弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:コンプライアンス( 99 )

バイエル薬品,カルテ無断閲覧,接待,論文作成代行,内部告発社員に退職勧奨

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バイエル薬品株式会社は,2017年4月10日,「2012年・2013年の「服薬における患者様の嗜好に関するアンケート調査」に関するご報告とお詫び」を発表しました.

血栓症領域製剤の服薬における患者様の嗜好に関するアンケート調査は「同領域製剤の剤型や服薬の回数などについて、実際に製剤を服薬されている患者様への聞き取り調査により、服薬に関する嗜好を確認する目的で行った調査です。その結果は国内の医学誌に掲載されましたが、本調査にご協力をいただきました患者様のカルテの一部をデータ転記のために特定の弊社社員が不適切に閲覧していたこと、本調査の実施主体が弊社であることについて書面上、明確にされていなかったことなどから、2016年1月に医学誌より取り下げられ、同時に取り下げの事実が同誌誌面において公表されております。なお、本調査は嗜好に関するアンケート調査であり、臨床研究ではありません。」

NHK「 バイエル薬品 新薬発売で患者カルテを無断閲覧」(2017年4月11日)は,次のとおり報じました.

「平成24年に脳や肺などの血管が詰まりやすくなる「血栓症」の治療薬「イグザレルト」を発売する際、ほかの製薬会社の薬がどれくらい使われているかを事前に把握するため、複数の社員が宮崎県内の開業医に依頼して、無断で患者のカルテを閲覧していたということです。」


TBS「カルテ無断閲覧させた医師、クラブ・料亭での接待の実態」(2017年4月12日)は,次のとおり報じました.

「接待で築いた関係のもとで得られたカルテのデータを使って何が行われていたのか。これはバイエル薬品の血栓症治療薬「イグザレルト」の広告です。そこには問題の開業医の名前が記されています。広告には開業医の名前で書かれ、医学誌に掲載された論文が使われていました。しかし、実際には、この論文を書いたのは開業医ではなくバイエル薬品側だったというのです。これは、バイエル側が書いたという論文の元原稿。開業医は、赤い文字でわずかに2か所、添削しただけでした。」

 「『製薬会社が(調査を)実施して研究の中身の論文も書いて、だけど医師の名前を借りて非常に悪質なケース。製薬企業と医師との不健全な経済的な関係は社会問題化している』(薬害オンブズパースン会議 水口真寿美 弁護士)」

TBS「バイエル薬品“カルテ”無断閲覧、内部告発社員に「退社」勧める」(2017年4月13日)は,次のとおり報じました.
 
「大手製薬会社「バイエル薬品」が患者に無断でカルテを閲覧していた問題で、社内で内部告発した社員に対し、上司が「会社に法的責任はない」と話したうえで、会社を辞めるよう勧めていたことがわかりました。」

連日報道されているバイエル問題ですが,やってはいけないことばかりです.
バイエルは,医薬品,医療機器業界の法令順法意識調査では17位とされていました.
親会社のバイエルホールディング株式会社の常務執行役員・法務・特許・コンプライアンス本部長は日本人の弁護士ですので,このような実態は意外です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-04-13 17:29 | コンプライアンス

学校法人加計学園が第2の森友学園に

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学校法人加計学園の第2の森友学園疑惑が報道されています.
医科系学部の新設、37億円相当の公有地の無償譲渡、96億円の補助金が市議会で可決された背景には、強い政治力があったのでしょうか?

加計孝太郎理事長は安倍晋三総理の旧友と報じられています.
昭恵夫人が学校法人加計学園の運営する認可外保育施設で講演した際に政府職員2人が同行していたとのことです
千葉科学技術大学と安倍晋三総理系人脈のつながりも報道されています.

なお,森友学園問題・PKO日誌問題で渦中の防衛大臣ですが,弁護士としては非常に少ないタイプの方です.



谷直樹

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by medical-law | 2017-03-24 03:01 | コンプライアンス

東京大学分子細胞生物学研究所元教授グループによる論文不正問題で元教授ら5人処分

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東京大学は,3月3日,東京大分子細胞生物学研究所元教授のグループによる論文不正問題で,元教授ら5人の処分を発表しました.多数の論文に捏造,改竄があった件で,隠蔽工作を図った元教授,元助教授,元准教授,元特任講師が懲戒解雇相当,元助教が諭旨解雇相当とされました.

「東京大学は、「東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(第一次)」(平成26年8月1日公表)および「東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(最終)」(平成26年12月26日公表)の裁定に関連し、当該関係者が本学在職中に行った不正行為について、仮に在職者であったとする場合に懲戒事由に該当する不正行為であったのかを調査した結果、東京大学教職員就業規則(平成16年4月1日東大規則第11号)第39条に規定する懲戒処分に相当するものと判断し、2月17日付けで、下記の通り懲戒処分相当を決定し通知した。」


論文不正は広く深い問題です.他の研究室についてもそのようなことがないよう願いたいものです.


谷直樹

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by medical-law | 2017-03-04 05:11 | コンプライアンス

厚生労働省,一般財団法人化学及血清療法研究所に対し日本脳炎ワクチンについて報告命令等

厚生労働省は、9月6日及び7日に一般財団法人化学及血清療法研究所に無通告で立入検査を行い、その結果を精査した結果、エンセバック皮下注用(一般的名称:乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)について、製造販売承認書の記載と一部異なる製造を行っていたことが確認されたため、10月4日、般財団法人化学及血清療法研究所に対し、報告命令等を行いました

「(1)医薬品医療機器法第69条第1項の規定に基づき、別紙1及び別紙2のとおり報告を命じました。
(2)医薬品医療機器法第72条第2項の規定に基づき、改善命令を行うため、行政手続法第13条第1項第2号の規定に基づき、別紙3のとおり弁明の機会の付与として弁明通知書を発出しました。
(3)遺伝子組換え生物の不適切な取扱いについて、別紙4のとおり指導を行いました。 1)医薬品医療機器法第69条第1項の規定に基づき、報告を命じました。」

別紙1の報告事項は次のとおりです.
「貴所が製造販売しているエンセバック皮下注用(一般的名称:乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン。以下「本件製品」という。)について、次の事項について調査し、結果を報告すること。
1. セル・バンク及びウイルス・バンクの作製において、製造販売承認書に記載された一部の病原体不活化処理工程を経ていない原材料を用いた製造(以下「本件行為」という。)行われた経緯について、本件製品の開発の時点まで遡って調査し、その結果を報告すること。
2. 貴所内において本件行為が発覚又は認識されるに至った経緯及び認識後の貴所の対応に関して、文書、電子メール等の客観的証拠とともに時系列に沿った形で整理して報告すること。特に以下の各項目については当該報告の中で明らかにすること。
(1) 本件行為に関し、昨年9月(昨年9月1日付けで報告命令を発出し報告を求めた後同9月18 日に立入検査を行った)以降製造販売承認事項の一部変更承認(本年2月26 日)までの間、
(ア)本件行為に関し、担当者及び担当部署が認識して以降、どのような経緯を経て貴所として組織的に本件行為を認識するに至ったのか。
(イ)貴所として組織的に本件行為を認識して以降、製造販売承認事項の一部変更承認申請が必要でないと誰がどの時点で判断したのか。
(2) 本件行為に関し、本年2月26 日以降これまでの間、
(ア)担当者及び担当部署がいつ再認識し、その後、どのような経緯を経て貴所として組織的に本件行為を認識するに至ったのか。
(イ)貴所として組織的に本件行為を認識して以降、製造販売承認事項の一部変更承認申請が必要であることを誰がどの時点で認識したのか。
(ウ)上記(1)の後、貴所内において組織的にどのような経緯をたどり、当該製造販売承認事項の一部変更承認申請について厚生労働省に相談するに至ったのか。
3. 本件行為についての、上記2.(1)及び(2)のそれぞれについて、役員(現役員に限らず本件製品の開発以降の全ての役員)の関与等を網羅的に調査し、報告すること(具体的には以下の各項目)。
(1) 各役員はいつ知ったのか。
(2) どの役員がいつどのような報告を受けたのか。
(3) どの役員がいつどのような責任においてどのような判断をしたのか。
(4) どの役員がいつどのような指示をしたのか。
(5) 各役員について貴所のコンプライアンス規定に反する行為はなかったのか。

以上の報告にあたっては、特に証拠の添付を求めている事項以外の事項についても、その報告の根拠となる資料を添付すること。

なお、貴所においては、長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが、貴所が製造している血液製剤及びワクチンの中には、国民の健康確保や医療に不可欠なものが含まれていたこと、貴所自ら事業譲渡の交渉を行い、合意を目指すと意思表明していたこと等を総合的に勘案し、平成28 年1月8日付け業務停止命令により、同年1月18 日から同年5月6日までの過去最長の110 日間にわたり第一種医薬品製造販売業の許可等に係る業務を停止するよう命じた。以上のような経緯にもかかわらず、今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。貴所において、本報告命令を踏まえ、また過去の経緯も踏まえた迅速かつ誠実な対応がとられず、このような事態が続く場合には、医薬品製造販売業許可の取消処分に進展する可能性があること。」

別紙2の報告事項は次のとおりです.
「貴所が製造販売及び製造している下記の各製品(以下「本件各製品」という。)について、
次の事項について調査し、結果を報告すること。
1.平成28 年10 月4日時点において、製造販売承認書の内容とは異なる製造を行っている事実(以下「承認書と製造実態の齟齬」という。)の有無について本件各製品を網羅的に調査し、調査の結果を報告すること。なお、調査における調査手法及び調査体制についても、併せて報告すること。
2.1.において承認書と製造実態の齟齬が確認された場合、それぞれの製品ごとにその根本的な原因を分析し、報告すること。
以上の報告に当たっては、その報告の根拠となる資料を添付すること。
なお、貴所においては、長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが、貴所が製造している血液製剤及びワクチンの中には、国民の健康確保や医療に不可欠なものが含まれていたこと、貴所自ら事業譲渡の交渉を行い、合意を目指すと意思表明していたこと等を総合的に勘案し、平成28 年1月8日付け業務停止命令により、同年1月18 日から同年5月6日までの過去最長の110 日間にわたり第一種医薬品製造販売業の許可等に係る業務を停止するよう命じた。以上のような経緯にもかかわらず、今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。貴所において、本報告命令を踏まえ、また過去の経緯も踏まえた迅速かつ誠実な対応がとられず、このような事態が続く場合には、医薬品製造販売業許可の取消処分に進展する可能性があること。

乾燥濃縮人活性化プロテインC
乾燥スルホ化人免疫グロブリン
乾燥ペプシン処理人免疫グロブリン
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅷ因子
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅸ因子
乾燥濃縮人アンチトロンビンⅢ
人免疫グロブリン
生体組織接着剤
ヒスタミン加人免疫グロブリン(乾燥)
トロンビン
人血清アルブミン
抗HBs 人免疫グロブリン(抗HBs 抗体)
抗破傷風人免疫グロブリン(破傷風抗毒素)
インフルエンザHAワクチン
沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン
組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)
乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン
乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン
乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン
乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチン(H5N1株)
乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチン(プロトタイプ)
沈降インフルエンザワクチン(H5N1株)
乾燥細胞培養痘そうワクチン
沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン
沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド
沈降破傷風トキソイド
乾燥はぶ抗毒素
乾燥まむし抗毒素
乾燥ガスえそウマ抗毒素
乾燥ジフテリアウマ抗毒素
乾燥ボツリヌスウマ抗毒素
乾燥ボツリヌスウマ抗毒素(E型)
ペントスタチン
メカセルミン(遺伝子組換え)」


別紙3の違反事実等は次のとおりです.
「2.違反事実
エンセバック皮下注用(一般的名称:乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)について、セル・バンク及びウイルス・バンクの作製において、製造販売承認書に記載された一部の病原体不活化処理工程を経ていない原材料を使用し、かつ、これにより生物由来原料基準に適合しないおそれのある製品を製造したこと。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35 年法律第145 号。以下「法」という。)第56 条第3号及び第68条の20 違反)

3.予定される処分の内容
別添3参照(第一種医薬品製造販売業及び医薬品製造業の許可に係る製造販売業務及び製造業務に対する改善命令(法第72 条第2項))
4.その他
「3.予定される処分の内容」を踏まえ、同(1)から(3)までについての是正措置及び再発防止策に係る改善計画を策定して、本命令発出後1か月以内に、厚生労働省に提出すること。また、同(1)については、本命令発出後2週間以内に、承認書と製造実態の齟齬を解消するための製造販売承認事項の一部変更に係る承認申請を行い、その対応状況を含めた是正措置の内容を改善計画に盛り込むこと。
なお、策定した改善計画に則り、所要の組織体制及び運営体制の構築を進めるに際しては、厚生労働省と十分な連絡・相談を行うこと。
おって、本命令に基づく業務改善計画については、公表する可能性があることを申し添える。
また、貴所においては、長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが、貴所が製造している血液製剤及びワクチンの中には、国民の健康確保や医療に不可欠なものが含まれていたこと、貴所自ら事業譲渡の交渉を行い、合意を目指すと意思表明していたこと等を総合的に勘案し、平成28 年1月8日付け業務停止命令により、同年1月18 日から同年5月6日までの過去最長の110 日間にわたり第一種医薬品製造販売業の許可等に係る業務を停止するよう命じた。以上のような経緯にもかかわらず、今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。貴所において、本改善命令を踏まえ、また過去の経緯も踏まえた迅速かつ誠実な対応がとられず、このような事態が続く場合には、医薬品製造販売業許可の取消処分に進展する可能性があること。」

別紙4の厳重注意内容等は次のとおりです.
「2.厳重注意内容遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97 号。以下「カルタヘナ法」という。)に基づく遺伝子組換え生物等の使用等において、不適切な対応があったため、ここに厳重に注意する。
今後、貴所より平成28 年9月5日付けで提出された文書に記載された再発防止策を徹底し、再びこのようなことが生じることのないよう、十分に注意されたい。
3.厳重注意を行う理由
遺伝子組換え大腸菌及び酵母(以下「組換え体」という。)を使用する施設の配管について、厚生労働省への確認申請資料と異なる配管材質を使用していたこと、組換え体が付着している可能性のある部品の洗浄水の配管が、不活化設備を経由しない移送タンクにつながっていたことが確認された。これらはカルタヘナ法の遵守の観点から不適切であるため、貴所に対して、再発防止のための措置を徹底するよう文書による厳重注意
行う。」


厚生労働省は,長期にわたり組織的欺罔及び隠蔽を図っており、本来であるならば医薬品製造販売業許可の取消処分が相当との判断であったが,特別に業務停止ですませたにもかかわらず,今般法違反行為が依然として行われていることが明らかとなったことは由々しき事態である。と指摘しています.
これは化学及血清療法研究所の体質なのでしょうか.

【追記】

厚生労働省は,10月7日,「一般財団法人化学及血清療法研究所による10月4日付のプレスリリースについて」を発表しました.

「厚生労働省では、10月4日に一般財団法人化学及血清療法研究所に対し、エンセバック皮下注用について製造販売承認書の記載と一部異なる製造を行っていた事実に係る報告命令の行政処分を行ったほか、業務改善命令に係る弁明の機会の付与を行いました。
  これを受けて、同日付で一般財団法人化学及血清療法研究所が同所ホームページ上に掲載したプレスリリースにおいては、厚生労働省の事実認識が誤っているかの如き印象を与える表現がありますが、厚生労働省の認識とは大きく異なるものでありますのでお知らせいたします。」





谷直樹


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by medical-law | 2016-10-05 11:49 | コンプライアンス

厚生労働省,医師歯科医師30人を行政処分

毎日新聞「厚労省:タレント女医は医業停止3年 30人を行政処分」(2016年9月30日)は, 次のとおり報じました.

「厚生労働省は30日、医師と歯科医師計30人の行政処分を発表した。免許取り消しは1人で、女性従業員に健康診断を装い、わいせつな行為をした準強制わいせつで有罪判決を受けた×××眼科・歯科(東京都千代田区)の××××医師(69)。また、「タレント女医」として知られ、診療報酬を不正受給した詐欺で有罪判決を受けた××クリニック(東京都目黒区)の×××××医師(37)は、医業停止3年とされた。14日に発効する。【山田泰蔵】

 医業停止1年以上の処分者は次の通り。(当時の所属医療機関の所在地、医療機関名、氏名、年齢、処分理由。敬称・呼称略)

 <免許取り消し>
東京都千代田区、×××眼科・歯科、××××(69)準強制わいせつ

<医業停止3年>
東京都世田谷区、×××××病院など、××××(35)麻薬取締法違反など
▽大阪府吹田市、××大病院、××××(35)麻薬取締法違反
▽東京都目黒区、××クリニックなど、××××(37)詐欺
▽前橋市、××大病院、××××(42)器物損壊など
▽勤務先なし、×××(63)詐欺

<医業停止2年>
札幌市、×××皮膚科クリニック、××××(61)医師法違反
▽岡山市、×××××病院、×××(40)岡山県迷惑行為防止条例違反
▽名古屋市、××××××××××××××病院、××××(42)収賄

<医業停止1年>
札幌市、×××大病院××××、(33)不正アクセス禁止法違反など
▽愛知県豊川市、××歯科医院、××××(46)大麻取締法違反
▽名古屋市、×××歯科、××××(54)同」


詐欺は,診療報酬請求事件です.タレント医師のオフィシャルブログをみると,今はカープ女子のようです.(広島カープの選手はイケメン若手が多いからでしょう).
器物損壊は,元愛人の車に塗装剥離剤をかけた事件です.
医師法違反は,アートメークの関係です.
収賄は,勤務先で担当した透析が必要な患者を他院に転院させ金銭を受け取りバンド活動にあてたものです.医師としては優秀だったと報じられていました.
不正アクセス禁止法違反は,ヤフーメールに女性研修医のIDとパスワードを入力しなりすましメールを男性医師におくり下半身の画像で男性医師の名誉を毀損しようとした事件です.

行政処分を受けるのは,このように刑事処罰が行われた事案に限られています.
刑事処分の多くは,医師としての能力自体とは直接的な関係はありませんが,医業停止以上の処分をみるかぎり,医師としてそのまま仕事を続けさせるのはどうか,という事案と思われます.
他方,民事裁判で医療過誤が認定されたなかに,医師としての能力自体に疑問が示唆されるケースもあるでしょうが,行政処分は行われません.民事の過失は損害の適正な分配のための要件であって,刑事の過失のような非難可能性とは別ですので,刑事で業務上過失致死罪で処罰されない限り,行政処分を検討する必要はないのでしょう.



谷直樹


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by medical-law | 2016-10-01 04:20 | コンプライアンス

厚労省,医師と歯科医師19人を行政処分

毎日新聞「厚労省 医師や歯科医師19人処分 医業停止3年〜3カ月」(2016年3月11日)は,次のとおり報じました.

「厚生労働省は11日、医師や歯科医師計19人を、刑事事件で有罪が確定したなどの理由で医業停止3年〜3カ月とする行政処分を発表した。免許の取り消しはなかった。処分は25日に発効する。【古関俊樹】

処分者は次の通り。(当時の所属医療機関の所在地、医療機関名、氏名、処分理由。敬称・呼称略)

<医業停止3年>
勤務先なし、A(44)覚せい剤取締法違反など
▽大阪市、a診療所、B(61)詐欺
▽長崎県佐世保市、bクリニック、C(59)同
▽神奈川県大和市、c歯科クリニック、D(42)同
▽埼玉県富士見市、d歯科、E(63)強要未遂

<医業停止2年>
大阪市、e内科クリニック、F(56)覚せい剤取締法違反
▽東京都調布市、f病院、G(30)同
▽勤務先なし、H(58)同

<医業停止8カ月>
愛媛県西条市、g歯科診療所、I(60)道路交通法違反

<医業停止4カ月>
北九州市、h医科大学i病院、J(31)道路交通法違反
▽茨城県境町、j医療センター病院、K(32)同
▽長崎県諫早市、医療法人k会l病院、L(38)同

<医業停止3カ月>
愛知県安城市、社会医療法人財団m会n病院、M(36)迷惑行為防止条例違反
▽東京都江東区、公益財団法人o会p病院、N(38)同
▽札幌市、医療法人社団q会r歯科、O(47)診療報酬不正請求
▽北海道帯広市、s歯科クリニック、P(55)同
▽仙台市、t歯科医院、Q(64)同
▽岡山県倉敷市、医療法人u会v病院、R(93)同
▽仙台市、w整形外科、S(57)」


詐欺は,診療報酬関係の詐欺です.
強要は,裸写真を合成しての退職強要です.
業務上過失致死等の医療過誤がらみの処分は「ありません.


谷直樹


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by medical-law | 2016-03-21 08:45 | コンプライアンス

国立大学法人滋賀医科大学医学部看護学科教授が論文の盗用・改ざんで懲戒解雇

国立大学法人滋賀医科大学は,平成28年3月9日,医学部看護学科教授が発表した原著論文に研究活動における不正行為である「盗用」及び「改ざん」が行われたものと認定し平成28年1月28日に懲戒解雇処分にしたことを公表しました.

◆ 盗用
「① 対象研究者が平成24年12月20日に単著で学会誌へ投稿した原著論文(調査対象論文)とその論文の基になったとされる修士論文を比較検証した結果、調査対象論文の論述や数値データが修士論文のものとほぼ同一(約95%)であり、修士論文から31ヵ所373行、及び対象研究者に提出された修士論文草稿から2ヵ所3行にわたって流用されている。
② 対象研究者は、単著の原著論文とした理由について、「修士論文作成者と連絡が取れなかったため、共同研究者としての立場で判断し、単著で投稿した」と説明しているが、対象研究者及び修士論文作成者からの意見聴取の結果、修士論文作成者が修士論文作成に当たって一人でデータの収集や解析を行ったと認められ、論文作成に必要な情報の共有はできていなかった。当該研究に実質的な関与がないにも関わらず、単著の原著論文として投稿している。
③ 対象研究者は、修士論文作成者に連絡が取れなかったと説明しているが、対象研究者及び修士論文作成者からの意見聴取の結果、修士論文作成者への連絡及び承諾を得る努力をしたとは認められず、修士論文を安易に無断使用している。」


◆ 改ざん
「調査対象論文は、修士論文作成者が収集した調査データをそのまま用いて作成されたにも関わらず、当該論文の調査期間に示されている年月と実際のデータ収集期間が食い違っており、対象研究者への意見聴取の結果、この調査期間に実際にデータ収集が行われた事実はなく、調査期間の年月を真正でないものに変更している。」

◆ 重大な懸念事項
「① 調査対象論文と修士論文は研究協力施設から収集した同じデータを解析した結果から導き出されたものであり、二つの論文に示されている結論もほぼ同じである。しかし、調査対象論文と修士論文に記載されている統計解析図には顕著な相違がみられる。対象研究者への意見聴取の結果、調査対象論文の統計解析図は、修士論文の最も重要となる回帰分析の結果を本文中から削除し、相関関係の解析結果に基づいた図が作成され、本来の重回帰分析の結果を踏まえた結論との間に齟齬が生じたものと認められた。図が不適切に変更されたことは、科学論文として非常に問題である。
② 対象研究者の本件行為は、修士論文作成者の努力に敬意を払うことなく、研究成果を公表する上でのオーサーシップ・ルールを無視し、かつ、研究成果公表の公益性を理由として教え子の論文を盗用し自らの原著として発表している。対象研究者の本件行為は、研究倫理規範を逸脱する不適切なものであっただけでなく、大学院生の研究指導にあたる教育者として、信義にもとる倫理違反があったものと認められた。」


論文は研究者の業績です.これらのことは,研究者として最も行っていけないことです.この教授は,本件以外にも,後輩・若手研究者の研究を自分のものとして発表していたことはなかったのでしょうか.

◆ 再発防止策
再発防止策については,次のとおり述べています.
「本学では、本事が起きる前から研究活動の不正行為に対する対応方針を定めて取組を行ってきたが、対象研究者は、指導教員でありながら指導学生の著作権に関する認識を欠いていたばかりでなく、研究活動の不正行為に関する学内規程をはじめ、研究活動上の基本的なルールを理解していたとは言えず、コンプライアンス意識が低かったと言うほかない。
本件を受けて、平成27年度から、修士論文を院生の希望により、機関リポジトリにおいて全文公開や第三者への文献複写も可能とし、広く社会に向け研究論文として公開することとしている。
また、現在、新たに策定された「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日、文部科学大臣決定)を踏まえ、研究活動の不正行為を防止するための全学的な統括組織を構築し、研究不正防止計画を策定して、着実に対応を進めており、本年度は、従前から実施している定期的な研究倫理教育研修会に加えて、研究者全員に文部科学省が指定した研究倫理教材「科学の健全な発展のために」の通読を義務化し、併せて通読レポートの提出を課した。今後、本教材の通読レポート(①通読しての評価、②所属の専攻にとっての過不足または改定案、③本学のオリジナルな研究倫理教材・教育として必要なこと)から得られた意見や要望を不正防止計画に反映させ、研究倫理教育の更なる充実と改善を図ることとしている。」


研究活動における不正行為の事案が後を絶ちません.ガイドラインは,研究者個人のモラルに委ねるのではなく,大学等の研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わることを求めています.


谷直樹


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by medical-law | 2016-03-11 06:54 | コンプライアンス

臨床試験中止公表直前に800株を空売りした臨床試験リーダーの医師が3か月の停職処分となる(報道)

宮崎大学は、平成28年2月26日、医学部・教育職員(男性)に対し、国立大学法人宮崎大学職員懲戒等規程に基づき、停職3月の懲戒処分を行ったことを公表しました.

読売新聞「宮崎大医師、インサイダー取引で停職処分…自ら関与の目薬開発巡り」(2016年2月28日)は、次のとおり報じました.

「医師は2013年3月から、製薬会社「アールテック・ウエノ」(東京)と網膜の病気に関する目薬の臨床試験をしていた。15年3月、同社から臨床試験中止の連絡を受けた医師は、中止公表後の値下がりを見越して同社株800株を信用取引で売買し、約60万円の利益を不正に得たという。中止が公表されたのは、この取引の約1時間20分後だった。」

金融庁の認定した事実は、以下のとおりです.

「被審人(A)は、(株)アールテック・ウエノ(以下「アールテック」という。)との間で網膜色素変性に対するウノプロストン(開発コードUF-021)点眼液の第3相臨床試験(以下「本試験」という。)に係る治験契約を締結していた法人に勤務し、同治験に従事していた者である。

被審人は、平成27年3月9日、同契約の履行に関し、アールテックが本試験を中止することについて決定した旨の、アールテックの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実を知りながら、法定の除外事由がないのに、上記事実の公表がされた同日午後3時30分頃より前の同日午後2時11分頃、B証券株式会社を介し、自己の計算において、アールテック株式合計800株を売付価額合計165万5700円で売り付けたものである。」



外資ファンドによるTOBで上場廃止となるまでの局面でおきた事件です.
医師の行為は紛れもないインサイダー取引で,その違法性は容易に認識できたはずです.


 谷直樹


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by medical-law | 2016-03-01 01:53 | コンプライアンス

エシックによる患者日誌改ざんに続き、イーピーミントも血圧測定時刻を改ざん

薬事日報によると、「担当CRCは血圧を測定し、その後採血すると治験実施計画書に規定された業務を、採血後に血圧を測定する逆の手順で行ってしまった。さらに、CRCは血圧測定を手順通り採血前に実施したことにするため、実際には測定していない事実と違う時刻をワークシートに記載し続けていた。こうした不正行為は、2013年12月に治験が開始された当初から行われており、CRCは最初から手順を間違え、それを隠すために血圧測定時刻を改ざんした模様だ。この治験は不正を行ったCRCが1人で担当していたことから、事件の発覚が遅れ、昨年12月にサブ担当の別のCRCがつき、被験者対応を行った時にようやく表面化した。」とのことです.

このように、エシックによる患者日誌改ざんに続き、イーピーミントも血圧測定時刻を改ざんしていたことが報道されました.
SMOの不正が相次いで発覚しています.
治験の信頼性を揺るがしかねない事態です.


谷直樹



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by medical-law | 2016-02-26 01:19 | コンプライアンス

金融庁、新日本有限責任監査法人及び公認会計士7名に業務停止・課徴金21億円の処分

金融庁は、2015年12月22日、新日本有限責任監査法人及び公認会計士7名に対し、次の懲戒処分等を行いました。


「1.監査法人

(1)処分の対象者

新日本有限責任監査法人(所在地:東京都千代田区)

(2)処分の内容

契約の新規の締結に関する業務の停止 3月

(平成28年1月1日から同年3月31日まで)

業務改善命令(業務管理体制の改善。詳細は下記4参照)

※併せて、同日、約21億円の課徴金納付命令に係る審判手続開始を決定

(3)処分理由

ア新日本有限責任監査法人(以下「当監査法人」という。)は、株式会社東芝(以下「東芝」という。)の平成22年3月期、平成24年3月期及び平成25年3月期における財務書類の監査において、下記7名の公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

イ当監査法人の運営が著しく不当と認められた。

2.公認会計士

(1)懲戒処分の対象者及び内容

公認会計士 ×××(登録番号:8951号 事務所所在地:東京都千代田区)

業務停止6月(平成27年12月24日から平成28年6月23日まで)

公認会計士 ××××(登録番号:12640号 事務所所在地:東京都千代田区)

業務停止3月(平成27年12月24日から平成28年3月23日まで)

公認会計士 ××××(登録番号:16769号 事務所所在地:東京都千代田区)

業務停止3月(平成27年12月24日から平成28年3月23日まで)

公認会計士 ×××(登録番号:15070号 事務所所在地:東京都千代田区)

業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

公認会計士 ××××(登録番号: 6371号 事務所所在地:東京都江東区)

業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

公認会計士 ×××(登録番号: 9524号 事務所所在地:東京都千代田区)

業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

公認会計士 ×××(登録番号:10933号 事務所所在地:東京都千代田区)

業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

(2)処分理由

××会計士、××会計士及び××会計士は、東芝の平成24年3月期及び平成25年3月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

××会計士は、東芝の平成22年3月期、平成24年3月期及び平成25年3月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

××会計士、××会計士及び××会計士は、東芝の平成22年3月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

3.事案の概要

(1)東芝の財務書類に対する虚偽証明

当監査法人においては、

監査チームのメンバー構成が、長期間にわたり東芝や東芝の子会社の監査を担当した者が中心となっていることなどにより、東芝のガバナンスへの過信が生じ、東芝側の説明や提出資料に対して、批判的な観点からの検証が十分に実施できなかった。

監査対象事業ごとに分業体制で監査を進めていたにもかかわらず、チーム内での情報共有や連携がうまく機能しなかった。

等の背景事情を原因として、下記アからウに記載した事実などが認められた。

アパソコン事業(平成22年3月期、平成24年3月期及び平成25年3月期)

東芝は、パソコンを外部に製造委託するにあたって、海外子会社を通じて仕入れた部品を外部製造委託会社に調達価格を上回る価格で販売し、その差額分を、海外子会社は東芝に対する未払金として計上し、東芝は海外子会社に対する未収入金として計上することによって、同額の製造原価を減額して計上していた。

東芝は、平成21年3月期第2四半期以降、四半期末ごとに正常な生産行為に必要な数量を超えた部品を外部製造委託会社に販売した結果、パソコン事業の製造損益は四半期末月に利益が拡大し、翌月には悪化する状況が繰り返され、時期を追うごとに製造損益の振れ幅は拡大し、平成24年3月期には、四半期末月の製造原価が非常に低い水準に、さらに、平成25年3月期には、四半期末月の製造原価がマイナスとなる異常値となった。

監査の担当者は、毎四半期末月の製造利益が他月に比べ大きくなっている状況や四半期末月の製造原価がマイナスとなる異常値を認識するとともに、その理由を東芝に確認し、「部品メーカーからの多額のキャッシュバック」があったためとの回答を受けていたが、監査調書に記載するのみで、それ以上にチーム内で情報共有をしていなかった。

監査チーム内において不正の兆候を把握した場合の報告義務を課すなどの適切な指示、指導及び監督を十分に行っていなかった結果、必要な監査手続が実施されず、自己の意見を形成するに足る基礎を持たずに監査意見を表明していた。

イ半導体事業(平成24年3月期及び平成25年3月期)

東芝の半導体事業社内カンパニーでは、標準原価(以下「TOV」という。)を用いた原価計算を採用していた。また、半導体事業の製造工程は、前工程と後工程とに分かれており、両工程で発生する原価差額(TOVと実際に発生した原価との差額)を合算した上で、期末に完成品原価や在庫に割り振る手法を採用していた。

(ア)監査チームは、平成24年3月期の期末において、半導体事業社内カンパニーが前後工程の費用分担について見直しを行い、前工程で発生した原価差額を減額し、後工程の原価差額を同額増額する旨の説明を東芝から受けていた。

前工程の原価差額を減額した場合は、後工程の原価差額について同額の増額が行われるべきところ、東芝はこれを行っていなかったが、監査チームは、前工程における原価差額の減額が行われていたことを監査手続において認識しながら、後工程における原価差額の増額が行われているかを、十分かつ適切な監査証拠を入手し裏付けをもって確認する必要があるにもかかわらず、後工程における原価差額の増額は当然に行われていると勝手に思い込み、その確認を怠った。

(イ)平成25年3月期中に東芝が当監査法人に対して説明や相談することなく実施した臨時のTOV改訂においては、前工程のTOVのみを増額改訂し、後工程のTOVの改訂を行っていなかった。これにより、後工程において架空の原価差額が発生し、その一部を在庫に割り振ることにより、完成品原価に割り振られる原価差額が減少した結果、完成品原価が減少し、過大な利益が計上された。

監査チームは、臨時的なTOV改訂が行われれば、当然に東芝から報告や相談があるものと思い込み、また、前後工程のTOVは整合しているという勝手な思い込みのもと、これらの確認を怠った。

ウ工事進行基準適用事案(平成25年3月期)

ETC設備更新工事事案について、監査法人は、工事進行基準売上や受注工事損失引当金を特別な検討を必要とするリスクとして識別したにもかかわらず、東芝の説明を鵜呑みにし、また、東芝から提出された発番票などの資料を確認するにとどまり、見積工事原価総額の内訳などについて、詳細な説明や資料の提出を受けておらず、経営者が使用した重要な仮定の合理性や見積りの不確実性の検討過程を評価していないなど、当然行うべき、特別な検討を必要とするリスクに対応した十分かつ適切な監査証拠の入手ができていなかった。

(2)当監査法人の運営

当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、平成27年12月15日、金融庁は、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から行政処分勧告を受け、調査の結果、下記アからエに記載した事実が認められた。

ア当監査法人の理事長、品質管理本部長及び事業部長など経営に関与する社員は、過去の審査会の検査、日本公認会計士協会の品質管理レビュー等で、リスク・アプローチに基づく監査計画の立案や分析的実証手続等の監査手続の不備を繰り返し指摘されてきたことを踏まえ、社員の品質管理に対する意識改革や期中レビューの強化、定期的な検証の実施担当者の選任方法の変更等、改善に向けた取組を強化してきたとしている。

しかしながら、下記イにみられるように品質管理本部及び各事業部等においては、原因分析を踏まえた改善策の周知徹底を図っていないことに加え、改善状況の適切性や実効性を検証する態勢を構築していない。そのため、社員及び監査補助者のうちには、監査で果たすべき責任や役割を十分に自覚せず、審査会検査等で指摘された事項を改善できていない者がいる。また、下記エにみられるように審査態勢も十分に機能していない。

経営に関与する社員はこうした状況を十分に認識しておらず、審査会検査等の指摘事項に対する改善策を組織全体に徹底できていない。

こうしたことから、下記ウに記載のとおり、これまでの審査会検査等で繰り返し指摘されたリスク・アプローチに基づく監査計画の立案、会計上の見積りの監査、分析的実証手続等について、今回の審査会検査でも同一又は同様の不備が認められており、当監査法人の改善に向けた取組は有効に機能していないなど、地区事務所も含めた組織全体としての十分な改善ができていない。

イ当監査法人では、品質管理本部及び各事業部等において、検査結果等に対する原因分析を踏まえた改善策の周知徹底及び浸透を十分に図っていない。

品質管理本部は、定期的な検証及び期中レビューにより、全ての監査の品質を一定水準以上に向上できているかを検証することとしている。しかしながら、これらの手段を組み合わせて用いても、早急に改善を要する監査業務や監査手続への適時な対応となっていないなど、実効性のあるモニタリングを実施する態勢を構築していない。また、定期的な検証において、監査手続の不備として指摘すべき事項を監査調書上の形式的な不備として指摘している。そのため、監査チームは指摘の趣旨を理解しておらず、審査会検査等で繰り返し指摘されている分析的実証手続等の不備について、改善対応ができていない。

さらに、品質管理本部は、問題のみられる一部の地区事務所への改善指導を実施しているものの、前回の審査会検査で検証した地区事務所が担当する監査業務において、今回の検査においても重要な監査手続の不備が認められている。

監査での品質改善業務を担っている各事業部等は、品質管理本部の方針を踏まえて監査チームに監査の品質を改善させるための取組を徹底させていない。また、一部の業務執行社員は、深度ある査閲を実施しておらず、監査調書の査閲を通じた監査補助者に対する監督及び指導を十分に行っていない。

このように、当監査法人においては、実効性ある改善を確保するための態勢を構築できていないことから、監査手続の不備の改善が図られない状況が継続しており、当監査法人の品質管理態勢は著しく不十分である。

ウ個別監査業務においては、業務執行社員がリスクの識別、リスク対応手続の策定等にあたり、職業的懐疑心を十分に保持・発揮しておらず、また、実施した監査手続から得られた監査証拠の十分性及び適切性について検討する姿勢が不足している。

このため、識別されたリスクに対応した監査手続が策定されていないなどリスク・アプローチに基づく監査計画の立案が不十分であり、重要な会計上の見積りの監査における被監査会社が用いた仮定及び判断について遡及的に検討をしていないほか、被監査会社の行った見積り方法の変更や事業計画の合理性について批判的に検討しておらず、分析的実証手続の不備が改善されていないなど、これまでの審査会検査等で繰り返し指摘されてきた監査手続の重要な不備が依然として認められる。加えて、重要な勘定において多額の異常値を把握しているにもかかわらず、監査の基準で求められている実証手続が未実施であり、また、経営者による内部統制の無効化に関係したリスク対応手続として実施した仕訳テストにおいて抽出した仕訳の妥当性が未検討であるなど、リスクの高い項目に係る監査手続に重要な不備が認められる。

エ監査業務に係る審査においては、審査担当社員が、監査チームから提出された審査資料に基づき審査を実施するのみで、監査チームが行った重要な判断を客観的に評価していない。また、監査チームが不正リスクを識別している工事進行基準に係る収益認識について、監査調書を確認せず、監査チームが経営者の偏向が存在する可能性を検討していないことを見落としているなど、今回の審査会検査で認められた監査実施上の問題点を発見・抑制できていない。

このように、当監査法人の審査態勢は、監査チームが行った監査上の重要な判断を客観的に評価できておらず十分に機能していない。

4.業務改善命令の内容

(1)今回、東芝に対する監査において虚偽証明が行われたことに加え、これまでの審査会の検査等での指摘事項に係る改善策が有効に機能してこなかったこと等を踏まえ、経営に関与する責任者たる社員を含め、責任を明確化すること。

(2)その上で、外部の第三者の意見も踏まえ、改めて抜本的な業務改善計画を策定すること。また、改善策を実施するにあたり、その実効性につき、経営レベルの適切な指導力の発揮の下、組織的に検証する態勢を構築するとともに、不十分な対策が認められた場合には、必要に応じて追加的な改善策を策定・実行すること。

(3)品質管理本部に加え、監査の品質改善業務を担っている各事業部の責任者等は、監査チームに対し、業務改善策が浸透・定着するよう、より主体性と責任を持って取り組むこと。

(4)審査体制の機能を強化することに加え、監査実施者が、監査チーム内で十分な情報共有・連携を確保するとともに、求められる職業的懐疑心を保持し、深度ある分析・検討を行う態勢を構築する観点から、監査法人内の人事管理や研修態勢を含め、組織の態勢を見直すこと。

(5)今回の事案の発生及び審査会から行政処分の勧告が行われるに至った背景として、監査法人の風土及びガバナンス体制等の面でいかなる問題があったのかを検証し、上記業務改善計画の中で改善に取り組むこと。

(6)上記(1)から(5)に関する業務の改善計画を、平成28年1月31日までに提出し、直ちに実行すること。

(7)上記(6)の実行後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、平成28年6月末日を第1回目とし、以後、6か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。


中央青山監査法人への処分が想い起こされます.
オリンパスに続いて東芝の不正会計への関与,そして処分ですから,顧客は新日本有限責任監査法人から離れるのではないでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2015-12-23 09:10 | コンプライアンス