弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1089 )

公益財団法人日本医療機能評価機構,医療安全情報No.122透析前の体重測定の誤り

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公益財団法人日本医療機能評価機構,医療安全情報No.122によると,透析前の体重測定を適切な方法で実施しなかったため、誤った体重をもとに透析を行った事例が4件あったとのことです(集計期間:2011年1月1日~2016年 11月30日).

一つは,「リフト式体重計はストレッチャーシーツ分として「-3kg」と設定することになっていたが、「3kg」と設定した」という体重計設定ミスによるものです.
プラスとマイナスの間違いですから,6kg分の過除水が行われたことになります.

「当該患者の体重には義足を含めることになっていたが、看護師は義足の重さを差し引いた,」,「体重計付ベッドは柵とベッドコントローラーを付けて測定することになっていたが、患者の移乗の際に外し、そのまま付けずに測定した」という思い込みによるミスも起きています.

「計量部にスタッフが接触した状態で体重を測定した」という計測方法の基本的なミスも報告されています.

単純な体重計測にもミスは起き得るということです.

谷直樹

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by medical-law | 2017-02-07 06:52 | 医療事故・医療裁判

東京大学医学部附属病院の薬剤取り違え事故から学ぶ改善策

診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては,当該医療機関の性格,所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであるとされています(最判平7年6月9日(民集49巻6号1499頁,未熟児網膜症姫路日赤病院事件))。

大学病院は,①医師等の育成のための教育機関であると同時に,②新しい医療技術の研究・開発を行う研究機関でもあり,③高度の医療を提供する地域の中核的医療機関でもあります。
小児科は,多様な臓器の疾患を取り扱います。患者の年齢も基本的に0~16歳まで多様です。

東京東部地域には「子ども病院」の様な小児専門病院はありません。東京大学医学部附属病院の小児医療センターが,東京東部地域の中核的小児病院としての役割を担っています。
また,東京大学医学部附属病院は,最適な先端医療,高度な医療を提供する大学病院なので,最適な先端医療,高度な医療を必要とする重篤な患者も入院しています。
このような 東京大学医学部附属病院小児科で,薬剤取り違え事故が起きると,重大な結果を生じ得ることは容易に予見できますので,薬剤取り違え事故が起きないように薬剤のダブルチェックの仕組みが必要と思います。とくにハイリスク薬については,ダブルチェックが絶対的に不可欠です。

2015年の事故調査報告書によると,東京大学医学部附属病院の薬剤取り違え事故の問題点は,第1に他の患者の薬剤を誤注入してしまったこと(薬剤を取り違えたこと及び照合確認を怠り取り違えに気付かず誤注入してしまったこと),第2に,誤投薬後の連絡・説明が十分でなかったこととされています。

事故調査報告書は,(1)内服薬ルールを周知徹底する,(2)内服薬専用の管理場所を確保する,(3)内服薬処方に関する検討を進める,(4)業務内容を整備する,(5)オカレンス(occurrence)発生時の連絡体制を周知する,(6)出来るだけ速やかに患者さんのご家族へ公式な場を設けて(ベッドサイドではなく)誠意をもって説明する,の改善すべき6点をあげています。

事故調査報告書には次のように記載してされています.

1.内服薬ルールを周知徹底する
 以下について、小児医療センター、看護部で周知徹底する
(1)薬剤を準備する際は、1患者1トレイとする(水薬と散剤を別にしない)
(2)散剤の溶解は出来るだけ直前に、薬剤を投与する者が行う
(3)薬剤を準備する際は、薬剤を吸引する前にシリンジに必ず患者氏名を明記する
(4)無記名のシリンジに準備された薬剤は、使用しない
(5)薬剤投与(注入)直前のリストバンドでの患者確認を徹底する

2.内服薬専用の管理場所を確保する
(1)与薬カード・1患者1トレイのためのトレイ・内服薬準備用ケースを整備する
(2)輸液準備と同じ場所を使用せず、内服薬専用の場所を確保する
(3)内服薬準備用ケースの患者名が、薬剤を入れても見えるものに変更する

3.内服薬処方に関する検討を進める
(1)薬包数が少なくなるように検討する
① 看護師が、病棟で散薬調剤を薬剤毎に別々に行うと時間と手間がかかるため、薬剤部で最初から薬剤を出来るだけまとめてもらうようにする(同じ種類の薬剤や同じ効果を持つ薬剤は一つにまとめるようにする)
② 多くの薬剤を内服している患者は、その薬剤を続けるかどうかについて、医師と薬剤師で検討する

4.業務内容を整備する
(1)朝6時の業務の集中する時間帯の業務を整理し、不必要な業務をなくす
 ① 業務の集中する時間帯に、スタッフからの連絡の電話を避けるように周知する
 ② 周辺業務の整理、夜勤人数を増員するかどうかの検討を行う

5.オカレンズ発生時の連絡体制を周知する
担当医師は患者の治療に専念するため、Pocket医療安全マニュアルに従い迅速に報告すること

6.患者さんのご家族への説明について、以下の点を徹底する
出来るだけ速やかに、患者さんのご家族へ公式な場を設けて(ベッドサイドではなく)誠意をもって説明すること


2017年の東京大学医学部附属病院のサイトには,
「内服薬に関するルール(注入器具への記名、薬剤注入直前の本人確認用バンドでの患者確認など)の周知徹底、内服薬の管理環境の整備(内服薬ケースの患者氏名の視認性の向上など)、看護師の業務負担の軽減(看護師の増員、看護師が病棟で調製する薬包数を減らすための多職種での検討、処方に複数の薬剤がある場合に薬剤部で予め服用時点ごとに1つの袋にまとめることの推進など)を実施しました。また、重大事故発生時の連絡体制や職業倫理に関する職員教育を、研修会やe-learningにより実施すると共に、内服薬(散薬)のバーコード管理システムを導入することとし、そのための医療情報システムの仕様書策定を行いました。内服薬に関するルールや緊急時の連絡体制などの職員教育については、今後も継続的に実施して参ります。」
と書かれています。

2015年の事故調査報告書と2017年の東京大学医学部附属病院のサイトがダブルチェックについて言及していないことはいかがなものかと思います。東京大学医学部附属病院小児医療センターの性格と役割に鑑み,とくにハイリスク薬についてはダブルチェックが絶対的に不可欠であることを考慮し,2015年の事故調査報告書が指摘する点をふまえ,真に実効的な再発防止策が実行されることを強く期待いたします。




谷直樹


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by medical-law | 2017-02-03 09:37 | 医療事故・医療裁判

東京大学医学部附属病院の薬剤取り違え事故が起きた経緯

東京大学医学部附属病院の薬剤取り違え事故が起きた経緯は,次のとおりです。

1 看護師CはA用の散剤を準備
看護師Cは,患者A用の散剤を溶解しカテーテルチップ型シリンジに調製し,患者氏名を記名しました。
看護師Cは,患者Aの名前が書かれている患者A用の内服薬準備用ケースに,このカテーテルチップ型シリンジ2本と患者A用の散剤の空の袋を入れました。

2 他の看護師は水薬を準備
別の看護師は,患者A用の2本の水薬を含め,病棟の患者分の水薬を並べて準備しました。

3 看護師DはB用の散剤を準備  
看護師Dは,患者B用の散剤を溶解しカテーテルチップ型シリンジに調製しました。
看護師Dは,カテーテルチップ型シリンジに患者Bの氏名を記名すべきにもかかわらず,患者氏名を記名しませんでした。
看護師Dは,患者Bの名前が書かれている患者B用の内服薬準備用ケースに,患者氏名を記名していないカテーテルチップ型シリンジ1本を入れました。

4 看護師Cは,A用の内服薬準備用ケースを手にし,B用の内服薬準備用ケースの近くにいったん置く
看護師Cは,患者Aに散剤を注入しようと患者A用の内服薬準備用ケースを手にしましたが,患者Aは感染対応(個室管理)であったため,他の患者さんの処置を先に実施しようと思い,一旦置きました。看護師Cは,このとき,患者Bの内服薬準備用ケースの近くに,患者A用の内服薬準備用ケースを置きました。
さらに,日勤帯の看護師から病欠の電話があり,看護師Cは,作業を中断しました。

5 看護師Cは,内服薬準備用ケースを取り違える
看護師Cは,作業を再開したとき,患者A用の内服薬準備用ケースと誤って患者Bの氏名が書かれている患者B用の内服薬準備用ケースを取りました。
患者A用の内服薬準備用ケースには,カテーテルチップ型シリンジが2本,患者B用の内服薬準備用ケースには,カテーテルチップ型シリンジが1本入っていましたが,看護師Cは,この本数の違いに気が付きませんでした。
なお,看護師Cは,他の看護師が準備した患者A用の2本の水薬については患者Aの氏名を確認しました。
      
6 看護師Cは,患者氏名・薬剤とノートパソコン画面の指示内容との照合を行わず
看護師Cは,カートにノートパソコンと患者B用の内服薬準備用ケースを乗せて,患者Aの病室(感染対策の病室)の前に着きました。
感染対策の病室にパソコンを持ち込めませんので,病室前で,患者氏名と薬剤の内容を服薬指示の画面(ノートパソコン)と照合することになっていました。
ところが,看護師Cは,カテーテルチップ型シリンジ1本について照合しませんでした。

7 看護師Cは,リストバンドとシリンジの氏名の照合も行わず
病院のルールでは,投与(注入)の直前に,リストバンドとシリンジに書いてある患者氏名を,シリンジ1本毎に照合することとなっています。
ところが,看護師Cは,この照合も行いませんでした。

このようにして薬剤取り違え事故は起きました。
看護師Cは,病院のルールを遵守せず,確認を複数回怠っていました.。
看護師Dは,カテーテルチップ型シリンジに患者Bの氏名を記名するというルールを遵守していませんでした.
つまり,夜勤看護師4名のうち少なくとも2名がルールを遵守していませんでした。
調剤から投薬までの間,一度も誰のチェックも受けない体制でした。
東京大学医学部附属病院の薬剤取り違え事故は起きるべくして起きた事故と言えると思います。




谷直樹


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by medical-law | 2017-02-01 19:05 | 医療事故・医療裁判

東京大学医学部附属病院の薬剤取り違え誤注入事故についての遺族(母親)のコメント

東京大学医学部附属病院は, 2017年1月31日,「経管注入薬剤の取り違えによる誤注入事故の公表について」をそのサイトにアップしました.
私は,遺族(母親)の代理人です.
遺族(母親)のコメントは,以下のとおりです.

東京大学医学部附属病院の薬剤取り違え事故についての遺族(母親)のコメント

平成27年の薬剤取り違え事故による小児死亡事故について,調査報告書をマスコミに公表し,個人情報の部分を匿名化した調査報告書全文を貴院のサイトにアップすることを遺族(母親)から要望し,ようやく調査報告書の要旨が公表されました。

同病院では,薬剤の管理がずさんで,病棟内の内服ルールが看護師個人の裁量に任されていて,調剤されてから一度も誰のチェックも受けずに投与されていました。
また,投薬ミスが起きた時,夜勤看護師のうち少なくとも2名がルールを遵守していなかったことがわかり,これが特別なことではないこともわかりました。
同病院にはインシデントが度々有り,本件被害小児についても比較的大きなインシデントがありました。しかし,病棟には,結果的に患者への大きな影響が無ければインシデントを問題としない雰囲気があり,具体的な対応はなされていませんでした。
そのような背景事情が,今回の投薬ミスに繋がったと考えます。
誰もが被害者となり得る状況にあったことから,これは被害小児と遺族の問題にとどまらない公の問題と考えます。

もちろん,医療従事者個人への感謝の心が薄れることはありませんし,投与ミスを犯した医療従事者を責めるつもりもありません。ただ,実効的な再発防止策がとられ,今後同様の事故が繰り返されないことを願います。
調査報告書には,再発防止に着手したと書かれていますが,具体的に実行したこと,検討したことを,サイトで公表していただきたく要望します。

以 上


以下は,谷直樹のコメントです。
前年から小児病棟に入院中の男の幼児(東京都内在住)に,他の患者用の薬剤13薬(抗てんかん剤2薬,抗けいれん剤1薬等)が過量に投与された事案です.
男児は,多臓器の障害があり感染症のため個室管理となっていましたが,短期間に亡くなるような病態ではありませんでした.間違った薬が過量に投与された直後から血圧が下がり,アシドーシスが悪化し,無尿となり,翌日に亡くなりました.この経過から,薬剤の誤投与と死亡との間には因果関係があると考えています.
なお,賠償については,病院と示談交渉中です.示談交渉の結果次第では民事裁判もあるかもしれませんが,刑事告訴は考えておりません.個人の責任追及ではなく,病院の責任と再発防止を求めていきたいと思います.




谷直樹


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by medical-law | 2017-01-31 16:08 | 医療事故・医療裁判

東京慈恵会医科大学附属病院,画像診断報告書を主治医が確認せず約1年間放置し肺がんが重篤化(報道)

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共同通信「慈恵医大病院肺がん疑い1年放置 72歳の男性重篤に」(2017年1月31日)は,次のとおり報じました.

「東京慈恵会医大病院で、肺がんの疑いがあると指摘された男性(72)の画像診断報告書を主治医が確認せず、約1年間放置される医療ミスがあったことが31日、男性側と病院への取材で分かった。男性は肺がんの治療を受けられないまま、昨年12月に容体が悪化して入院。現在も重篤な状態が続いている。慈恵医大病院はミスを認めて男性に謝罪した。」

NHK「“肺がんの疑い”検査結果見落とし 1年以上治療されず」(2017年1月31日)は, 次のとおり報じました.

「東京・港区にある東京慈恵会医科大学附属病院などによりますと、おととし10月、東京・町田市の72歳の男性が肝臓の持病で体調を崩して救急外来を受診した際、CT検査で「肺がんの疑いがある」と診断されました。
検査を行った放射線科の医師は、結果を報告書に記載しましたが、主治医などが見落として把握せず、1年以上たった去年、男性が体調を崩して改めて検査を受けた結果、肺がんが見つかったということです。
男性の家族によりますと、すでにがんが進行して男性は意識がなく、人工呼吸器が必要な状態だということです。

病院は、主治医などが検査結果を見落していたことを認め、すでに男性の家族に謝罪したということです。
東京慈恵会医科大学附属病院はNHKの取材に対し、「患者ご本人とご家族に心よりおわびします。全力で治療を尽くすとともに、再発防止に努めたい」とコメントしています。

男性の息子は「父が長年通っていた病院で信頼していたのに、検査結果が見落とされて悔しいと思う。同じミスが二度と繰り返されないよう再発防止を強く求めたい」と話しています。」



本件は,私が担当したものではありません.
肺がんで1年も治療が遅れたことはきわめて重大です.
患者の現在の重篤な状態は,この医療ミス(過失)と因果関係があるものと言えるでしょう.


【追記】
2017年2月4日,東京慈恵会医科大学附属病院のサイトに「画像診断報告書の重要情報が共有されずに1年間放置された事例について」が公表されました.


現段階における対応と改善策については,次のとおり記載されています.
「これまで主に、各種診断結果などの見落とし予防のためのシステム上での変更、および医師間での連絡促進策などを講じてまいりましたが、今回の事例を踏まえ、さらに以下の如くの対応を検討し、すでに一部実施 を開始しております。
(ア)院内での事例の共有・注意喚起
①全診療部を対象に診療部毎に画像診断レポートの確認・共有対策についての集中検討会を実施
②セーフティマネージャーを介した啓発
③全診療部門診療部長が参加する診療部会議での注意喚起
(イ)診療情報の共有を確実にするためのワーキンググループの設立、予防対策の立案
院内で報告された過去の事例や院外で日本医療機能評価機構などにより指摘されている問題点を検討し、主に以下の項目につき継続審議しております。
①画像診断部からの担当医への直接連絡基準の引き下げ、確実な情報共有
②各種診断結果についてのダブルチェックと時間差チェック体制の構築
③読影確認ボタン押下者の限定化(病棟医、オーダー医のみ)
④画像診断結果表記画面の改訂(診断結果の識別度向上)
⑤結果の紙印刷による共有
⑥ハンドオフシート(救急担当医⇔入院担当医、当直医⇔入院担当医、入院担当医⇔外来主治医など、担当医師の交代時に用いる連携引き継ぎシート)作成と必須化」


【再追記】

毎日新聞「慈恵医大 肺がん放置の男性亡くなる 妻も医療事故で犠牲」(2017年2月18日)は,次のとおり報じました.

 「東京慈恵会医科大病院で、肺がんの疑いがあると指摘された男性(72)の画像診断報告書を主治医が確認せず、約1年間放置された問題で、病院は17日、男性が16日に亡くなったと発表した。男性は14年前の妻の医療事故をきっかけに、医療安全を求めて活動しており「自分の問題を契機に、全国で対策が徹底されてほしい」と願っていたという。
 
「この男性の妻も03年、別の大学病院でカテーテルが血管外に入る事故で意識不明になり、その後、死亡した。これをきっかけに、男性は医療事故の被害者や遺族でつくる医療過誤原告の会(宮脇正和会長)の役員として、被害者の相談に乗るなどの活動をしていた。
 宮脇会長によると、昨年12月に見舞った際、男性は「こういう事態になって悔しい。もっと生きたい」と無念さを語り、再発防止を託されたという。」



患者は私の仲間です.私のブログを読んで連絡をいただいたこともありました.
誰でも医療過誤の被害者になり得ることを改めて思い知らされました.
2月19日がお通夜で,2月20日がお葬式です.


谷直樹


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by medical-law | 2017-01-31 12:19 | 医療事故・医療裁判

名地判平成29年1月27日,バリウムを腟に注入した事案で春日井市民病院と医師に約547万円の賠償命令

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朝日新聞「バリウムを誤注入 病院側に賠償命令 愛知・春日井」(2017年1月28日)は,次のとおり報じました.

「春日井市民病院(愛知県春日井市)に入院中、X線検査用のバリウムを誤って膣内などに注入され、腹痛などの後遺症が残ったなどとして、入院患者だった女性(79)が市と担当医師に損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、名古屋地裁であった。朝日貴浩裁判長は腹痛はミスによる後遺症と認め、市と医師に計約547万円の支払いを命じた。」

これは,私が担当したものではありません.
報道によると,実際に注入したのは看護師ですが,指導した医師の賠償責任が認められています.
食道と気管支を間違えるのと同様に,肛門と腟を間違えるのは,注意義務違反(過失)です.注意義務違反(過失)は前方視的判断ですが,間違えてはならないものを間違えるのは,そのこと自体で注意義務違反(過失)が推認され,特段の事情の立証(その立証は実際上考えられませんが)がない限り,注意義務違反(過失)が認められます.
判決は,腹痛との因果関係を認めた点と損害の評価の点で意義があります.今後同種事案があるとはあまり考え難いですが,あった場合はこの判決が参考になります


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by medical-law | 2017-01-29 06:39 | 医療事故・医療裁判

医療事故情報センター「第23回弁護士のための医療過誤訴訟法講座 担当弁護士に学ぶ医療過誤訴訟」

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本日は,医療事故情報センターで「第23回弁護士のための医療過誤訴訟法講座 担当弁護士に学ぶ医療過誤訴訟」の講師をつとめるため,名古屋へ行きます.


患者側弁護士のための実践的な講座ですので,僭越ながら,できるだけ患者側弁護士の実務に役立つようなお話をしようと思います.


山形県弁護士会の佐藤欣哉先生,山口県弁護士会の中光弘治先生もお話になられます.
両先生のお話を聞かせていただくのも楽しみです.


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by medical-law | 2017-01-28 07:54 | 医療事故・医療裁判

宮崎地判平成29年1月25日,県立宮崎病院の過失認め220万円賠償命令

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宮崎日日新聞「「息子死亡は県病院対応ミス」 宮崎地裁、県の過失一部認める」(2017年1月26日)は,次のとおり報じました.


「全身やけどを負った息子=当時(29)=が亡くなったのは、県立宮崎病院の対応が原因として、福岡市に住む両親が県に約9400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決は25日、宮崎地裁であった。五十嵐章裕裁判長は病院側の過失を一部認め、両親へ220万円支払うよう命じた。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
裁判所は,200万円の慰謝料と20万円の弁護士費用を認めたのでしょう.
この金額から判断すると,早期に手術体制が整った医療機関に転送する義務を怠ったことは認め,救命との因果関係を認めなかったのでしょう.


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by medical-law | 2017-01-27 06:53 | 医療事故・医療裁判

滋賀県立成人病センター,4年前に左膝に誤って右膝用の部品を取り付ける医療ミスがあったことを公表

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西日本新聞「滋賀で人工関節、左右取り違える 県立成人病センター」(2017年1月20日)は,次のとおり報じました.

「滋賀県立成人病センター(守山市)で2013年12月、患者の膝の手術で、左膝に誤って右膝用の人工関節を取り付ける医療ミスがあったとして、執刀した50代の男性医師を口頭注意処分にしていたことが20日、病院への取材で分かった。

 センターによると、患者は70代男性。直後に手術が予定されていた別の患者の右膝のエックス線写真を医師が用意し、さらに患者の名前を確認しなかったことなどが重なり、右膝用の人工関節が用意された。

 手術直後に、看護師が取り違えに気付いたが、医師は「左右の違いはわずかなもので、再手術は患者に負担をかけるので様子を見たい」と患者へ説明しなかった。」


時事ドットコム「人工関節の左右間違う=滋賀県成人病センターが手術ミス」(2017年1月20日)は,次のとおり報じました.

「滋賀県立成人病センター(同県守山市)は20日、2013年12月に70代の男性患者の膝に人工関節を付ける手術をした際、左膝に誤って右膝用を付ける医療ミスがあったと発表した。患者の生活に大きな支障はないという。
 同センターによると、50代の男性医師が別の患者のレントゲン写真を基に施術した。術中にミスに気付いたが、取り外すと骨を傷つける恐れがあったため、そのまま縫合したという。
 医師らは手術後、患者に説明し謝罪。昨年6月に100万円を支払うことで示談が成立した。センターは医師を口頭注意処分とした。センターは「患者に不安を与え、おわびする。患者名の復唱など再発防止に努める」としている。」 


これは私が担当した事件ではありません.
違う患者のレントゲン写真を見て手術を行ったのですから,左右取り違え事故というより,患者取り違え事故です.
取り違え事故の原因は,すべて確認の懈怠です.
患者に説明しなかったのはおかしいですし,4年前の医療事故を今まで公表しなかったのも疑問です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-21 21:44 | 医療事故・医療裁判

新宿セントラルクリニック院長が逮捕される(報道)

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警視庁捜査二課は,性病にかかっていると虚偽の診断を行って薬代を詐取した容疑で,新宿セントラルクリニック院長のA医師(69歳)を逮捕したとのことです.
院長医師は,血液検査の基準値を0.00と設定したとのことで,被害者は数千人にのぼるものと観られています.
院長医師は,容疑を否認しているとのことです.
院長医師が基準値を0.00と設定するのが正しいと思っているとすれば,故意の立証は難しくなるでしょう.
しかし,およそ医師であれば,そのような誤ったことを正しいと思うはずはないでしょう.
民事裁判では,院長医師はすべて敗訴しています.
本件については,きちんと捜査して,起訴することを期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-17 21:44 | 医療事故・医療裁判