弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1124 )

医療安全情報No.130「中心静脈ラインの開放による空気塞栓症」

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医療安全情報No.130「中心静脈ラインの開放による空気塞栓症」によると,大気に開放される状態で中心静脈ラインの接続を外したことにより、血管内に空気が流入した事例が7件報告されている,とのことです.

事例が発生した医療機関の取り組みが次のとおり紹介されています
「・閉鎖式のコネクタを使用しない場合、中心静脈カテーテルのクランプを閉じないまま接続を外すと、大気に開放され血管内に空気が流入する危険性があることを院内で周知する。
・中心静脈ラインの接続を外す際、閉鎖式のコネクタが付いていることやクランプが閉じていることにより患者側のラインが閉鎖されているか確認する。」


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-16 15:09 | 医療事故・医療裁判

肺がんの見落とし事案で,損害賠償額の主張に開きがあり,遺族が名古屋大学病院を提訴(報道)

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中日新聞「医療ミスで名大病院を提訴 遺族、2億7000万円求める」(2017年9月11日)は次のとおり報じました.

「名古屋大病院(名古屋市昭和区)の検査で3年にわたって肺がんを見落とされたため、治療が遅れて同市内の男性=当時(50)=が死亡したとして、男性の妻が名大病院を運営する名古屋大を相手取り、約2億7千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴したことが分かった。提訴は8月4日付。名大病院側は医療ミスを認めているが、示談交渉が折り合わなかった。

 訴状や原告側代理人などによると、別の病院で腎臓がん手術を受けた男性は2007年6月、転移の有無などの検査のために名大病院泌尿器科へ通い始めた。半年に一度、胸部から下腹部のコンピューター断層撮影(CT)画像を撮ったが、関わった医師10人以上は「再発はない」と診断し続け、11年12月に男性が胸の痛みを訴えた際も「異常なし」と判断した。

 男性は12年5月、他の病院で検査を受けて肺がんが見つかった。既に進行した状態で、14年3月に死亡した。

 男性の死後、名大病院が設けた調査委員会は、過去のCT画像にはがんとみられる陰影が写っており、遅くとも09年5月にはがんの可能性に気づくことができたと認定。「主治医に画像の異常を診断する専門性がなく、放射線科も体制が不十分だった」と、3年にわたってがんを見落とした「医療ミス」を認めた。

 原告側代理人によると、名大病院側はその後、男性の妻と示談交渉を始め1億円余りの賠償金を提示。ただ、原告側は、逸失利益の算定が低く、がんを見落とした3年間の治療費の返金も含まれていないことなどに納得せず、提訴に踏み切った。

 原告側代理人は「治療費や逸失利益について、きちんと対応してほしい」と主張。名大病院は「係争中のことなのでコメントは控えたい」としている。」


これは私が担当した事件ではありません.
がんの見落とし事件は,過失が明らかでも,損害額の算定について争われることがよくあります.
過失があった場合と過失がなかった場合を比べて,その差額を損害と算定します.
そこで,見落としが無ければどうなっていたのかが問題になりますが,不確定要素がいくつもありますので,病院側と患者側の評価が分かることも多いと思います.
さらに,損害評価自体が一種の擬制でテクニカルにできていますので,赤本・青本という損害賠償基準も一般の人にはわかりにくいと思います.また,過失が大きくても,よほど悪質でない限りそのことで賠償額が増えることはない(過失の大きさと損害の算定は別とされています.)のですが,これも一般の人の感覚とは異なるようです.

報道からすると,治療費と逸失利益に争いがあるようですが,それは分かります.
治療費は,見落としがなくても一定の金額がかかったはずですので,その場合の治療費を算定し,差額を求める必要があります.これは,実際上難しいことがあり,争いになることがあります..
また,逸失利益については,見落としがない場合でもがんとその治療が仕事へ与える影響は皆無ではないはずです.そこで,具体的にどの程度の影響があったかを検討する必要があります.この仮に見落としがなかった場合の影響評価については,病院側と患者側とで意見が分かれ,対立することがあります.

なお,示談交渉に行き詰まったら,提訴し,裁判所の判断を求めるのは,よく行われます.

谷直樹

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by medical-law | 2017-09-15 19:50 | 医療事故・医療裁判

町立檮原病院,看護師が食事介助が必要な患者から離れ,患者が食事を喉を詰まらせ死亡した事案で和解(報道

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産経新聞「病院食詰まらせ患者死亡事故、「そばを離れたのは不手際だった」2500万円で和解」(2017年9月12日)は,次のとおり報じました.

 「高知県檮原町の町立檮原病院で6月、入院中の80代の男性患者が病院食を喉に詰まらせ死亡していたことが12日、同院への取材で分かった。檮原町はミスを認め、遺族と和解し約2544万円の損害賠償を支払うことを町議会定例会で審議、11日可決された。
 同院によると、男性患者は誤嚥性肺炎で6月7日に入院。食事には看護師の介助が必要だった。
 同月11日、院内の食堂で看護師が昼食を配膳してからナースコールを受け、10分ほど男性のそばを離れた。その間に男性が自分で食事をして喉を詰まらせたとみられる。当時、食堂には他の患者が2人いたが看護師はいなかった。」

 同院は、男性を残して現場を離れたのは不手際だったと認めた。事故後は看護師の付き添いを徹底すると同時に、食事の際は食堂に看護師1人を常置する対応を取っているという。」


これは,私が担当したものではありません.
報道によると,患者は食事をお預けの状態にされたため自分で食べてしまい,喉を詰まらせて死亡したのですから,落ち度(過失)はありますし,看護師が食事介助を行っていれば,患者が亡くなることはなかったので因果関係もあるでしょう.
裁判になる事案は,食事に看護師の介助が必要だったか否かが争われる事案です.


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by medical-law | 2017-09-13 20:19 | 医療事故・医療裁判

日本医療安全調査機構の運営委員会, 事故調センター調査の公開を提案

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日本医療安全調査機構「医療事故調査・支援事業運営委員会」は,2017年8月30日,医療事故調査・支援センター(センター)に依頼した再調査の結果を、個人情報保護に留意した上で、公開することを提案しました.
医療法では,医療機関または遺族は、院内事故調査の結果に納得がいかない場合などにセンターに再調査を依頼することができ,再調査の結果は医療機関と遺族に報告されます.
調査結果に記載された再発防止策を,個人が特定できないような形で公開することにより,当該医療機関以外の医療機関などで同じような事故が起きることを防止できます.安全な医療のために,是非,事故調査の成果を公開する方向で進めていただきたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-11 09:52 | 医療事故・医療裁判

高山赤十字病院のCT画像の肝腫瘍見落とし事案で注意義務違反を認めた名高判が確定(報道)

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朝日新聞「医師の注意義務違反が確定 名古屋高裁判決」(2017年9月8日)は,次のとおり報じました.

「代理人の弁護士などによると、女性はC型肝炎ウイルスを患って通院。07年10月のCT検査の画像に肝腫瘍が映っていたという。女性は翌年11月に死亡(当時75)。遺族はCT検査時に医師が腫瘍に気づき、切除手術などをしていれば延命できたとして、11年1月に岐阜地裁に提訴した。

 15年4月の地裁判決(武藤真紀子裁判長)、今年2月の名古屋高裁判決(藤山雅行裁判長)とも、CT検査画像で肝臓の病変を発見できたとして、医師の注意義務違反を認定。発見が遅れたことで女性が適切な治療を受けられなかったとして、病院側に慰謝料450万円などの支払いを命じた。病院側は最高裁に上告したが受理されず、高裁判決が確定した。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
長良橋通り法律事務所の横山文夫先生が担当した事件です.

癌の見落とし事件は,発見時点の癌の進行度,癌の種類,実際に亡くなるまでの経過などにより,延命できたであろう年月の認定が異なり,したがって賠償額も異なります.

上記報道の件は,CT検査の画像に映っていたいうのですから,注意義務違反は明らかです.
過失時点が2007年10月で,死亡時点が20008年11月ですから,2007年10月に肝腫瘍に気付き手術した場合いつまで生きられたかの立証が問題になり,裁判所は450万円の賠償を命じたのだと思います.


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by medical-law | 2017-09-09 02:54 | 医療事故・医療裁判

群馬大医学部付属病院事件で,遺族が執刀医と上級医の行政処分を要請(報道)

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時事通信「厚労省に執刀医ら処分要請=遺族「保身に終始」と非難-群馬大病院事故」(2017年9月7日)は,次のとおり報じました.

「群馬大医学部付属病院で腹腔(ふくくう)鏡などの手術後に患者が相次ぎ死亡した問題で、死亡患者9人の遺族と弁護団は7日、執刀した男性医師=退職、懲戒免職相当=と、上司だった元教授=諭旨解雇=について、注意義務違反と職業倫理に反する行為を理由に、医師免許の取り消しを含めた行政処分を求める要望書を厚生労働省に提出した。
 要望書では、男性医師について、日本外科学会や弁護団の各調査で「手術手技の拙劣は明らか」とし、術前は「99%成功」などと手術ありきで説明は不十分だったと指摘。カルテの記載はずさんで、病理解剖も「普通しない」などと行わなかった点などを問題視した。
 元教授についても手術件数を増やす方針の下、適切な指導監督を行わず悪質だとした。
 これまでに両医師は遺族に対し、手術の選択や手技などは問題ないとの見解を示したほか、事前説明は1時間行い、解剖も勧めたと主張。遺族らは「反省もなく自己保身に終始した」と非難した。 
 20代の妹を開腹手術で亡くした前橋市の30代男性は、厚労省で記者会見し「医師以前に人としての倫理に欠け、遺族の思いが全く伝わらなかった」と強調。これまで刑事処分を受けていない医師が処分されたケースはないが、80代の父を腹腔鏡手術で亡くした群馬県の40代男性は「厚労省幹部にしっかり受け止めると言ってもらった。適切な処分が下されると願いたい」と訴えた。」


執刀医(元助教)と上級医(元教授)は,過失を認めず,謝罪もしませんので,遺族の怒りは増すばかりと思います.
ただ,これまで一定程度重い刑事処分を受けると行政処分も受けますが,刑事処分を受けないと行政処分もないという取り扱いになっています.
弁護団に委任しているのは9遺族ですが,手術による死亡者は多数います.


また,読売新聞「群大改革、調査委が評価…手術死問題、患者参加は不十分」(2017年9月2日)は,次のとおり報じました.

「群馬大学病院(前橋市)の手術死問題で、第三者による調査委員会に対する病院の改革達成状況の報告会が1日、同病院で開かれた。病院幹部と記者会見した上田裕一委員長(奈良県総合医療センター総長)は、「調査報告書で示した改革提言の8割近くが90%以上の達成率」として診療体制や職員の意識改革を評価した。電子カルテ情報の共有など患者参加の促進は不十分で、課題も残った。」

「会見で委員から、カルテ開示が可能なことを積極的に知らせるとともに、治療方針検討の場への患者参加の実現を求められ、田村 遵一 病院長は「近く行うよう約束する」と明言した。」



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by medical-law | 2017-09-08 10:57 | 医療事故・医療裁判

日本医療安全調査機構,医療事故の再発防止に向けた提言第2号「急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析」

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急性肺血栓塞栓症の医療過誤事件は一定数ありますが,減らすことができるはずです.
一般社団法人日本医療安全調査機構は,2017年8月, 医療事故の再発防止に向けた提言第2号「急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析」を発表しました.
「ガイドラインの策定と「肺血栓塞栓症予防管理料」の保険収載という施策により、病院での肺血栓塞栓症に対する疾患の認識と予防への取り組みは、全国的に広がり、一定の予防効果は得られていると考えられる。しかしながら、いまだ医療事故調査・支援センターへの死亡事例の報告は続いており、さらなる対策の徹底が求められると考える。」とのことです.

提言は以下のとおりです.

【リスクの把握と疾患の認識】
提言1 入院患者の急性肺血栓塞栓症の発症リスクを把握し、急性肺血栓塞栓症は “ 急激に発症し、生命を左右する疾患で、特異的な早期症状に乏しく早期診断が難しい疾患 ” であることを常に認識する。

【予防】
≪患者参加による予防≫
提言2 医療従事者と患者はリスクを共有する。患者が主体的に予防法を実施できるように、また急性肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症を疑う症状が出現したときには医療従事者へ伝えるように、指導する。

≪深部静脈血栓症の把握≫
提言3 急性肺血栓塞栓症の塞栓源の多くは下肢、骨盤内静脈の血栓である。
深部静脈血栓症の臨床症状が疑われた場合、下肢静脈エコーなどを実施し、血栓を確認する。

【早期発見・早期診断】
提言4 明らかな原因が不明の呼吸困難、胸痛、頻脈、頻呼吸、血圧低下などを認めた場合、急性肺血栓塞栓症の可能性を疑い、造影 CT などの実施を検討し早期診断につなげる。

【初期治療】
提言5 急性肺血栓塞栓症が強く疑われる状況、あるいは診断が確定した場合、直ちに抗凝固療法(ヘパリン単回静脈内投与)を検討する。

【院内体制の整備】
提言6 急性肺血栓塞栓症のリスク評価、予防、診断、治療に関して、医療安全の一環として院内で相談できる組織(担当チーム・担当者)を整備する。必要があれば院外への相談や転院などができるような連携体制を構築する。

学会・企業等へ期待(提案)したい事項は次のとおりです.

①症例登録による現状把握
急性肺血栓塞栓症の予防、診断、治療法を改善し医療事故の再発を減らすには、日本における急性肺血栓塞栓症の現在の発生状況、臨床的特徴、治療方法などを把握する必要がある。
CTや病理解剖で急性肺血栓塞栓症の診断が得られた症例の登録(レジストリ)が全国規模で実施されることを期待する。

②静脈血栓塞栓症予防のための、医療機器の改良
着脱しやすく不快感や皮膚障害が少ない弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法用の簡便・軽量な器具の開発を期待する。

③医師・看護師に対する急性肺血栓塞栓症についての教育
急性肺血栓塞栓症の予防、診断、治療においては、あらゆる診療科の医師、看護師などの医療関係者が重要な役割を果たしており、これらの医療従事者が基本的知識を得られるような研修の機会をつくることが望まれる。各学会に対し、急性肺血栓塞栓症の予防、診断、治療法に関する教育の機会を提供することを期待する。
さらに、肺血栓塞栓症の専門学会に対しては、各医療施設の専門担当者が他科などからの相談に対応できるよう、急性肺血栓塞栓症の予防から緊急時の診断、治療に関して、基本的知識を確認したり最新の知識を習得したりできる機会を提供することを期待する


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by medical-law | 2017-09-05 13:42 | 医療事故・医療裁判

千葉市立海浜病院,手術リスクを実際よりも低く説明した事案で,説明義務違反を認め,1322万円で示談

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死亡率を5~10%と事前に説明していたが,実際は50%程度だったことから,説明義務違反を認め,千葉市立海浜病院は,患者の遺族に1322万円を支払うことで示談が成立したことを発表しました.説明義務違反がなければ手術を受けなかったのか,が問題ですが,院長にとれば,適切な説明があれば手術を避けた可能性が高かったとのことです.

千葉日報「70代女性遺族へ1322万円 千葉市立海浜病院、示談で賠償」(2017年9月2日)は,次のとおり報じました.
「示談成立は8月16日。
 担当医師は手術による女性の死亡率を5~10%と事前に説明していたが、外部調査委員会の報告書では50%程度だったと判断された。寺井院長は『適切な説明があれば手術を避けた可能性が高かった』と述べた。
 示談が成立したのは3人目。すでに2遺族へ賠償金300万円と100万円がそれぞれ支払われている。今も2人の遺族と交渉中で、残りの3人は『手術の適応やリスク説明に問題なし』として賠償しない方針を決めている。」



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by medical-law | 2017-09-02 16:57 | 医療事故・医療裁判

甲府市立病院,鼻から内視鏡を引き抜く際右目付近の血管を傷つけ視野狭窄等の障害が残った件で示談(報道)

この件は,私が担当したものではありません.
甲府市立病院で,2014年9月9日に副鼻腔炎の手術を受けた,自営業の40代男性が,鼻から内視鏡を引き抜く際右目のくぼみにある血管を誤って傷つけられ,翌10日の手術で血腫を除去したが,視野狭窄,視力低下,複視の後遺症が残った事案で,示談が成立し,甲府市は1292万円を支払うと発表しました.
眼窩血腫をおこした事案でしょう.手術後の観察で眼瞼の腫脹,皮下出血があれば眼窩血腫としてすみやかに対処する必要があります.

朝日新聞「鼻の内視鏡手術で目に後遺症 市立甲府病院」(2017年8月29日)によれば,甲府市立病院では,耳の手術で難聴を悪化させた医療事故で1月末に2件(損害賠償金計850万円)、手首のこぶを取る治療で患部付近の神経を傷つけた医療事故で3月にも1件(同70万円)の示談が成立している,とのことです.


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by medical-law | 2017-08-31 07:40 | 医療事故・医療裁判

腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害を有する83歳の男性に経口腸管洗浄剤を服用させた事案の第1回期日

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今週は,裁判期日が4件入っています.
その1つが,腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害を有する83歳の男性に経口腸管洗浄剤を投与した事案の第1回期日です.
京都地裁,8月24日(木曜)午前11時00分です.

医療事故により亡くなった患者は,京都市の83歳の男性でした.1級技能士資格及び職業訓練指導員免許をもつベテラン表具師で,元氣に仕事をしていました.
原告は,京都市在住の患者の妻,長男と仙台市在住の次男です.
被告の病院は,京都市中京区の総合病院(公的病院)です.

【事案】
大腸検査前処置の医療過誤です.
医師は,大腸検査の前夜に下剤ラキソベロンを服用し,検査当日に経口腸管洗浄剤ムーベンを服用する,という手順を指示しました.
83歳の男性は,腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害があり,検査前夜に指示に従い下剤ラキソベロンを服用しましたが,排便はありませんでした.

その状態で,経口腸管洗浄剤ムーベンを服用させるのは大変危険です.
ムーベンの添付文書の警告欄には,【禁忌(次の患者には投与しないこと)】として,「腸管に閉塞のある患者又はその疑いのある患者(大腸検査前処置に用いる場合)[腸管蠕動運動の亢進により腸管の閉塞による症状が増悪し、腸管穿孔に至るおそれがある.]」と記載されています.
医学文献 「腸疾患診療-プロセスとノウハウ」には,「腸管に狭窄病変のある患者に投与すると腸閉塞や腸管穿孔を起こし,重篤な状態を引き起こす可能性があり,投与前の問診や診察が重要である」(125~126頁)と記載されています.

患者に腸管狭窄と高度の便秘と腎機能障害があることを医師は知っていたはずですから,医師にはムーベン投与前に問診,診察を行ない,とくに排便状況について把握し,ムーベンを投与しない注意義務があったはずです.
にもかかわらず,医師は,ムーベン投与前に問診,診察を行いませんでした.
そのために,患者がムーベンによる糞便大腸イレウスを発症してショック状態となり,腸管虚血が遷延し,S状結腸の穿孔を来し,穿孔により汎発性腹膜炎を発症し,死亡しました.

この件は,医療事故調査が行われており,平成28年5月12日の「医療事故調査報告書」にも,「本患者のように慎重投与例に対しての排便状況の把握は不十分だった.また,詳細な手順書は整備されていなかった」,「ムーベン服用を契機に糞便による大腸イレウスを発症しショック状態となった.その後,腸管虚血が遷延し,S状結腸の穿孔を来し汎発性腹膜炎を発症,死亡に至った」と書かれています.

本件患者がショック状態に陥った後,被告病院は,すみやかに近くに住む妻と長男に連絡しなかったので.家族は,午後2時頃急変している状況を知らずに訪室し,本件患者が苦痛表情を呈していた姿を見て,いっそう大きな精神的苦痛を被りました.
事故後の対応にも問題のある事案と思います.

この裁判が適正に解決し,医療事故の再発防止に役立つよう,力を尽くしたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-22 06:10 | 医療事故・医療裁判