弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1124 )

島田市民病院,糖尿病既往歴がある患者にステロイド薬を投与し急性腎不全で死亡した事案で和解(報道)

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中日新聞「島田市民病院で医療事故 78歳男性死亡」(2017年6月16日)は次のとおり報じました.

「◆眼科に入院

 島田市立島田市民病院(同市野田)で二〇一五年十月、入院中の不適切な対応により、牧之原市の男性患者=当時(78)=が死亡する医療事故が起きていたことが、市民病院への取材で分かった。市民病院は「死亡の原因がはっきりしなかった」として事故を公表していなかった。

 市民病院によると、男性は当時、失明の危険性のある病気のため、二週間ほど眼科に入院していた。糖尿病の既往歴があるにもかかわらず、目の炎症を抑えるため、血糖値に影響を与える恐れのあるステロイド系の薬を投与したという。男性は退院した十月十二日に容体が急変し、市民病院に緊急搬送され、翌十三日に急性腎不全で死亡した。

 男性の死亡を不審に思った遺族が、市に損害賠償を請求。市は当初、医療行為が直接の原因とは考えていなかったが、再調査で「血糖値管理に不適切な対応があった」と認め、今年三月二十八日、遺族側に千九百万円を支払うことで示談した。

 市民病院の村松正幸総務課長は、本紙の取材に「病院としてあってはならない重大な結果で、再発防止に努めたい」としている。」

報道の件は私が担当したものではありません.
ステロイド糖尿病が知られていますが,糖尿病でなくても「ステロイド→高血糖→糖尿病」には注意しなけれなりません.眼科医であっても,眼科の知識だけではなく,処方する以上は薬の副作用を知っていなければなりません.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-16 20:43 | 医療事故・医療裁判

大阪大学医学部附属病院,脳腫瘍の手術ミスで約1億7千万円の和解(報道)

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共同通信「大阪大、脳腫瘍の手術ミスで和解」(2017年 6月 14日)は次のとおり報じました.

「2009年7月に大阪大病院(大阪府吹田市)で脳腫瘍の手術を受けた大阪市の男性(50)が、直後から意思疎通のできない状態になったのは医療ミスだとして、大阪大に計約4億2千万円の損害賠償を求めた訴訟で、大学側が男性と家族に計約1億7千万円を支払うことなどを条件に大阪地裁(山地修裁判長)で和解したことが14日、分かった。7日付。
 和解条項では、男性が系列病院で入院を継続できるよう調整に努めるとの内容も盛り込まれた。」

この件は,私が担当したものではありません.
この和解金額からすると,裁判所は,過失・因果関係があるとの心証をとったことが明らかです.
和解まで事故からほぼ8年かかっていることからすると,原告・被告の主張に対立があった事案と思います.
脳腫瘍の手術ミスは,他院でも起きていますが,解決まで時間がかかっているものが多いようです.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-15 09:36 | 医療事故・医療裁判

滋賀県立成人病センター,医師が器具を使う場所を誤り患者の脊髄を損傷した事案で和解(報道)

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読売新聞「滋賀県立成人病センターで手術ミス、県が賠償へ」(2017年6月13日)は,次のとおり報じました.

「滋賀県立成人病センター(滋賀県守山市)で2014年12月、県内の男性患者(67)に行われた首の手術で、脊髄を損傷するミスがあったことがわかった。男性は右半身まひなどの後遺症で身体障害2級の認定を受け、県は2000万円の損害賠償を行うことで合意。近く関連議案を県議会に提案する。

 男性や同センターによると、男性は右手指のしびれを訴え、同年10月に受診。脊髄を圧迫していた骨を取り除く手術を受けた。骨を削る際、男性医師が器具を使う場所を誤り、脊髄を損傷。男性は箸が持てないなど右半身の運動障害や左半身の知覚障害が起こり、約4か月間、入院した。退院後も障害が残り、別の病院でリハビリ治療を続けている。

 男性は16年12月、県に6568万円の損害賠償を求める民事調停を大津簡裁に申し立てたが、今月に和解することで合意した。」


京都新聞「頸椎手術で事故、障害残り賠償へ 滋賀成人病センター」(2013年6月13日)は,次のとおり報じました.

「男性は右手指のしびれを訴え、整形外科の男性医師が2014年12月に首を切開して脊髄への圧迫を取り除く「頸椎椎弓(ついきゅう)形成術」を行った。手術後まひが起こり、調査の結果、脊髄を守る骨「椎弓」が手術中に折れ、首の骨と筋肉をはがす器具が脊髄を損傷させた可能性が高いと判断した。
 男性は現在、歩けるものの右半身がまひで不自由な状態になり、左半身にも温度や痛みに対する知覚障害が残ったという。県は男性らに謝罪し、民事調停を通じて2千万円の支払いに合意することを決めた。20日に始まる6月定例会議に関連議案を提案する。
 同センターは会見で同様の手術は別の手法で行うなど再発防止策を説明。医師は手術を行わない部署に異動したという。」


報道の件は私が担当したものではありません.
右手指のしびれは,頚椎症性神経根症でしょうか.頚椎症性神経根症だとすれば,姿勢,老化に伴う一般的な疾患で,多少の症状では手術をしないことも多いのですが.
報道によれば,除圧の過程で,椎弓が手術中に折れ脊髄を損傷したということですが.それなら,注意義務違反(過失)は明らかでしょう.
なお,医療過誤について,東京では簡裁の調停は使いませんが(弁護士会の医療ADRのほうが使い勝手がよいので),東京以外の地域ではこのように簡裁の調停を用いることもあるようです.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-13 18:19 | 医療事故・医療裁判

虎の門病院の医療事故(胸部食道癌手術時の大動脈出血)の遺族(妻・娘)のコメント

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院の医療事故(胸部食道癌手術時の大動脈出血)の患者(東京都在住・61歳男性)の遺族のコメントは,下記のとおりです.

「第三者委員を加えた事故調査が行われたことに、感謝いたします。
私たちは、事故調査の結果の説明を受け、本当にいろいろなことが分かりました。

ただ、どうしても、虎の門病院の先生が、胸腔鏡で、胸腔内を見て、腫瘍が大動脈に固着していると分かりながら、独断で手術を続行されたことが残念でなりません。

大動脈に固着した腫瘍を剥離するために、大動脈の外膜も削ってしまい、血管が薄くなり、動脈圧に耐えられず大動脈から出血した、という説明を事故後に受けました。この説明を聞いて、大動脈の血管の一部を削ってまで腫瘍を取るのは危険すぎる、と思いました。


腫瘍が大動脈に固着している、つまり腫瘍が食道以外への臓器に浸潤しているので、T4です。虎の門病院の先生からは、事前にT4と分かっていた場合、手術ではなく化学療法を行ったというお話がありました。手術を始めてしまっても、T4とわかったときに中止してほしかったと思います。

手術の同意書にサインしましたが、T3という前提が変わったのですから、せめて、私たちに、大動脈に固着している腫瘍を危険を侵して取るかどうかを聞いてほしかったと思います。インフォームドコンセントというのは、きちんとした説明があることだと思います。
腫瘍が大動脈に固着している、T4だから本来化学療法になる、どうするか、と聞かれたら、私たちは手術の中止をお願いしたはずです。T4ですから長く生きられなくても、安らかな最期を迎えさせてあげたかったからです。訳も分からず突然亡くなってしまうなんて可哀相です。

今後は、インフォームドコンセントを徹底し、再発防止をはかっていただき、患者が安心で安全な医療を納得して受けられる病院にしていただきたく思います。

  2017年6月10日」


以下は,私のコメントです。

本件は,「予期されない死亡」にあたり,医療事故調査が行われました。
医療事故調査は,事故の原因を分析し,再発予防に役立てるものです。
責任の有無を判断するものではありません。したがって,事故調査報告書には,注意義務違反が明記されていませんし,病院が責任についてどのように考えるのかは,分かりません。
しかし,T4まで進行した癌については胸腔鏡下手術を行わないのが一般的ですし,大動脈に固着した腫瘍を剥離することの危険性のレベルは,T3について胸腔鏡下手術を行うものとは格段に異なります。にもかかわらず,敢えて手術を続行するという判断には疑問があります(判断ミス)。
また,少なくとも家族への説明が必要だったと考えます。
損害賠償については,今後,病院との話し合いで早期に解決できるよう努めたいと思います。

【追記】
テレビ朝日「虎の門病院で医療事故 大量出血で男性患者死亡」(2017年6月12日 )は次のとおり報じました。
「東京・港区の虎の門病院で食道がんの手術中に大量出血し、男性患者が亡くなっていたことが分かりました。

 虎の門病院が公表した医療事故調査報告書などによりますと、去年10月、61歳の男性患者に対して食道がんの摘出手術を行った際、がんは事前の診断より進行し、大動脈に張り付いた状態でした。執刀医ががんを剥がそうと大動脈の血管の一部を削ったところ、大量に出血し、男性は翌日に死亡しました。遺族は「手術中にがんが予想より進行していると分かれば中止を求めた」と「医師の独断で手術を続行したのは残念」とコメントしています。病院側は遺族の意見を取り入れたうえで、「予想と異なる事態が起きた場合には手術を中断し、家族と相談して同意を得ることが重要」などの再発防止策をまとめました。」

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-10 16:16 | 医療事故・医療裁判

国家公務員共済組合連合会虎の門病院,医療法上の医療事故調査制度における院内事故調査事例公表

国家公務員共済組合連合会虎の門病院は,2017年6月9日,医療法上の医療事故調査制度における院内事故調査事例(胸部食道癌手術時の大動脈出血)を公表しました.
報告書はコチラ


谷直樹

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by medical-law | 2017-06-09 23:02 | 医療事故・医療裁判

山形県立新庄病院,内視鏡事故後死亡した事案について仙台地裁で和解(報道)

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河北新報「膵炎患者死亡訴訟 山形県と遺族が和解」(2017年6月9日)は次のとおり報じました.

「新庄市の男性=当時(83)=が急性膵炎(すいえん)となり2014年2月に死亡したのは、山形県立新庄病院(新庄市)が内視鏡検査でミスをしたことなどが原因だとして、遺族3人が山形県に2500万円の損害賠償を求めた訴訟は8日、仙台地裁で和解が成立した。
 遺族側の代理人や県によると、県が遺族に解決金200万円を支払う。
 遺族側の代理人は「年齢や既往症を考慮した和解案で、遺族もおおむね納得している」と語った。県の加藤亮県立病院課長は「亡くなった患者のご冥福を祈り、安全安心な医療の提供に努めていく」と述べた。
 訴えによると、男性は13年11月、総胆管結石の治療のため入院。内視鏡検査の際、担当医が誤って検査器具で膵臓(すいぞう)の管を傷付けるなどしたため重症化し、多臓器不全で死亡した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
担当医が誤って検査器具で膵臓の管を傷付けるなどしたため重症化し多臓器不全で死亡した事案であれば,過失は明らかで,山形県はもっと早く訴訟前に示談可決することはできなかったのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-09 20:56 | 医療事故・医療裁判

三条総合病院,肝性脳症治療薬リフキシマ錠の指示に経口FXa阻害剤リフキシマ錠を処方し患者死亡(報道)

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新潟日報「誤投薬後に70代男性死亡 三条総合病院、因果関係を調査」(2017年6月3日)は,次のとおり報じました.

「三条市の県厚生連三条総合病院(神田達夫病院長)は2日、医師の指示とは異なる薬を入院中に与えられた同市の70代男性が5月1日に死亡したと発表した。病院は誤投薬があったとして院内に医療事故調査委員会を設置。投薬ミスと死亡の因果関係を調べている。

 病院によると、男性は4月中旬に肝性脳症で入院。担当医は「リフキシマ錠」の処方を指示したが、薬剤部が誤って、血を固まりにくくする「リクシアナ錠」を病棟に送った。

 男性は薬を28日から30日の昼まで計8回服用。便の異常を見た医師が内視鏡検査し十二指腸に出血があったため止血処置した。しかし5月1日午前に男性は意識を失い、間もなく消化管出血で亡くなった。3日に薬剤部が残薬を確認し、間違いに気付いた。

 薬剤部では、薬剤師が調剤した後に、別の薬剤師が確認する態勢になっており、今回も記録上は二重チェックしたことになっているという。

 三条総合病院の若杉克彦事務長は「誤投薬があったのは事実で大変申し訳ない。再発防止に取り組み、委員会の調査結果を厳粛に受け止める」としている。発表が死亡から1カ月後となったことについては「遺族への説明などに時間をかけたため」と説明。遺族には謝罪し、医療事故調査・支援センターにも報告したという。」

これは,私が担当した事件ではありません.

リフキシマ錠200mgは,難吸収性リファマイシン系抗菌薬で,主として腸管内のアンモニア産生菌に作用することで,アンモニア産生を抑制し,血中アンモニア濃度を低下させる肝性脳症の治療薬です.昨年秋に承認された新薬ですが,薬剤部がリフキシマ錠知らないとは考えられません.

リクシアナ錠30mgは,FXa (活性化血液凝固第X因子) を選択的可逆的かつ直接的に阻害する経口FXa阻害剤です.ワーファリンに代わって用いられることが多い抗凝固薬です.

リフキシマ錠200mgは一日3回ですが,リクシアナ錠30mgは一日1回です.
リクシアナ錠30mgを一日3回服用したことで出血したと考えるべきでしょう.
投薬ミスと消化管出血との因果関係は明らかと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-04 20:24 | 医療事故・医療裁判

歯科の感染対策を考えるシンポジウム-より安全・安心な医療を目指して-

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6月24日)(土)14時~17時,TKP日本橋カンファレンスセンター(ホール7)で,「歯科の感染対策を考えるシンポジウム-より安全・安心な医療を目指して-」が開かれます.

主催 全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団
共催 東京歯科保険医協会
(連絡先)全国B型肝炎訴訟東京弁護団事務局
〒160-0004東京都新宿区四谷1-4四谷駅前ビル 東京法律事務所内 電話03-3352-7333

第一部 基調報告
① 「B型肝炎感染被害と歯科への思い」
全国B型肝炎訴訟原告団 代表 田中義信氏

②「歯科の感染対策について」
歯科医 濱﨑啓吾氏(東京歯科保険医協会理事)

第二部 パネルディスカッション 厚生労働省医政局歯科保健課
山口聖士氏(歯科医師臨床研修専門官)
集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会 構成員梁井朱美氏(全国B型肝炎訴訟原告団)
歯科医 濱﨑啓吾氏

参加無料


谷直樹

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by medical-law | 2017-06-03 08:26 | 医療事故・医療裁判

民法改正と医療過誤に基づく損害賠償

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民法改正案が5月26日に参院本会議で可決し成立しました.

医療過誤に基づく損害賠償については,利率の変更が大きく影響を受けます.
現行は,遅延利息(=法定利息)が5%,中間控除も5%ですが,改正民法では,遅延利息(=法定利息)が3%,その3年後からは変動となり,中間控除はその損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率となります.
法定利率が引き下げられるのは債権者(患者)側に不利ですが,中間利息控除が引き下げられるのは債権者(患者)側に有利です。

1年後,2年後,3年後・・・の年収を現在価額に弾き直すために,中間利息控訴が行われます.
ゼロ金利時代に適合しない計算方法ですが,裁判所は,中間利息控除は法定金利と合わせる立場をとっています.
例えば,年収500万円の10年分は,5%なら「500万円×7.7217」,3%なら「500万円×8.5302」となります.
3%その後3年ごとの変動は,適切な改正と思います.

反面,遅延利息については患者側が不利になります。
例えば,年利5%の場合,5000万円の損害賠償で不法行為のときから3年で判決下された場合年5%遅延利息が付き5750万円となります。
年利3%の場合,5000万円の損害賠償で不法行為のときから3年で判決下された場合年3%遅延利息が付き5450万円となります。

【参考】
改正第404条
1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は,年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず,法定利率は,法務省令で定めるところにより,3年を1期とし,1期ごとに,次項の規定により変動するものとする。
以下略


改正第417条の2
1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において,その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは,その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により,これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において,その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも,前項と同様とする。


谷直樹

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by medical-law | 2017-05-29 16:07 | 医療事故・医療裁判

岐阜市民病院,術後患者のアラームとナースコールへの対応遅れの医療事故で病院の体制不備の責任を認める

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岐阜市民病院は,平成26年1月,60歳代前半の男性患者の事故について,平成29年5月24日,公表し,4000万円の損害賠償金を遺族に支払うことで示談が成立したと発表しました
岐阜市民病院のサイトによると,事故の概要と原因は次のとおりです.

「当該患者さんは、両手の痺れを主訴とし、各種検査のうえ、頚椎症性脊髄症と診断され、頚椎前方除圧固定術(多椎間)を施行した。手術は予定通り施行され、翌朝看護師が訪室した際には異常がなかったが、その後容態が急変し、モニターアラーム及びナースコールがあり看護師が訪室すると意識がなく、呼吸数、心拍数も低下している状態であった。
医師らが心肺蘇生を行い、心拍は再開したが意識は戻ること無く、蘇生後脳症と呼ばれる状態となった。その後、意識回復を期待して治療を継続したが平成27年9月、死亡した。
心拍を監視するモニターのアラーム音が発報し、患者さんもナースコールを鳴らしたが、当該病棟のスタッフは他の患者の対応中であり、直ちに対応することが出来ず処置が遅れてしまった。
事故後、第三者委員を入れた事故調査委員会を設置し検証した検証した結果、合併症として起こりうる低酸素血症の発生に対して早期に対応できなかった病院の術後管理体制に問題があると指摘された。」

読売新聞「頸椎の手術後合併症で死亡、4千万円賠償で示談」(2017年5月25日)は,「容体急変の際、心拍数の異常を知らせるアラームと患者からのナースコールが鳴った。しかし、看護師4人全員が他の患者の食事の準備などをしていてすぐに対応できず、8分後に病室に行くと、意識が混濁していたという。」と報じています.

岐阜市民病院は,次の再発防止策をとったとのことです.

「●頚椎前方除圧固定術(多椎間)の術後患者について
○当院では、術後のリスクを考慮し、本件後は一般病棟ではなく、ICU(集中治療室)に入室し、きめ細かい管理ができるようにした。

●重症患者の管理体制強化について
○新たにHCU(高度治療室)を整備し(平成28年2月1日から稼働)、8床体制で術後患者を含めた重症患者を管理している。

●一般病床における対応について
○ナースコールを受けた場合は、患者の訴えを確認し、返答がない場合には直ちに病室を訪室し、患者の状態を確認するという運用を統一して看圖蔬全員に周知した.
○手術後の注意点などを職員間で共有する手術後経過表の見直しを行い、「患者情報共有シート」を作成して、担当看護師だけでなく他の職員全てが患者の安全に務める体制づくりを行った。
○ナースコールと連動しているPHSの台数を増やし、職員相互の連絡・連携を強化した。

●スタッフ教育について
○緊急応援要請コール事例について収集・分析を行い、患者の異変につながる予兆に気付くことの重要性についての研修を行ったほか、病棟・外来において患者急変時の対応についてシミュレーション研修を実施した。」


本件は,私が担当したものではありません.
リスクの高い患者は,一般病棟ではなく,ICUやHCUで管理すべきでしょう.例えば,「急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)」でも短期リスク分類で高リスクの不安定狭心症はCCUに収容すべきことが明記されています.
病院の体制整備義務違反を認め,再発防止策をとった点で,評価できる対応と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-25 06:57 | 医療事故・医療裁判