弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1141 )

千葉大学医学部附属病院,同一フロアの入院患者4人が死亡(報道)

千葉大学医学部附属病院のサイトに「多剤耐性緑膿菌の検出について」が掲載されました

千葉日報「4人死亡、院内感染か 菌検出、関連を調査 千葉大病院」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.
 
「千葉大学医学部付属病院(千葉市中央区)で8月下旬以降に同一フロアの入院患者4人が死亡し、患者から抗生物質が効かなくなる多剤耐性緑膿菌が検出されていたことが5日、千葉日報社の取材で分かった。同病院は院内感染の可能性があるとみて、同菌の検出と死亡との因果関係や、同一の遺伝子の菌かどうかなど、詳しい状況を調べている。

 同病院によると、4人は、いずれも重篤な状況で治療中だった。生前に感染症を疑い検査を実施したところ、4人から多剤耐性緑膿菌が検出されたという。

 9月15日に同病院から千葉市保健所へ「院内感染の疑いがある」などと報告があったという。また市保健所は菌の検査について依頼を受けており、結果判明後に病院側へ報告する予定。病院側も調査結果がまとまり次第、保健所に報告する。

 死亡を受け、同病院は職員への研修や講習を実施し、院内感染への予防対策の徹底を周知している。」


院内感染は,感染,発症,治療の3段階が問題になります.
感染については,病院の感染防止策が徹底していたかが問題になります.重症患者を取り扱う部署では,とくに徹底した感染防止策が求められます.一般には,医療従事者の手洗いを徹底すると感染症が減少すると言われています.
発症については,患者の属性が重要です.重症で抵抗力が弱っている患者では発症しやすい傾向があります.
治療については,早期治療のほうが有利ですが,重症で抵抗力が弱っている患者では標準的治療を行っても奏効しない場合もあります.


【追記】

朝日新聞「3人死亡、院内感染か 千葉大病院、多剤耐性緑膿菌検出」(2017年10月28日)は,次のとおり報じました.

「千葉大学病院(千葉市中央区)は27日、8月下旬~9月下旬に同病院で亡くなった40~60代の男性入院患者4人から、3種類の抗生剤が効かない「多剤耐性緑膿(りょくのう)菌」が検出されたと発表した。うち3人は院内感染の可能性が否定できないとしている。

 病院によると、集中治療室(ICU、22床)で治療中だった40代と60代の男性から8月28日に多剤耐性緑膿菌が検出された。2人をそれぞれICU内の個室(10床)に移したが、60代男性は翌29日、40代男性は9月1日に死亡。その後、ICUの別の個室の50代と60代の男性からも多剤耐性菌が検出され、それぞれ9月20、22日に死亡した。

 千葉市保健所が4人の多剤耐性菌の遺伝子型を調べたところ、2人の型が一致。一方、残る2人のうち1人は治療で3種類の抗生剤を順番に使う中で多剤耐性緑膿菌となったため、「院内の環境から広がったものではない」と結論づけた。病院は、感染が「病状悪化に影響した可能性は否定できない」としつつ、死因に影響したのは病気の進行としている。

 10月に設置した事例検討委員会(委員長・市川智彦副院長)の調査結果がまとまり、病院側は患者の家族に謝罪した。(寺崎省子)」


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-07 02:17 | 医療事故・医療裁判

長野中央病院がベッドからの転落事故で提訴される(報道),

読売新聞「病院ベッドから転落し後遺症…70代男性が提訴」(2017年10月04日)は,次のとおり報じました.

長野中央病院(長野市)で70歳代男性が入院中にベッドから転落し、後遺症が残るけがをしたのは病院側が安全配慮義務を怠ったのが原因として、男性と成年後見人である息子が同病院を経営する長野医療生活協同組合(同)を相手取り、約1828万円の損害賠償を求めて長野地裁に提訴したことがわかった。

 第1回口頭弁論は11日に開かれる予定。

 訴状によると、男性は2016年3月28日にベッドから転落し、右の太ももを骨折するけがをして手術やリハビリを受けたが、自立歩行が困難になった。事故の際、転落防止用の体幹ベルトが適切に固定されておらず、「病院側はベルトが適切に固定されているか否かを確認し、安全を確保する注意義務を怠った」などと主張している。

 同組合は取材に「転落事故と後遺症に因果関係はないと考えている。具体的な主張は裁判で明らかにしたい」としている。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
長野中央病院は,医療生協の病院です.

ベッドからの転落事故は以前から多く起きており,病院,介護施設のベッドは家庭用のものより高く,病院,介護施設のでの転落事故は,損害賠償責任が生じるケースもあります.にもかかわらず,再発防止策は十分ではありません.
前橋地判平成25年12月19日では,ベッドに変更し衝撃吸収マットなどを敷いていなかったことが過失とされています.
物理的な転倒防止策をとっていても,見守り不足を理由に責任を認めた判決もあります(東京地判決平成24年3月28日).

報道の件は,転落防止用の体幹ベルトが適切に固定せず,また適切に固定されているか否かを確認しなかったとすれば,注意義務違反があると言えるでしょう.

因果関係については,具体的事案により異なります.転落事故は,因果関係立証が難しいことが少なくありません.例えば,一般的にリハビリテーションを行えば回復する程度の骨折であったが,患者の属性のためにリハビリテーションを行えず回復しなかった場合などが問題になります.

ともあれ,報道の件は,訴訟の帰趨に注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-10-06 01:24 | 医療事故・医療裁判

大阪市立総合医療センターの凍結保存精子の無断処分事件,大阪地裁で100万円和解(報道)

共同通信「凍結精子の無断処分、和解 大阪、夫婦に解決金支払い」(2017年10月4日)は次のとおり報じました.

「大阪市立総合医療センターで凍結保存中の精子を無断で処分されたとして、大阪府池田市の夫婦が、運営する大阪市民病院機構と担当した産婦人科医師に計1千万円の損害賠償を求めた訴訟は4日、病院側が解決金100万円を支払うことなどを条件に大阪地裁(比嘉一美裁判長)で和解が成立した。

 夫婦は会社員の北村哲也さん(32)と妻(30)。和解条項には解決金のほか、病院側が書面で確認せずに凍結精子を処分したことに対する「遺憾の意」を表明し、今後の再発防止に取り組むことが盛り込まれた。

 哲也さんは「今後、同じようなことが起きないよう約束してくれたので安心した」と話した。」


これは,私が担当したものではありません.
以前,弘前で予定停戦に対処しなかったために5個の卵子が失われた事件も訴訟上の和解で終了したと報じられていました.
一般に,不妊治療中の事故は責任が明らかで,賠償額は少額のため,裁判前に解決することも少なくないので,報道の件も訴訟前の解決ができなかったか。と思います.
賠償のみならず,謝罪,再発防止を含む訴訟上の和解が成立したのは,よかったと思います.


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by medical-law | 2017-10-04 23:27 | 医療事故・医療裁判

京都大学医学部附属病院,医師の処方箋の738倍のセレンで患者死亡(報道)

産経新聞「京大病院、調剤ミスか 60代患者死亡 7百倍注射薬」(2017年10月3日)は,次のとおり報じました.

「京都大付属病院は3日、薬剤師が調剤した注射薬を自宅で投与した60代の女性患者が死亡したと発表した。薬は通常の700倍超の濃度で、調剤を誤った可能性が高いという。稲垣暢也院長は「このような事態を招き、心よりおわび申し上げる」と謝罪した。

 女性が投与した前日に、一緒に調剤された注射薬を使った別の患者は、色の異常に気づき、投与を途中で止めていたという。病院は報告を受けたものの、死亡した患者に使用中止を伝えていなかった。病院側は「この時点では原因が分かっていなかった」と釈明している。

 京大病院によると、注射薬は「セレン注製剤」。8月28日、医師の処方箋に従って薬剤師2人が調剤した。9月26日夕、患者が自宅で投与し、約3時間後に背中に痛みを感じたため、翌27日午前に同病院で処置を受けたが、死亡した。病院が調べたところ、通常の738倍の濃度のセレンが含まれていたことが判明した。

 別の患者は9月25日にセレン注製剤を使用したが「薬の色が赤みを帯びている」と途中で投与を中止したうえで、病院に報告していた。

 調剤した薬剤師は、1人がキャリア十数年、もう1人は5年未満だった。

 セレンは体内に存在する微量元素で、欠乏するとさまざまな症状をきたす。医薬品として販売していないため京大病院では薬剤師が注射薬を調剤していた。

 病院は厚生労働省や京都府警に事故を届けた。今後、調査委員会で詳しく検証する方針。」


セレンは,食物などに含まれる金属です.生命活動に欠かせない必須微量元素の1つです.
セレン(セレニウム)は,サプリメントとしても販売されていますが,毒性が強く,推奨料と中毒量の差が小さく,注意が必要です.

そのセレンを,医師の処方箋の738倍も調剤したのは,重大な過誤と言えるでしょう.
また,別の患者の報告を受けて病院が本件患者に連絡し中止させていたならと思うと非常に残念です.
徹底した原因解明と有効な再発防止策の策定を期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-03 20:35 | 医療事故・医療裁判

不適切な薬剤投与のために患者が死亡した事案で,高石藤井病院が大阪高裁で1億円和解(報道)

共同通信「点滴で急死、1億円支払いで和解 死亡生徒の両親と病院、大阪」(2017年10月03日)は,次のとおり報じました.

「大阪府高石市の高石藤井病院で2015年、点滴を受けた堺市の高校3年の女子生徒=当時(18)=が急死したのは不適切な薬剤投与が原因だとして、両親が病院を運営する医療法人「良秀会」(堺市)と医師に約1億2700万円の損害賠償を求めた訴訟があり、大阪地裁で3日までに和解した。病院側が診療に落ち度があったと謝罪し、1億円を支払う。

 9月26日付の和解条項には、病院側が再発防止策に取り組むことも盛り込まれた。

 生徒は15年12月29日夜、食後に目が腫れ、高石藤井病院の救急外来を受診。点滴を受けた直後に頭や胸の痛みを訴えて意識を失い、約3時間後に死亡した。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
点滴した薬剤,過誤の内容は報じられていませんが,1億円の示談金は責任を認められる事案であることを示しています.
責任が明らかな事案は東京では訴訟前に示談で解決することが多いのですが,大阪では訴訟まで進むことが多いのかもしれません.


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-03 19:52 | 医療事故・医療裁判

水戸済生会総合病院,10倍量のモルヒネ投与で患者死亡

水戸済生会総合病院のサイトに「患者様へお詫び」が掲載されています.
NHK「本来の10倍の痛み止め投与し患者死亡」(2017年9月28日)は,次のとおり報じました.
「水戸済生会総合病院によりますと、今月14日、拡張型心筋症で入院していた69歳の女性患者の手術で、看護師が、痛み止めの薬のモルヒネを、本来の10倍に当たる25ミリグラム投与したということです。女性患者はその後、心肺停止の状態になって今月26日に死亡し、病院は医療ミスを認めて遺族に謝罪しました。病院は、今後、調査委員会を設け、医師から看護師にどのような指示があったかなど、詳しい経緯を調べることにしています。」

おそらく医師看護師間の伝達に何らかのミスがあったのでしょうが,看護師にはお痛み止めのためのモルヒネの適量くらいは知っていてほしく思います.

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by medical-law | 2017-09-29 14:18 | 医療事故・医療裁判

医政発0906 第3号,医療ガスの安全管理について

医療ガスの取扱いに関して重大な事故やヒヤリ・ハット事例が報告されていることから,厚生労働省医政局長は,平成 29 年9月6日,医政発0906 第3号「医療ガスの安全管理について」を発し,医療ガス安全管理委員会が行う医療ガス設備の保守点検業務,医療ガスに係る安全管理のための職員研修等に関して留意すべき事項を次のとおり示しました.

「医療ガスの安全管理について

病院及び診療所(以下「病院等」という。)における医療ガス(酸素、亜酸化窒素、治療用空気、吸引、二酸化炭素、手術機器駆動用窒素等をいう。以下同じ。)に関する構造設備(以下「医療ガス設備」という。)については、医療法施行規則(昭和 23 年厚生省令第 50 号)第 16 条第1項第1号の規定に基づき、危害防止上必要な方法を講ずることとされている。また、病院等の管理者は、医療法施行規則第1条の 11 第1項第3号の規定に基づき、医療に係る安全管理のための職員研修を実施することとされている。しかしながら、医療ガスの取扱いに関して重大な事故やヒヤリ・ハット事例が報告されていることに鑑み、医療ガス安全管理委員会が行う医療ガス設備の保守点検業務、医療ガスに係る安全管理のための職員研修等に関して留意すべき事項を下記のとおり示すこととした。
貴職におかれては、本通知の趣旨について御了知いただくとともに、医療ガスに係る安全管理が適切に行われるよう、貴管下の病院等に対する周知及び指導方お願いする。
なお、本通知をもって、「診療の用に供するガス設備の保安管理について」(昭和 63 年7月 15 日付け健政発第 410 号厚生省健康政策局長通知)は、廃止する。



1 病院等において、麻酔器、人工呼吸器等を設置し、医療ガスを使用して診療を行う場合には、当該病院等の管理者は、医療ガス安全管理委員会(以下「委員会」という。)を設置するなど、医療ガスに係る安全管理のための体制を確保すること。委員会はその業務として、医療ガス設備の保守点検業務、医療ガス設備の新設及び増設工事、部分的な改造、修理等(以下「工事」という。)の施工監理業務、医療ガスに係る安全管理のための職員研修等を行うこと。なお、委員会の構成及び業務については、別添1「医療ガス安全管理委員会について」を参照すること。

2 医療ガス設備の保守点検業務に当たっては、始業点検、日常点検及び定期点検を実施するとともに、日常点検及び定期点検については、点検作業の記録を作成し、保存すること。また、点検作業の終了後は、医療ガス設備が正常に動作することを確認すること。なお、保守点検業務に当たっての留意事項については、別添2「医療ガス設備の保守点検指針」を参照すること。

3 医療ガス設備の工事に当たっては、医療ガス設備に用いられる機材を医療ガスの種別により特定化し、医療ガスの種別の容易かつ確実な判別を可能とすることによって、種別の異なる医療ガス間の非互換性を確保し、誤接続を防止すること。また、工事完了後の臨床使用に先立って、適切な確認を行うこと。なお、工事の施工監理業務に当たっての留意事項については、別添3「医療ガス設備の工事施工監理指針」を参照すること。

4 病院等の職員に対する医療ガスに係る安全管理のための研修においては、酸素ボンベと二酸化炭素ボンベとの誤認や取違えなど、医療ガスに係る装置の誤接続に起因する事故やヒヤリ・ハット事例が散発していることに鑑み、医療ガスの安全管理に関する基本的な考え方及び事故防止の具体的方策について、周知徹底すること。また、当該病院等において医学管理を行っている患者の居宅その他病院等以外の場所で使用される医療ガスの安全管理についても、適切に研修が行われるよう、十分に留意すること。なお、当該研修の実施に当たっての留意事項については、別添4「医療ガスに係る安全管理のための職員研修指針」を参照すること。 」


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by medical-law | 2017-09-28 01:20 | 医療事故・医療裁判

医療安全情報No.130「中心静脈ラインの開放による空気塞栓症」

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医療安全情報No.130「中心静脈ラインの開放による空気塞栓症」によると,大気に開放される状態で中心静脈ラインの接続を外したことにより、血管内に空気が流入した事例が7件報告されている,とのことです.

事例が発生した医療機関の取り組みが次のとおり紹介されています
「・閉鎖式のコネクタを使用しない場合、中心静脈カテーテルのクランプを閉じないまま接続を外すと、大気に開放され血管内に空気が流入する危険性があることを院内で周知する。
・中心静脈ラインの接続を外す際、閉鎖式のコネクタが付いていることやクランプが閉じていることにより患者側のラインが閉鎖されているか確認する。」


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-16 15:09 | 医療事故・医療裁判

肺がんの見落とし事案で,損害賠償額の主張に開きがあり,遺族が名古屋大学病院を提訴(報道)

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中日新聞「医療ミスで名大病院を提訴 遺族、2億7000万円求める」(2017年9月11日)は次のとおり報じました.

「名古屋大病院(名古屋市昭和区)の検査で3年にわたって肺がんを見落とされたため、治療が遅れて同市内の男性=当時(50)=が死亡したとして、男性の妻が名大病院を運営する名古屋大を相手取り、約2億7千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴したことが分かった。提訴は8月4日付。名大病院側は医療ミスを認めているが、示談交渉が折り合わなかった。

 訴状や原告側代理人などによると、別の病院で腎臓がん手術を受けた男性は2007年6月、転移の有無などの検査のために名大病院泌尿器科へ通い始めた。半年に一度、胸部から下腹部のコンピューター断層撮影(CT)画像を撮ったが、関わった医師10人以上は「再発はない」と診断し続け、11年12月に男性が胸の痛みを訴えた際も「異常なし」と判断した。

 男性は12年5月、他の病院で検査を受けて肺がんが見つかった。既に進行した状態で、14年3月に死亡した。

 男性の死後、名大病院が設けた調査委員会は、過去のCT画像にはがんとみられる陰影が写っており、遅くとも09年5月にはがんの可能性に気づくことができたと認定。「主治医に画像の異常を診断する専門性がなく、放射線科も体制が不十分だった」と、3年にわたってがんを見落とした「医療ミス」を認めた。

 原告側代理人によると、名大病院側はその後、男性の妻と示談交渉を始め1億円余りの賠償金を提示。ただ、原告側は、逸失利益の算定が低く、がんを見落とした3年間の治療費の返金も含まれていないことなどに納得せず、提訴に踏み切った。

 原告側代理人は「治療費や逸失利益について、きちんと対応してほしい」と主張。名大病院は「係争中のことなのでコメントは控えたい」としている。」


これは私が担当した事件ではありません.
がんの見落とし事件は,過失が明らかでも,損害額の算定について争われることがよくあります.
過失があった場合と過失がなかった場合を比べて,その差額を損害と算定します.
そこで,見落としが無ければどうなっていたのかが問題になりますが,不確定要素がいくつもありますので,病院側と患者側の評価が分かることも多いと思います.
さらに,損害評価自体が一種の擬制でテクニカルにできていますので,赤本・青本という損害賠償基準も一般の人にはわかりにくいと思います.また,過失が大きくても,よほど悪質でない限りそのことで賠償額が増えることはない(過失の大きさと損害の算定は別とされています.)のですが,これも一般の人の感覚とは異なるようです.

報道からすると,治療費と逸失利益に争いがあるようですが,それは分かります.
治療費は,見落としがなくても一定の金額がかかったはずですので,その場合の治療費を算定し,差額を求める必要があります.これは,実際上難しいことがあり,争いになることがあります..
また,逸失利益については,見落としがない場合でもがんとその治療が仕事へ与える影響は皆無ではないはずです.そこで,具体的にどの程度の影響があったかを検討する必要があります.この仮に見落としがなかった場合の影響評価については,病院側と患者側とで意見が分かれ,対立することがあります.

なお,示談交渉に行き詰まったら,提訴し,裁判所の判断を求めるのは,よく行われます.

谷直樹

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by medical-law | 2017-09-15 19:50 | 医療事故・医療裁判

町立檮原病院,看護師が食事介助が必要な患者から離れ,患者が食事を喉を詰まらせ死亡した事案で和解(報道

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産経新聞「病院食詰まらせ患者死亡事故、「そばを離れたのは不手際だった」2500万円で和解」(2017年9月12日)は,次のとおり報じました.

 「高知県檮原町の町立檮原病院で6月、入院中の80代の男性患者が病院食を喉に詰まらせ死亡していたことが12日、同院への取材で分かった。檮原町はミスを認め、遺族と和解し約2544万円の損害賠償を支払うことを町議会定例会で審議、11日可決された。
 同院によると、男性患者は誤嚥性肺炎で6月7日に入院。食事には看護師の介助が必要だった。
 同月11日、院内の食堂で看護師が昼食を配膳してからナースコールを受け、10分ほど男性のそばを離れた。その間に男性が自分で食事をして喉を詰まらせたとみられる。当時、食堂には他の患者が2人いたが看護師はいなかった。」

 同院は、男性を残して現場を離れたのは不手際だったと認めた。事故後は看護師の付き添いを徹底すると同時に、食事の際は食堂に看護師1人を常置する対応を取っているという。」


これは,私が担当したものではありません.
報道によると,患者は食事をお預けの状態にされたため自分で食べてしまい,喉を詰まらせて死亡したのですから,落ち度(過失)はありますし,看護師が食事介助を行っていれば,患者が亡くなることはなかったので因果関係もあるでしょう.
裁判になる事案は,食事に看護師の介助が必要だったか否かが争われる事案です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-13 20:19 | 医療事故・医療裁判