弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1071 )

日本産婦人科医会,重大事故が相次いでいる愛媛県今治市の産婦人科医師を指導(報道)

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読売新聞「愛媛の診療所、妊産婦の死亡・障害続発…産科医会が初の直接指導」(2016年12月12日)は次のとおり報じました.


「愛媛県今治市の産婦人科診療所で昨年までの3年以内に妊産婦2人の死亡が相次ぎ、日本産婦人科医会が指導に乗り出した。

 妊産婦に重い障害が残った例も含め深刻な事態が続発しており、同医会は11日、役員らが現地を訪れて事情を聞き、改善策としてリスクの高い帝王切開は行わないなどの方針を確認した。同医会が医療機関へ直接指導に踏み切るのは初めて。

 同医会は、開業医を中心とする全国約1万2000人の産婦人科医が加入する専門職団体。厚生労働省によると、日本の妊産婦死亡率は出産10万件に3・8人と極めて低い。同診療所での出産は年間約130件。50歳代の男性医師が一人で診療にあたっていた。特定の診療所で短期間に死亡や重度障害が続発するのは「通常ない深刻な事態」(同医会)で、異例の対応に踏み切った。

 同医会は、問題の可能性があるとの情報が寄せられた出産4件を調査。カルテを調べたところ、2012年に産後に大出血した女性が死亡、3年後の15年には帝王切開を受けた女性が死亡していた。09年には帝王切開後に脳梗塞を起こした女性が半身マヒの重い障害を負ったほか、16年には帝王切開後の女性が出血性ショックで重症となったが、他の病院に搬送され命を取り留めた。女性4人はいずれも当時30歳代。

 この日、松山市で取材に応じた同医会は、過失の有無は不明としたが、出血や血圧の管理、急変時の対応など、診療に不十分な点があったとの見方を示した。また、妊産婦が死亡した場合、詳細を報告するよう医療機関に求めているが、同診療所は1件について簡単な報告をしただけだった。

 指導を受け、同診療所では今後、帝王切開は近隣の病院に任せ、正常 分娩 も来年3月までとする方針。同医会は、同4月にも、改善策が実行されているか実地調査を行う予定だ。同医会の石渡勇・常務理事は「もっと早く情報を把握し対応すべきだった」としている。」



毎日新聞「愛媛・産婦人科医 日本医会が改善指導 3年間で2人死亡」(2016年12月12日)は次のとおり報じました.

「出産直後の女性が死亡するなど複数の重大事案が起きた愛媛県今治市の産婦人科医院を、日本産婦人科医会の幹部らが11日に訪れて調査を実施し、改善を指導した。医会幹部の立ち入り指導は異例といい、石渡勇・医会常務理事は取材に対し「3年間で死亡事案が2件相次いだことは異常。非常に重く受け止めている」と話している。国内で年間約100万件ある分娩(ぶんべん)の前後に女性が死亡する事故は通常40件程度という。

 医会などによると、同産婦人科は50代の男性医師が1人で診療にあたり、年間130~140件ほどのお産を手掛けている。「重大医療事故が相次いでいる」という情報が寄せられたことを受け、医会は今年9月、カルテなどの調査に着手。その結果、2009年以降の8年間で2件の死亡事案を含む4件の重大事故が起きていたことが確認された。

 12年には当時30代の女性が出産後に出血が止まらず、市内の県立総合病院への搬送中に死亡。15年には当時30代の別の女性が帝王切開手術後に腹腔(ふくくう)内で大量出血し死亡した。この他、09年に当時30代の女性が麻酔を伴う帝王切開手術の後、脳梗塞(こうそく)になり、半身にまひが残った。16年も出産後の大量出血で当時30代の女性が一時重症となった例があったという。いずれも、生まれた子は無事だった。

 男性医師はこれら4件のうち、15年に起こった死亡事案の概要を医会に報告したのみで、3件については医会に伝えていなかった。医会は詳しい報告を待つスタンスを取り、評価委員会を開くなどの対応はしていなかった。

 医会は11日の調査後、「症状が重篤になる前に別の対応ができた可能性があり、結果的に判断が遅かったことになる」と指摘。血圧や脈拍数などを正確に測ることや、緊急時には速やかに県立病院に搬送する体制を整えることなどを改善点として示した。

 その上で、今後の方針として、来年3月末までに分娩から撤退することを前提に、その後は同産婦人科では34週前後までの妊婦の検診のみ受け付け、分娩は県立の総合病院でしてもらう「セミオープンシステム」を提案した。

 石渡常務理事は「地域の医師間のコミュニケーションが取れておらず、人手不足を補って助け合うことができていなかったことが残念」としている。男性医師は取材に対し「指摘された内容を重く受け止め、改善していかないといけない。提案については前向きに検討する」と述べた。【黒川優、成松秋穂】」



毎日新聞「<産科重大事故>リピーター医師の根絶困難 是正制度不十分」(2016年12月12日)は次のとおり報じました.

 「愛媛県今治市の産婦人科で出産直後の女性の死亡などの重大事故が相次いでいたことが明らかになった。医療事故を繰り返す「リピーター医師」は、重大な医療事故が多発した1999年ごろから問題視されるようになった。厚生労働省は2007年度から行政処分を受けた医師の再教育を義務付けたが、事故の繰り返しは明るみには出にくく、是正制度は十分とはいえない。

 医療事故に備えて医師や医療機関の多くは保険に加入し、開業医には日本医師会が契約する医師賠償責任保険がある。過去の機関誌によると、73〜95年に患者側から100万円を超える損害賠償を2回以上請求された医師は511人に上る。

 厚労省の審議会は02年、刑事事件にならなくても明らかな注意義務違反があった医療ミスを医業停止などの行政処分対象とする方針を示したが、実際に処分したのはわずか2件。ミスの繰り返しを理由としたのは12年の戒告1件だけだ。

 昨年10月から医療事故調査制度が始まり、従来は特定機能病院などに限られていた死亡事故の報告義務が、全ての死亡事故に拡大された。しかし、事故の繰り返しをチェックしたり、外部が是正を求めたりする仕組みにはなっていない。

 一方、日本産婦人科医会は04年から会員に重大事故の報告義務を課し、調査や改善指導する独自制度を作った。年間100〜600件台の報告があるが、報告するかどうかは医師の判断任せで、同医会に業務停止などを命じる権限もない。リピーター医師の排除は難しいのが現状だ。【清水健二】」



たまたま重大事故が相次いだとは考えにくい頻度です.
産科医・産科医療を守るためには,むしろ,積極的な指導が必要だったと思います.
もっと前に指導改善していたなら,後の事故は起きなかったかもしれません.

谷直樹

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by medical-law | 2016-12-12 15:41 | 医療事故・医療裁判

高知県・高知市病院企業団立高知医療センターで,麻酔剤多量投与のミス,抗菌剤を静脈注射のミスの医療事故

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読売新聞「医療事故2件で一時心肺停止…高知医療センター」(2016年12月11日)は次のとおり報じました.

「高知医療センター(高知市)で7月、入院中の70歳代の男女各1人に対し、誤って麻酔剤を多量に投与したり、抗菌剤の投与方法を間違ったりする医療事故があり、ともに一時心肺停止の状態に陥ったことがわかった。

 病院側は関係者に謝罪したという。

 同医療センターによると、70歳代の男性は、胆管と膵管に内視鏡検査を行うため、麻酔剤を投与。効果が薄いため投与量を増やしたところ、心拍数が低下して一時心肺停止となった。蘇生を行って現在は回復したという。

 一方、70歳代の女性には、肺の治療のため吸引で抗菌剤を投与する方法をとるはずだったが、誤って静脈注射で投与し、一時心肺停止になった。蘇生を行って回復したが、処置する際に肋骨が折れたという。

 同医療センターは「事故をしっかりと検証して情報共有を行い、マニュアルを見直したい。今後は患者の安全管理に一層重点を置き、病院運営を図りたい」としている。」


医療事故のなかでも,薬剤に関するものは多いように思います.
高知新聞によると,「高知医療センターでは、薬剤の投与方法は医師が電子カルテに記入して指示。電子カルテには「吸入」の指示が記入できないシステムになっており、吸入の場合はいったん「注射」と記入し、コメント欄で吸入を指示することが慣例となっていた。看護師は別病棟から異動してきており、この慣例が徹底できていなかった」とのことです.


谷直樹

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by medical-law | 2016-12-11 22:56 | 医療事故・医療裁判

高知地判平成28年12月9日,胎児心拍悪化にもかかわらず帝王切開に着手しなかった件で約1億8000万円賠償命令

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朝日新聞「出産時の過失で子に障害、病院側に1億8千万円賠償命令」(2016年12月9日)は,次のとおり報じました.


「生まれたばかりの乳児が脳性まひになったのは、医師らの過失だったとして、両親らが高知赤十字病院(高知市)を運営する日本赤十字社に介護費用など約2億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、高知地裁であった。石丸将利裁判長は「帝王切開などに着手していれば、障害を負わなかったと推認できる」とし、約1億8千万円の支払いを命じた。

 判決によると、母親は数年前、高知赤十字病院の分娩(ぶんべん)室に入室。その際、担当医は胎児の心拍数などから低酸素状態が悪化していることを認識できたが、帝王切開などは検討せず、そのまま陣痛促進薬による分娩を続けた。判決は「出産時の過失が原因で生じた後遺障害であることから、母親の精神的苦痛は特に強い」と指摘した。

 判決を受け、両親は弁護士を通じ、「親の責任を少しは果たすことができた。二度とこのような医療過誤が起きないようにしていただきたい」とコメント。高知赤十字病院は「原告側のプライバシーがあるので、コメントは差し控える。控訴するかは未定」としている。」


産経新聞「出産で重い後遺症、病院側に1億8千万円賠償命令 高知地裁」(2016年12月9日)は,次のとおり報じました.


「高知赤十字病院(高知市)で生まれた子どもに重い脳性まひが残ったのは、医師らによる分娩時のミスが原因だったとして、高知県内に住む本人と両親が運営元の日本赤十字社に計2億円余りの損害賠償を求めた訴訟の判決で、高知地裁は9日、1億8千万円余りの支払いを命じた。

 石丸将利裁判長は、医師は出産直前のデータから子どもが低酸素の状態にあり、悪化していることを認識できたと指摘。自然分娩を継続した場合は脳性まひなどの後遺症が生じることも予見可能で、帝王切開などの検討、実施をしなかった過失があったと判断した。

 その上で、子どもに対しては将来にわたって必要となる介護関連費用のほか、逸失利益や慰謝料など計約1億7400万円を、両親には慰謝料計770万円を支払うべきだと結論付けた。

 原告側の代理人弁護士によると、子どもは約4年前に高知赤十字病院で出生。現在は家族らが在宅介護している。」



この報道の件は,私が担当したものではありませんが,産科事件は,私もけっこう担当しています,.
産科医療補償ができてから,3000万円の補償が支払われるようになり,原因分析が検討されるようになったことはよいのですが,原因分析調査報告書の記載がときに因果関係判断を難しくしていることがあります.
たとえば,帝王切開の遅れがなければどうであったか,という仮定の判断については,産科医学的判断からは不明であるとされたとしも,産科医学的判断がそのまま法的判断である因果関係判断に直結するものではありません.その意味で,帝王切開に着手したかったことと結果との間の因果関係を認めたこの判決は,正しく因果関係を認定したものと思います.
ちなみに,石丸将利判事は私の同期です.司法修習49期の判事も裁判長に補されるようになってきています.
本件が判例雑誌等に掲載されたら,丁寧に読んでみたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2016-12-10 11:40 | 医療事故・医療裁判

母体保護法指定医師の資格のない医師が中絶手術12件,死亡女性遺族告発(報道)

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日本テレビ「中絶手術後に妻死亡 夫が記者会見」(2016年12月6日)は次のとおり報じました.

「東京・武蔵野市の産婦人科病院で、亡くなった妻の中絶手術を、指定を受けていない医師が行ったとして、6日、遺族の夫が医師を刑事告発した。夫は6日午後2時すぎに記者会見し、妻が急死した原因の究明をうったえた。

 刑事告発したのは都内に住む男性で、今年7月、男性の当時23歳だった妻が武蔵野市の「水口病院」で、胎児の発育が良くないと診断されたため人工妊娠中絶手術を受けたところ、手術の6日後に急死したという。

 中絶手術は指定の医師以外が行うことを禁止されているが、病院側は指定を受けていない医師が執刀したことを認めた。手術と死亡の因果関係はわかっていないが、男性は6日午後、記者会見し、妻が急死した原因についても、調べてほしいとうったえた。

 夫「この手術が本当に原因ではないのか、ちゃんと調べてほしい。病気とかなく健康な人間がなぜ死ぬのか」

 水口病院によると、執刀した医師は、今回の女性を含め12件の中絶手術を行っている。男性は6日、この医師を業務上堕胎罪で刑事告発し、警視庁が受理した。」


NHK「妊娠中絶手術受けた女性死亡 遺族が医師を告発」(2016年12月6日)は次のとおり報じました.

「ことし7月、東京・武蔵野市の産婦人科病院で人工妊娠中絶の手術を受けた女性が6日後に死亡していたことがわかりました。女性の遺族は、執刀した医師が手術に必要な指定を受けていなかった疑いで警視庁に告発しました。

これは女性の遺族と弁護士が6日午後、記者会見をして明らかにしました。

それによりますと、東京・武蔵野市にある産婦人科の「水口病院」で、ことし7月、当時23歳の女性が人工妊娠中絶の手術を受けたあと体調が悪化し、6日後に自宅で死亡しました。手術との因果関係はわかっていませんが、執刀した男性医師は、中絶の手術をするのに必要な東京都の医師会からの指定を受けていなかったということです。

このため遺族は、指定を受けずに違法に手術を行った疑いでこの医師を6日、警視庁に告発しました。会見した26歳の夫は「胎児の発育が不十分だと説明があり、妻と話し合って中絶を決めたが、健康だった妻が急死したことには納得がいかない。本当に手術が原因ではなかったのか、病院の管理体制が適切だったのかを明らかにしてほしい」と話していました。

水口病院は、「このような事件を発生させたことを反省するとともに、深くおわび申し上げます。事件を厳粛に受け止め、再発防止に向け、全力で信頼回復に取り組んでまいります」とコメントしています。

病院は医師の手術を容認

水口病院によりますと、今回執刀した男性医師は、ことし8月から10月までの3か月間勤務し、合わせて12件の人工妊娠中絶の手術を行っていたということです。病院では、この医師が、必要な指定を受けていないことを把握していたものの、指定を受けていた当時の院長の責任のもとで、手術を行うことを容認していたということです。病院は認識不足だったとしていて、この問題を受けて当時の院長と執刀した医師はいずれも10月末で退職したということです。」



遺族側の代理人は,オアシス法律事務所の中川素充先生です.

母体保護法指定医師の技能要件は,以下のとおりです.

「都道府県医師会が認める研修機関において、一定期間産婦人科医として専門知識を修め、手術並びに救急処置法等の手技を修得しかつ下記要件を具備すること。
(1)医師免許取得後5年以上経過しており産婦人科の研修を3年以上受けたもの又は産婦人科専門医の資格を有すもの。
(2)研修医療機関において、20例以上の人工妊娠中絶又は流産手術の実地指導を受けたもの。ただし10例以上の人工妊娠中絶手術を含むこととする。なお、指定医師でない医師については、研修機関で指導医の直接指導の下においてのみ人工妊娠中絶手術ができる。
(3)都道府県医師会の定める指定医師のための講習会(以下、「母体保護法指定医師研修会」という)を原則として申請時までに受講していること。」


中絶手術で妊婦が亡くなることは普通ありません.
術者に母体保護法指定医師の資格がなかったことと,本件妊婦の死亡が関連するという見方もそれなりに合理的な推測ですが,今の時点では,具体的な事実が明らかでないため,手術と妊婦の死亡との因果関係については何とも言えません.

ただ,告発された業務上堕胎罪は,妊婦の死亡との因果関係の有無にかかわず成立する罪です.
母体保護法第14条は,次のとおり定めています.

「都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一  妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの(以下略)」


この母体保護法第14条にそった人工妊娠中絶は,堕胎罪の堕胎にあたらないのですが,本件術者は「指定医師」ではないので,本則にかえって堕胎罪が成立する,と考えることもできます.ただ,本件で母体の健康保護など人工妊娠中絶が必要な事情があったとすれば,堕胎罪は成立しない,とも考えられます.


いずれにしても,事実が解明されることを期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2016-12-06 18:42 | 医療事故・医療裁判

秋田地判平成28年12月5日、秋田大学医学部付属病院脂肪腫除手術で痛みが残った事案で約806万円支払い命令

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秋田魁新報「秋大病院・切除手術問題 秋田地裁判決、秋大に賠償命令」(2016年12月6日)は、次のとおり報じました.

「秋田大学医学部付属病院(秋田市)の医師が誤診して脂肪腫の不要な切除手術を行ったため左肩に強い痛みが残ったなどとして、同市の公務員男性(58)が同大に6千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、秋田地裁(斉藤顕裁判長)は5日、同大に約806万円の支払いを命じた。原告側は控訴する方針。同大広報課は「判決文を精査し、判断したい」としている。」



この報道の件は,私が担当したものではありません.
過失が明らかでも、損害と因果関係が争われることがよくあります.
とくに痛み,痺れなどの神経症状の後遺症等級認定は難しいことが多いです.

河北新報「誤診で手術し後遺症 秋田大病院に賠償命令」(2016年12月6日)は、次のとおり報じました.

「秋田大病院(秋田市)で1997年9月、秋田市の男性が左肩の腫瘍を悪性の脂肪肉腫と誤診され、必要のない手術を受けて副神経を損傷し後遺症となったとして、2010年に同病院を設置する秋田大に6000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、秋田地裁(斉藤顕裁判長)は5日、病院側に約800万円の支払いを命じた。
 判決によると、病院側が検査結果などから脂肪肉腫の疑いがあると診断したことは相当で、手術自体は違法ではないと認定。その上で、手術当時、副神経の損傷を防ぐ方法が報告されていたのに医師が具体的な措置を講じなかったと指摘し、「病院側に過失がなかったとはいえない」と判断した。
 同大の担当者は「判決文を精査した上で対応を検討したい」と話した。」





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by medical-law | 2016-12-06 00:50 | 医療事故・医療裁判

訃報,小笠豊先生

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広島の小笠豊先生から,毎年とても凝った美しい年賀状をいただいていました.
ところが,先日,奥様から喪中の御挨拶が届きました.
9月21日に69歳にて永眠したとのことです.

小笠豊先生は,お一人で多数の医療事件を担当されて,以前は,全国交流集会でその結果(勝訴・敗訴の数)を発表されていました.その成果はただただ驚くばかりでした.
孤高の一匹狼のイメージが強い小笠豊先生ですが,講演会,研修会にも登壇し,また東京地裁に提訴する事件について私ら若輩にもお声をかけていただいたこともありました.
御体調が良くないという噂を聞いてはいましたが,69歳の若さで逝かれたことは本当に残念です.

謹んでご冥福をお祈りいたします.


谷直樹

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by medical-law | 2016-12-04 22:27 | 医療事故・医療裁判

福岡高判平成28年11月24日,施設診療経過改竄と脳出血入所者の搬送遅れを認定,100万円賠償(報道)

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朝日新聞「脳出血での搬送遅れ認め、高齢者住宅運営側に賠償命令」(2016年11月30日)は,次のとおり報じました.

「熊本市の高齢者専用住宅で入居女性に後遺症が残ったのは、脳出血の発症時に速やかに病院に搬送しなかったからだとして、女性の家族が、住宅を運営する桜十字(熊本市)に1700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が福岡高裁であった。佐藤明裁判長は請求を退けた一審判決を変更し、慰謝料100万円の支払いを命じた。24日付。

 判決によると、女性は2010年12月27日、病院に搬送されて脳出血と診断され、左半身まひなどの後遺症が残った。

 女性側は同25日夜に脳出血を発症していたとして、治療が必要な際の対応を定めた契約に基づく病院への搬送義務違反と主張。今年3月の一審・熊本地裁判決は、職員が記した「施設介護経過」などから、発症は26日から27日午前8時ごろと判断。女性側の請求を棄却した。

 高裁判決は「施設介護経過」の内容が、診断した医師のカルテと矛盾することなどから「信用しがたい」とし、診断結果を知った後に都合良く入力した改ざんの可能性を示唆。医師の証言などから25日夜には脳出血を発症したと判断し、「速やかに女性を搬送しなかったことは債務不履行に当たる」とした。搬送の遅れと後遺症との因果関係については退けた。

 桜十字の担当者は「因果関係を争う主張の大局は認められたが、介護経過の記録は故意に改ざんしたものではない」とコメント。上告を検討しているとした。」


この報道の件は,私が担当したものではありません.
医療裁判では,過失(医療ミス)があっても,搬送の遅れがなければ,早期治療が可能で結果が異なったという立証ができない場合,因果関係が立証できていないことになり,損害賠償が認められないか,認められたとしても損害賠償額は低額になります.
一般に,施設の記録をそのまま事実であると認定すれば,多くの事案では搬送の遅れなどないことになります.高裁判決が,記録の改竄を認め,発症時間を認定したことは,高く評価されるべきでしょう.


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by medical-law | 2016-11-30 11:47 | 医療事故・医療裁判

高砂市民病院,検体を取り違え乳房切除の事案で約620万支払い和解へ(報道)

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読売新聞「乳房切除ミス、620万円支払いで市と和解へ」(2016年11月29日)は,次のとおり報じました.

「乳がんの検体を取り違えられ、乳房の一部を誤って切除されたとして、20歳代の女性が高砂市民病院(兵庫県高砂市)を運営する同市を相手取り、慰謝料など約1850万円の損害賠償を求めた訴訟で、市は28日、女性と和解する方針を明らかにした。

 市は女性に謝罪し、和解金など計約620万円を支払うという。

 訴状などによると、女性は2014年4月、同病院で病理検査を受け、右胸の乳がんと診断された。翌月、別の病院で切除の手術を受けたが、がん細胞は検出されず、診断時に50歳代女性の検体と取り違えられていたことが判明。高砂市民病院側は原因を「特定できなかった」とする報告書をまとめるなどしたため、女性は今年1月、大阪地裁に提訴した。市などによると、今月15日に同地裁が和解案を示し、双方が合意した。女性は取材に「原因が不明のままで、100%納得したわけではないが、謝罪の言葉が入っていたので和解することにした。二度とミスが起こらない体制にしてほしい」と話した。市は「大変申し訳ない。再発防止策をきっちりと行う」としている。」

この報道の件は,私が担当したものではありません.
裁判上の和解成立には,賠償金額のみならず,謝罪条項も重要なことがあります.
後遺症の基準が労働能力に重きを置いたものになっているため,賠償金額が一般社会の感覚とはずれることがあります.裁判所には,賠償額が一般社会の感覚に整合するよう,少しづつでも修正をはかっていただきたく思います.



谷直樹

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by medical-law | 2016-11-29 16:06 | 医療事故・医療裁判

新潟県立新発田病院、鎮痛薬投与下の術後患者の心電図モニター不継続事案で2000万円支払いへ(報道)

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新潟県は、2016年11月25日、県立新発田病院の医療事故に係る民事調停案件について、下記のとおり、裁判所の調停案に双方が同意する見込みとなったことを発表しました.

1 病院名  県立新発田病院

2 患 者  胎内市在住の女性(当時60歳代)

3 事故概要
(1) 平成27年6月5日、全身麻酔下で馬尾神経(脊髄の下端から伸びている神経の束 )腫瘍摘出術を実施し、術後疼痛に対して鎮痛薬を投与していた。
(2) 翌々日の7日、患者が心肺停止状態となり、救命措置を行ったが、8日、死亡確認。
(3) 平成28年7月、解決を図るため民事調停手続を開始。(新発田簡易裁判所)
(4) 鎮痛薬投与下でもあり、心電図モニター観察を6日以降も継続していれば救命できた可能性を否定できないとした裁判所の調停案が同年10月に提示され、遺族が同意する旨意思表示。

※議決後、早期に民事調停が成立する予定。

4 損害賠償額(平成28年12月議会提案予定)
 20,000,000円


この報道の件は,私が担当したものではありません.
過失が明らかで,因果関係・損害評価のみが問題となる事案では,訴訟前に解決が望ましいと思います.
裁判では,「救命できた可能性を否定できない」という程度では足りず,時間と費用をかけて救命できた高度の蓋然性を立証することが求められますが,事案の落ち着く所が見えていれば,双方の姿勢にもよりますが,基本的に訴訟前の解決が可能です.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-27 01:00 | 医療事故・医療裁判

さいたま市立病院,救急搬送患者に適切な処置を行わなかった事案で約1億3985万円支払和解へ(報道)

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埼玉新聞「後遺症の男性、さいたま市立病院を提訴 1・4億円賠償で和解へ」(2016年11月25日)は,次のとおり報じました.

「低酸素脳症を発症して後遺症が残ったのは適切な処置を怠ったためとして、さいたま市立病院(さいたま市緑区三室)を運営する同市を相手取り東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こしていた元入院患者との和解案に合意し、市が和解金約1億3985万円を支払う議案を提案することが25日、分かった。30日開会の市議会12月定例会に提案する。

 同病院庶務課によると、原告は2009年8月24日に同病院で低酸素脳症を発症した浦和区の30代男性。男性は20代だった同年8月13日に救急搬送されて同病院に入院した。11日後の24日に低酸素脳症を発症。同課は治療の経過や「後遺症が残った」こと以外を公表していないが、原告側は「病院が適切な処置を取らなかった」と主張し、同市に対し約2億3722万円の損害賠償を求め、14年5月に民事提訴していた。

 市側は争っていたが、同地裁が今年8月に提案した和解条項案に今月7日に合意した。市側は過失の有無についての認識を一切示さず、市立病院は「医療行為中に起きたことで、後遺症が残ったことに対し遺憾に思っている」とコメント。今回の和解について、清水勇人市長は25日の定例会見で「誠に遺憾。今後起こらないよう、しっかり対応していきたい」と述べた。」


この報道の件は,私が担当したものではありません.
約1億4000万円を支払っての和解ですから,過失と因果関係が認められる事案です.市は,直裁に過失を認め謝罪すべきと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2016-11-25 23:33 | 医療事故・医療裁判