弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:コンプライアンス( 102 )

田辺三菱製薬とコンプライアンス(続き)

b0206085_20511762.jpg◆ 前年同期比20%増

田辺三菱製薬(本社:大阪市)の2010年4~12月期決算は,連結純利益が前年同期比20%増の392億円だった,と報じられています.1月29日日本経済新聞「開発費減少で純利益20%増 田辺三菱、4~12月」)
「もうかりまっか」「ぼちぼちでんな」というやりとりがあったかは知りませんが,結構な数字です.田辺三菱製薬は,利益をあげることについては優良企業です.

◆ コンプライアンス

田辺三菱製薬は,コンプライアンスについて,ホームページに次のとおり掲載しています.

「企業の持続的発展の土台となるものは、企業倫理と遵法精神に基づく企業活動の健全性です。田辺三菱製薬グループでは、役員・従業員が実践すべきコンプライアンスの基準(コンプライアンス行動宣言)と推進のための制度を定め、コンプライアンス推進委員会を中心とした推進体制を構築しています。」

◆ コンプライアンス行動宣言

「生命関連企業に従事する者として、社会からの信頼に応えるため、役員・従業員一人ひとりが実践すべきコンプライアンスの基準である『コンプライアンス行動宣言』を策定し、冊子にして配付しています。」ということなのですが・・・

その「コンプライアンス行動宣言」の第1項を紹介します.

「私たちは生命関連企業に従事する者として、高い倫理観をもって行動します
1-1 製薬企業としての社会的責任を自覚し、コンプライアンスを推進します
1-2 患者さんをはじめ社会の人々の信頼に応えます
1-3 有効性・安全性に十分配慮した、高品質の製品を提供します
1-4 生命倫理・動物福祉に配慮して研究・開発を行います
1-5 試験・調査の倫理性とデータの信頼性を確保します
1-6 医薬品の適正な使用をめざし、有効性・安全性・品質等の情報を的確かつ迅速に提供します」


実際に,このように行動していればよかったのですが.
企業の持続的発展のためには,どうしてコンプライアンスに反する事態が続いてるのかを検証し,有効な対策を実施することが必要でしょう.

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谷直樹
by medical-law | 2011-01-30 18:24 | コンプライアンス

田辺三菱製薬とコンプライアンス

b0206085_14153636.jpg田辺三菱製薬の子会社バイファ社は,2005年10月~07年3月の製剤規格試験の過程で田辺三菱製薬から出向したグループマネジャーらが主導し組織的にデータ改ざんを行い,2010 年業務停止処分を受けました.その後,田辺三菱製薬は,行き過ぎた上意下達の社内風土が不正を招いたとし,グループ内の人事交流や内部通報制度の充実,薬事法を学ぶ研修などを実施し,再発防止をはかると発表していました.

ところが,今日1月26日の朝日新聞は,「田辺三菱、また不適切試験 子会社社員が一部の薬で怠る」と報じました.

社内調査では,記録でも裏付けられたとして品質試験は行われていた,とされましたが,社外の赤松幸夫弁護士らによる再調査の結果,品質試験が行われていなかったことが判明したそうです.
田辺三菱製薬のコンプライアンス欠如は深刻です.

「田辺三菱製薬(本社・大阪市)の子会社が品質試験をしていない医療機関向けの注射薬を出荷していた、と社外の弁護士らによる調査チームが指摘し、田辺三菱が厚生労働省にこの調査結果を報告していたことが分かった。2007~10年3月の約3年間に試験担当社員が一部の試験を行わず、出荷の基準に合格したように虚偽の試験結果を記録した行為があったとしている。田辺三菱は、これらの指摘を『受け入れざるをえない重大な状況と認識している』と答えている。

 田辺三菱と別の子会社は昨年4月、薬の承認申請で試験データを改ざんしたなどとして業務停止処分を受けた。

 今回の問題で、田辺三菱側の社内調査は『試験は行われていた』としていた。だが、その後の社外の調査チームの調べに対し、試験担当社員は、試験の一部を実施しなかったことを認め、その理由を『手間がかかる』などと話した。残りの大部分の試験項目については『試験をした』などと否定したという。厚労省は、薬事法違反にあたるかどうかを判断する見通しだ。田辺三菱によると、健康被害は報告されていないという。

 問題となった子会社は『田辺三菱製薬工場』(大阪市)。同社の足利工場(栃木県足利市)が製造や試験をしている医療機関向けの注射剤『リプル注』『パルクス注』『リメタゾン静注』『パズクロス点滴静注液』の4製品で、不適切試験の疑いが持たれている。

 田辺三菱と同工場は昨年9月、品質管理部で4製品の試験の大半を1人で担当する社員が試験をしていない疑いがあるとの報告を受け、社内調査を実施。『本人もやったと言っているし、記録でも裏付けられた』として『試験は行われていた』と結論づけた。だが、朝日新聞が同工場社員らにこの疑いに関する取材をした後の昨年12月末から、田辺三菱は改めて、社外の赤松幸夫弁護士らによる調査チームでの再調査を開始した。

 調査チームは、4製品にそれぞれ行う十数項目の試験のうち、担当社員が試験をしていない疑いが持たれた4項目の試験について調べた。

 一つの試験項目は、使うべき備品の数に比べ購入量が少なかったことなどから、『全体の77%は実施していない』と判断。記録では必要な試験は行われたことになっているため、虚偽の試験結果が記入されたとみている。もう一つの項目では、機器の使用記録が3年間で1回しかなかったことなどから『試験を実施したとは思えない』とした。

 調査チームは、その他の2項目についても、試験をしたとする社員の説明が『不合理で不自然』などとして、『実施しているとは思えない』との見解を示した。昨年の社内調査の結果も『肯定できない』と結論づけた。

 リプル、パルクスを開発したLTTバイオファーマ(東京都)によると、リプル、パルクスは閉塞(へいそく)性動脈硬化症などの手術や治療に使われる代表的な薬。二つの薬は1988年に販売が開始され、二つとも田辺三菱製薬が製造しているが、パルクスは大正製薬が販売している。田辺三菱製薬によると、リプルの年間の売上高は約80億円。後発医薬品の影響で単価も下がってきたが、『過去のピーク時には二つの薬で約500億円の市場規模。そのころよりは落ちているが、依然として注射薬の定番』(LTT社)という。

 田辺三菱は『問題なしとした社内調査は、調査のノウハウなどが不十分だった。隠蔽(いんぺい)する趣旨はなかった。今後は原因究明などの調査を続ける』としている。(矢崎慶一、上沢博之) 」

【1月27日追記】
鈴木利廣弁護士は,肝炎原告団・弁護団が田辺三菱に対しC型肝炎の問題について検証し社員の安全管理教育に役立てるよう訴えたが,受け入れられなかった,自らの不祥事を検証する姿勢がない,という趣旨のコメントをしたそうです.
産経ニュースに載っています.

谷直樹
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by medical-law | 2011-01-26 14:23 | コンプライアンス