弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1069 )

医療事件における最高裁判決の重さ

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医療事件では,用いる条文が民法709条と民法415条という抽象的な条文ですので,先行する類似事案の裁判例はきわめて重要です.
類似する事案であれば,下級審判決も参考になりますが,最高裁判決と下級審判決では,その重みが全く違います.

日本では,上級審の判決はその事件について差し戻した下級審裁判所を法的に拘束しますが,それ以外に法としての拘束力はありません.裁判官は,別の事件の最高裁判決に法的に拘束されません.最高裁判決の拘束力は,あくまでも事実上のものとされています.

最高裁判決がすべてが公式判例集に収載されるわけではありません.
公式判例集である「最高裁判所判例集 民事編」(「民集」と略されています)に収載された判決こそ,参考にすべき最高裁判決です.
これに対し,「最高裁判所裁判集 民事」(「集民」と略されています)収載の判決は,重要度が落ちるとみられています.

判決には,レイシオデシデンダイ(結論を導く直接的な理由)と傍論とがあります.
判決は,いろいろな理由からどうしても傍論が多くなりますが,真の判例はレイシオデシデンダイであるとされています.

最高裁判決は,それが根拠とした医学知見が現在では古くなっているものもありますし,例えばかつて華々しく議論された医療水準論が判決に書かれることは少なくなりましたが,それでも最高裁判決の基本的な考え方は,レイシオデシデンダイはもちろん,傍論であっても,医事裁判実務の大枠を画するものとして重要な意義があります.
上告理由が絞られてからは,最高裁判決が出されることは減りましたが,昨今の医療と医療裁判の実情に鑑みると,最高裁の役割は終わっていないと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-09 00:54 | 医療事故・医療裁判

京都地裁平成29年3月7日判決,患者情報を利用した詐欺、有印私文書偽造・同行使の医師に懲役3年

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毎日新聞「患者情報悪用 医師に懲役3年 京都地裁」(2017年3月7日)は、京都地裁が、詐欺や有印私文書偽造・同行使などの罪に問われた京都市上京区の医師(43)に対し、7日、懲役3年(求刑・懲役6年)の判決を言い渡したと報じました.

「判決によると、●●被告は2014年、実質的に経営していた訪問介護会社を通じて、27人に訪問介護を実施したとする虚偽の請求書や明細書を提出し、京都市から計約650万円をだましとった。さらに、自身の診療所に通っていた男性患者名義で住民基本台帳カードや通帳、パスポートを取得。15年1月と11月には、京都市内で車を運転中に速度違反などで警察官に停止させられた際、交通違反切符に男性患者の名前で署名した。「運転免許証を忘れた」として偽の住基カードを見せたとされる。」

報道の件は私が担当した事件ではありません.
文書偽造は重い罪ですのでこのような犯罪は多くはないと思いますが、医師がその立場を利用すると簡単に患者名義の住民基本台帳カードや通帳、パスポートをとれる仕組は改めたほうがよいのではないでしょうか.


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by medical-law | 2017-03-08 07:32 | 医療事故・医療裁判

美容外科クリニックで豊胸手術を受けて死亡した女性の死因,司法解剖で特定できず(報道)

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メーテレ「美容外科手術で女性死亡 医師「手術に問題なかった」(2017年3月1日)は,次のとおり報じました.

「名古屋市中村区の美容外科医院で手術を受けていて死亡した女性について、担当した医師は警察に対し「手術に問題はなかった」という趣旨の説明をしていることがわかりました。

警察によりますと、先月27日、中村区名駅の「東海美容外科クリニック」で、32歳の女性が豊胸手術を受けていたところ意識を失い、その後死亡しました。手術を担当した男性医師は警察に対し「手術自体に問題はなかった」という趣旨の説明をしているということです。警察は遺体の司法解剖をしましたが、死因は特定できませんでした。今後病理検査を行い、アレルギー症状があったかなどについても調べる方針です。」


報道の件は私が担当したものではありません.
司法解剖を行っても死因は除外できても特定できないことがあります.
出血死でないとすると,麻酔薬による呼吸停止等が疑われ,術中のバイタルがどのようなものだったかが問題になるでしょう.


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by medical-law | 2017-03-02 08:48 | 医療事故・医療裁判

甲府市立甲府病院,耳への使用が禁忌のヒビテン・グルコネート液を使用し示談2件

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朝日新聞「甲府の病院で医療ミス、2人と和解」(2017年2月21日)は,つぎのとおり報じました.


「甲府市立甲府病院で副作用の恐れがある消毒液「ヒビテン」を耳の手術に使い、難聴が悪化する医療ミスが2件あったことが20日、分かった。市は県内の70代男性と50代女性の患者と和解し、今月10日に和解金計850万円を支払った。


 厚生労働省によると、ヒビテンは1985年までに有効性より副作用の危険性が高いと指摘され、薬の添付文書で聴神経などへの直接使用について「難聴や神経障害を来すことがある」として「禁忌」と明示している。」



山梨日日新聞「耳の手術で禁止の消毒液使用 市立甲府病院」(2017年2月22日)によると,、11年6月、耳鼻咽喉科で鼓膜の穴をふさぐ手術の際、「液が透明で視認しやすい」ことなどから消毒液を「ヒビテン・グルコネート液」に変更されたとのことです.院内の医師らで構成する事故調査委員会が昨年3月、「ヒビテン・グルコネート液」の使用が原因と結論付けた,とのことです.


上記報道の件は,私が担当したものではありません.
ヒビテン・グルコネート液を耳に使用する耳鼻科医がいることに,驚きます.
病院は,当初感染症によるものでhないか,と言い,事故調査報告があっってからも約1年間公表してこなかったわけです.


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by medical-law | 2017-02-27 18:11 | 医療事故・医療裁判

横浜地判平成29年2月23日,同意していない目的で検査をした国立病院構横浜医療センターに慰謝料命じる

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神奈川新聞「同意なしで検査、病院に賠償命令 横浜地裁判決」(2017年2月24日)は,次のとおり報じました.

「国立病院機構横浜医療センター(横浜市戸塚区)に検査入院した同区の女性(70)が、不必要な心臓カテーテル検査を強いられたとして、同機構などに156万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(石橋俊一裁判長)は23日、女性側の主張を一部認めて30万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、女性は別の医療機関で動脈瘤(りゅう)の疑いと診断され、2015年12月に同センターに検査入院した。2日後に動脈瘤がないと判明したが、センター側は狭心症の疑いを理由に心臓カテーテル検査を実施した。

 判決は、女性が事前に同意した同検査は動脈瘤に対するものと指摘。狭心症の疑いのために同検査が必要であることを再度説明しなかったセンター側の対応を、「同意なく検査を行った不法行為」と認定した。

 その上で同検査のリスクなどを踏まえ、「狭心症の確定診断のためだけでは女性が検査に同意しなかった可能性は高い」として、検査費用の返還や慰謝料として30万円の支払いを命じた。」



これは私が担当した事件ではありません.
広く「症状の原因を調べるための検査」に同意した事案では,原因を知るために検査を行うことができるのですが,この報道の事案は「動脈瘤を疑っての検査」に同意しただけで,動脈瘤が否定された以上,同意のない検査ということのようです.
心臓カテーテル検査にもリスクがありますので,検査目的を患者に説明し,同意があった場合のみ検査できる,というのは当然のことでしょう.


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by medical-law | 2017-02-25 09:05 | 医療事故・医療裁判

Health Press,超一流?東大病院でズサン管理の死亡事故~担当弁護士が語る<危険な病院>の見分け方

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先日取材を受けたところ,Health Pressに,「超一流?東大病院でズサン管理の死亡事故~担当弁護士が語る<危険な病院>の見分け方」が載りました.ご一読いただきたくお願いします.
http://healthpress.jp/2017/02/post-2817.html


東京大学医学部附属病院薬剤取り違え事故についてはコチラ
http://medicallaw.jp/toudaitoritigae.html


谷直樹

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by medical-law | 2017-02-19 13:33 | 医療事故・医療裁判

大阪府済生会野江病院,太ももの痛みと腫れについて検査等を実施せず悪性腫瘍で死亡した事案で和解(報道)

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産経新聞「17歳少年の悪性腫瘍、「担当医の誤診で死亡」遺族が解決金700万円で病院と和解 大阪地裁」(2017年2月15日)は次のとおり報じました.

「左足にできた悪性腫瘍で平成26年に死亡した少年=当時(17)=の遺族が「担当医の誤診により適切な検査がされなかった」として、通院先の病院を運営する社会福祉法人恩賜財団済生会(東京)を相手取り、計1千万円の損害賠償を求めた訴訟で、同会が解決金700万円を支払う内容で大阪地裁(山地修裁判長)で和解が成立したことが15日、分かった。

 和解は1月27日付。訴状などによると、少年は中学3年だった24年10月、休み時間に学校の校庭でサッカーをしていた際に転倒して左大(だい)腿(たい)骨(こつ)を骨折。救急車で大阪府済生会野江病院(大阪市城東区)に搬送された。

 病院では骨折の治療を受けて退院したが、左の太ももの痛みと腫れが引かず、何度も受診。しかし病院側は骨折に伴う症状との診断を変えなかったという。そこで別の病院に行ったところ、25年3月に悪性腫瘍と診断された。同年5月に左足の切断手術を行ったものの、悪性腫瘍は肺や脳に転移しており、少年は26年12月に死亡した。」


これは,私が担当した事案ではありません.
整形の医師は,太ももの軟部肉腫についても一応の知識をもっているはずですが,思い込みは危険です.警鐘例といえるでしょう.軟部腫瘍の良性,悪性の判断は難しく,中途半端な生検はかえって危険なので,がんセンター等の専門病院への転院が必要なケースだったと思います.
和解金額から判断すると,裁判所は,医師の注意義務違反(過失)を認めたが,死亡との因果関係について高度の蓋然性まで認めなかったと思われます.
そのときにMRI検査,PET-CT検査していればどのような治療が行われてどのような結果になったかは,実際に検査が行われていませんので,原告は立証できません.被告が検査を怠ったことで原告が因果関係を高度の蓋然性の程度まで立証できず不利に取り扱われるというのは不合理です.軟部腫瘍が自覚されるのはかない大きくなってからであることが多いので,そのときにMRI検査,PET-CT検査を実施していれば救命できたという立証はハードルが高いでしょう.
それでも,注意義務違反(過失)が認められ,それと死亡との間に相当程度の因果関係が認められたことは大きな意義があると思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-02-16 18:37 | 医療事故・医療裁判

シンポジウム「医療の安全」を妨げているものは何か? 医療機関・法律家のあり方を問う!

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今週土曜日に医療情報の公開・開示を求める市民の会の主催で下記のシンポジウムが開かれます.

 「医療の安全」を妨げているものは何か? 医療機関・法律家のあり方を問う!
  日 時:2017年2月18日(土)13:00~16:30
  場 所:大阪弁護士会館大阪市北区西天満1-12-5(京阪中之島線「なにわ橋駅」下車)2F203
  参加費;1000円(資料代含)

  講演とパネルディスカッション
 ・「医療安全とは何か」
   加藤高志さん(大阪弁護士会)
 ・「医療側弁護士の困った事例」
   岡本隆吉さん(医療情報の公開・開示を求める市民の会)
 ・「患者側弁護士の困った事例」
   篠原聖二さん(医療過誤原告の会)
 ・「患者・遺族・医療者を置き去りにしない医療安全研修」
   岡本佐和子さん(奈良県立医大講師)
 ・「医療事故調査制制度で医療界は自律できるか」
   石川寛俊さん(大阪弁護士会)
  コーディネーター 勝村久司さん(医療情報の公開・開示を求める市民の会世話人)

  主 催:医療情報の公開・開示を求める市民の会
  共催: 「医療過誤原告の会関西支部」「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」「薬害・医療被害をなくすための厚生労働省交渉実行委員会」他


谷直樹

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by medical-law | 2017-02-16 08:34 | 医療事故・医療裁判

名古屋市,両足まひの後遺症との因果関係を認めた東京地裁の和解案に応じ1966万円支払い(報道)

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毎日新聞「和解金1966万円 名古屋市支払い」(2017年2月10日)は,次のとおり報じました.

「名古屋市は9日、市立東部医療センター東市民病院(現・市立東部医療センター)で腎結石の治療をした女性に両足まひの障害が残る医療事故があり、家族に和解金1966万円を支払うと発表した。市によると、女性は2009年10月、結石を除去する治療後に両足まひの後遺症が残った。脊椎(せきつい)などを保護するため女性が装着していたコルセットを、治療時に長時間外したため、神経を損傷した可能性が高いという。」

これは,私が担当した事件ではありません.
東京地裁は,死亡との因果関係を否定し,後遺症との因果関係を肯定し,和解案を提案したとのことです.
被告が名古屋市であっても,相続人遺族が東京に住んでいる場合などでは,東京地裁に提訴することが可能です.

谷直樹

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by medical-law | 2017-02-11 07:16 | 医療事故・医療裁判

人工呼吸器の電源が切れた状態で死亡した患者の件(報道)

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共同通信「人工呼吸器切れ82歳男性死亡」 (2017年 2月 9日)は,次のとおり報じました.

「茨城県警は9日、水戸市酒門町の総合病院「丹野病院」に入院していた男性(82)=同県城里町=が、人工呼吸器の電源が切れた状態で7日に死亡しているのが見つかったと明らかにした。司法解剖の結果、死因は不詳。」

これは私が担当した事件ではありまません.
人工呼吸器の電源がオフの状態になっていたとのことですすので,誰かがオフにした可能性が考えられます.

谷直樹

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by medical-law | 2017-02-09 21:09 | 医療事故・医療裁判