弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1113 )

ガーゼ残留事故の和解報道(350万円)

◆ 事案

鳥取県立中央病院で,平成6年に腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けた患者が、腰に痛みを感じ,2010年7月に鳥取大病院で腰の手術を受けたところ,親指大に丸まった,直径数センチの大きさの手術用のガーゼ1枚が体内から見つかりました.

b0206085_22181644.jpg◆ 和解

県立中央病院を管理する鳥取県は,ミスを認め賠償金350万円を支払い和解する,とのことです.

◆ 過去にも同様の事故

県立中央病院では,2011年1月にも,鼻の手術を受けた患者の体内におよそ3か月間ガーゼが残されていたことが明らかになったばかりです。
2004年にも.16年前のガーゼの置き忘れが判明しています.
2007年にも,シリコン製チューブ、2010年にもガーゼを取り残すミスがありました.

同病院は,以前はガーゼの枚数を確認していなかったそうで,再発防止のため,手術前後のガーゼの枚数確認の徹底に加え,レントゲン検査で発見できる鉛の成分が入ったガーゼを順次導入している,とのことです.

読売「体内にチューブ・ガーゼ置き忘れ数回の県立病院」ご参照
朝日「体内にガーゼ置き忘れ、350万円で和解 県立中央病院」ご参照
産経「ガーゼ取り忘れで和解へ 鳥取中央病院」ご参照

異物残留事故は,枚数の確認など基本的な手順を守ることで防止できる事故です.
異物残留事故の賠償額は,1)残留物の材質,大きさ,2)体内から取り出すことが出来るか否か,3)痛みなど不具合発生の有無,程度により異なります.

谷直樹
下記バナーをクリックしてください.弁護士ブログ168サイト中の順位がわかります.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-05-20 08:31 | 医療事故・医療裁判

奈良地裁平成23年5月17日和解(4000万円)報道,子宮収縮抑制剤「塩酸リトドリン」による肺水腫死亡事案

b0206085_22223768.jpg

◆ 事案

医療法人社団清心会桜井病院で,切迫早産と絨毛膜羊膜炎と診断され,平成17年12月14日に入院した大淀町の妊婦(当時33歳)が,子宮収縮抑制剤「塩酸リトドリン」などを投与され、副作用の肺水腫を発症し,せきや頻呼吸の症状があり,同月28日に死亡した事案です.

※ 肺水腫は,肺の中に余分な血液,水分がたまった状態です.胸部X線検査やCT検査で診断されます.


◆ 病院側の主張

病院側は拡張型心筋症の持病があった(心原性の肺水腫)と反論し,また,せきや頻呼吸の症状から塩酸リトドリンの副作用の肺水腫を発症していることを認識できない等の主張をしました.

◆ 塩酸リトドリン

「塩酸リトドリン」は,重篤な心疾患の患者には「禁忌」,心疾患の患者には「慎重投与」とされています.
「重要な基本的注意」として「本剤投与によって,肺水腫があらわれることがあり,急性心不全の合併に至った例もあるので,呼吸困難,胸部圧迫感,頻脈等に十分注意し,肺水腫があらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと。また,肺水腫は心疾患,妊娠中毒症の合併,多胎妊娠,副腎皮質ホルモン剤併用時等に発生しやすいとの報告があるので,これらの患者には,水分の過負荷を避け,十分な観察を行うこと。」とされています(薬の添付文書).

◆ 鑑定書

奈良地方裁判所が採用した,専門医による鑑定書では「副作用と判断し(塩酸リトドリンの投与を)中止すべきだった。中止したならば死亡する可能性は低い」というものです.

◆ 裁判上の和解

平成23年5月17日,奈良地裁で病院側が遺族に計4000万円の和解金を支払うことで裁判上の和解が成立したそうです.

なお,被告側の代理人弁護士は「診療の経過で大きな落ち度はなかった。せきなどの症状が副作用なのかは判断のしようがなかった」と述べたとのことですが,せきなどの症状が副作用かどうかを判断するために検査が必要で,その検査を行わなかったのですから,鑑定書に従えば,過失はあると言えるでしょう.

毎日新聞「妊婦死亡損賠訴訟:病院側と和解成立 被告側過失、言及せず--桜井 /奈良」ご参照

谷直樹
下記バナーをクリックしてください.弁護士ブログ168サイト中の順位がわかります.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-05-18 21:14 | 医療事故・医療裁判

医療過誤事件,5000万円の和解成立

b0206085_15142585.jpg

平成23年5月12日,5000万円で裁判上の和解が成立しました.

プルミエ法律事務所の伊藤律子弁護士と一緒に担当した医療事件です.

平成17年の医療事故で,平成19年に証拠保全し,平成21年に提訴しました.この事件は,とくに難しい事案でしたので.複数の協力医師のご意見をうかがい,とくに丁寧に調査を行い,万全の準備をして提訴しました.

医療過誤事件は,やはり大変です.
しかし,判決でなくても,このように適正に解決できると,患者側弁護士として目的を達成した気持になります.ほっとしました.

医療事故の場合,日々の介護などに忙殺されている方も多く,また,病院や医師を相手に法的責任を認めさせるのは無理と思って諦めてしまう方もいるようです.
しかし,簡単に諦めてしまうのではなく,一度は医療事件に詳しい弁護士に相談し,調査を依頼するなどすれば,見通しがつき,解決につながると思います.

谷直樹
下記バナーをクリックしてください.弁護士ブログ167サイト中の順位がわかります.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-05-13 15:15 | 医療事故・医療裁判

高松高裁で平成23年5月11日和解成立報道(肺塞栓,肺梗塞)

b0206085_185443.jpg
写真は,青盛県の依頼者からいただいた「気になるリンゴ」です.パイの中には林檎が丸ごと1個入っていました.

先日の福岡高裁に続いて,地裁で請求棄却,高裁で過失を認め和解,というケースが報道されていますので,ご紹介いたします.

◆ 事案

平成12年3月に高松赤十字病院に右変形性股関節症で入院し,手術を受けた患者(当時53歳)が,4月5日に容体が急変し,翌朝肺梗塞で死亡しました.

医師は,手術前に肺梗塞の可能性を予見していましたが、術後に,患者が脚のだるさなどを訴えたとき,検査を行いませんでした.

◆ 高松地裁判決

高松地裁は,平成22年3月,医師が治療義務を怠ったとは認められない,として遺族側の請求を棄却しました.

◆ 高松高裁の判断

高松高裁は,患者が「脚がだるい」などの症状を訴えていたことから,医師はそれに対処すべきだった,と判断し,和解を勧め,平成23年5月11日,裁判上の和解が成立しました.

(毎日新聞「日赤医療過誤訴訟:高松高裁で和解 /香川」ご参照)

◆ 感想

肺梗塞とは,肺塞栓症の結果,肺組織が壊死をおこした状態を言います.肺塞栓症とは,血液などが肺の血管に詰まる病気です.術後などに生じます.

本件は,術後安静⇒下肢静脈瘤⇒肺塞栓症⇒肺梗塞⇒呼吸停止⇒死亡,と理解できます.

下肢静脈瘤のため足がだるくなること,下肢静脈瘤から肺塞栓症がおきること,術後であることなどから,患者が「脚がだるい」などの症状を訴えた場合,医師は,下肢静脈瘤を疑い,肺塞栓症を警戒すべきでしょう.

高松高裁は,平成12年であっても,患者が「脚がだるい」などの症状を訴えた時点で検査を行うべきとしたものです.

判決ではありませんが,高裁が地裁の判断を是正したものとして,評価できます.

谷直樹
下記バナーをクリックしてください.弁護士ブログ167サイト中の順位がわかります.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-05-12 18:49 | 医療事故・医療裁判

福岡高裁で平成23年4月22日7000万円和解成立報道(麻酔・鎮静剤の投与で植物状態)

b0206085_819521.jpg

福岡高裁での和解事案が報じられています.

国家公務員共済組合連合会浜の町病院で,平成16年に食道がんの手術を受けた患者が,術後2日間で20回以上の麻酔・鎮静剤の投与を受けた結果、心臓が一時停止するなどして植物状態となった事案です.

患者側は,薬の添付文書に「急速投与を行わないこと」と注意書きがあることから,医師側に過失があるなどと主張しました.

福岡地裁は,平成22年9月、患者側の請求を棄却しました.

福岡高裁は,医師側に過失があると判断し,和解金7000万円の支払いによる和解を勧告しました.控訴人、被控訴人双方が和解勧告を受け入れ,平成23年4月22日,裁判上の和解が成立しました.

和解条項には,病院側が事故原因を究明して再発防止に努めることや,患者が今後も浜の町病院で療養を受けられるよう病院側が協力することなども盛り込まれています.

福岡地裁医療集中部の判決が間違っていたため,福岡高裁がそれを正したわけです.
全国的に,近年,地裁医療集中部では患者側に厳しい判決が続いていますが,このように地裁医療集中部の請求棄却判決(患者側敗訴判決)を高裁が正す例がみられます.

日本経済新聞「投薬誤り植物状態」病院側7000万円支払いで和解 福岡高裁」ご参照
毎日新聞「投薬巡る医療過誤訴訟が和解/病院側が7000万円支払いで/福岡高裁」ご参照

なお、「病院の過失は認められていない」という報道も一部ありますが、7000万円という金額は過失を認めない事案で勧告されるものではありません。当然、過失を認めたと理解できます。

谷直樹
下記バナーをクリックしてください.弁護士ブログ167サイト中の順位がわかります.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-05-10 03:40 | 医療事故・医療裁判

B型肝炎訴訟,原告団も札幌地裁の和解案受け入れ

b0206085_22265361.jpg

B型肝炎訴訟原告団は,今日5月2日,札幌地裁の,発症後20年以上経過した患者には最大300万円を支払うとする和解案を受け入れることを決めました.

発症して20年以上経過した人は,病状が重いことが多く.300万円では明らかに不十分です.

しかし,「予防接種B型肝炎訴訟と除斥期間」でも書きましたが,小泉政権下のドミニカ移民事件の政治決着では200~50万円でしたから,昨今の情勢を考えると,300万円は菅政権に期待できる現実的な数字と言えなくもないと判断し,苦渋の妥協に至ったのでしょう.

谷直樹
下記バナーをクリックしてください.弁護士ブログ165サイト中の順位がわかります.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-05-02 22:28 | 医療事故・医療裁判

医療版事故調を日本医師会が改めて提案

b0206085_2132281.jpg

あまり報じられていませんが,「4月24日に開催された第124回日本医師会定例代議員会で、羽生田俊副会長は、2010年12月に日医内に設置した「医療事故調査に関する検討委員会」で、医師法21条の異状死の届け出から医療関連死の関するものを除外し、新たな届け出先として医療安全調査委員会にするという基本理念で検討していることを明らかにした。」とのことです.
(「“医療事故調”を日医が改めて提案へ医師法21条を改正、異状死から「医療関連死」を除外」ご参照)

日本医師会の動きには,注目したいと思います.

谷直樹
更新の励みになりますので下記バナーのクリックをお願いします.弁護士ブログ165サイトの順位のページに移動します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-04-26 21:04 | 医療事故・医療裁判

「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」存亡の危機

b0206085_20491836.jpg

日本医療安全調査機構の運営委員会が,4月22日開かれ,理事会から「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」中止が報告案件としてあがりました.
東日本大震災復興のために,厚生労働省の補助事業であるモデル事業に対し従来通りの予算執行ができるか先行きが不透明になった,という理由です.

委員からは,強い反対意見が述べられ,結局,理事会に差し戻し,再検討することになりました.高久会長は,途中退席しましたが,再検討を約束しました.

医療介護CBニュース「死因究明モデル事業中止論に異論噴出」によると,委員の意見は,次のとおりです.

「「皆の意思を無視している。モデル事業は医療安全に寄与している。この灯を消すべきでない」(高本眞一・三井記念病院院長)、「モデル事業は、診療関連死の真相をきちんと究明して安全な医療をつくるという営みをつくってきた。歴史の流れを戻すようなことを理事会が簡単に考えているとすれば、相当感覚がずれている」(加藤良夫・南山大大学院法務研究科教授)などの異論が続出。さらに、事業の中止が財政問題に端を発していることから、国からの補助金に頼る事業の在り方を問題視する声が上がり、事業に参加している各学会から資金を出し合うことで、自主独立の道を模索すべきという意見も出た。
こうした意見を受け樋口範雄委員長(東大法学部教授)は、厳しい財政事情に一定の理解を示しつつも、「この方針では医学界が第三者機関設立をあきらめたと取られかねない」との見解を述べ、理事会に対し再検討を促した。」


補助金の先行きが不透明というだけで,ただちに中止の方向に舵をとろうとした理事たちの姿勢は,事業の異議を理解しないもので.きわめて疑問です.
診療関連死の死因究明は,医療安全に役立つ事業です.簡単に撤退すべき事柄ではないでしょう.

谷直樹
更新の励みになりますので下記バナーのクリックをお願いします.弁護士ブログ165サイトの順位のページに移動します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2011-04-26 20:49 | 医療事故・医療裁判

札幌地裁平成23年4月20日判決(帝王切開の遅れ)

b0206085_10582662.jpg社会福祉法人北海道社会事業協会小樽病院(通称;小樽協会病院)で,平成16年10月11日午後8時10分頃帝王切開決定,午後9時40分帝王切開により出産した男児に脳性麻痺の障がいが残り,その後身体障害者1級の認定を受けた事案です.

同病院は地域周産期母子医療センターに指定されている産科救急医療の拠点病院で,年間500件程度の出産を扱っています.

札幌地裁は「胎児の心拍数に異常が現れた午後6時15分の段階で仮死状態にあると診断できた」とし,帝王切開の決定が遅れたために胎児が長時間にわたって低酸素状態におかれ、脳性麻痺の原因になったとし,1億4000万円の賠償を命じました.

(毎日新聞平成23年4月21日 「裁判:帝王切開遅れで障害、小樽の病院に1億4000万円賠償命令」ご参照)

産科事故の事案では,帝王切開の遅れと脳性麻痺との因果関係が争われることがありますが,「訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討して,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである」(最高裁昭和50年10月24日判決)とされていますから,帝王切開の遅れと脳性麻痺との因果関係は特段の事情がない限り肯定できるでしょう.

更新の励みになりますので下記バナーのクリックをお願いします.弁護士ブログ164サイトの順位のページに移動します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

谷直樹
by medical-law | 2011-04-23 11:12 | 医療事故・医療裁判

佐賀地裁平成23年3月25日判決(高濃度酸素治療中の火災)

b0206085_23494281.jpg平成18年11月22日夜,佐賀大医学部付属病院に気管支喘息で入院中の重度の身体障がいのある患者(当時10歳)の顔に治療用の高濃度の酸素が吹きかけられていたところ,毛布が燃え,患者が頭や手足などに重い火傷を負った事案です,

患者側は,患者と毛布の間に治療用酸素がたまり,静電気で火災が起きた,とし,安全配慮義務違反を主張しました.

佐賀地裁は平成23年3月25日「火災の原因は不明で,安全配慮義務違反があったとは認められない」とし,請求を棄却しました.

毎日新聞平成23年3月26日「佐賀大病院ぼや:やけど損賠訴訟 原告の訴えを棄却--佐賀地裁 /佐賀」ご参照

更新の励みになりますので下記バナーのクリックをお願いします.弁護士ブログ164サイトの順位のページに移動します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

谷直樹
by medical-law | 2011-04-16 23:44 | 医療事故・医療裁判