弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1113 )

患者側弁護士のdiversity~証拠保全とカルテ開示

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患者側弁護士はdiversity(多様性)があります.
同じ案件でも,患者側弁護士によって,見立てが違う場合がありますので,患者側弁護士のセカンドオピニオンを聞くことは有用と思います.

或る弁護士が責任追及困難と判断した事案を別の弁護士が検討して責任追及可能という判断になる場合もありますし,逆の場合もあります.
なお,私は,攻めるタイプとみられがちなのですが,自分では,冷静に中庸の判断を行っているつもりです.

医療事件の進め方にも,弁護士のdiversityがあります.

《証拠保全とカルテ開示》
診療記録の入手方法には,証拠保全とカルテ開示があります.
最近,「証拠保全が原則です。」という患者側弁護士の記事を読みました.
これは,オーソドックスな考え方で,今でも当然ある考え方です.
私は,証拠保全かカルテ開示かは一概には決められませんが,原則は「カルテ開示」と考えています.あらためて私の考え方を書きます..

《証拠保全のメリットその1 改ざん防止》
証拠保全のメリットは,一般に,改ざん防止と言われます.
そもそも,今はカルテは開示請求されるものという意識で書かれていますので,不利な事実は最初から記入されていないことも多く,改ざんすることは少ないと思います.
電子カルテの場合,改ざんは履歴に残りますので,履歴も改ざんしないと完全ではありません.電子カルテの改ざんは不可能ではありませんが,一般的には困難である,と言えるでしょう.
また,証拠保全でも改ざんが確実に防止でjきるというものでもありません.私は,証拠保全を行って入手したカルテに改ざんがあった経験があります.ちなみに,この改ざんは判決で認定されています.

《証拠保全のメリットその2 完全な記録の入手》
次に,証拠保全のメリットは,一般に,もれなく完全な記録を入手できることと言われます.
たしかに,カルテ開示請求で,当然あるはずの重要な記録を出してこない場合もあります.
患者側弁護士が代理人に就いて損害賠償請求を行ったとたんに,カルテ開示請求で出なかった重要な記録が,出てきたことも結構あります.
カルテ開示請求の段階では医療機関の担当者が出さないほうがよいと判断して出さなかった記録が,医療機関の代理人に就いた弁護士の指導で出てきたのかもしれませんし,あるいは単なる手違いなのかもしれません.
ただ,これは,確信犯的に行っている場合は,証拠保全でも同じです.証拠保全後に,担当医師の部屋にあったとして,追加記録が任意提出された経験もあります.

《証拠保全のデメリット 費用と時間》

証拠保全のデメリットは,カルテ開示に比べ,費用と時間がかかることです.


《私の方針》

医療機関により,改ざん,隠蔽の可能性について高低がありますので,私は,原則は「カルテ開示」で,例外的に,改ざん,隠蔽の可能性の高い医療機関については証拠保全を行うようにしています.

10年前はカルテがないと判断ができないので証拠保全ばかり行っていましたが,証拠保全で入手したカルテをみると医療過誤ではないことが明白な場合も少なくありませんでした.医療過誤でないことをご理解いただき気持ちに整理をつけることも大切なことですが,依頼者に何十万円もの費用のご負担をかけることは申し訳なく思っていました.
カルテ開示が普及した今は,相談のときに,カルテをおもちいただくと,相談費用のみで一応の見立てができます.カルテをみると医療過誤の可能性の高低が分かり,その後の方針が立てやすく,最小の時間と費用で進めることができます.
医療事件は,どうしても費用と時間がかかります.私は,スタート時点での費用と時間はできる限り節約したい(医療過誤であれば,もっと有意義なところに費用と時間をかけたい)と思い,「カルテ開示」を原則としています.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-09 21:56 | 医療事故・医療裁判

整形外科病院が肘の靱帯再建手術の過誤で引退を余儀なくされた元ラグビー選手と約6千万円で和解(報道)

私が担当したものではありませんが,ラグビー元日本代表の真羽闘力さんが,2013年に,福岡市内の整形外科病院で負傷した左肘の靱帯再建手術を受け,手術の過誤により指が動かなくなる障害が残り,引退した件で,さいたま地裁で行われていた裁判が,2017年4月26日に,病院側が約6千万円を支払う内容で和解していたことが報じられました.

産経スポーツ「手術失敗で引退」のラグビー元日本代表、6000万円で和解」(2017年5月8日)ご参照

これは,野球選手が受けることの多い手術ですが,失敗はほとんど聞かないので,また靱帯再建手術で運動神経を損傷するのは回避可能のはずですから,この件は医師の不注意によるもので,医療過誤であることは明らかな事案でしょう.

争点は損害の評価でしょう.
指が動かなくなる障害は,その程度に応じて障害等級が判断されますが,逸失利益の算定にあたっては,職業が考慮されます.裁判例では,ピアノ教師,画家などの事案があります.
ラグビー選手(元日本代表)の場合,具体的にどのように算定するのか,一応の参考になる金額と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-09 00:36 | 医療事故・医療裁判

半田市立半田病院,下大静脈分岐部を損傷し出血性ショックで患者が死亡した事案で250万円示談(報道)

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朝日新聞「医療事故で女性死亡 愛知県半田市250万円賠償へ」(2017年5月8日)は,次のとおり報じました.

「愛知県半田市は8日、市立半田病院でがん手術中の事故によって死亡した60代女性の遺族に、解決金として250万円の損害賠償を支払うことを明らかにした。

 病院によると、2015年8月、産婦人科統括部長だった50代男性医師の執刀で、子宮体がんの女性から子宮などを摘出する手術をした。リンパ節に見つかった微少な出血を電気メスで止めようとした際に下大静脈分岐部を損傷し、大きな出血が起きた。血管外科医にも応援を求めて止血を試みたが完全には止血できずに手術を終了。女性は翌日、出血性ショックで死亡した。執刀した医師は手術経験が豊富だったという。

 石田義博院長は「止血方法が明らかに間違っていたとは言えず、重大なミスはなかった。遺族にも事故の経過を説明し、納得してもらった」と話した。」


これは,私が担当したものではありません.
どのようにして,この金額になったのかはわかりませんが,250万円という金額は,因果関係まで全部認めたとはいえないでしょうが,義務違反があることを前提とする金額と考えてよいでしょう.
市立半田病院ということで,1995年 6月の腹腔鏡下肝切除医療事故とそれを契機とする「医療事故市民オンブズマン メディオ」を思い出しました.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-08 23:43 | 医療事故・医療裁判

無痛分娩で妊婦が死亡

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NHK「「無痛分べん」で女性死亡 医師を書類送検へ 大阪」(2017年4月25日)は,次のとおり報じました.

「ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院で、「無痛分べん」で出産した31歳の女性が意識不明になり、その後、死亡していたことがわかりました。
警察は、女性が呼吸不全になった際に、医師が人工呼吸などの十分な対応をしなかったとして、業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。

捜査関係者などによりますと、ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で、31歳の女性が、麻酔で陣痛の痛みを和らげる「無痛分べん」で出産中に意識不明の状態になりました。
赤ちゃんは無事に産まれましたが、女性は、およそ10日後に低酸素脳症で死亡したということです。

これまでの捜査で女性は、59歳の院長が背骨に局所麻酔の注射をした際に容体が急変し、呼吸不全になったと見られることがわかったということです。

警察は、人工呼吸を続けて体の状態を回復させるなどの十分な対応をしなかったとして、近く院長を業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。」

「厚生労働省の研究班の調査では平成20年の時点で全国およそ250の施設が無痛分べんを実施していたということですが、陣痛の痛みを感じずに、出産できることなどから、妊婦の間で人気が高まっていて、ここ数年でさらに増えていると見られます。

一方、麻酔をかける必要があることから、副作用には細心の注意が必要だとされています。無痛分べんでは背骨の中に注射をするなどして局所麻酔をかける「硬膜外麻酔」と呼ばれる方法が一般的です。
硬膜外麻酔は、一般の産科の医師でも行うことが認められていますが、麻酔科の専門医によりますと、誤って血管や脊髄などに麻酔薬を投与してしまうと意識を失って呼吸ができなくなるケースや血圧が急激に低下するケースなど深刻な合併症が起こるということです。
いずれも迅速に対応すれば回復するということで、麻酔をかける際には患者の変化を見逃さないよう細心の注意が必要だということです。」


無痛分娩が普及したこと自体はよいことですが,無痛分娩により異変が起きたとき適切迅速に対応できる産科医師・施設が少ないように思います.

【追記】
谷直樹法律事務所では,「無痛分娩事故調査」を調査手数料10万円+消費税と実費預り金10万円(余剰金は返金します)で行っています.日本産科麻酔科学会の産科医師1名にカルテ・分娩監視装置の記録を検討いただき,専門的医師としての意見を聞きます。調査依頼から調査報告まで原則60日以内です.
全国対応いたします.


谷直樹

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by medical-law | 2017-04-28 10:04 | 医療事故・医療裁判

WHO,投薬ミスによる損害が年間420億ドル,医療費の1%

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世界保健機関(WHO)は,先月,薬の処方や服用のミスによる損害が年間420億ドル(約4兆7千億円)で,医療費の1%に当たるという試算を公表し,投薬ミスによる損害を半減させる取り組みを開始したとのことです.

日本経済新聞「投薬ミスで年4兆円超損害 WHO、半減目指す」(2017年3月30日)は,次のとおり報じました.

「ミスは医療従事者の疲労やスタッフ不足、訓練の不十分、さらに患者の知識不足などが原因で、いずれも防止可能と強調した。

 特に誤って使用した場合、害となる危険性の高い薬の取り扱いや、さまざまな疾患で複数の投薬を受けている患者の扱いが鍵になるとして各国に早期の対策を求めた。」


薬についての医療事故,医療過誤は多く,私は,つねに複数の投薬ミス事件を担当してきました..
例えば,
①公立病院で,腸閉塞の疑いのある患者に大腸検査前処置用下剤を投与した後,診察することなく,経口腸管洗浄剤を投与した事件(投与後死亡),
②個人病院で,無痛分娩のための麻酔薬投与後の患者観察を怠った事件(投与後遷延性意識障害),
③総合病院で,添付文書に反した方法で過大な量の硫酸マグネシウム製剤を投与した事件(投与後遷延性意識障害),
④大学病院で,別の患者のために用意された薬を投与した事件(投与後死亡),
⑤入院設備のない個人医院で,日帰り手術を実施し高齢者に呼吸抑制作用のあるペンタゾシンとミダゾラムを投与した事件(投与後死亡)
⑥総合病院で,医師がリバーロキサバン再開指示を忘れ,患者が脳梗塞を発症した事件

などがあります.
投薬による医療過誤の事件は,示談で解決することも少なくありません(上記②・④・⑥は解決済み)が,過失は明らかでも,死亡または遷延性意識障害との因果関係が不明であるという理由で賠償義務を否定され,裁判になることもあります(上記①はこれから提訴,上記③・⑤は係争中).

私は,医療過誤事件について,賠償を求めるのみならず,事故の公表を求め,再発防止の策定を促すことを意識的に追求してきました.
とくに,投薬による医療過誤については,その気になって再発防止に努めれば,有効な再発防止が可能分野の一つだと思います.


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by medical-law | 2017-04-20 08:56 | 医療事故・医療裁判

山梨地判平成29年4月18日、術後せん妄による83歳死亡で山梨病院に1260万円の賠償を命じる(報道)

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産経新聞「術後徘徊で死亡に賠償命令 「防止措置怠る」甲府地裁」(2017年4月18日)は、次のとおり報じました.

「判決によると、男性は平成22年2月24日、直腸がんなどの切除手術を受け、翌日深夜に術後せん妄を発症してカテーテルや酸素マスクを外し病院を徘徊。1階待合室で心肺停止の状態で発見され、間もなく死亡した。

 峯俊之裁判長は判決理由で、80代以上は術後せん妄の発症頻度が特に高いとされていることに触れ「徘徊行動の具体的予見は困難でも、カテーテルを抜くなどの行動は予見できた」と指摘。「病院側は防止措置や術後せん妄に関する必要な検査を怠った過失があった」とした。」


これは、私が担当した事件ではありません.
患者は83歳男性で術後翌日ですので、術後せん妄の予見可能性はあると言えそうです.

なお、術後せん妄の予見義務を否定した裁判例には、63歳の男性についての東京地裁平成21年9月15日判決(高橋譲判決)があります.

年齢は,術後せん妄の大きなリスク要因です.



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by medical-law | 2017-04-19 01:00 | 医療事故・医療裁判

日本産科婦人科学会で無痛分娩の事故を踏まえて緊急提言

b0206085_13505760.jpgNHK「“無痛分べんに十分な医療体制を”厚労省研究班が緊急提言」(2017年4月16日)は,次のとおり報じました.


「麻酔を使って陣痛を和らげる「無痛分べん」について厚生労働省の研究班は、麻酔によって死亡した例があるなど通常の分べんと異なる管理が求められるとして、医療機関に対し無痛分べんを行う際には十分な医療体制を整えることを求める緊急提言を行いました。無痛分べんについて、こうした提言が出されるのは初めてです。


この緊急提言は16日、広島市で行われた日本産科婦人科学会で厚生労働省の研究班の班長を務める三重大学の池田智明教授が発表したものです。


研究班では、去年4月までの7年間に報告された妊産婦の死亡例298人を分析したところ、脊椎への注射で麻酔をかけて無痛分べんを行っていた死亡例が13人あり、このうち1人が麻酔による中毒症状で死亡していたということです。また、羊水が血液に入る症状や大量の出血が起きたケースもありました。


このため緊急提言では、無痛分べんは麻酔によってまれに重大な合併症が出るほか、赤ちゃんを引っ張って出す処置が必要なケースが増えるなど通常の分べんとは違った管理が求められると指摘し、無痛分べんを行う施設に対して麻酔による合併症や出血などに確実に対応できる体制を整えることを求めました。」

私も無痛分娩の事故を取り扱ったことがあります.
体制の整っていない施設で行うのは大変危険です.



谷直樹

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by medical-law | 2017-04-17 13:35 | 医療事故・医療裁判

米国の最近の医療訴訟事情

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ジョンズ・ホプキンス大学のマーティン・メイカリー教授らのグループの報告によれば,医療ミスで死亡する患者数は,年間少なくとも25万1454人で,心疾患とがんに続いて3番目に多い可能性がある,とのことでした。

ところが,今般,報告された全米医師データバンクのデータでは,医療過誤訴訟が減少し,1件あたりの賠償額は増加していう,とのことです.

その原因は,賠償金と弁護士報酬を制限した法律を制定した結果,弁護士が医療過誤訴訟を引き受けないようになったからとみられています.

HealthDay,Fewer Successful Malpractice Claims in U.S., But Higher Payouts



谷直樹

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by medical-law | 2017-04-10 19:10 | 医療事故・医療裁判

日本医療安全調査機構,医療事故の再発防止に向けた提言(第1号)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析

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一般社団法人日本医療安全調査機構は,対象事例10件を検討し,平成29年3月,「医療事故の再発防止に向けた提言(第1号) 中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析─第1報─ 」 を発表しました.提言は,以下のとおりです.

【適 応】
提言1 中心静脈穿刺は、致死的合併症が生じ得るリスクの高い医療行為(危険手技)であるとの認識を持つことが最も重要である。血液凝固障害、血管内脱水のある患者は、特に致命的となるリスクが高く、中心静脈カテーテル挿入の適応については、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)による代替を含め、合議で慎重に決定する。

【説明と納得】
提言2 中心静脈カテーテル挿入時には、その必要性及び患者個別のリスクを書面で説明する。特にハイリスク患者で、死亡する危険を考慮しても挿入が必要と判断される場合は、その旨を十分に説明し、患者あるいは家族の納得を得ることが重要である。

【穿刺手技】
「穿刺手技のポイント」の動画(URL https://www.medsafe.or.jp/movie/)
提言3 内頚静脈穿刺前に、超音波で静脈の性状(太さ、虚脱の有無)、深さ、動脈との位置関係を確認するためのプレスキャンを行うことを推奨する。

提言4 リアルタイム超音波ガイド下穿刺は、超音波の特性とピットフォール(盲点)を理解した上で使用しなければ誤穿刺となり得る。術者はあらかじめシミュレーショントレーニングを受けることを推奨する。

提言5 中心静脈カテーテルセットの穿刺針は、内頚静脈の深さに比較し長いことが多いため、内頚静脈穿刺の場合、特にるい痩患者では、深く刺しすぎないことに留意する。

提言6 穿刺手技時、ガイドワイヤーが目的とする静脈内にあることを超音波や X 線透視で確認する。特に内頚静脈穿刺の場合、ガイドワイヤーによる不整脈や静脈壁損傷を減らすために、ガイドワイヤーは 20cm 以上挿入しない。

【カテーテルの位置確認】
提言7 留置したカテーテルから十分な逆血を確認することができない場合は、そのカテーテルは原則使用しない。特に透析用留置カテーテルの場合は、致死的合併症となる可能性が高いため、カテーテルの位置確認を確実に行う必要がある。

【患者管理】
提言8 中心静脈カテーテル挿入後の管理においては、致死的合併症の発生も念頭において注意深い観察が必要である。血圧低下や息苦しさ、不穏症状などの患者の変化や、輸液ラインの不自然な逆流を認めた場合は、血胸・気胸・気道狭窄、カテーテル先端の位置異常を積極的に疑い、
迅速に検査し診断する必要がある。
また、穿刺時にトラブルがあった場合などを含め、医師と看護師はこれらの情報を共有し、患者の状態を観察する。

提言9 中心静脈穿刺合併症出現時に迅速に対応できるよう、他科との連携や、他院への転院を含めたマニュアルを整備しておく。


対象事例10件の医療事故調査の結果が結実した提言ですので,これらの提言を臨床現場が真摯に受け止め,実行されることを期待します.



谷直樹

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by medical-law | 2017-04-06 08:27 | 医療事故・医療裁判

山形県立中央病院 心臓病手術の女児死亡事件,遺族と和解し再発防止策公表(報道)

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山形新聞「女児死亡訴訟、遺族と和解成立 県立中央病院が再発防止策公表へ」(2017年3月31日)は,次のとおり報じました.

「県立中央病院で2012年、心嚢(しんのう)液を排除する処置が遅れ、当時10歳の女児が死亡したとして、両親が県に約7300万円の損害賠償を求めた訴訟は30日、山形地裁(松下貴彦裁判長)で和解が成立した。県は解決金として3600万円を支払うほか、迅速な救急措置に対応できる院内連携態勢の整備を約束。再発防止策や事案の概要を来月からホームページで公表する。

 原告の代理人弁護士などによると、同年8月、女児は心房中隔欠損症の術後7日目、午後3時40分から同4時すぎの心エコー検査で、心臓を覆う膜に液体がたまる心タンポナーデと診断された。心嚢液の排除が必要だったが約3時間後まで実施されず、女児はその間に心停止。後日、死亡した。担当医は午前10時ごろに女児を診察した後、夏季休暇のため病院を離れ、連絡を受けて戻ったのは午後5時20分すぎだった。両親は14年5月に提訴した。

 同弁護士によると、昨年12月の弁論準備手続きで、裁判所から「迅速に心嚢液を排除すべきであった可能性が高い」との認識が示されたという。和解理由について弁護士は「原告が最も問題であると考えていた点について裁判所の認識、見解が示されたこと、再発防止の提示と公表を病院側が承諾したこと」などを挙げている。和解の席上、後藤敏和院長が遺族に謝罪した。

 女児の父親は和解成立後、取材に対し「亡くなった原因が明らかになり、病院からの謝罪が示されたことで一区切りがついた。同じことが二度と起きてほしくない」と話した。

 裁判所から和解勧告があり、同病院は「紛争の確定的解決、遺族との信頼回復の観点から和解を受け入れることにした」と説明。「今後とも安全・安心な医療を提供するため、積極的に事故防止対策に取り組む」などとする後藤院長のコメントを発表した。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
裁判上の和解では口外禁止条項がつくことが多いのですが,すくなくとも公の病院,地方自治体が開設する病院では,へ,基本的に事故の公表と再発防止の公表を行うべきと考えます.


谷直樹

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by medical-law | 2017-04-01 10:05 | 医療事故・医療裁判