弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1067 )

名古屋地裁平成29年3月17日判決,てんかん治療薬投与の適応を認め,説明義務版を認める(報道)

b0206085_573174.jpg中日新聞「てんかん薬後遺症、病院側に賠償命令 名古屋地裁「説明不十分」」 (2017年3月17日)は,次のとおり報じました.

「めまいの治療に依存性の高いてんかん治療薬を使用され、重い後遺症に苦しんだなどとして、名古屋市緑区の会社員多田雅史さん(59)が、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)に約1億6千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は17日、副作用のリスクなどの「説明義務違反があった」として約117万円を支払うよう命じた。

 判決理由で朝日貴浩裁判長は「投薬の有効性や長期服用による依存の可能性を十分に説明したとはいえない」と指摘。てんかん治療薬の投与については「医学的に相応の合理性があった」として、センター側の注意義務違反を認めなかった。

 判決によると、多田さんは2004年、めまいを訴え同センターを受診。てんかん治療薬の服用を1年以上続けたが、めまいは完全にはなくならず、別の病院で薬物依存症と診断された。

 多田さんは「投与についてセンターの責任を認めなかった不当な判決」と述べ、控訴する方針。同センターは「主張が一部認められず遺憾。判決内容を検討し、今後の方針を決めたい」とコメントした。」


これは,私が担当した事件ではありません.

適応義務違反は,一般に,裁判所がなかなか認めない,ハードルの高い過失ですが,控訴審裁判所(名古屋高裁)の判断に注目したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-20 04:59 | 医療事故・医療裁判

中津市民病院,首の腫瘍を取り除く手術の際肩の神経の一部を切断し後遺症が残った事案で560万円賠償

b0206085_4272046.jpg大分放送「中津市民病院の患者に損害賠償支払いへ」(2017年3月17日)は,次のとおり報じました.

「中津市は市民病院で医療ミスがあったとして、患者に560万円の損害賠償を支払う追加議案を17日市議会に提出しました。中津市によりますと、2015年9月中津市民病院で患者の首の腫瘍を取り除く手術を行った際、肩の神経の一部を切断しました。病院側は、事前に手術の影響でしびれや痛みなどが起きる可能性を説明しましたが、腕に想定以上の機能障害が発生しました。患者はリハビリ後も左肩にしびれなどの後遺症が残ったままということです。市は「患者に肉体的精神的苦痛を与えた」として、560万円の損害賠償を支払う方針を示し、17日の市議会で追加議案を上程しました。」

報道の件は,私が担当したものではありません.

手術により痛み,しびれが起きること自体は回避できませんので,「合併症」という言い方がされることがあります.具体的な痛み,しびれの部位,程度によっては,それが回避できない合併症の範疇に入るか否かは検討の余地があります.



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by medical-law | 2017-03-20 04:28 | 医療事故・医療裁判

東京慈恵会医科大学附属病院が画像診断書を確認せず患者が死亡した件で遺族らが再発防止を要望

b0206085_3532194.jpg日本経済新聞「画像診断見落とし患者死亡、国に再発防止を要請 遺族ら」(2017年3月17日)は,次のとおり報じました.

「東京慈恵会医大病院で肺がんの疑いがあると指摘された男性(2月に死亡)の画像診断書が約1年間放置された問題で、医療事故の遺族らでつくる市民団体「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」が17日、厚生労働省に再発防止に取り組むよう要請した。

 男性は2015年10月に受けたコンピューター断層撮影装置(CT)検査で肺がんの疑いがあるとされた。だが、主治医は画像診断書を十分に確認せず肺がんの疑いがある事実を見落とした。昨年10月の再入院で肺がんと判明するまで治療がなされず、男性は2月に亡くなった。同病院もミスを認めている。

 要請後に記者会見した連絡協議会の宮脇正和さん(67)は「医療従事者は、見落としなどのケアレスミスが重大事故につながるということを肝に銘じ、医療安全に対する意識を高めて共有してほしい」と強調した。

 男性の長男(30)も会見に同席し、「遺族を社会的に支援する枠組みも必要」と主張。男性は05年に別の病院で点滴用カテーテルの誤挿入後に妻を亡くしており、長男は「両親の犠牲を無駄にしないためにも、単純な医療ミスをなくすための取り組みを強化してもらいたい」と語った。」


報道の件は,被害者は知人ですが,私が担当しているものではありません.

がんの疑いがあるという画像診断はそれほど多いものではありません.
そのような画像診断があった場合,自動的に患者に要精密検査の通知が送られるようにする,直接主治医に伝えるようにするなどの対策が必要でしょう.
がんの疑いがあるという画像診断とがんの疑いがないという画像診断が同じ扱いであるのは誤っていると思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-20 03:57 | 医療事故・医療裁判

日本大学医学部附属板橋病院,鎮静剤プレセデックスなどの投与ミス4件(報道)

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朝日新聞「日大板橋病院で投与ミス4件 一時、心肺停止の患者も」(2017年3月16日)は次のとおり報じました.

日本大学板橋病院(東京都、平山篤志院長)で2015~16年、患者3人に対し鎮静剤プレセデックスなどの投与ミスが4件相次いで起きたことが同大学への取材でわかった。このうち1件では患者が一時心肺停止になった。

 同病院は現在、プレセデックスの使用を停止し、薬の知識不足が背景にあるとして、医師や研修医に危険薬の使用方法を記した冊子の携帯を義務づけるなどの対策をとったという。厚生労働省が関係者から事情を聴いている。

 日大によると、誤投与が起きたのはいずれも救命救急センター。15年7月、入院中の70代男性に対し、看護師が医師の指示を受けずにプレセデックスの急速投与を実施し、一時心肺停止になった。プレセデックスの添付文書では、緩やかな持続投与が厳守とされている。男性は16年9月に口腔(こうくう)底がんで死亡したが、「薬が死亡の原因ではない」としている。

 16年5月には、救急搬送された80代男性に対し、研修医がプレセデックスの急速投与を指示し、看護師が実施。さらに16年12月にも入院していた当時2歳の女児に対し、看護師が点滴の設定を誤り通常の10倍のプレセデックスを投与し、別の看護師がミスに気づいて投与を中止。約10日後には、研修医の誤った指示で解熱剤アセリオが過量投与された。この3件について「健康被害はなかった」としている。


報道の件は,私が担当しているものではありません.
大学病院,特定機能病院でも,看護師による単純な投薬ミスがおきています.
添付文書を無視した投薬方法は危険です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-17 23:49 | 医療事故・医療裁判

東京地裁,ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンを巡る研究論文データ改ざん事件で無罪判決(報道)

b0206085_22174265.jpgNHK「論文データ改ざん事件 製薬会社と元社員に無罪判決 東京地裁」(2017年3月16日)は,次のとおり報じました.

「16日の判決で、東京地方裁判所の辻川靖夫裁判長は「元社員が臨床研究の数値を水増しし、意図的に改ざんしたデータを研究チームに提供したことは認められる」と指摘しました。そのうえで、「研究チームが発表し、雑誌に掲載された論文は一般の学術論文と異なるところがなく、薬事法で規制された治療薬の購入意欲を高めるための広告にはあたらない」として、ノバルティスファーマと元社員にいずれも無罪を言い渡しました。」

報道の件は,私が担当したものではありません.

降圧剤ディオバンを巡る研究論文データ改ざん事件で薬事法違反の刑事責任を問うことについての疑問は,以前,ブログにも書きました.

旧薬事法時代の「薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日医薬監第148号都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局監視指導課長通知)」で,顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること,特定医薬品等の商品名が明らかにされていること,一般人が認知できる状態であることが「広告」の要件とされています.
そこで,東京地裁判決は,科学的論文の体裁をとっている本件について,顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確である広告ではない,と判断したのでしょう.
東京地裁判決は,科学的論文は「広告」ではないというだけで無罪とすることもできた筈なのですが,(上級審での審理も考えたのかもしれませんが)データを改竄した事実を認定しています.刑事弁護人は,このような傍論を苦々しく思うかもしれません.

起訴については疑問も大きいのですが,たしかにもし検察が捜査,起訴しなければ,データ改竄に関する事実の解明は十分できなかった可能性もあります.厚労省の告発を受けて検察がある程度の無理を承知で勝負に出たのは,そのへんのことがあったのかもしれません.その意味では,ノバルティスファーマは, 「試合(裁判)に勝って勝負に負けた」と言えるかもしれません.

「坂の上の雲」で知られる秋山真之大日本帝国海軍中将は,「敗くるも目的を達することあり。 勝つも目的を達せざることあり。 真正の勝利は目的の達不達に存す。」(『天剣漫録』)と言っています.

データ偽造を現行薬事法で処罰できないとなれば,薬事法改正が課題になるでしょう.

【追記】

産経新聞「ノバルティス社無罪判決 検察幹部「不可思議としか言いようがない」」(2017年3月16日)は,次のとおり報じました.
 
「ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンの臨床研究データ改竄事件で、薬事法違反の罪に問われた会社と元社員に無罪を言い渡した東京地裁判決。元社員がデータを意図的に改竄したと認定しながら、同法で規制された治療薬の購入意欲を高めるための広告には当たらないとした司法判断に、検察内では「不可思議としか言いようがない」「地検、高検、最高検の誰もが驚いている」と戸惑う声が相次いだ。東京地検は控訴も視野に、慎重に検討するもようだ。

 「データが意図的に改竄されていても、学術論文の形態を取っていれば、それで良いというのか」。検察幹部の一人はこう憤る。

 判決は、同法が規制した「誇大広告」ではないと判断したが、ある検察幹部は「元社員が改竄データを研究者に提供した目的は一つ。論文に掲載させ、薬の販売を促進するためだった。起訴自体に問題はない」と強調。別の幹部も「主務官庁の厚生労働省も薬事法で告発している。あまりに意外な判決。これから同様のケースを野放しにしてよいというのか」と語った。

 一方、厚労省は「個々の判決については差し控えたいが、臨床研究に対する国民の信頼を回復することが大切と考える。厚労省としては、臨床研究と製薬企業の活動の透明性確保のため臨床研究法案を国会に提出しており、臨床研究と製薬企業の活動の適正性確保に努めたい」としている。」




谷直樹

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by medical-law | 2017-03-16 22:09 | 医療事故・医療裁判

京都府立医科大学附属病院と虚偽診断書作成罪の成否~BKウイルス腎炎の併発の事実の有無~

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京都新聞「収監逃れ、疑惑解明遠く 京都府立医大強制捜査1ヵ月」(2017年03月14日)は,次のとおり報じました.


「指定暴力団A組系B一家(大津市)のC受刑者(60)は2014年7月当時は公判中で、腎臓疾患で人工透析を受け、保釈されていた。府立医大付属病院によると、同月に生体腎移植を受けた。D院長や講師はC受刑者の病状について、判決確定後の15年8月、検察庁からの照会に対し、腎疾患で「拘禁に耐えられない」と病院長名で回答書を作成し、提出した。


 京都新聞社が入手したこの回答書によると、検察側は、病名や治療状況、入院の必要性など13項目について質問している。病院側は病名を「移植腎拒絶反応」とし、拘禁に耐えられない理由に「BKウイルス腎炎の併発で、免疫抑制療法の厳重な調整を継続する必要があり、改善に2年を要する」などと記載。治療に必要なものとして、免疫抑制剤の血中濃度の測定装置や、血中・尿中ウイルスの定量検査などを挙げている。


 法務省は、C受刑者が収監された大阪刑務所など、全国の刑務所など矯正施設のうち約10カ所で人工透析治療装置を設置。腎疾患患者も収監しており、「病態によるが、移植患者だから収監できない、ということはない」としている。

 D院長は会見で、C受刑者が移植後約1年で入院した際、血中クレアチニン(アミノ酸の一種)の値が100ミリリットル当たり1・06ミリグラムから1・17ミリグラムに上昇したとのデータを示し、感染症の危険性を指摘。「テレビなどで想像し、衛生状態の不確かな刑事施設では感染症にかかる可能性が高いと考えた」と説明した。院長の代理人弁護士によると、収容施設の設備環境や診察態勢の詳細な説明は検察側からはなかったという。」



報道の件は,私が担当している案件ではありません.


結核の集団感染は,学校でも事業所でもときどき起きていましたが,2015年3月1日に,NHKが「札幌刑務所などで結核の集団感染」を報じていました.そのようなテレビを見て刑事施設では感染症にかかる可能性が高いと考えたのかもしれません.
ただ,免疫抑制薬の使用量が多い移植後3ヶ月以内がとくに感染症に注意を要する時期です,
それ以降は,一生,血中・尿中ウイルスの定量検査を行い,血中濃度を測定してカルシニューリン阻害剤を必要最小限に調整していきます.それは,刑務所に収容してもできることではないでしょうか.(そうでないと,移植を受けた人を刑務所に収容することができなくなります.)


2年とした理由は,報道からすると,「BKウイルス腎炎の併発」のようです.
BKウイルス自体は多くの人がもっており,免疫抑制薬の使用により活性化することがあり,BKウイルス腎炎を発症すると治療は困難です.
もし,BKウイルス腎炎併発が真実であれば,虚偽診断書作成罪は成立しないでしょう.
もし,BKウイルス腎炎併発が虚偽であれば,虚偽診断書作成罪の成立が問われ得るでしょう.


血中クレアチニン値の基準値の成人男性0.66~1.13 mg/dlなどとされており,本件の1.17 mg/dlはそれを越えていますが,軽度です.血中クレアチニン値は,筋肉量などによって個人差があり,食事によっても左右されます.1.06 mg/dlが1.17 mg/dlに上昇したことだけでは腎炎の疑いをもつことはできてもBKウイルス腎炎と診断はできないでしょう.
そもそも,BKウイルスの量は,診断当時どれくらいで推移していたのでしょうか.
診断から2年たたない2017年2月14日に大阪刑務所に収容されたそうですが,BKウイルス腎炎治療はどのように行われ,BKウイルスの量は,診断当時からどのように変化し,BKウイルス腎炎はどうなっていたのでしょうか.病態が改善し収容可能となった可能性も考えられます.医学的に厳正な調査が必要でしょう.


なお,学長が学長室でC総長と会い先斗町と祇園で接待を受けていたことが診断書の記載に影響した可能性も疑われますが、診断書の内容が虚偽でなければ、虚偽診断書作成罪は成立しません.


指定暴力団A組系B一家のC総長は、京都市に本部を置く指定暴力団E会の四代目組長の長男で大学を卒業し民族系金融機関に就職しB一家を起こした人で,その影響力が大きなことが推測できますが、犯罪構成要件は厳正に判断されねばなりません.


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by medical-law | 2017-03-15 06:59 | 医療事故・医療裁判

鹿児島地判平成29年3月14日,数日前から症状があった急性肺血栓塞栓症で霧島記念病院に賠償命令

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産経新聞 「「治療怠る」患者死亡で病院に賠償命令 鹿児島地裁」(2017年31月14日)は,つぎのとおり報じました.
 
「医療法人健康会が開設する霧島記念病院(鹿児島県霧島市)が、肺に血栓が詰まる肺塞栓の検査や治療を怠ったとして、死亡した男性患者=当時(76)=の遺族が計約4270万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁(鎌野真敬裁判長)は14日、病院側に計約2470万円の支払いを命じた。平成24年11月13日、脳内出血で同病院に搬送されて入院、翌月に急性肺血栓塞栓症で死亡した。

 鎌野裁判長は判決で「遅くとも死亡の数日前までには症状が認められたのに、必要な検査と治療を怠る過失があった」と指摘した。」



これは私が担当したものではありません.
肺血栓塞栓症についてはこのように治療の不作為について責任が認められるケースがあります.
発症確率が低くても,警戒すべき疾患についてその兆候を見逃した場合,注意義務違反が問われると考えるべきでしょう.また,予防,治療の付実施との因果関係についても高度の蓋然性が認められるケースが増えているように思います.

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by medical-law | 2017-03-15 03:57 | 医療事故・医療裁判

宮崎地裁平成29年3月10日判決,宮崎大病院に誤って皮内注射し壊死が生じた件で10万円支払を命じる

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宮崎地裁(藤田光代裁判長)は,2017年3月10日,医師が鎮静目的で左太ももに筋肉注射を打つ際,誤って皮内に注射し1センチ大の壊死が生じたことを認定し,宮崎大医学部付属病院に慰謝料10万円の支払いを命じました

毎日新聞「宮崎大付属病院に10万円支払い命令 地裁判決」(2017年3月11日)参照

この件は私が担当したものではありません
注射の角度を小さくしてしまったために皮下注射になってしまった事案のように思います.

注射には,皮内注射,皮下注射,筋肉注射があります.
筋肉注射は,血流にのって早く全身にいきわたります .
高濃度の薬液が皮内注射,皮下にたまったりすると,局所痛・局所障害をもたらすことがあります.
とくに,酸性度が高い薬液は,筋肉注射とされています.
添付文書に,筋肉注射と指示されているものを皮内注射,皮下注射すると,上記報道のように薬液により壊死が生じることがあります.

麻酔における刺激が原因で,気管支閉塞となることがあります.加圧呼吸で対処することが多いのですが,裁判所は,気管チューブを挿入しても空気が行き渡らないと予見するのは困難だった,として,低酸素脳症については,請求を認めませんでした.

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by medical-law | 2017-03-12 22:37 | 医療事故・医療裁判

医療事件における最高裁判決の重さ

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医療事件では,用いる条文が民法709条と民法415条という抽象的な条文ですので,先行する類似事案の裁判例はきわめて重要です.
類似する事案であれば,下級審判決も参考になりますが,最高裁判決と下級審判決では,その重みが全く違います.

日本では,上級審の判決はその事件について差し戻した下級審裁判所を法的に拘束しますが,それ以外に法としての拘束力はありません.裁判官は,別の事件の最高裁判決に法的に拘束されません.最高裁判決の拘束力は,あくまでも事実上のものとされています.

最高裁判決がすべてが公式判例集に収載されるわけではありません.
公式判例集である「最高裁判所判例集 民事編」(「民集」と略されています)に収載された判決こそ,参考にすべき最高裁判決です.
これに対し,「最高裁判所裁判集 民事」(「集民」と略されています)収載の判決は,重要度が落ちるとみられています.

判決には,レイシオデシデンダイ(結論を導く直接的な理由)と傍論とがあります.
判決は,いろいろな理由からどうしても傍論が多くなりますが,真の判例はレイシオデシデンダイであるとされています.

最高裁判決は,それが根拠とした医学知見が現在では古くなっているものもありますし,例えばかつて華々しく議論された医療水準論が判決に書かれることは少なくなりましたが,それでも最高裁判決の基本的な考え方は,レイシオデシデンダイはもちろん,傍論であっても,医事裁判実務の大枠を画するものとして重要な意義があります.
上告理由が絞られてからは,最高裁判決が出されることは減りましたが,昨今の医療と医療裁判の実情に鑑みると,最高裁の役割は終わっていないと思います.


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by medical-law | 2017-03-09 00:54 | 医療事故・医療裁判

京都地裁平成29年3月7日判決,患者情報を利用した詐欺、有印私文書偽造・同行使の医師に懲役3年

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毎日新聞「患者情報悪用 医師に懲役3年 京都地裁」(2017年3月7日)は、京都地裁が、詐欺や有印私文書偽造・同行使などの罪に問われた京都市上京区の医師(43)に対し、7日、懲役3年(求刑・懲役6年)の判決を言い渡したと報じました.

「判決によると、●●被告は2014年、実質的に経営していた訪問介護会社を通じて、27人に訪問介護を実施したとする虚偽の請求書や明細書を提出し、京都市から計約650万円をだましとった。さらに、自身の診療所に通っていた男性患者名義で住民基本台帳カードや通帳、パスポートを取得。15年1月と11月には、京都市内で車を運転中に速度違反などで警察官に停止させられた際、交通違反切符に男性患者の名前で署名した。「運転免許証を忘れた」として偽の住基カードを見せたとされる。」

報道の件は私が担当した事件ではありません.
文書偽造は重い罪ですのでこのような犯罪は多くはないと思いますが、医師がその立場を利用すると簡単に患者名義の住民基本台帳カードや通帳、パスポートをとれる仕組は改めたほうがよいのではないでしょうか.


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by medical-law | 2017-03-08 07:32 | 医療事故・医療裁判