弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:コンプライアンス( 101 )

熊本赤十字病院,労働基準監督署からの是正勧告に基づき約700人に未払い残業代支給

読売新聞「700人に残業代未払い 熊本赤十字病院に是正勧告」(2015年1月8日)は,次のとおり報じました.

 「熊本赤十字病院(熊本市東区長嶺南)が、職員に適正な残業代を支払っていなかったとして、熊本労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが、わかった。勧告は昨年4月21日付。同病院は全職員の半数にあたる約700人に残業代の未払い分を支給したが、未払い分の総額は明らかにしていない。

 同病院によると、昨年4月に労基署が労務状況を調査した際、事務職や看護職を中心とした職員について、支払われた残業代と実際に病院にいた時間に食い違いが発覚した。不払いがあったとして勧告を受けた期間は2012年4月~14年3月の2年間。同病院は未払い額を調べたうえで昨年12月、1人あたり数千~約100万円の未払い分を一括支給し、同労基署に是正報告書を提出した。

 同病院人事課は「職員から申請のあった残業代は支払っていたが、実際の残業時間と隔たりがあった。残業時間を把握し、適正な労務管理に努めたい」としている。」


職員の約半数にあたる700人について残業代の未払いがあったというのですから,残業把握・計算の方法自体に問題があったのではないでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2015-01-08 22:19 | コンプライアンス

厚生労働省の職員(専門官)が通報内容を告訴された教授に漏らし戒告(報道)

朝日新聞「医療死亡事故の告発、厚労省職員が漏らす 対象の医師に」(2014年12月19日)は、次のとおり報じました.

「厚生労働省の職員が昨年10月、金沢大の男性准教授(51)から同大付属病院の医療事故について内部告発を受けた後、告発対象の男性医師に対し、准教授の名前や通報内容を漏らしていたことがわかった。厚労省は国家公務員法(守秘義務)違反にあたるとして今年6月、職員を戒告、上司の課長を厳重注意とした。

 同病院では2010年3月、厚労省が当時認めていた先進医療「カフェイン併用化学療法」を受けていた骨肉腫の少女(16)が急性心不全で死亡。遺族は12年7月、治療法を主導する教授である医師ら3人を業務上過失致死容疑で石川県警に告訴した。

 厚労省によると、告訴を知った准教授は昨年10月1日、同省の担当専門官(医師)に一連の経過を電話で知らせ、「厚労省はどう対応するのか」と尋ねた。専門官は翌日、告訴された医師にメールを送り、准教授の名前や通報内容を記したうえで「どのような先生なのでしょうか?」などと問い合わせた。医師は「大学内部で問題提起をしている人」と返信したという。」


金沢大学の整形外科の教授は,臨床試験期間中に臨床試験外に「治療」と称しカフェイン併用療法を実施し,臨床試験期間終了後にも「治療」と称しカフェイン併用療法を実施していました.
2010年に骨肉腫で入院していた当時16歳の少女が急性心不全で死亡し、抗がん剤の副作用による医療ミスの疑いがあるとして金沢大学の整形外科の教授らが告訴されました.
厚生労働省の担当専門官(医師)は、この告訴された教授に准教授の名前や通報内容を漏らしたのですから、当然、国家公務員法違反になります.
同法第100条1項は、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」と定めています.
第109条 で100条1項違反の罪について「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」とされています.
単に戒告で終わる問題ではないでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-31 01:10 | コンプライアンス

最終報告書、教授の恣意的診断が臨床試験『Jikei Heart Study』の結果を歪めた可能性を指摘

毎日新聞「バルサルタン試験:責任者の教授、恣意的診断か」(2014年12月12日)は、次のとおり報じました.

「降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、東京慈恵会医大の調査委員会(橋本和弘委員長)が12日、最終報告書を発表した。試験には複数の医師が参加、試験責任者で当時教授だった××××氏(73)が担当した患者のデータが、目立ってバルサルタンの宣伝に有利な結果になっていたことが分かった。医師の恣意(しい)的な診断が試験結果をゆがめた可能性がある。


 ◇慈恵医大が最終報告書

 最終報告を受け、大学は××氏の客員教授の肩書を取り消し、試験に関与した教員を厳重注意した。また、○○○理事長は給与の2割を、□□□□学長は1割をそれぞれ3カ月間自主返上する。

 昨年7月の中間報告では、試験に参加した販売元のノバルティスファーマ社員が血圧値のデータを操作していた可能性があると指摘していた。今回の最終報告は、この点も改めて指摘した。

 調査委は、中間報告の後に入手した患者データを新たに検証。××氏が脳卒中などの心血管疾患と診断した症例数が、バルサルタンを服用する患者グループでは9件だけだったのに対し、服用していないグループでは90件と10倍多かったことが分かった。研究チームは、バルサルタンの脳卒中などの予防効果は他の降圧剤よりも大きいと結論付けていたが、××氏の診断分を除くと、両グループの差はなくなった。

 ××氏は調査委に対し「偏っていると言われても、思い当たることは何もない」と話しているという。慈恵医大の試験結果をまとめた論文は、既に撤回されている。【河内敏康、八田浩輔】

 ◇広告引用、宣伝効果大きく

 バルサルタンの臨床試験を実施した5大学のうち、最初に試験を始めた東京慈恵会医大の論文は、2007年に海外の有名医学誌「ランセット」に掲載された。他の降圧剤にはみられない特別な効果があると認めた論文は、販売元ノバルティスファーマの広告に再三引用され、大きな宣伝効果をもたらした。

 一連の疑惑では東京地検特捜部が、京都府立医大の11年と12年の論文で脳卒中などの発症数を改ざんしたとして、統計解析を担当したノ社元社員の△△△△被告(63)と法人としてのノ社を薬事法違反(虚偽広告)で起訴し、捜査を終結している。慈恵医大の論文については虚偽広告の公訴時効(3年)が経過していた。」


教授の診断分を除くと差がない、というのですから、教授が恣意的に診断した疑いが強いと考えられ、そうであればきわめて悪質です.

なお、毎日新聞「バルサルタン疑惑:英誌が千葉大論文を撤回 著者同意なく」(2014年12月9日)は、次のとおり報じました.

「降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、英医学誌が千葉大の論文を撤回していたことが分かった。データ改ざんの可能性を指摘した大学の調査結果を受けた措置。著者らは撤回に同意していないが、医学誌側が強制的に撤回した形だ。

 撤回されたのは2012年に英医学誌「ジャーナル・オブ・ヒューマン・ハイパーテンション」に掲載された論文で、今年10月9日付だった。同誌は「利益相反の管理とデータの信頼性に問題がある」と説明している。

 千葉大の調査委員会は、論文で使われたデータがバルサルタンに有利になるよう改ざんされた可能性を指摘。さらに試験責任者の●●●●教授(現東京大教授)ら著者を「虚偽説明で調査を混乱させた」と批判していた。千葉大は8月までに2度、著者らに論文の撤回を勧告している。

 一方、●●氏の代理人は取材に「撤回に同意していない」と話し、11年に別の医学誌に発表した主論文も撤回しない意向を示した。

 一連の論文には薬の販売元であるノバルティスファーマの社員が関わっていたが、論文上は社名が伏せられ、所属は「大阪市立大」となっていた。●●氏らは疑惑発覚後、この点を修正して再投稿していた。【八田浩輔】」


千葉大学のVART研究も、アムロジピンに比べバルサルタンが心臓と腎臓に対する保護効果が大きいという結論は、データ改ざんによって導かれたものであることが明らかになっています.


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by medical-law | 2014-12-13 01:59 | コンプライアンス

臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書(案)

昨日の「第9回臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」で臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書(案)がとりまめられましたが,規制としてはきわめて不十分な内容です.

ミクス「厚労省・臨床研究在り方検 最終報告書を了承 “広告目的”“適応外”の臨床研究法規制へ」(2014年11月27日)は,次のとおり報じました.

「ノバルティスファーマの降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン)をめぐる臨床研究不正を受け、厚労省の「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」(座長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)は11月26日、未承認・適応外の医薬品・医療機器を用いた研究や広告目的の臨床研究についてICH-GCPの遵守を求めた最終報告書を了承した。来年の通常国会にも法案を提出し、法制化する。また、一連の臨床研究不正では、誤ったデータが広告を通じて医療界に広まり、治療方針の決定に影響を与えたことから、医療従事者による“広告監視モニター制度”の構築など、新たな広告審査の枠組みづくりを進めることも求めた。

◎臨床研究の信頼回復へ ICH-GCP遵守で国際水準の臨床研究実施を

最終報告書では、一連の臨床研究不正が起きたことによる日本の臨床研究の信頼回復の重要性を強調し、「我が国においても、5年後・10年後の将来を見越した上で、国際水準の臨床研究が実施できるような制度づくりが必要」とした。その上で、現状の臨床指針に基づく指導では不十分と指摘。研究者等による自助努力の重要性も指摘した上で、議論を重ねた結果、法制化が必要との結論に至ったとした。

臨床研究の実施に際しては、臨床研究の質の確保、被験者保護の観点から、ICH-GCPの遵守を求めた。モニタリング・監査が有用とした上で、これまで製薬企業が治験実施時に実施した手法では、費用面の負担増を懸念。「実施する研究のリスク等に応じ、適切な方法、頻度を検討すべき」とした。法規制の対象は、被験者に対するリスクと研究結果が治療方針に与える影響をみた社会的リスクを勘案し、▽未承認または、適応外の医薬品・医療機器を用いた臨床研究、▽医薬品・医療機器等の広告に用いられることが想定される臨床研究––とした。

被験者保護の観点からは、臨床審査委員会の重要性を強調。問題事案が発生した際の“歯止め”となるためにも、「研究デザインや統計解析などの科学的妥当性についても十分審査できる能力を有することが必要」とし、委員構成や審査内容などの要件設定を求めた。研究開始段階だけでなく、研究の途中段階での関与も促した。ただし、こうしたスキルのある人材に限りがあることから、「将来的には、地域や専門領域等に応じた倫理審査委員会の集約化を図っていくことが必要」であることも明記した。そのほか、有害事象発生時の速やかな対応や、臨床研究に関する情報公開も求めた。

製薬企業に対しては、資金提供などのさらなる利益相反(COI)の透明性確保を求めた。労務提供についても、「業界による行動指針等の策定が必要」と指摘。イノベーションの推進には産学連携が不可欠であることから、COIの適切な管理、公表により、国民の理解を深めることが必要であることも明記した。

一方、不適正事案へのペナルティーについては、研究者が属す研究機関や学会に対し、「厳しい姿勢で臨むよう、自主的な取り組みが求められる」とした上で、「行政当局は関係者に対して必要な調査を行うとともに、必要な措置を講じさせる等の権限を確保すべき」とした。ただし、直ちに法律に基づく罰則を課すのではなく、行政指導や改善命令等による是正を促した上で、なお改善が図られない場合に適用することを原則とした。

◎広告審査新たな枠組み導入へ 医療従事者による監視モニター制度も

一連の臨床研究不正で広告が薬事法66条の虚偽・誇大広告の禁止に抵触したことについても報告書では触れ、広告の審査に際しては、製薬企業、業界団体が透明性を確保した審査組織で審査を行うことを求めた。また、広告違反の端緒を幅広く把握するため、医療従事者による広告監視モニター制度を含めた新たな枠組みの導入の検討も示唆された。行政機関は、監視・指導体制の強化を図る。

報告書では、「一旦失った信頼を回復することは容易ではなく、制度を整備しても研究の現場が変わらなければ、その意味は乏しい」と指摘。日本の臨床研究が信頼を取り戻すために、「製薬企業等の産業界や行政等を含めた臨床研究にかかわる全てのものがそれぞれの果たす役割に真摯に取り組む必要がある」と強調した。」


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by medical-law | 2014-11-27 06:32 | コンプライアンス

負傷した羽生結弦選手の出場について

羽生結弦選手は、頭部、顎に負傷しながら、競技に出場しました.
これは、非常に危険な行為で、主催者あるいは日本連盟が止めるべきでした.
頭部に外傷を負うと、脳出血を起こしたり、解離性の脳梗塞を起こすことがあります.再び頭部を打つとセカンドインパクトシンドロームで死亡することもあります.
羽生結弦選手は、危険な状態で、実際5回も転倒しました.

頭部外傷の危険は、よく知られています.頭部に外傷を負った選手の出場を許すことは主催者としての注意義務に反する可能性があります。そもそも、多くの選手に同時に練習を行わせることも安全性を確保していなかったと評価されるのではないでしょうか.
ラグビーでは、脳震盪を起こした選手は、3週間出場できません.
ボクシングでは、レフリーストップがあります.
これを機会に、すべてのスポーツで、スポーツ選手の安全を守るために頭部外傷や脳震盪を起こした選手は3週間競技に出場できないという規則を作成することを検討してほしいと思います.

一般社団法人日本脳神経外科学会と一般社団法人日本脳神経外傷学会の「スポーツによる脳損傷を予防するための提言」 (平成25年12月16日)は、以下のとおりです.

「日本脳神経外科学会ならびに日本脳神経外傷学会は、「スポーツによる脳損傷」を予防するための研究を行い、それにもとづいて可能な限り最善の診療を行うよう努力してきた。
しかし、医師は、患者ならびに関係者の行動を規制することができない。したがって、的確な診療を行うには、国民の理解が不可欠である。この提言は、「スポーツによる脳損傷」について、国民が認識しておくべき必須の事項を整理したものである。
1-a. スポーツによる脳振盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある。
1-b. スポーツによる脳振盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある。
2-a. スポーツによる脳振盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある。
2-b. そのため、スポーツによる脳振盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止する。競技・練習への復帰は、脳振盪の症状が完全に消失してから徐々に行なう。
3. 脳損傷や硬膜下血腫を生じたときには、原則として、競技・練習に復帰するべきではない。」

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by medical-law | 2014-11-11 01:28 | コンプライアンス

ブリストル・マイヤーズ株式会社,長島・大野・常松 法律事務所による「調査報告書」を公表

ブリストル・マイヤーズ株式会社(BMKK)の従業員が医師主導臨床研究であるSIGN研究のデザインをほぼ作成するという不適切な役務提供を行っていたこと等に関連し,ブリストル・マイヤーズ株式会社は,2014年10月27日,独立した外部の専門家から構成される第三者機関としての長島・大野・常松 法律事務所による「調査報告書」を公表しました.

結論として「本調査において、寄付および医師主導臨床研究の実施に関し、弊社による過去の不適切な役務提供等の可能性が指摘されました。一方、薬事法違反となる副作用症例の報告義務違反、データの改ざんや有効性・安全性の不当表示、及び患者様の個人情報保護法違反は認められませんでした。」(「医師主導臨床研究に関する第三者機関調査結果について」)とのことです.

「調査報告書」は,「BMKKにおいては、以下のとおり、臨床研究に対する労務提供に関するルールの整備が不十分であり、臨床研究に対する寄附に関するルールは存在したものの、その運用は必ずしも適切とはいえないものであった。」(57頁)と,社内ルールの整備不足等を指摘しています.

その背景について,「かつて販売推進目的から営業部門が過大な労務提供と寄附により臨床研究に深く関わっていた時代に培われた、医師と協働して作業して研究成果を上げることをGood Behaviorと捉える伝統的な社内文化が現場に残存していたようであり、MRを含む営業部門の現場において、臨床研究に対して労務提供を行うことの問題意識が希薄な状況が改められることはなかった。」(58頁)と指摘しています.

また,医師・医療機関の側にも今回の問題を誘発する一定の土壌があったと指摘しています.

まず、医師側には、臨床研究の実施によって薬剤に関する有用な情報を得ることができ、また、それを発表することで自己の医師としての実績になるため、臨床研究を実施したいというニーズが存在した。臨床研究にどのような利益があると見い出すかは医師によって異なるものの、何らかのメリットを感じて臨床研究を実施したい、あるいは参加したいという医師は相当程度存在したものと考えられる。

しかし、臨床研究を実施するには、検査費用等、多額の費用を要するにもかかわらず、国から医師・医療機関への研究資金の援助は十分でなく、また、臨床研究の実施には様々な書面作成等の作業が必要であるにもかかわらず、医師本人が多忙である上に、医療機関における人的資源も不足しており、純粋に医師・医療機関だけでこれを行うことは資金的にも労力的にも非常に困難であるという事情があった。

以上のような状況において、医師側には、製薬会社と協力して臨床研究を行うことにより、資金的・労力的に製薬会社の協力が得られ、寄附金の形で資金の提供がなされるため検査費用等の負担が不要となり、必要な書面作成等についても製薬会社の従業員が相当部分を分担してくれるという実態があった。他方、製薬会社側には、将来的な売上増大に繋がる臨床研究の結果を得ることに加え、臨床研究の実施それ自体により、自社製品が処方される患者を少しでも獲得し、売上を伸ばしたいというニーズがあり、双方のニーズが合致した。したがって、医師・医療機関としては、製薬会社が寄附及び労務提供をパッケージにして支援する臨床研究を広く利用する実態があった。

個々の医師の主観的な意識としても、臨床研究を介して医師側が製薬会社の資金と労務提供に大きく依存するような慣行が広く、かつ長年に亘って続いていたこともあって、製薬会社に寄附をさせたり、労務提供をさせたりすることについての問題意識が希薄になっていた側面が否定できないと考えられる。
」(61~62頁)

つまり,製薬会社に寄附・労務提供をさせることについて何とも思わず,成果物を自己の実績としようとする医師がいたわけです.
魚心あれば水心ということだったのでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-29 02:22 | コンプライアンス

医師からパワハラで,准看護師2人に続いて事務職員も提訴(報道)

スポニチ「医師からパワハラと提訴 女性事務員「脳みそが小さい」背中を蹴られ骨折」(2014年10月20日)は,次のとおり報じました.

 「勤務していた鳥取市の医院で、男性医師から日常的に暴力などのパワハラを受けたとして、30代の女性事務職員が20日までに、医師に慰謝料など計約850万円の損害賠償を求め、鳥取地裁に提訴した。

 この医師に対しては、女性准看護師2人も同様の訴訟を起こしている。3人はいずれも医院を辞めた。

 訴状によると、事務職員は2007年から勤務。医師から「脳みそが小さい」「幼稚園児並み」などと暴言を浴びせられたほか、11年5月には、背中を後から蹴られ胸の骨を折る重傷を負い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。

 医師の弁護士は「医師と話していないので、コメントできない」としている。」


 これが事実とすれば,刑法の傷害罪にもあたるでしょう.

 
谷直樹

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by medical-law | 2014-10-21 23:59 | コンプライアンス

武田薬品工業「CASE-J試験に関する一連の事象を踏まえた再発防止への取り組みおよび社内処分について」

武田薬品工業株式会社は、2014年10月3日、「CASE-J試験に関する一連の事象を踏まえた再発防止への取り組みおよび社内処分について」を発表しました.

「当社は、当社の高血圧症治療剤「ブロプレス®錠」(一般名:カンデサルタン シレキセチル)に関する医師主導臨床研究(CASE-J試験)について、これまでに、本研究成果を用いた当社による不適切なプロモーション活動が確認されたこと、また、第三者機関ジョーンズ・デイ法律事務所による調査の結果、試験データの捏造・改ざんやこれに当社従業員が関与したとの事実はいずれも認められなかった一方で、医師主導臨床研究の独立性・中立性に疑義を生じさせかねないという意味で不適切な当社による複数の関与や働きかけが確認されたことを公表し、また、記者会見を通じてご説明いたしました。

本件を受け、当社では、一連の事象の再発防止に向けた取り組みの検討を行い、既にいくつかの再発防止策を講じており、今後も遺漏なく対応してまいります。また、外部の弁護士もメンバーに入ったコンプライアンス委員会にて、問題となった事象に関し、その発生・継続当時の役職や、関与の度合い等を勘案し、対象者およびその社内処分を慎重に審議し、決定いたしました。

当社における再発防止に向けた取り組み(既に実施済みのものも含む)、および、今般決定いたしました社内処分につきまして、下記のとおりご報告いたします。


I. 再発防止への取り組み
1.コンプライアンス推進体制の強化
1) プロモーション資材に関する審査・管理体制の厳格化
本年4月より、医薬営業本部内にコンプライアンス推進を担う部署を設置し、医薬営業本部内におけるコンプライアンス徹底を促すとともに、プロモーション資材についてのチェック機能も果たしています。また、プロモーション資材の社内審査機関に、法務的観点、医師の視点で審査を行えるメンバーを新たに加え、審査体制を強化しました。これまで審査対象に入っていなかった二次利用(過去に審査・承認されたものの再利用)についても審査対象とし、使用不可となった古い資材を確実に廃棄するプロセスを構築しました。
2) 製薬協コード・オブ・プラクティス(COP)の推進
2013年6月に、社内にて「製薬協COPの推進に関する規則」を制定し、法務部主導のもと、継続教育によりCOP内容の理解促進と遵守徹底をはかっています。

上記について、今後さらなる効果的な運用・チェック体制の検討ならびに教育の継続実施により、徹底をはかってまいります。

2.副作用報告に関する取り組み強化
医師主導臨床研究および委託研究における安全性情報の収集・報告方法を整備し、臨床研究実施中に発生した有害事象をもれなく把握できる仕組みを構築しました。当社製品に関する安全性情報は、発生した事象すべてが安全管理部門に速やかに報告されるよう、規則をより明確にし、社内に周知徹底しています。

3.医師主導臨床研究等に対する支援の透明性の確保
1) 医師主導臨床研究に関する営業部門不関与の徹底
これまで必要に応じて実施してきた、医師主導臨床研究に関するMR不関与の指導に加え、本年6月に発効した「医薬営業本部の行動要領」に基づき、営業部門が医師主導臨床研究に一切関与しないことを継続的に指導・徹底しています。
2) 医師主導臨床研究に関する手順書の策定・遵守
医師主導臨床研究の科学的な意義を検証し、利益相反に関する問題の有無を厳重にチェックしたうえで、日本開発センター内に設置したメディカルアフェアーズ部が契約により支援を実施する方式に移行しています。契約書には、実施者および当社の役割と責務を明記し、さらに利益相反問題の適切な管理について明文化することで、透明性を高めています。

上記について、今後も契約に基づく支援方式を継続し、医師主導臨床研究に関するガイドライン策定を通じて適正な研究支援を推進してまいります。

4.寄付金拠出に関する対応の厳格化
本年5月より、寄付金を評価・審査する委員会の組織体制および運営に関する規則を強化し、より厳格に利益相反や法的リスクの排除につとめています。

II. 社内処分
1.関係役員について
関係役員に対し、その責任範囲等に応じ、月額報酬の5%から20%の減額を、3ヶ月間行う。

2.関係従業員について
関係従業員については、戒告処分とする。

当社は、今回の取り組みを通じ、経営幹部を含む従業員一人ひとりが、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」という私たちのミッションを改めて強く認識すると同時に、当社のコア・バリューであるタケダイズム:誠実=公正・正直・不屈を日常業務を通じて徹底・浸透させ、今回の件で失った皆様からの信頼の回復につとめるだけでなく、更に高い信頼の獲得・維持に向けて、全社一丸となって努力してまいります。」


これで幕引きでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2014-10-07 01:07 | コンプライアンス

金沢大学病院の外部調査委員会が,倫理指針に反し先進医療の臨床試験を実施した問題について中間報告

北陸朝日放送「倫理指針違反で金大附属病院が中間報告」 (2014年9月8日)は,つぎのとおり報じました.

「金沢大学附属病院が行ったがん治療の臨床試験で、国が認めた倫理指針に違反していた問題で、病院側がこれまでの中間報告を発表しました。
この問題は金大附属病院が、がん治療の先進医療として、6年前から行っていた「カフェイン併用化学療法」について、厚生労働省が定めた試験期間を過ぎても、研究を実施していたものです。
病院側は、外部の有識者による調査委員会を設置し、8日、これまでの中間報告を発表しました。
調査委員会の報告では、臨床試験の正式な手続きをせずに、治療された患者が114人いることが分かりました。
調査委員会は「担当の整形外科の医師が、臨床試験以外でも治療を名目にカフェイン治療が実施できると誤解した、認識の甘さが根本的な問題だ」と指摘しました。
またこの化学療法では、2010年に骨肉腫で入院していた当時16歳の少女が急性心不全で死亡。抗がん剤の副作用による医療ミスの疑いがあるとして、整形外科の男性教授ら3人が5月に業務上過失致死の疑いで、書類送検されています。
少女の死亡との因果関係について、調査委員会では「この治療で患者に何が起きたか、再度検討していくべきだ」としたうえで、「明確な結果が出るまでは、この治療法を再開すべきでない」との見解を示し、臨床研究の担当部門の整備など、再発防止策を提言しました。」


整形外科の教授が,臨床試験期間中に臨床試験外に治療と称しカフェイン療法を実施し,臨床試験期間終了後にも治療と称しカフェイン療法を実施した事案です.
倫理指針を意図的に無視逸脱したのではなく,治療としてならできると誤解していたという報告ですが,有効性と安全性が確立していない「実験的療法」が治療として実施できないことくらいは,普通分かるはずです.医師に被験者の権利を尊重する姿勢があれば,倫理指針を正しく理解できたはずです.

【追記】

朝日新聞「業務上過失致死容疑の金沢大病院医師ら3人を不起訴処分」(2015年10月11日)は,次のとおり報じました.

「2010年に金沢大付属病院の先進医療を受けていた骨肉腫の少女(当時16)が死亡したのは医療ミスの疑いがあるとして、業務上過失致死の疑いで書類送検されていた当時の50代男性医師ら3人について、金沢地検は不起訴処分にした。7日付。「起訴するに足りるだけの証拠が集められなかった」としている。

 少女は「カフェイン併用化学療法」を受けていたが、急性心不全で死亡。遺族が12年、石川県警に告訴した。

 この化学療法をめぐっては、病院の倫理審査委員会の承認を受けるといった正式な手続きをせずに治療された患者が08~13年に106人いたとの報告書を、病院の調査委員会が昨年12月にまとめた。金沢大は今年3月、厚生労働省の倫理指針に違反していたとして、治療していた教員ら4人を文書訓告や学長による口頭注意の処分とした。」


 刑事手続きは,ハードルが高いようです.


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by medical-law | 2014-09-09 01:12 | コンプライアンス

ノバルティスファーマ,因果関係が否定できない重い副作用両例約2500症例を報告せず,薬事法違反

日本経済新聞「ノバルティス、2500例を放置 重い副作用の報告義務」(2014年8月29日)は,次のとおり報じました.

スイス製薬大手の日本法人ノバルティスファーマは,「白血病治療薬による重い副作用を16症例21件把握しながら国に報告しなかったなどとして、7月に厚労省から改善命令を受けた。この際、販売するすべての薬で同様の報告漏れがなかったかどうか報告するよう指示され、約1万例を調査していた。

 その結果、同社が販売する薬との因果関係が否定できない重い副作用症例は少なくとも2579例あった。白血病治療薬など抗がん剤が多く、患者の副作用は腎障害などで、死亡した事例もあったという。

 これとは別に自社薬との因果関係を調査中の副作用症例は6118例あるといい、薬事法違反の未報告事案はさらに増える可能性がある。厚労省は9月末までに全ての調査結果を報告するよう指示した。

 厚労省によると、製薬会社から報告のある副作用症例は全体で年間およそ4万例。ノバルティスは2013年に複数の症例で約8千件を報告したという。

 ノバルティスを巡っては、高血圧症治療薬ディオバンを巡る臨床データ操作事件で、法人としての同社と元社員が薬事法違反(誇大広告)罪で起訴されており、厚労省はこの件でも行政処分を検討している。

 大量の副作用症例疑いの未報告について、同社は「深く反省し、再発防止に努める」とのコメントを発表した。」

 
製薬会社には,死亡やこれまで知られていない副作用は15日以内,そのほかの重い副作用は30日以内に国に報告するよう義務付けられています.薬事法違反の疑いがあります.
そういえば,今週,ノバルティスファーマの医師への不当な便宜供与が「報じられました.

毎日新聞「ノバルティス:学会で医師71人の旅費510万円肩代わり」(2014年8月27日)は,次のとおり報じました.

「製薬会社ノバルティスファーマ(東京)が4月に開催された日本内科学会に出席した医師71人の旅費計約510万円を不当に肩代わりしたとして、業界団体「医療用医薬品製造販売業公正取引協議会」が27日、指導した。製薬会社が学会参加者の旅費を肩代わりすることは、医師への不当な便宜供与に当たるとして規約で禁止されている。

 協議会が、学会の旅費肩代わりで指導したのは初めて。

 ノ社と協議会によると、ノ社は4月13日に東京で自社製品に関する全国講演会を開催。これに出席することを条件に、同じころ東京で開催された日本内科学会総会にも参加した医師71人の宿泊費と交通費を負担した。

 ノ社のダーク・コッシャ社長は「深くおわびする。二度と起こすことがないよう、再発防止を徹底したい」とのコメントを発表した。ノ社は、降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験を巡る虚偽広告事件で、元社員とともに薬事法違反(虚偽広告)で起訴されている。【河内敏康】」


何れも,法令遵守の姿勢を欠くのは,同社の企業体質なのでしょうか.

【追記】

ノバルティスは,2014年10月1日「副作用症例の社内調査に関する報告について」で「7月31日に、国から改善命令を受けた副作用報告遅延について、薬事法の副作用要件に従い、社内で集められた情報の範囲で重篤かつ因果関係が否定できないとしてPMDAに報告したものは、3,878症例でした。」と発表しました.

谷直樹

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by medical-law | 2014-08-30 13:26 | コンプライアンス