弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1141 )

虎の門病院の医療事故(胸部食道癌手術時の大動脈出血)の遺族(妻・娘)のコメント

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院の医療事故(胸部食道癌手術時の大動脈出血)の患者(東京都在住・61歳男性)の遺族のコメントは,下記のとおりです.

「第三者委員を加えた事故調査が行われたことに、感謝いたします。
私たちは、事故調査の結果の説明を受け、本当にいろいろなことが分かりました。

ただ、どうしても、虎の門病院の先生が、胸腔鏡で、胸腔内を見て、腫瘍が大動脈に固着していると分かりながら、独断で手術を続行されたことが残念でなりません。

大動脈に固着した腫瘍を剥離するために、大動脈の外膜も削ってしまい、血管が薄くなり、動脈圧に耐えられず大動脈から出血した、という説明を事故後に受けました。この説明を聞いて、大動脈の血管の一部を削ってまで腫瘍を取るのは危険すぎる、と思いました。


腫瘍が大動脈に固着している、つまり腫瘍が食道以外への臓器に浸潤しているので、T4です。虎の門病院の先生からは、事前にT4と分かっていた場合、手術ではなく化学療法を行ったというお話がありました。手術を始めてしまっても、T4とわかったときに中止してほしかったと思います。

手術の同意書にサインしましたが、T3という前提が変わったのですから、せめて、私たちに、大動脈に固着している腫瘍を危険を侵して取るかどうかを聞いてほしかったと思います。インフォームドコンセントというのは、きちんとした説明があることだと思います。
腫瘍が大動脈に固着している、T4だから本来化学療法になる、どうするか、と聞かれたら、私たちは手術の中止をお願いしたはずです。T4ですから長く生きられなくても、安らかな最期を迎えさせてあげたかったからです。訳も分からず突然亡くなってしまうなんて可哀相です。

今後は、インフォームドコンセントを徹底し、再発防止をはかっていただき、患者が安心で安全な医療を納得して受けられる病院にしていただきたく思います。

  2017年6月10日」


以下は,私のコメントです。

本件は,「予期されない死亡」にあたり,医療事故調査が行われました。
医療事故調査は,事故の原因を分析し,再発予防に役立てるものです。
責任の有無を判断するものではありません。したがって,事故調査報告書には,注意義務違反が明記されていませんし,病院が責任についてどのように考えるのかは,分かりません。
しかし,T4まで進行した癌については胸腔鏡下手術を行わないのが一般的ですし,大動脈に固着した腫瘍を剥離することの危険性のレベルは,T3について胸腔鏡下手術を行うものとは格段に異なります。にもかかわらず,敢えて手術を続行するという判断には疑問があります(判断ミス)。
また,少なくとも家族への説明が必要だったと考えます。
損害賠償については,今後,病院との話し合いで早期に解決できるよう努めたいと思います。

【追記】
テレビ朝日「虎の門病院で医療事故 大量出血で男性患者死亡」(2017年6月12日 )は次のとおり報じました。
「東京・港区の虎の門病院で食道がんの手術中に大量出血し、男性患者が亡くなっていたことが分かりました。

 虎の門病院が公表した医療事故調査報告書などによりますと、去年10月、61歳の男性患者に対して食道がんの摘出手術を行った際、がんは事前の診断より進行し、大動脈に張り付いた状態でした。執刀医ががんを剥がそうと大動脈の血管の一部を削ったところ、大量に出血し、男性は翌日に死亡しました。遺族は「手術中にがんが予想より進行していると分かれば中止を求めた」と「医師の独断で手術を続行したのは残念」とコメントしています。病院側は遺族の意見を取り入れたうえで、「予想と異なる事態が起きた場合には手術を中断し、家族と相談して同意を得ることが重要」などの再発防止策をまとめました。」

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-10 16:16 | 医療事故・医療裁判

国家公務員共済組合連合会虎の門病院,医療法上の医療事故調査制度における院内事故調査事例公表

国家公務員共済組合連合会虎の門病院は,2017年6月9日,医療法上の医療事故調査制度における院内事故調査事例(胸部食道癌手術時の大動脈出血)を公表しました.
報告書はコチラ


谷直樹

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by medical-law | 2017-06-09 23:02 | 医療事故・医療裁判

山形県立新庄病院,内視鏡事故後死亡した事案について仙台地裁で和解(報道)

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河北新報「膵炎患者死亡訴訟 山形県と遺族が和解」(2017年6月9日)は次のとおり報じました.

「新庄市の男性=当時(83)=が急性膵炎(すいえん)となり2014年2月に死亡したのは、山形県立新庄病院(新庄市)が内視鏡検査でミスをしたことなどが原因だとして、遺族3人が山形県に2500万円の損害賠償を求めた訴訟は8日、仙台地裁で和解が成立した。
 遺族側の代理人や県によると、県が遺族に解決金200万円を支払う。
 遺族側の代理人は「年齢や既往症を考慮した和解案で、遺族もおおむね納得している」と語った。県の加藤亮県立病院課長は「亡くなった患者のご冥福を祈り、安全安心な医療の提供に努めていく」と述べた。
 訴えによると、男性は13年11月、総胆管結石の治療のため入院。内視鏡検査の際、担当医が誤って検査器具で膵臓(すいぞう)の管を傷付けるなどしたため重症化し、多臓器不全で死亡した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
担当医が誤って検査器具で膵臓の管を傷付けるなどしたため重症化し多臓器不全で死亡した事案であれば,過失は明らかで,山形県はもっと早く訴訟前に示談可決することはできなかったのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-09 20:56 | 医療事故・医療裁判

三条総合病院,肝性脳症治療薬リフキシマ錠の指示に経口FXa阻害剤リフキシマ錠を処方し患者死亡(報道)

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新潟日報「誤投薬後に70代男性死亡 三条総合病院、因果関係を調査」(2017年6月3日)は,次のとおり報じました.

「三条市の県厚生連三条総合病院(神田達夫病院長)は2日、医師の指示とは異なる薬を入院中に与えられた同市の70代男性が5月1日に死亡したと発表した。病院は誤投薬があったとして院内に医療事故調査委員会を設置。投薬ミスと死亡の因果関係を調べている。

 病院によると、男性は4月中旬に肝性脳症で入院。担当医は「リフキシマ錠」の処方を指示したが、薬剤部が誤って、血を固まりにくくする「リクシアナ錠」を病棟に送った。

 男性は薬を28日から30日の昼まで計8回服用。便の異常を見た医師が内視鏡検査し十二指腸に出血があったため止血処置した。しかし5月1日午前に男性は意識を失い、間もなく消化管出血で亡くなった。3日に薬剤部が残薬を確認し、間違いに気付いた。

 薬剤部では、薬剤師が調剤した後に、別の薬剤師が確認する態勢になっており、今回も記録上は二重チェックしたことになっているという。

 三条総合病院の若杉克彦事務長は「誤投薬があったのは事実で大変申し訳ない。再発防止に取り組み、委員会の調査結果を厳粛に受け止める」としている。発表が死亡から1カ月後となったことについては「遺族への説明などに時間をかけたため」と説明。遺族には謝罪し、医療事故調査・支援センターにも報告したという。」

これは,私が担当した事件ではありません.

リフキシマ錠200mgは,難吸収性リファマイシン系抗菌薬で,主として腸管内のアンモニア産生菌に作用することで,アンモニア産生を抑制し,血中アンモニア濃度を低下させる肝性脳症の治療薬です.昨年秋に承認された新薬ですが,薬剤部がリフキシマ錠知らないとは考えられません.

リクシアナ錠30mgは,FXa (活性化血液凝固第X因子) を選択的可逆的かつ直接的に阻害する経口FXa阻害剤です.ワーファリンに代わって用いられることが多い抗凝固薬です.

リフキシマ錠200mgは一日3回ですが,リクシアナ錠30mgは一日1回です.
リクシアナ錠30mgを一日3回服用したことで出血したと考えるべきでしょう.
投薬ミスと消化管出血との因果関係は明らかと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-04 20:24 | 医療事故・医療裁判

歯科の感染対策を考えるシンポジウム-より安全・安心な医療を目指して-

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6月24日)(土)14時~17時,TKP日本橋カンファレンスセンター(ホール7)で,「歯科の感染対策を考えるシンポジウム-より安全・安心な医療を目指して-」が開かれます.

主催 全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団
共催 東京歯科保険医協会
(連絡先)全国B型肝炎訴訟東京弁護団事務局
〒160-0004東京都新宿区四谷1-4四谷駅前ビル 東京法律事務所内 電話03-3352-7333

第一部 基調報告
① 「B型肝炎感染被害と歯科への思い」
全国B型肝炎訴訟原告団 代表 田中義信氏

②「歯科の感染対策について」
歯科医 濱﨑啓吾氏(東京歯科保険医協会理事)

第二部 パネルディスカッション 厚生労働省医政局歯科保健課
山口聖士氏(歯科医師臨床研修専門官)
集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会 構成員梁井朱美氏(全国B型肝炎訴訟原告団)
歯科医 濱﨑啓吾氏

参加無料


谷直樹

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by medical-law | 2017-06-03 08:26 | 医療事故・医療裁判

民法改正と医療過誤に基づく損害賠償

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民法改正案が5月26日に参院本会議で可決し成立しました.

医療過誤に基づく損害賠償については,利率の変更が大きく影響を受けます.
現行は,遅延利息(=法定利息)が5%,中間控除も5%ですが,改正民法では,遅延利息(=法定利息)が3%,その3年後からは変動となり,中間控除はその損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率となります.
法定利率が引き下げられるのは債権者(患者)側に不利ですが,中間利息控除が引き下げられるのは債権者(患者)側に有利です。

1年後,2年後,3年後・・・の年収を現在価額に弾き直すために,中間利息控訴が行われます.
ゼロ金利時代に適合しない計算方法ですが,裁判所は,中間利息控除は法定金利と合わせる立場をとっています.
例えば,年収500万円の10年分は,5%なら「500万円×7.7217」,3%なら「500万円×8.5302」となります.
3%その後3年ごとの変動は,適切な改正と思います.

反面,遅延利息については患者側が不利になります。
例えば,年利5%の場合,5000万円の損害賠償で不法行為のときから3年で判決下された場合年5%遅延利息が付き5750万円となります。
年利3%の場合,5000万円の損害賠償で不法行為のときから3年で判決下された場合年3%遅延利息が付き5450万円となります。

【参考】
改正第404条
1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は,年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず,法定利率は,法務省令で定めるところにより,3年を1期とし,1期ごとに,次項の規定により変動するものとする。
以下略


改正第417条の2
1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において,その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは,その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により,これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において,その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも,前項と同様とする。


谷直樹

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by medical-law | 2017-05-29 16:07 | 医療事故・医療裁判

岐阜市民病院,術後患者のアラームとナースコールへの対応遅れの医療事故で病院の体制不備の責任を認める

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岐阜市民病院は,平成26年1月,60歳代前半の男性患者の事故について,平成29年5月24日,公表し,4000万円の損害賠償金を遺族に支払うことで示談が成立したと発表しました
岐阜市民病院のサイトによると,事故の概要と原因は次のとおりです.

「当該患者さんは、両手の痺れを主訴とし、各種検査のうえ、頚椎症性脊髄症と診断され、頚椎前方除圧固定術(多椎間)を施行した。手術は予定通り施行され、翌朝看護師が訪室した際には異常がなかったが、その後容態が急変し、モニターアラーム及びナースコールがあり看護師が訪室すると意識がなく、呼吸数、心拍数も低下している状態であった。
医師らが心肺蘇生を行い、心拍は再開したが意識は戻ること無く、蘇生後脳症と呼ばれる状態となった。その後、意識回復を期待して治療を継続したが平成27年9月、死亡した。
心拍を監視するモニターのアラーム音が発報し、患者さんもナースコールを鳴らしたが、当該病棟のスタッフは他の患者の対応中であり、直ちに対応することが出来ず処置が遅れてしまった。
事故後、第三者委員を入れた事故調査委員会を設置し検証した検証した結果、合併症として起こりうる低酸素血症の発生に対して早期に対応できなかった病院の術後管理体制に問題があると指摘された。」

読売新聞「頸椎の手術後合併症で死亡、4千万円賠償で示談」(2017年5月25日)は,「容体急変の際、心拍数の異常を知らせるアラームと患者からのナースコールが鳴った。しかし、看護師4人全員が他の患者の食事の準備などをしていてすぐに対応できず、8分後に病室に行くと、意識が混濁していたという。」と報じています.

岐阜市民病院は,次の再発防止策をとったとのことです.

「●頚椎前方除圧固定術(多椎間)の術後患者について
○当院では、術後のリスクを考慮し、本件後は一般病棟ではなく、ICU(集中治療室)に入室し、きめ細かい管理ができるようにした。

●重症患者の管理体制強化について
○新たにHCU(高度治療室)を整備し(平成28年2月1日から稼働)、8床体制で術後患者を含めた重症患者を管理している。

●一般病床における対応について
○ナースコールを受けた場合は、患者の訴えを確認し、返答がない場合には直ちに病室を訪室し、患者の状態を確認するという運用を統一して看圖蔬全員に周知した.
○手術後の注意点などを職員間で共有する手術後経過表の見直しを行い、「患者情報共有シート」を作成して、担当看護師だけでなく他の職員全てが患者の安全に務める体制づくりを行った。
○ナースコールと連動しているPHSの台数を増やし、職員相互の連絡・連携を強化した。

●スタッフ教育について
○緊急応援要請コール事例について収集・分析を行い、患者の異変につながる予兆に気付くことの重要性についての研修を行ったほか、病棟・外来において患者急変時の対応についてシミュレーション研修を実施した。」


本件は,私が担当したものではありません.
リスクの高い患者は,一般病棟ではなく,ICUやHCUで管理すべきでしょう.例えば,「急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)」でも短期リスク分類で高リスクの不安定狭心症はCCUに収容すべきことが明記されています.
病院の体制整備義務違反を認め,再発防止策をとった点で,評価できる対応と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-25 06:57 | 医療事故・医療裁判

高知市の医療法人西武クリニックの偽医師事件で2人逮捕(報道)

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FNN「100人超に整形手術 偽医師逮捕」(2017年5日23日)は,次のとおり報じました

「医師免許を持っていないのに美容整形手術をしたとして、61歳の偽医師と、クリニックのオーナーが逮捕された事件で、偽医師の男は、容疑を認めていることがわかった。
医師法違反の疑いで逮捕されたのは、高知市の医療法人「西武クリニック」の職員●●容疑者(61)と、オーナーの△△△△容疑者(71)。
警察によると、2人は共謀し、2016年2月、高知市の女性に対し、医師免許がないのに麻酔注射を打ち、二重まぶたの整形手術を行った疑いが持たれている。
●容疑者は逮捕前、FNNのカメラの前で、「(医師免許が必要な手術をした?)しました。(何人に?)100人以上。(整形手術の技術はどこで?)見よう見まねで覚えた」と語っていた。
森容疑者は、事務員として働いていた愛知・名古屋市の病院での経験を基に、高知市のクリニックで、10年間で100人以上に美容整形手術をしたと語った。
調べに対し、●容疑者は「間違いありません」と容疑を認め、△△容疑者は「全く知りません」と否認している。 (高知さんさんテレビ)」


これは私は担当した事件ではありました.
偽医師が10年も発覚なかったのは驚きです.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-24 12:42 | 医療事故・医療裁判

名古屋大学医学部附属病院,10年前に作成した頚部手術後管理ガイドラインが共有されず患者が死亡(報道)

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朝日新聞「甲状腺の手術後に患者窒息死 術後の対応ミス 名大病院」(2017年5月24日)は,次のとおり報じました.

「名古屋大学病院(名古屋市昭和区)は23日、甲状腺がんの手術翌日に患者が死亡する医療事故があったと発表した。過去にあった同様の死亡事故を受け、手術後の対応を定めた院内ガイドラインがあったが、徹底されていなかった。石黒直樹病院長は「組織として教訓が生かされていないのは全く情けなく、本当に申し訳ない」と陳謝した。

 名大病院によると、患者は三重県在住の20代男性。2015年7月に甲状腺を摘出し、右の頸部(けいぶ)リンパ節を取り除く手術を受けた。

 手術翌日の午前7時ごろ、患者の首に腫れがあると看護師から連絡を受け、執刀医とは別の専門医が診察。聴診や触診などで術後の浮腫と判断し、経過観察とした。その際、ガイドラインで挙げている超音波検査や、手術の傷口を一部開けて出血状態を確認するなどの対応をしなかった。

 患者はその約1時間50分後に呼吸困難を訴え、心肺停止。蘇生措置が行われたが死亡した。術後に首の内側で起こった出血で血腫ができ、気道が塞がれたことによる窒息が死因だった。出血部位は分からなかったという。

 名大病院では1983年と06年にも、首の手術後にできた血腫を見落とし患者が死亡。07年にガイドラインをまとめ、関連部署に閲覧を指示していた。しかし、担当科の医師の多くが専門外の医師向けのものと誤解し、読んでいなかったという。名大病院は、手術には問題なかったが、ガイドライン通りに対応していれば防げたとして、医療事故と結論づけた。」


読売新聞 「名大病院 手術翌日 男性死亡」(2017年5月24日)は,次のとおり報じました.

「発表によると、患者は同病院で15年7月、甲状腺乳頭がんを切除する手術を受けた。手術翌日の午前6時頃、首がはれているのがわかったが、乳腺・内分泌外科の当直医は炎症と判断して経過観察とした。患者はその後、呼吸困難を訴え、内出血による窒息状態で死亡した。同病院の調査委員会は手術自体に問題はなかったとする一方、マニュアルでは、はれが見つかった場合は縫合した傷口を開き、血腫の有無などを確認するよう求めていたとして、当直医の対応を不適切と認定した。当直医は手術には加わっていなかったという。

 マニュアルは、同種の医療ミスが1983年と2006年にあったことを重く見て07年、乳腺・内分泌外科主導で作成されていた。調査委の聞き取りに対し、当直医ら同科の医師は「自分たちは専門家なので、精読の必要はないと思っていた」と話したという。」


これは私が担当した事件ではありません.
頚部手術管理ガイドラインが策定されていた名大病院で頚部手術後の管理にあたる医師は,同病院の頚部手術管理ガイドラインをよく読む注意義務があります.
医療事故をふまえて10年前に乳腺・内分泌外科主導でガイドラインが作成されていたのですが,1現在の乳腺・内分泌外科の医師はそれをよく読んでいなかったとのことですので,注意義務違反にあたるでしょう.
同ガイドラインを読んでそのとおり行っていれば,患者の死亡は防止できたのですから,注意義務違反と患者の死亡との間に因果関係があります.
院内で策定されたガイドライン,マニュアルが守られず,そのために医療事故が起きることがしなしばあります.ガイドライン,マニュアルを周知徹底することが必要です.
ちなみに,仮に同ガイドラインがなかったら責任を問われない,というわけではありません.同種の医療事故があったことは予見可能性があったことを意味し,それに対する防止対策(ガイドライン,マニュウアル作成など)をとらなかったとすれば,その不作為で責任を問われる可能性があります.報道では具体的事実の詳細がわかりませんが,術後出血を疑って検査する義務がなかったとは言い切れません.
なお,名大病院が事故調査結果を公表し,謝罪したことは,評価できます.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-24 07:49 | 医療事故・医療裁判

鹿児島地裁平成29年5月17日判決,転院の遅れで介護老人保健施設に1870万円の賠償命令(報道)

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共同通信「肺炎見落とし賠償命令 鹿児島の介護施設」(2017年5月18日)は,次のとおり報じました.

「介護老人保健施設「沖永良部寿恵苑」(鹿児島県和泊町)で2012年に入所男性=当時(61)=が死亡したのは、肺炎を発症したのに適切な病院に転院させなかったためとして、兵庫県尼崎市に住む妻が2750万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は17日、施設側に1870万円の支払いを命じた。」

この件は,私が担当したものではありません.
判決の認容金額からすると,適切な病院に転院し,肺炎について適切な治療が行われたなら,結果が回避されたことが認定されたことになります.川崎聡子裁判長は「発熱などの症状が出た時点で肺炎を疑い、エックス線など必要な検査をして適切な病院へ転院させるべきだった」と指摘し、施設側の過失を認めたとのことです.
介護老人保健施設で,入所者が肺炎となり死亡する事案はすくなくありません.
施設は,本判決を参考に,肺炎が疑われる患者について適時に病院におくるようになることを期待します.

なお,谷直樹法律事務所では,病院だけでも相談が多いので,介護老人保健施設の事件は現在取り扱っていません.

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-19 04:35 | 医療事故・医療裁判