事件ではありません.
頚部手術管理ガイドラインが策定されていた名大病院で頚部手術後の管理にあたる医師は,同病院の頚部手術管理ガイドラインをよく読む注意義務があります.
医療事故をふまえて10年前に乳腺・内分泌外科主導でガイドラインが作成されていたのですが,1現在の乳腺・内分泌外科の医師はそれをよく読んでいなかったとのことですので,注意義務違反にあたるでしょう.
同ガイドラインを読んでそのとおり行っていれば,患者の死亡は防止できたのですから,注意義務違反と患者の死亡との間に因果関係があります.
院内で策定されたガイドライン,マニュアルが守られず,そのために医療事故が起きることがしなしばあります.ガイドライン,マニュアルを周知徹底することが必要です.
ちなみに,仮に同ガイドラインがなかったら責任を問われない,というわけではありません.同種の医療事故があったことは予見可能性があったことを意味し,それに対する防止対策(ガイドライン,マニュウアル作成など)をとらなかったとすれば,その不作為で責任を問われる可能性があります.報道では具体的事実の詳細がわかりませんが,術後出血を疑って検査する義務がなかったとは言い切れません.
なお,名大病院が事故調査結果を公表し,謝罪したことは,評価できます.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-24 07:49 | 医療事故・医療裁判

神戸市の病院の産科医療事故で,遺族が院長を刑事告訴(報道)

b0206085_11195128.jpg神戸新聞「無痛分娩で医療ミス、妊婦死亡 刑事告訴へ 神戸」(2017年5月19日)は次のとおり報じました.

「神戸市中央区の「母と子の上田病院」で2015年8月、麻酔を使い出産時の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で女児を産んだ女性が、担当した男性院長のミスで亡くなり、示談金を支払うことで遺族と同病院が示談していたことが18日、分かった。遺族は19日、男性院長を業務上過失致死の疑いで刑事告訴する方針。

 亡くなったのは篠原稚子(わかこ)さん=当時(36)。遺族などによると、15年8月19日、同病院で無痛分娩による出産をした際、陣痛促進剤を多量に投与され、出産後に子宮内からの大量出血により重度の低酸素脳症を発症。意識不明の重体となり、約1年後に急性循環不全で死亡した。

 病院側は当初、羊水が血管内に流れ、血流を遮る「羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)」として責任を認めなかったが、後に過強陣痛の緩和や帝王切開など適切な対応をしていなかったとして男性院長のミスを認め、示談金を支払った。・・・」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.
報道からすると,陣痛促進剤多量投与→過強陣痛→大量出血→搬送→遷延性意識障害→死亡という経過をたどった事案のように思います.
陣痛促進剤の適正使用に問題があった事案と考えられます.
医師の過失により患者が死亡した事案は少なくありませんが,医師を業務上過失致死罪で起訴され,有罪になるのはきわめてまれです.
検察官は,本件について医師を業務上過失致死罪で起訴できるのか,注目したいと思います

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-23 11:19 | 医療事故・医療裁判

鹿児島地裁平成29年5月17日判決,転院の遅れで介護老人保健施設に1870万円の賠償命令(報道)

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共同通信「肺炎見落とし賠償命令 鹿児島の介護施設」(2017年5月18日)は,次のとおり報じました.

「介護老人保健施設「沖永良部寿恵苑」(鹿児島県和泊町)で2012年に入所男性=当時(61)=が死亡したのは、肺炎を発症したのに適切な病院に転院させなかったためとして、兵庫県尼崎市に住む妻が2750万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は17日、施設側に1870万円の支払いを命じた。」

この件は,私が担当したものではありません.
判決の認容金額からすると,適切な病院に転院し,肺炎について適切な治療が行われたなら,結果が回避されたことが認定されたことになります.川崎聡子裁判長は「発熱などの症状が出た時点で肺炎を疑い、エックス線など必要な検査をして適切な病院へ転院させるべきだった」と指摘し、施設側の過失を認めたとのことです.
介護老人保健施設で,入所者が肺炎となり死亡する事案はすくなくありません.
施設は,本判決を参考に,肺炎が疑われる患者について適時に病院におくるようになることを期待します.

なお,谷直樹法律事務所では,病院だけでも相談が多いので,介護老人保健施設の事件は現在取り扱っていません.

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by medical-law | 2017-05-19 04:35 | 医療事故・医療裁判

患者側弁護士のdiversity~示談と裁判

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患者側弁護士はdiversity(多様性)があります.
同じ案件でも,患者側弁護士によって,見立てが違う場合がありますので,患者側弁護士のセカンドオピニオンを聞くことは有用と思います.
医療事件の進め方にも,弁護士のdiversityがあります.
示談件数のほうが裁判件数より多いのは,患者側弁護士に共通ですが,その比率は,それぞれの弁護士によって異なるでしょう.

最近,「昔は裁判までと考えていましたが、経験を重ねていく中で、示談でまとめる方針をとるようになりました。」という患者側弁護士の記事を読みました.
患者側弁護士が経験を積んで示談方向に方針を変えたことを知り,とても興味深く思いました.

《示談か裁判か選択を迫られる状況》
1 相手方が裁判と同じ金額を提示しているなら,示談のほうが低コストですので,誰しも示談を選択するでしょう.
2 相手方は,裁判と同じ金額ではなく,何割か割引した金額を提示する場合も結構あります.この場合は,早期解決のメリット等と割引率の検討になるでしょう.
3 相手方は,そもそも責任がないと主張し,ゼロ提示ないし見舞金程度の提示しかない場合も少なくありません.この場合にどうするかが問題です.

《劇的な選択の例》
「ハムレット」の次の台詞は有名です.

To be, or not to be? That is the question—
Whether ’tis nobler in the mind to suffer
The slings and arrows of outrageous fortune,
Or to take arms against a sea of troubles,
And, by opposing, end them? To die, to sleep—

国王の犯罪の証拠を集め困難な戦いを挑んで死ぬのか,それとも国王への復讐を諦めるのか,ハムレット王子は悩みます.それが上の台詞です.同王子は,最終的に復讐を果たしますが,無関係な人を錯誤により殺すなどし,同王子自身も亡くなります.
もし同王子が復讐を諦めていたら,国王と王妃は長生きしたでしょうし,侍従長一家が側杖を受けることもなく,同王子自身も幸せな結婚をしたことでしょう.(観客は復讐を諦めたもう1つのハムレット劇を見たいとは思わないかもしれませんが...)

もしリア王が娘への分割を誤らなければ,もしオセロ将軍がイアーゴーの虚言を信用しなければ,もしマクベス将軍が謀反を起こさなければ,悲劇はおきなかったはずです.

もちろん,冒険しないことが良いわけではありません.12歳の4人の少年たちが死体探しの冒険に出かけなければ,キャッスルロックの田舎町の物語はなかったはずです.

《示談か裁判かの選択において考慮すべき要素》
医療被害者には,今まで経験したことのない状況における正しい選択が求められています.
医療過誤も損害賠償事件の1類型ですから,基本的に,コスト,リスク,リターンの3要素で判断することが必要で,コスト,リスク,リターンについての情報を得るために,弁護士に相談することになるでしょう.
ただ,医療過誤事件は,自分自身又は家族への,生命,身体に対する侵害についての賠償を求めるものですから,気持ちの部分も大きく,単なる経済的利益の得失だけで判断できる問題ではありません.
そこで,経済的利益の得失を基本としつつ,それにとどまらず,総合的な判断で方針を選択することになるでしょう.

《私の方針》
患者側弁護士として調査を行い,過失と因果関係について立証可能と判断した案件では,ゼロ回答には原則提訴と考えますが,立証不成功のリスクがないわけではありません.
依頼者には,わずかなリスクでも躊躇する方もいれば,やや大きめのリスクでも提訴を希望する方もいます.

判決を残すことの意義は高いですが,他方,示談で早期に解決するメリットは大きいです.
依頼者により,どちらを重視するかは異なります.

裁判はコストがかかります.基本的に,コストに見合うだけの賠償額が見込めない場合は,裁判はお奨めできませんが,損害額が比較的少額で,相手方が責任を完全否定している状況で,過失と因果関係の立証見込みが高い場合は,依頼者とよく話し合い,提訴することもあります.

私は,20年の経験を積んできましたが,示談優先主義でも裁判至上主義でもなく,依頼者優先主義です.示談と裁判どちらの選択もあり得るケースでは,私は,裁判のコストとリスクと裁判所が認めるであろう賠償額を,その事案に即してできるだけ具体的に,依頼者にお伝えするようにし,依頼者に選択をお願いしてきました.

《選択が賢明で正しいものになるように》
私は,依頼者が裁判を選択したときは,それが賢明で正しい選択となるように,費用的に許される範囲ではありますが,立証に全力を尽くし徹底的に戦ってきたつもりです.力及ばずして敗れることはありますが,力尽くさずして敗れることはありません.
私の場合,裁判は判決を目指し徹底的に戦いますので,裁判が長引いてしまうことも多々あり,平成25年提訴で未だ一審段階のものが2件あります.


谷直樹

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by medical-law | 2017-05-10 23:49 | 医療事故・医療裁判

患者側弁護士のdiversity~証拠保全とカルテ開示

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患者側弁護士はdiversity(多様性)があります.
同じ案件でも,患者側弁護士によって,見立てが違う場合がありますので,患者側弁護士のセカンドオピニオンを聞くことは有用と思います.

或る弁護士が責任追及困難と判断した事案を別の弁護士が検討して責任追及可能という判断になる場合もありますし,逆の場合もあります.
なお,私は,攻めるタイプとみられがちなのですが,自分では,冷静に中庸の判断を行っているつもりです.

医療事件の進め方にも,弁護士のdiversityがあります.

《証拠保全とカルテ開示》
診療記録の入手方法には,証拠保全とカルテ開示があります.
最近,「証拠保全が原則です。」という患者側弁護士の記事を読みました.
これは,オーソドックスな考え方で,今でも当然ある考え方です.
私は,証拠保全かカルテ開示かは一概には決められませんが,原則は「カルテ開示」と考えています.あらためて私の考え方を書きます..

《証拠保全のメリットその1 改ざん防止》
証拠保全のメリットは,一般に,改ざん防止と言われます.
そもそも,今はカルテは開示請求されるものという意識で書かれていますので,不利な事実は最初から記入されていないことも多く,改ざんすることは少ないと思います.
電子カルテの場合,改ざんは履歴に残りますので,履歴も改ざんしないと完全ではありません.電子カルテの改ざんは不可能ではありませんが,一般的には困難である,と言えるでしょう.
また,証拠保全でも改ざんが確実に防止でjきるというものでもありません.私は,証拠保全を行って入手したカルテに改ざんがあった経験があります.ちなみに,この改ざんは判決で認定されています.

《証拠保全のメリットその2 完全な記録の入手》
次に,証拠保全のメリットは,一般に,もれなく完全な記録を入手できることと言われます.
たしかに,カルテ開示請求で,当然あるはずの重要な記録を出してこない場合もあります.
患者側弁護士が代理人に就いて損害賠償請求を行ったとたんに,カルテ開示請求で出なかった重要な記録が,出てきたことも結構あります.
カルテ開示請求の段階では医療機関の担当者が出さないほうがよいと判断して出さなかった記録が,医療機関の代理人に就いた弁護士の指導で出てきたのかもしれませんし,あるいは単なる手違いなのかもしれません.
ただ,これは,確信犯的に行っている場合は,証拠保全でも同じです.証拠保全後に,担当医師の部屋にあったとして,追加記録が任意提出された経験もあります.

《証拠保全のデメリット 費用と時間》

証拠保全のデメリットは,カルテ開示に比べ,費用と時間がかかることです.


《私の方針》

医療機関により,改ざん,隠蔽の可能性について高低がありますので,私は,原則は「カルテ開示」で,例外的に,改ざん,隠蔽の可能性の高い医療機関については証拠保全を行うようにしています.

10年前はカルテがないと判断ができないので証拠保全ばかり行っていましたが,証拠保全で入手したカルテをみると医療過誤ではないことが明白な場合も少なくありませんでした.医療過誤でないことをご理解いただき気持ちに整理をつけることも大切なことですが,依頼者に何十万円もの費用のご負担をかけることは申し訳なく思っていました.
カルテ開示が普及した今は,相談のときに,カルテをおもちいただくと,相談費用のみで一応の見立てができます.カルテをみると医療過誤の可能性の高低が分かり,その後の方針が立てやすく,最小の時間と費用で進めることができます.
医療事件は,どうしても費用と時間がかかります.私は,スタート時点での費用と時間はできる限り節約したい(医療過誤であれば,もっと有意義なところに費用と時間をかけたい)と思い,「カルテ開示」を原則としています.

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by medical-law | 2017-05-09 21:56 | 医療事故・医療裁判

整形外科病院が肘の靱帯再建手術の過誤で引退を余儀なくされた元ラグビー選手と約6千万円で和解(報道)

私が担当したものではありませんが,ラグビー元日本代表の真羽闘力さんが,2013年に,福岡市内の整形外科病院で負傷した左肘の靱帯再建手術を受け,手術の過誤により指が動かなくなる障害が残り,引退した件で,さいたま地裁で行われていた裁判が,2017年4月26日に,病院側が約6千万円を支払う内容で和解していたことが報じられました.

産経スポーツ「手術失敗で引退」のラグビー元日本代表、6000万円で和解」(2017年5月8日)ご参照

これは,野球選手が受けることの多い手術ですが,失敗はほとんど聞かないので,また靱帯再建手術で運動神経を損傷するのは回避可能のはずですから,この件は医師の不注意によるもので,医療過誤であることは明らかな事案でしょう.

争点は損害の評価でしょう.
指が動かなくなる障害は,その程度に応じて障害等級が判断されますが,逸失利益の算定にあたっては,職業が考慮されます.裁判例では,ピアノ教師,画家などの事案があります.
ラグビー選手(元日本代表)の場合,具体的にどのように算定するのか,一応の参考になる金額と思います.

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by medical-law | 2017-05-09 00:36 | 医療事故・医療裁判

半田市立半田病院,下大静脈分岐部を損傷し出血性ショックで患者が死亡した事案で250万円示談(報道)

朝日新聞「医療事故で女性死亡 愛知県半田市250万円賠償へ」(2017年5月8日)は,次のとおり報じました.

「愛知県半田市は8日、市立半田病院でがん手術中の事故によって死亡した60代女性の遺族に、解決金として250万円の損害賠償を支払うことを明らかにした。

 病院によると、2015年8月、産婦人科統括部長だった50代男性医師の執刀で、子宮体がんの女性から子宮などを摘出する手術をした。リンパ節に見つかった微少な出血を電気メスで止めようとした際に下大静脈分岐部を損傷し、大きな出血が起きた。血管外科医にも応援を求めて止血を試みたが完全には止血できずに手術を終了。女性は翌日、出血性ショックで死亡した。執刀した医師は手術経験が豊富だったという。

 石田義博院長は「止血方法が明らかに間違っていたとは言えず、重大なミスはなかった。遺族にも事故の経過を説明し、納得してもらった」と話した。」


これは,私が担当したものではありません.
どのようにして,この金額になったのかはわかりませんが,250万円という金額は,因果関係まで全部認めたとはいえないでしょうが,義務違反があることを前提とする金額と考えてよいでしょう.
市立半田病院ということで,1995年 6月の腹腔鏡下肝切除医療事故とそれを契機とする「医療事故市民オンブズマン メディオ」を思い出しました.

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by medical-law | 2017-05-08 23:43 | 医療事故・医療裁判

無痛分娩で妊婦が死亡

NHK「「無痛分べん」で女性死亡 医師を書類送検へ 大阪」(2017年4月25日)は,次の通とおり報じました.

「ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院で、「無痛分べん」で出産した31歳の女性が意識不明になり、その後、死亡していたことがわかりました。
警察は、女性が呼吸不全になった際に、医師が人工呼吸などの十分な対応をしなかったとして、業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。

捜査関係者などによりますと、ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で、31歳の女性が、麻酔で陣痛の痛みを和らげる「無痛分べん」で出産中に意識不明の状態になりました。
赤ちゃんは無事に産まれましたが、女性は、およそ10日後に低酸素脳症で死亡したということです。

これまでの捜査で女性は、59歳の院長が背骨に局所麻酔の注射をした際に容体が急変し、呼吸不全になったと見られることがわかったということです。

警察は、人工呼吸を続けて体の状態を回復させるなどの十分な対応をしなかったとして、近く院長を業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。」

「厚生労働省の研究班の調査では平成20年の時点で全国およそ250の施設が無痛分べんを実施していたということですが、陣痛の痛みを感じずに、出産できることなどから、妊婦の間で人気が高まっていて、ここ数年でさらに増えていると見られます。

一方、麻酔をかける必要があることから、副作用には細心の注意が必要だとされています。無痛分べんでは背骨の中に注射をするなどして局所麻酔をかける「硬膜外麻酔」と呼ばれる方法が一般的です。
硬膜外麻酔は、一般の産科の医師でも行うことが認められていますが、麻酔科の専門医によりますと、誤って血管や脊髄などに麻酔薬を投与してしまうと意識を失って呼吸ができなくなるケースや血圧が急激に低下するケースなど深刻な合併症が起こるということです。
いずれも迅速に対応すれば回復するということで、麻酔をかける際には患者の変化を見逃さないよう細心の注意が必要だということです。」


無痛分娩が普及したこと自体はよいことですが,無痛分娩により異変が起きたとき適切迅速に対応できる産科医師・施設が少ないように思います.


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by medical-law | 2017-04-28 10:04 | 医療事故・医療裁判

WHO,投薬ミスによる損害が年間420億ドル,医療費の1%

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世界保健機関(WHO)は,先月,薬の処方や服用のミスによる損害が年間420億ドル(約4兆7千億円)で,医療費の1%に当たるという試算を公表し,投薬ミスによる損害を半減させる取り組みを開始したとのことです.

日本経済新聞「投薬ミスで年4兆円超損害 WHO、半減目指す」(2017年3月30日)は,次のとおり報じました.

「ミスは医療従事者の疲労やスタッフ不足、訓練の不十分、さらに患者の知識不足などが原因で、いずれも防止可能と強調した。

 特に誤って使用した場合、害となる危険性の高い薬の取り扱いや、さまざまな疾患で複数の投薬を受けている患者の扱いが鍵になるとして各国に早期の対策を求めた。」


薬についての医療事故,医療過誤は多く,私は,つねに複数の投薬ミス事件を担当してきました..
例えば,
①公立病院で,腸閉塞の疑いのある患者に大腸検査前処置用下剤を投与した後,診察することなく,経口腸管洗浄剤を投与した事件(投与後死亡),
②個人病院で,無痛分娩のための麻酔薬投与後の患者観察を怠った事件(投与後遷延性意識障害),
③総合病院で,添付文書に反した方法で過大な量の硫酸マグネシウム製剤を投与した事件(投与後遷延性意識障害),
④大学病院で,別の患者のために用意された薬を投与した事件(投与後死亡),
⑤入院設備のない個人医院で,日帰り手術を実施し高齢者に呼吸抑制作用のあるペンタゾシンとミダゾラムを投与した事件(投与後死亡)
⑥総合病院で,医師がリバーロキサバン再開指示を忘れ,患者が脳梗塞を発症した事件

などがあります.
投薬による医療過誤の事件は,示談で解決することも少なくありません(上記②・④・⑥は解決済み)が,過失は明らかでも,死亡または遷延性意識障害との因果関係が不明であるという理由で賠償義務を否定され,裁判になることもあります(上記①はこれから提訴,上記③・⑤は係争中).

私は,医療過誤事件について,賠償を求めるのみならず,事故の公表を求め,再発防止の策定を促すことを意識的に追求してきました.
とくに,投薬による医療過誤については,その気になって再発防止に努めれば,有効な再発防止が可能分野の一つだと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-04-20 08:56 | 医療事故・医療裁判