弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1124 )

米国の最近の医療訴訟事情

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ジョンズ・ホプキンス大学のマーティン・メイカリー教授らのグループの報告によれば,医療ミスで死亡する患者数は,年間少なくとも25万1454人で,心疾患とがんに続いて3番目に多い可能性がある,とのことでした。

ところが,今般,報告された全米医師データバンクのデータでは,医療過誤訴訟が減少し,1件あたりの賠償額は増加していう,とのことです.

その原因は,賠償金と弁護士報酬を制限した法律を制定した結果,弁護士が医療過誤訴訟を引き受けないようになったからとみられています.

HealthDay,Fewer Successful Malpractice Claims in U.S., But Higher Payouts



谷直樹

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by medical-law | 2017-04-10 19:10 | 医療事故・医療裁判

日本医療安全調査機構,医療事故の再発防止に向けた提言(第1号)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析

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一般社団法人日本医療安全調査機構は,対象事例10件を検討し,平成29年3月,「医療事故の再発防止に向けた提言(第1号) 中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析─第1報─ 」 を発表しました.提言は,以下のとおりです.

【適 応】
提言1 中心静脈穿刺は、致死的合併症が生じ得るリスクの高い医療行為(危険手技)であるとの認識を持つことが最も重要である。血液凝固障害、血管内脱水のある患者は、特に致命的となるリスクが高く、中心静脈カテーテル挿入の適応については、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)による代替を含め、合議で慎重に決定する。

【説明と納得】
提言2 中心静脈カテーテル挿入時には、その必要性及び患者個別のリスクを書面で説明する。特にハイリスク患者で、死亡する危険を考慮しても挿入が必要と判断される場合は、その旨を十分に説明し、患者あるいは家族の納得を得ることが重要である。

【穿刺手技】
「穿刺手技のポイント」の動画(URL https://www.medsafe.or.jp/movie/)
提言3 内頚静脈穿刺前に、超音波で静脈の性状(太さ、虚脱の有無)、深さ、動脈との位置関係を確認するためのプレスキャンを行うことを推奨する。

提言4 リアルタイム超音波ガイド下穿刺は、超音波の特性とピットフォール(盲点)を理解した上で使用しなければ誤穿刺となり得る。術者はあらかじめシミュレーショントレーニングを受けることを推奨する。

提言5 中心静脈カテーテルセットの穿刺針は、内頚静脈の深さに比較し長いことが多いため、内頚静脈穿刺の場合、特にるい痩患者では、深く刺しすぎないことに留意する。

提言6 穿刺手技時、ガイドワイヤーが目的とする静脈内にあることを超音波や X 線透視で確認する。特に内頚静脈穿刺の場合、ガイドワイヤーによる不整脈や静脈壁損傷を減らすために、ガイドワイヤーは 20cm 以上挿入しない。

【カテーテルの位置確認】
提言7 留置したカテーテルから十分な逆血を確認することができない場合は、そのカテーテルは原則使用しない。特に透析用留置カテーテルの場合は、致死的合併症となる可能性が高いため、カテーテルの位置確認を確実に行う必要がある。

【患者管理】
提言8 中心静脈カテーテル挿入後の管理においては、致死的合併症の発生も念頭において注意深い観察が必要である。血圧低下や息苦しさ、不穏症状などの患者の変化や、輸液ラインの不自然な逆流を認めた場合は、血胸・気胸・気道狭窄、カテーテル先端の位置異常を積極的に疑い、
迅速に検査し診断する必要がある。
また、穿刺時にトラブルがあった場合などを含め、医師と看護師はこれらの情報を共有し、患者の状態を観察する。

提言9 中心静脈穿刺合併症出現時に迅速に対応できるよう、他科との連携や、他院への転院を含めたマニュアルを整備しておく。


対象事例10件の医療事故調査の結果が結実した提言ですので,これらの提言を臨床現場が真摯に受け止め,実行されることを期待します.



谷直樹

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by medical-law | 2017-04-06 08:27 | 医療事故・医療裁判

山形県立中央病院 心臓病手術の女児死亡事件,遺族と和解し再発防止策公表(報道)

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山形新聞「女児死亡訴訟、遺族と和解成立 県立中央病院が再発防止策公表へ」(2017年3月31日)は,次のとおり報じました.

「県立中央病院で2012年、心嚢(しんのう)液を排除する処置が遅れ、当時10歳の女児が死亡したとして、両親が県に約7300万円の損害賠償を求めた訴訟は30日、山形地裁(松下貴彦裁判長)で和解が成立した。県は解決金として3600万円を支払うほか、迅速な救急措置に対応できる院内連携態勢の整備を約束。再発防止策や事案の概要を来月からホームページで公表する。

 原告の代理人弁護士などによると、同年8月、女児は心房中隔欠損症の術後7日目、午後3時40分から同4時すぎの心エコー検査で、心臓を覆う膜に液体がたまる心タンポナーデと診断された。心嚢液の排除が必要だったが約3時間後まで実施されず、女児はその間に心停止。後日、死亡した。担当医は午前10時ごろに女児を診察した後、夏季休暇のため病院を離れ、連絡を受けて戻ったのは午後5時20分すぎだった。両親は14年5月に提訴した。

 同弁護士によると、昨年12月の弁論準備手続きで、裁判所から「迅速に心嚢液を排除すべきであった可能性が高い」との認識が示されたという。和解理由について弁護士は「原告が最も問題であると考えていた点について裁判所の認識、見解が示されたこと、再発防止の提示と公表を病院側が承諾したこと」などを挙げている。和解の席上、後藤敏和院長が遺族に謝罪した。

 女児の父親は和解成立後、取材に対し「亡くなった原因が明らかになり、病院からの謝罪が示されたことで一区切りがついた。同じことが二度と起きてほしくない」と話した。

 裁判所から和解勧告があり、同病院は「紛争の確定的解決、遺族との信頼回復の観点から和解を受け入れることにした」と説明。「今後とも安全・安心な医療を提供するため、積極的に事故防止対策に取り組む」などとする後藤院長のコメントを発表した。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
裁判上の和解では口外禁止条項がつくことが多いのですが,すくなくとも公の病院,地方自治体が開設する病院では,へ,基本的に事故の公表と再発防止の公表を行うべきと考えます.


谷直樹

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by medical-law | 2017-04-01 10:05 | 医療事故・医療裁判

公益財団法人日本医療機能評価機構,第7回産科医療補償制度再発防止に関する報告書

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公益財団法人日本医療機能評価機構は,2017年3月29日,「第7回産科医療補償制度再発防止に関する報告書」を発表しました.
「第7回産科医療補償制度再発防止に関する報告書」は,2016年12月末までに公表した1,191件を分析対象とし,とくに「早産について」,「多胎について」の再発防止委員会からの提言を示されています.

早産については,再発防止および産科医療の質の向上のために次の提言がなされています.

(1)妊娠中の母体管理
早産期における妊産婦へ分娩機関に連絡・受診すべき異常徴候(性器出血、腹部緊満感、
腹痛、破水感、胎動減少・消失等)について情報提供を行う。また、必要に応じて、子
宮頸管長の計測を検討する。

(2)胎児管理
ア.切迫早産症状を訴える妊産婦においては、絨毛膜羊膜炎や常位胎盤早期剥離を発症している可能性を念頭において鑑別診断を行う。
イ.切迫早産症状を訴える妊産婦が受診した場合、および切迫早産で管理中の妊産婦が症状の増悪を訴えた場合は、常位胎盤早期剥離との鑑別診断のために分娩監視装置の装着、超音波断層法での胎児健常性の確認を行う。また、必要に応じて、子宮頸管長の計測を検討する。
ウ.全ての産科医療関係者は、胎児心拍数陣痛図の判読能力を高めるよう各施設における院内の勉強会への参加や院外の講習会への参加を行う。また、胎児心拍数陣痛図の正確な判読のために、紙送り速度を3cm/分に統一する。
エ.子宮収縮抑制薬を投与する場合は、添付文書に沿った用法・用量で実施する。
オ.早産児の出生が予測される場合は、必要に応じて院内の小児科や早産児、低出生体
重児の管理が可能な高次医療機関と連携して管理する。

(3)新生児管理
ア.日本版新生児蘇生法(NCPR)ガイドライン2015に従い、保温、酸素濃度に留意して新生児蘇生初期処置を実施する。
イ.早産児出生の際は「新生児蘇生法講習会」修了認定を受けた医療関係者が立ち会うことが望まれる。
ウ.出生後の低血糖、呼吸・循環異常が脳性麻痺の症状を増悪させる可能性があることを認識し、各施設の実情に応じて、出生後の低血糖、呼吸・循環異常が出現した場合の新生児搬送基準も含めた管理指針を作成することが望まれる。


多胎については,再発防止および産科医療の質の向上のために次の提言がなされています.

(1)妊娠管理
ア.多胎妊娠の管理方法(超音波断層法の実施頻度、高次医療機関への紹介・搬送の基準等)について、「産婦人科診療ガイドライン-産科編2014」を参照し、各施設の実情に応じた管理指針を作成することが望まれる。
イ.「産婦人科診療ガイドライン-産科編2014」に準じ、妊娠10週頃までに膜性診断を行う。
ウ.少なくとも2週毎の超音波断層法を行い、胎児発育、羊水量について観察を行う。また、その結果得られた超音波断層法所見については客観的な数値、指標を診療録に記載する。
エ.臍帯付着部位の位置等を参考にし、妊娠期間中、両児の区別が常に一貫して評価できるように診療することが望まれる。

(2)分娩管理
ア.双胎経腟分娩を試行する場合は、先進児娩出後の後続児経腟分娩中に臍帯因子、子宮収縮による絨毛間腔の血流低下、胎盤剥離などで胎児が急速に低酸素状態に陥りやすいことを妊産婦・家族に充分に説明し、同意を得たうえで実施する。
イ.双胎経腟分娩を試行する場合は、後続児の予後が悪いこと、子宮収縮不全による微弱陣痛により単胎に比べて分娩所要時間が延長する可能性が高いことを認識し、各施設に応じた実施基準の作成、および以下の事項を実施する。
・双胎の経腟分娩における先進児への子宮底圧迫法の実施は、胎盤循環不全により後続児の状態が悪化する可能性があることから実施しない。
・両児の胎児心拍数が悪化した状況、または先進児の分娩中に後続児の胎児心拍数が悪化し、先進児の先進部が高い位置にある等で、器械分娩で速やかな児娩出が図れない場合は緊急帝王切開術を検討する。
・多胎の分娩時には連続的に分娩監視装置を装着する。胎児心拍数が正しく記録できない場合はドプラや超音波断層法での確認を行う。特に、第1子娩出後の第II児の胎児心拍数聴取は母体心拍との鑑別を充分に行う。
・先進児娩出後に後続児の胎児心拍数が悪化した場合、最も早く児を娩出させられる方法(外回転、内回転、吸引分娩、鉗子分娩、緊急帝王切開術)を各施設の状況において検討する。
・分娩機関の施設開設者は、多胎の経腟分娩実施にあたって、いつでも緊急帝王切開術に切り替えられる体制を整えることが望まれる。場合によっては、①手術室で経腟分娩を行う、②分娩室で緊急帝王切開術を行うなどの準備を考慮することが望まれる。
ウ.全ての産科医療関係者は、胎児心拍数陣痛図の判読能力を高めるよう各施設における院内の勉強会への参加や院外の講習会への参加を行う。
エ.多胎妊娠では、膜性診断の確定、および吻合血管の有無、占有面積、絨毛膜羊膜炎の有無、卵膜の脆弱性等について検証するために、胎盤病理組織学検査を行うことが望まれる。

(3)新生児管理
多胎分娩は母子ともにハイリスクであることから、「新生児蘇生法講習会」修了認定を受けた医療関係者が複数立ち会うことが望まれる。特に、双胎一児死亡後の分娩の際は出生児の循環血液量不足に対応できる新生児科医等の立ち会いが望まれる。


ご一読をお奨めします.



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by medical-law | 2017-03-31 09:31 | 医療事故・医療裁判

井原市立井原市民病院,理学療法士がカルテに虚偽記載(報道)

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山陽新聞「井原市民病院でカルテに虚偽記載 理学療法士を停職6カ月」(2017年03月30日 )は,次のとおり報じました.

「井原市民病院(同市井原町)は30日、実施すべきリハビリを怠っていたのにカルテには実施済みと虚偽記載したとして、地域包括ケア病棟の男性理学療法士(52)を同日付で停職6カ月の懲戒処分にした。理学療法士は同日付で依願退職した。
 同病院によると、リハビリの未実施と虚偽記載の可能性があるのは、2014年5月~今年2月の2年10カ月間。電子カルテのアクセス記録などから、今年2月までの3カ月間で患者34人の56件で、それ以前も1カ月当たり数件から十数件で疑いがあるという。」


これは,私が担当したものではありません.
公務員が,行っていない診療を行ったようにカルテに虚偽の記載をすると,公文書虚偽記載罪(刑法156条)が問題になります.
市立病院のカルテは公文書です.
公務員が公文書に虚偽記載を行ったのですから,「行使の目的」を認定できれば,公文書虚偽記載罪(刑法156条)に問うことができるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-31 09:02 | 医療事故・医療裁判

東京女子医大病院,ラミクタール錠を1日200ミリグラム処方後TENで死亡した事案で提訴される(報道)

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報道によると,東京女子医大病院で,2014年ラミクタール錠を過量投与された患者が死亡した件で,遺族が東京女子医大病院を提訴したとのことです.

この件は,私が担当するものではありません.遺族の代理人は,安東宏三先生です.

東京女子医大病院で,2014年7月,43歳の女性が脳腫瘍を再発した疑いがあると診断されました.
患者は同年8月に痙攣発作があり,東京女子医大病院の医師は,これまでの抗てんかん薬に加え,別の抗てんかん薬ラミクタール錠を1日200ミリグラム処方し毎日飲むように指示しました。
薬剤師から処方量の確認がありましたが,医師は処方量を変更しませんでした.
患者はTEN(中毒性表皮壊死症)を発症し,追加投与は約2週間で中止されました.
患者はTENのために2014年9月9日に亡くなりました.

これは,通常の8倍量で,2日に1回飲むべき薬ですから,添付文書の定める用法用量に反しています.「日本医療安全調査機構」の報告書は,「最良の選択肢とは言い難い。選択するのであれば、リスクなどについて本人と家族に十分に説明し同意を得ることが望ましい」としたとのことです.
ラミクタール錠の投与により重篤な皮膚障害があらわれることが報告されており,添付文書の,「警告」,「用法・用量に関連する使用上の注意(1)(3)」,「重要な基本的注意(1)(2)」,「重大な副作用」の項にはそのことが記載されています.
定められた用法・用量を超えて投与した場合,重篤な皮膚障害の発現率が高くなります.

添付文書に定められた用法・用量を超えて投与した場合,添付文書から過失が推定され,その事案におけるその用法・用量について臨床医療上の合理性が証明されない限り,過失が認定されます。

定められた用法・用量でも一定の割合で副作用が発現しますので,過失と副作用の発現との間の因果関係が問題になりますが,定められた用法・用量を超えて投与した場合重篤な皮膚障害の発現率が高くなることと,用法・用量についての逸脱の程度が大きなことから,過失と発現した副作用との間に因果関係があるものと考えられるでしょう.

以上から,東京女子医大病院の医師の過失があり,過失と患者の死亡との因果関係があると思われます.

朝日新聞「抗てんかん薬多量投与で死亡 東京女子医大を提訴」(2017年3月28日)ご参照
朝日新聞「抗てんかん薬を多量投与、女性死亡 東京女子医大病院」(2016年7月25日)ご参照


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by medical-law | 2017-03-29 02:59 | 医療事故・医療裁判

市立舞鶴市民病院,患者虐待の疑い(報道)

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読売新聞「口にビー玉、腹部にあざ...市立病院入院男性2人が虐待被害か」(2017年3月28日)は,次のとおり報じました.

 「京都府舞鶴市の市立舞鶴市民病院で、60歳代の男性入院患者2人の体にあざや、口にビー玉が入れられているのが見つかり、同病院が府警に届け出ていたことがわかった。2人は同じ病室で、いずれも意思疎通は困難な病状だった。府警は何者かに虐待を受けた可能性もあるとみて調べている。

 舞鶴市によると、今年2月24日から3月11日にかけ、3階の病室に入院していた男性患者のみぞおちと脇腹の皮膚が赤黒く変色し、左手中指と薬指のつめが内出血しているのを看護師らが発見。3月12日には、同じ病室に入院中の別の男性患者の口の中に、ビー玉1個が入っているのを看護師が見つけた。11日夜に口の中を検査した際には、ビー玉はなかったという。」



報道の件は,私が担当したものではありません.
介護療養型医療施設で,意思疎通は困難な患者への虐待は故意犯です.
被害者が複数いることからなどからすると,院外からの侵入者によるものというより,院内の関係者による可能性のほうが考えられるでしょう.


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by medical-law | 2017-03-28 11:50 | 医療事故・医療裁判

宇都宮地裁平成29年3月24日判決,インスリン投与中止を指示した自称龍神の殺意を認定

b0206085_4122052.jpg下野新聞「糖尿病男児衰弱死、被告に懲役14年6月 宇都宮地裁判決」(2017年3月25日)は,次のとおり報じました.
 
「2015年4月、1型糖尿病だった宇都宮市東原町、小学2年今井駿(いまいしゅん)君=当時(7)=の両親に命じてインスリン投与をさせずに駿君を衰弱死させたとして、殺人罪に問われた下野市小金井1丁目、自称「龍神(りゅうじん)」の建設業A被告(62)の裁判員裁判判決公判が24日、宇都宮地裁で開かれた。佐藤基(さとうもとい)裁判長は「(駿君が)死亡する危険性を知りながら、投与しないよう指示した」として殺人の関与と殺意を認定し、懲役14年6月(求刑懲役15年)を言い渡した。

 A被告による投与中止の指示が殺人の実行行為に当たるかどうか、殺意の有無などが争われていた。

 佐藤裁判長は、被告が駿君の母親に対して「インスリンは毒だ」などとメールを送っていたと指摘。「被告の指示により、死亡の危険性がある投与中止が実行された」と、殺人の実行行為を認定した。

 殺意について、2014年末に両親と契約した当初から、投与がなければ駿君が死亡する危険性を認識していたことを判示。駿君の容体悪化を知りながら放置し死亡を認容したとして、「未必の故意」を認めた。

 被告は、証言台のいすに浅く腰掛けて判決を聞いた。納得いかないような態度で首をかしげたり、ため息をつくなどして不満をあらわにした。判決後、控訴の具体的方法について、自ら裁判長に尋ねた。」


時事通信「自称祈祷師に懲役14年6月=薬不投与で糖尿病男児死亡-宇都宮地裁」(2017年3月24日)は,次のとおり報じました.

「2015年4月、宇都宮市の糖尿病の男児=当時(7)=の治療に不可欠なインスリンの投与中断を両親に指示し、死亡させたとして、殺人罪に問われた自称祈祷(きとう)師の建設業A被告(62)の裁判員裁判の判決が24日、宇都宮地裁であった。佐藤基裁判長は「被告は主導的立場にあり、犯行態様は残酷」などとして、懲役14年6月(求刑懲役15年)を言い渡した。
 佐藤裁判長は「被告には男児を殺害する積極的意図は認められない」としつつも、男児の母親らへ送ったメールの内容などから「治療契約当時から、インスリンを投与しなければ死亡する危険性を認識していた」と未必の故意を認定。「殺意はなかった」とする被告側の無罪主張を退けた。
 その上で「犯行動機は自身の権威を守り金銭を得るためで、理解しがたい身勝手さ。非難の程度は高い」と指摘した。」


NHK「糖尿病男児死亡 男に懲役14年6か月の判決」(2017年3月24日)は,次のとおり報じました.

「検察は懲役15年を求刑し、弁護側は「インスリンを打たない選択をしたのは両親だ」として無罪を主張していました。

24日の判決で、宇都宮地方裁判所の佐藤基裁判長は「被告は男の子が死ぬ危険性があると認識しながら『インスリンは毒だ』として両親に投与をやめさせた」と指摘しました。

そのうえで、「両親の前で男の子を衰弱させ、死亡させた犯行は残酷で、難病を治療できるとする自分の権威を守ろうとした身勝手なものだ」と述べ、懲役14年6か月の判決を言い渡しました。」

これは私が担当した事件ではありません.
被告は,自分は祈祷師でも龍神でもないと主張し,弁護側は「インスリンを打たない選択をしたのは両親だ」として無罪を主張していましたが,そのような主張は認められませんでした.
祈祷師,権威を装った偽医師などが医療行為について発言した場合,医師ではないから責任を負わないとは言えません.これらの者の発言は,単なる助言以上の影響力を及ぼす場合があり,未必の故意が認められる場合があります.


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by medical-law | 2017-03-27 04:12 | 医療事故・医療裁判

北村山公立病院,結紮した血管の糸が外れ術後出血を起こし死亡した医療事故で賠償金支払い(報道)

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朝日新聞「子宮筋腫手術で女性死亡 山形・北村山公立病院」(2017年3月25日)は,次のとおり報じました.

「山形県北村山公立病院(東根市)は23日、昨年3月に東根市内の50代女性が子宮筋腫の手術後、容体が急変して3日後に死亡する医療事故があったと公表した。北村山の4市町でつくる病院組合議会の定例会で報告され、遺族への賠償金4247万円を含む補正予算が可決された。

 病院によると、女性は昨年3月16日に子宮を全摘する手術を受けた。その約1時間後に顔面が真っ青になり、内出血が判明。3時間後に再び開腹して止血したが好転せず、同19日に転送先の山形市内の病院で多臓器不全で亡くなった。

 北村山公立病院は遺族の同意を得て、医療法に基づく事故調査委員会を設置して手術した医師や看護師を聴取。血管を縛った糸がはずれ、出血を起こした可能性があるとわかった。再度開腹まで時間がかかったことも容体の悪化につながったとした。」


北村山公立病院のサイトには,以下のとおり記載されています。

「1 事故の概要
(1) 事故の発生年月日 平成28年3月16日
(2) 場 所 北村山公立病院
(3) 患 者 50代女性
(4) 状 況 ・子宮筋腫の診断にて、3月16日子宮全摘手術及び両側附属器切除を実施した。同日午後3時35分に病室に帰室し、1時間後の午後4時35分に顔面蒼白、嘔気を訴えた。腹腔内出血を認め、午後7時40分に再開腹し止血を行った。
・翌3月17日、DICの集中治療が必要となり、山形市内の病院に転送した。
・3月19日、多臓器不全の診断にて死亡した。
(5) 原 因 ・術後腹腔内出血
・術後管理
2 改善策
(1) 術後管理に関して、主治医は麻酔科医及び他科医師との連携と意思の疎通を十分に図り、より早期に適切な治療方針決定がなされる体制を整える。
(2) 術後出血が予測される症例に対しては、ドレーンを留置する取り扱いを徹底する。」


これは,私が担当したものではありません.
事故調査によって,術後腹腔内出血の原因が解明されたこと,術後管理に不備があったことが明らかになったことが,本件医事紛争の解決につながったようです.
術後腹腔内出血による死亡事案は,少なくありませんので,本件の解決は参考になります.


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by medical-law | 2017-03-25 23:44 | 医療事故・医療裁判

名古屋地裁平成29年3月17日判決,てんかん治療薬投与の適応を認め,説明義務版を認める(報道)

b0206085_573174.jpg中日新聞「てんかん薬後遺症、病院側に賠償命令 名古屋地裁「説明不十分」」 (2017年3月17日)は,次のとおり報じました.

「めまいの治療に依存性の高いてんかん治療薬を使用され、重い後遺症に苦しんだなどとして、名古屋市緑区の会社員多田雅史さん(59)が、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)に約1億6千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は17日、副作用のリスクなどの「説明義務違反があった」として約117万円を支払うよう命じた。

 判決理由で朝日貴浩裁判長は「投薬の有効性や長期服用による依存の可能性を十分に説明したとはいえない」と指摘。てんかん治療薬の投与については「医学的に相応の合理性があった」として、センター側の注意義務違反を認めなかった。

 判決によると、多田さんは2004年、めまいを訴え同センターを受診。てんかん治療薬の服用を1年以上続けたが、めまいは完全にはなくならず、別の病院で薬物依存症と診断された。

 多田さんは「投与についてセンターの責任を認めなかった不当な判決」と述べ、控訴する方針。同センターは「主張が一部認められず遺憾。判決内容を検討し、今後の方針を決めたい」とコメントした。」


これは,私が担当した事件ではありません.

適応義務違反は,一般に,裁判所がなかなか認めない,ハードルの高い過失ですが,控訴審裁判所(名古屋高裁)の判断に注目したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-20 04:59 | 医療事故・医療裁判