弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:人権( 62 )

東京高裁,裁判官らの健康診断などのデータを持ち出した事務官を懲戒免職

読売新聞「裁判官らの健診データ持ち出し…事務官を懲戒免」(2017年11月21日)は,「裁判官ら男女約3100人分の健康診断などのデータを無断で持ち出したとして、東京高裁は21日、40代の男性事務官を懲戒免職処分にした。」と報じました.
「発表によると、事務官は7~8月頃、同高裁や東京地裁などの職員が受けた昨年の健康診断結果約3100人分と、がん検診の結果約370人分のデータをUSBメモリーにコピーし、自宅のパソコンで閲覧した。」とのことです.

事務官によって,裁判官らのプライバシーが侵害された事案です.このプライバシーが侵害自体重大なことですが,裁判所が保管するデータ(情報)が事務官によって容易に持ち出されてしまうようでは,国民に不安をあたることになります.

労働安全衛生法第104条は「面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない」とし,第109条は,第104条に違反した者について六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金を定めていますが,上記報道の事実だけでは,第三者への秘密漏示の事実が認められず,労働安全衛生法第109条,第104条が適用されません.

USBメモリーが事務官の所有物だったとすると,データ(情報)の持ち出しだけでは,窃盗罪にあたりません.

データ(情報)の管理と持ち出し行為に関する法整備が必要と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-23 07:20 | 人権

国連人権理事会、218項目の対日勧告発表

共同通信「国連人権理、218項目の対日勧告発表」(2017年11月16日)は,「国連人権理事会の対日人権審査作業部会は、日本に対し218項目からなる勧告を発表した。」と報じました.

朝日新聞「日本の人権状況、各国から218の勧告 国連人権理事会」(2017年11月17日)は,次のとおり報じました.

「今回で3回目となる定期審査では、日本政府が前回からの成果として挙げた2015年12月の日韓慰安婦合意について、韓国政府から否定的な意見が出た。報告書では、「いわゆる慰安婦の問題を含む歴史の真実を将来の世代が学ぶことを確実にする努力をせよ」(韓国)、「慰安婦問題について心から謝罪し、被害者に補償せよ」(中国)、「性奴隷を含む過去の人道に対する罪の法的な国家責任を受け入れ、誠実に対処せよ」(北朝鮮)という三つの関連する勧告の記載があった。

 報告書で目立ったのが人種差別や性差別、外国人差別、性的少数者差別などをなくす取り組みに関する勧告だった。国連人権理で積極的に発言を続けているNGO「反差別国際運動」は、オランダなど多くの国が「反差別法」の制定を勧告した点を評価し、「定期審査の勧告に基づいて人種差別と戦うように求める」との声明を出した。

 報道関係では、当局側が行政指導の根拠として持ち出す可能性がある「政治的公平性」を求める放送法第4条について、米国の「廃止」を求める勧告が含まれた。

 死刑の廃止や一時停止、死刑囚の待遇改善を求める勧告も多く盛り込まれた。

 勧告内容は16日の会合で正式に採択されており、日本政府は来年3月までにこれら勧告の受け入れの可否について態度表明しなければならない。(ジュネーブ=松尾一郎)」


勧告に法的拘束力はありませんが,指摘された日本の人権状況については改善が必要でしょう.
谷直樹

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by medical-law | 2017-11-16 22:28 | 人権

東京地裁,ハンセン病の非入所者遺族と国が和解

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朝日新聞「ハンセン病の非入所者遺族が国と和解」(2017年2月20日)は,次の通とおり報じました.

「ハンセン病患者の隔離政策をめぐり、療養所に入らなかった「非入所者」の元患者3人の遺族4人が国に損害賠償を求めた訴訟で、4人全員の和解が成立したと代理人弁護士が20日、明らかにした。

 和解したのは、愛知、福島、沖縄の各県に住む非入所者の息子や母親ら4人。遺族側代理人によると、国が隔離政策による人権侵害について謝罪し、遺族1人あたり350万~500万円を支払う内容。非入所者の遺族と国が和解したのは初めてという。

 元患者で非入所者の賠償をめぐっては、2002年に国と基本合意が成立。だが、非入所者の遺族については言及されてこなかった。今回の和解で、遺族も基本合意の水準に沿って、元患者の賠償金を相続できることが認められた。」


これは,私が担当した事件ではありません.
非入所者も人権を侵害されてきましたので,基本合意の水準で東京地裁で和解が成立したことの意義は大きいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-02-20 23:06 | 人権

最高裁が任官10年目の裁判官対象に人権研修

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毎日新聞「ハンセン病 最高裁が人権研修 裁判官100人に」(2017年2月17日)は,次のとおり報じました.

「ハンセン病患者の裁判が隔離施設の「特別法廷」で開かれていた問題で、最高裁が設置した有識者委員会の座長を務めた井上英夫金沢大名誉教授が17日、埼玉県和光市の司法研修所で任官10年目の裁判官約100人に講演した。

 最高裁は昨年4月、特別法廷の運用を「偏見や差別を助長し、違法だった」と謝罪。有識者委から人権研修の必要性を指摘され、初めて裁判官の研修プログラムに内容を組み込んだ。」


ハンセン病の感染力・発病力は極めて弱いにもかかわらず,国は90年もの間強制隔離政策をとり続け,人権を守るべき裁判所が差別する側に回り人権を侵害したことは忘れてはいけないことです.
任官して10年たつと「判事補」から「判事」になります.その節目の研修に人権研修が取り入れられました.画期的なことです.


谷直樹

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by medical-law | 2017-02-17 21:38 | 人権

神奈川県弁護士会人権賞はハンセン病元患者石山春平氏と難民外国人支援の医師山村淳平氏へ

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「第21回神奈川県弁護士会人権賞」の贈呈式は、2017年1月21日(土)に行われます.

神奈川県弁護士会によれば、ハンセン病元患者の石山春平氏の受賞理由は以下のとおりです

「1936年に出生し、小学校6年生の時にハンセン病と診断され、1952年に療養所に強制入院させられた。1968年に社会復帰後、ハンセン病の回復者としてハンセン病の差別・偏見に対して実名で社会に訴える講演活動等を行い、川崎市で地域の障がい者活動のリーダーとしても活躍してきた。」

港町診療所の医師山村淳平氏の受賞理由は、以下のとおりです.

「医師として健康保険に加入していない外国人患者の診察に携わる中、在日外国人の人権侵害を認識し、強制送還された外国人を訪ねて証言を聞き取るなどして、入国管理局での長期収容、暴行、強制送還の実態などを明らかにした。その他、在日ビルマ人支援や、在留資格のない外国人の取締強化による人権侵害の調査などを行い、在日外国人を通した日本社会のあり方に問題を投げかけている。」

大変すばらしい選出です.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-19 02:17 | 人権

後期研修を拒まれた医師が医療法人徳洲会と研修担当の医師2人を提訴(報道)

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朝日新聞「出産への配慮なく研修継続できず」女性が徳洲会を提訴」(2017年1月18日)は、次のとおり報じました.

 「出産への配慮がなく、研修医を続けられなかったとして、医師免許を持つ大阪府内の女性(31)が医療法人徳洲会と研修担当の医師2人に計3777万円の賠償を求め、大阪地裁に提訴した。18日に第1回口頭弁論があり、法人側は請求棄却を求めた。

 訴状によると、女性は関西にある徳洲会系列の病院で2014年4月から2年間の予定で初期研修に入った。その後、15年5月の第2子出産の前後に約3カ月休業し、2カ月遅れの16年5月末に研修を終えた。

 その後、専門医の資格取得のため、後期研修を希望したが、徳洲会側から特段の説明なく受け入れを拒まれたという。・・・」


前期研修医は、後期も同じ病院に勤務するとは限りません.
研修医の希望と医療機関の希望とのマッチング(医師臨床研修マッチング)で採用が決まります.都市部の人気病院は研修医の希望が多く、そうでない病院は希望が少ない、という傾向になります.
ただ、医師不足解消のためには、ワークライフバランスの実現が重要です.
報道の件は、判決となれば後期研修医採用についての裁判所の判断を示す先例となるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-19 00:54 | 人権

チッソ水俣病患者連盟の高倉史朗事務局長インタビュー

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西日本新聞「健康調査で実態把握を 患者連盟の高倉史朗事務局長に聞く 水俣病公式確認60年」(2016年12月18日)にチッソ水俣病患者連盟の高倉史朗事務局長の写真とインタビューが載っていました.

行政の不作為を未認定患者に負わせているのが公式確認60年の状況。徒労感を覚える。」
「60年といえば、本来終わっていなければいけない時期。皮肉にも、終わらない水俣病を再認識する記念日になった。」
「不知火海沿岸住民の健康調査が行われない限り、水俣病は解決しない」
「データを取れば、感覚障害のみの水俣病がどのくらいあるのか分かる。」



国がチッソ(加害企業)を消滅し被害者を表舞台に登場させないことで幕引きとしようとしても,被害者がいる限り闘いは終わりません.裁判は個々の原告の権利侵害に対する賠償を判断するものに過ぎず,裁判で出来ることの限界を感じます.

谷直樹

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by medical-law | 2016-12-18 19:05 | 人権

赤ちゃんの急死を考える会,「『保育死亡事故』防止のための緊急提言」

しんぶん赤旗「うつぶせ寝」禁止 徹底を 保育事故防止 遺族ら提言」(2016年9月13日)は,次のとおり報じました.
 
「保育施設で子どもを亡くした遺族らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」は12日、相次ぐ死亡事故を防止するための緊急提言を国へ提出しました。重大事故の原因となる「うつぶせ寝」の禁止を徹底し、子どもが睡眠中の部屋を保育者不在にしないよう求めました。

 同会によると、2015年9月からの1年間で8件の死亡事故が保育施設で起きており全員が0~1歳児です。うち6人は睡眠中に心肺停止で発見され、搬送先の病院で死亡が確認されています。

 同日都内で会見した同会の小山義夫副会長は、うつぶせ寝で、子どもが寝ている部屋に保育者がいないなど「共通した状況で事故は起きている」と指摘。要望した「2点を守るだけで死亡事故は減らせると確信している」と話しました。

 寺町東子弁護士は、国が定める保育士の配置基準を満たしている施設でも多くの死亡事故が起きているとして、基準の見直しを強調。保育所への抜き打ちの立ち入り調査の義務化も必要だと訴えました。

 保育事故をめぐっては今年3月、国は事故防止のガイドラインを発表。しかし「周知されていない」「人員不足で徹底できない」といった声が、保育現場などからあがっています。」


 赤ちゃんの急死を考える会の「『保育死亡事故』防止のための緊急提言」は,次の内容です。

「9月3日付けの新聞等報道で、新たに2件(千葉県君津市の認可外施設、東京都板橋区の認可保育園)の保育死亡事故が生じていたことがわかりました。詳しい状況や原因は明らかにされていませんが、それぞれ0、1歳児が睡眠中に心肺停止状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認されています。

当会が把握しているだけでも、2015年9月からの1年間に同様の事故が6件起こっています(資料1)。睡眠中の乳幼児心肺停止事例には共通した状況があり、中でも特徴的なものとして【子どもがうつぶせ寝の状態であった】【子どもが寝ている部屋に保育者が(一定時間)不在であった】ことがあげられます。

今年3月に通知された「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」には、『1事故の発生防止(予防)のための取組み(1)安全な教育・保育環境を確保するための配慮点等』として、【仰向けに寝かせること】【何よりも、一人にしないこと】【寝かせ方に配慮を行うこと】【安全な睡眠環境を整えること】が明記されています。それにもかかわらず、未だに保育の現場ではうつぶせ寝が行われており、長時間に渡って保育者の観察がないなどの状況下で、死亡事故が起こり続けています。

「保育現場が大変」「保育士が足りない」等の状況があることは承知しておりますが、“あずかっている子どもの命と安全を守ること”は保育の最低条件です。これ以上の重大事故を防ぐためにも、認可・認可外問わず全ての保育施設や事業に国の責任で以下の2点を緊急に周知徹底していただくことを望みます。


・0~1歳児は絶対にうつぶせに寝かせないこと(寝返りした場 合も仰向けにする) │
・子どもが睡眠中の部屋を保育者不在にしないこと


「弁護士寺町東子が行く」に,このときの意見交換について書かれています.

保育施設での死亡事故(保育死亡事故)の7割は午睡中の死亡なので,0-1歳児の午睡中の①うつぶせ寝と、②保育士不在を無くせば,保育死亡事故の7割は無くせるとのことです.
具体的な手段として,次の4点が書かれています.

手段1  保育施設への午睡中の抜き打ち立入調査(さいたま市方式)
手段2 立入調査時の保育士の欠員/不在・午睡中の状況に関する指摘事項の公表
手段3 1歳児の保育士(保育者)配置基準を3:1に上乗せする
手段4 以下の2点を周知するポスターを午睡室内に張り出すよう各施設に配布
  ・0~1歳児は絶対にうつぶせに寝かせないこと(寝返りした場合も仰向けにする)
  ・子どもが睡眠中の部屋を保育者不在にしないこと


このような提言が確実に実行されることを期待いたします.



谷直樹


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by medical-law | 2016-09-29 10:40 | 人権

ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書

最高裁事務総局は、2016年4月25日、ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書を公表しました.
「第六総括」の部分は、以下のとおりです.

第六 総括

第1 まとめ

1 裁判所法69条2項において,最高裁判所が下級裁判所に裁判所以外の場所で法廷を開かせる「必要」がある場合とは,風水害,火災等のため,本来法廷を開くべき裁判所庁舎において法廷を開くことが事実上できなくなった場合や,裁判所庁舎の使用は可能であるが,被告人が長期間の療養を要する伝染性疾患の患者であって,裁判所庁舎に出頭を求めて審理することが不可能ないしは極めて不相当な場合など真にやむを得ない場合に限られると解すべきである。
そして,疾病を理由とする上申がされた場合に,裁判所外における開廷の必要性が認められる真にやむを得ない場合に該当するか否かを検討するに当たっては,①当事者が,当時の医療水準に照らして,当該疾患により,裁判所への出頭に耐えられない病状である,あるいは,他者への伝染可能性が相当程度認められ,かつ,裁判所への道中や裁判所構内において必要な伝染予防の措置をとることが不可能ないし極めて困難であるなど,当該当事者に裁判所庁舎への出頭を求めて審理することが不可能ないし極めて不相当と認められる事情の有無,②審理の状況に照らし,合理的期間内において,その病状が改善し,又は伝染可能性が低下する見込みの有無 ,③仮にその見込みがある場合には,病状の改善や伝染可能性の低下を待つことなく,当該当事者に出頭を求めて審理を行うべき真の必要性の有無,④陳述の擬制(民事訴訟法158条),書面による準備手続(民事訴訟法175条),所在尋問(民事訴訟法185条,刑事訴訟法158条)等,ほかに採り得る手段の有無等を慎重に考慮すべきである。

2 ハンセン病を理由とする開廷場所の指定の上申は,昭和23年から昭和47年までの間に96件であった。うち95件が認可,1件が撤回され,不指定とした事例はない(認可率99パーセント)。開廷場所としては,菊池恵楓園等のハンセン病療養所,菊池医療刑務支所等の刑事収容施設などが指定されていた。
最高裁判所としては,遅くとも昭和35年以降においては,下級裁判所からハンセン病を理由とする開廷場所指定の上申があった場合,科学的な知見や上記1に掲げた諸事情の有無を考慮するなどした上,裁判所外における開廷の必要性が認められる真にやむを得ない場合に該当するか否かを慎重に検討し,該当しないときには,裁判所外での開廷の必要性がないものとして,開廷場所の指定上申を認可してはならなかった。
しかしながら,最高裁判所裁判官会議から専決権限を付与された事務総局は,昭和23年から昭和47年までの間,裁判所外における開廷の必要性を認定して上申を認可するに際して,基本的に当事者が現にハンセン病に罹患していることが確認できれば,科学的な知見や上記1に掲げた諸事情を具体的に検討することなく,裁判所外における開廷の必要性を認定して,開廷場所の指定を行うとの運用を行っていた。
このような事務総局による裁判所外における開廷の必要性の認定の運用は,遅くとも昭和35年以降については,合理性を欠く差別的な取扱いであったことが強く疑われ,認可が許されるのは真にやむを得ない場合に限られると解される裁判所法69条2項に違反するものであった。

3 開廷場所としては,訴訟手続が秩序正しく行われることが可能なだけの物的設備を備え,かつ,公開の要請をも満たすことのできる場所を選ぶべきであり,このような判断事項の重大性を踏まえて,開廷場所の選定については最高裁判所の権限に委ねたものと解される。したがって,開廷場所が上記要件を満たしているか否かについては,下級裁判所にその判断を委ねることは許されず,最高裁判所自身が判断すべきものと解すべきであり,その選定に当たっては,法廷が開かれる部屋の広さ,具体的形状,物的設備の状況等が,開廷場所としてふさわしいかどうか判断できるに足りる資料を事前に収集した上で,まずは,伝染予防の観点で他に実際に使用可能な施設の有無やその設備の内容を検討し,その上で,法廷が開かれる場所の具体的形状,当事者等の出頭・押送等の負担等様々な個別的事情を勘案しつつ,その適否を判断すべきである。
今回の調査の結果,事務総局が開廷場所としてふさわしいかどうかにつき判断できるに足りる資料を収集していなかったと認定することはできなかった。
他方で,事務総局作成の開廷場所指定文書には,「菊池恵楓園」などと開廷場所の施設名が記載されていたにとどまり,当該施設の中のどの建物ないしどの部屋を開廷場所として選定するのかを具体的に特定するに足りる記載がなかった
ところ,このような指定の仕方は,開廷場所の特定の在り方として相当ではなかったと考えられる。
また,今回の調査の結果,刑事収容施設内で開廷された事例及びハンセン病療養所内で開廷された事例のいずれの場合であっても,下級裁判所が,最高裁判所の指示に従い,裁判所の掲示場及び開廷場所の正門等において告示を行っていたこと,下級裁判所は,指定された開廷場所において傍聴を許していたことが推認でき,このような開廷場所の指定に当たっての運用は,憲法の定める公開の要請を念頭に置いて行われたものと認められるし,裁判所法69条2項が想定する公開の要請を満たさないと解される具体的形状を有する場所が開廷場所として選定された事例があったとまで認定するには至らなかった。

4 昭和23年2月13日の最高裁判所裁判官会議において,ハンセン病患者を被告人とする下級裁判所の刑事事件につき,裁判所以外の場所において法廷を開かせることについては,事務総局に処理させる旨の議決がなされた。
この議決は,いわゆる行政法上の専決権限の付与であると解され,それ自体は法に適合しないものではないが,遅くとも昭和35年以降においては,当事者がハンセン病に罹患していることが確認できれば,原則として開廷場所の指定の上申を認可するという,専決の前提となった運用が相当性を欠く状況になっていたというべきであり,事務総局が,遅くとも同年以降,専決の前提となった状況が変化し運用の考え方が相当性を欠く状況になっていたことを裁判官会議に諮ることなく,その後も専決権限を行使し続けたことは相当ではなかったと考えられる。(なお,この点に関し,有識者委員会から,最高裁判所裁判官会議としての責任も免れないとの意見が出されたことは,上記第五の第4の4で述べたとおりである。)

5 以上のとおり,本調査によれば,最高裁判所によるハンセン病を理由とする開廷場所の指定は,指定する場合の開廷場所の特定方法及び開廷場所指定の内部手続において相当でない点があり,また,裁判所外での開廷の必要性の認定判断の運用は,遅くとも昭和35年以降,裁判所法69条2項に違反するものであった。
このような誤った指定の運用が,ハンセン病患者に対する偏見,差別を助長することにつながるものになったこと,さらには,当事者であるハンセン病患者の人格と尊厳を傷つけるものであったことを深く反省し,お詫び申し上げる。

第2 今後の開廷場所指定の運用等について

1 裁判所法69条2項に定める開廷場所の指定は,被告人の公開裁判を受ける権利に影響する可能性のあるもので,裁判所外における開廷の必要性が認められる真にやむを得ない場合に限って認可することが許される極めて例外的な措置であることを常に認識して事務に当たる必要がある。
疾病を理由とする上申がされる場合にあっては,上記に加え,事務総局としては,まずは,開廷場所の指定によらない方法を講じ得ないかを検討するとともに,他者への伝染可能性の有無及び程度並びに将来における病状の改善や伝染可能性の低下の見込みの有無及び時期を具体的に聴取し,偏見や差別を廃し最新の科学的な知見の有無など可能な限りの情報を収集し具体的に検討した上,裁判所外における開廷の必要性が認められる真にやむを得ない場合に該当するか否かを精査した上で,裁判官会議に諮るものとすべきである。

2 裁判所において取り扱う司法行政事務は,開廷場所の指定に限らず,裁判の当事者をはじめとする司法制度を利用する国民の権利利益や社会生活に深い影響を及ぼし得るものである。裁判所で司法行政事務に携わる職員は,上記のような過ちと深い反省を忘れることなく今後の教訓とし,人権に対する鋭敏な意識を持って,先例にとらわれない法令順守が堅持された事務処理を行い,このようなことを二度と起こさないよう努めるべきものと考える。

3 有識者委員会からは,別紙のとおり,「将来へ向けての提言」として,最高裁判所は,人権の砦として,裁判官はじめ司法行政に携わる職員の人権意識の向上を常に図り,ハンセン病患者に対してなされた開廷場所指定のような事態を二度と引き起こさないようにすべきであること,感染症を理由とする開廷場所指定に当たっては,患者の人権を第一に配慮し,個別の事案について,開廷場所指定が真に必要かどうかを慎重に判断すべきであること,裁判官をはじめとする裁判所職員等に対し,ハンセン病政策の歴史を踏まえた人権研修が直ちに実施されるべきであることが提言されている(別紙9,10頁)。このような有識者委員会からの提言をも踏まえ,誤った運用が二度と行われないよう,具体的な方策を着実に実行していく必要があると考える。」


違法とし謝罪はしましたが、違憲とはしませんでした.
実質的に公開されていたとはいえないのではないでしょうか..
裁判所がこのような特別扱いを行うことで差別を助長していたのではないでしょうか.
違憲としなかた点には疑問があります.


谷直樹


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by medical-law | 2016-05-02 01:01 | 人権

東京消防庁,「死者のプライバシー」理由に救急記録の交付拒否(報道)

毎日新聞「<東京消防庁>救急記録の交付拒否 不搬送で認知症遺族に」(2016年4月4日)は,次のとおり報じました.

「東京都中野区の路上で倒れているのが見つかりながら救護されず死亡した認知症の男性(当時83歳)の遺族が、男性を救急搬送しなかった東京消防庁に救急記録の写しの提供を求めたところ、「死者のプライバシー」を理由に拒否されていることが分かった。記録の閲覧については4月1日に始めた新制度に基づき認められる見通しだが、全国の20政令市のうち19市の消防部局は写しも提供しており、専門家は「遺族の権利を無視している」と、東京消防庁の対応を厳しく批判している。【銭場裕司】

 ◇「死者のプライバシー」理由に

 男性は2014年8月19日、横浜市のデイサービス施設から行方不明になり、同21日にJR中野駅近くの路上で倒れているのが見つかったものの、駆けつけた中野消防署の救急隊は搬送せず、同23日に近くの公園で死亡した。東京消防庁は「搬送の必要性はあったが本人が拒否した」として、本人署名の同意書を取り、搬送しなかったことが判明している。

 男性の遺族は救急記録の閲覧や写しの提供を求めたが、東京消防庁は「死者のプライバシーの保護」などを理由に拒否し、不搬送の根拠とした同意書すら見せなかった。

 このため男性の長女(52)は個人情報保護条例に基づき開示請求したが、同庁は「あなた(長女)を本人とする情報ではない」として15年7月に却下。却下取り消し請求も東京都が同10月に棄却した。

 一方、死者の個人情報の提供について議論していた都情報公開・個人情報保護審議会は14年10月、請求対象者を「配偶者、子、父母」などとし、情報提供の方法を「口頭による説明、閲覧または写しの交付」とするモデル要領をまとめた。この要領と男性の案件などを受け、東京消防庁は今年3月に「死者に関する個人情報の提供基準」を作成し、4月から運用を始めた。同基準はモデル要領と同様に配偶者と子、父母らを請求対象者としたが、「写しの交付」は認めなかった。

 毎日新聞が全国20政令市の消防部局に死者の救急記録の写しを遺族に提供できるかを尋ねたところ、相模原のみ「ほとんどできない」とし、他の19市は「できる」または「おおむねできる」と回答した。過去約3年の写しの提供は名古屋26件、京都17件などで、相模原と「未把握」の横浜を除く18市で実績があった。

 東京消防庁の担当者は「他の自治体がいかように扱おうとも死者のプライバシーは守るものだという認識がある。提供した紙が第三者に渡れば死者のプライバシーを傷つけることが想定される」と説明。男性の長女は「父が最後に書いた署名を見たかった。ようやく閲覧できるようにはなったが、なぜ写しを提供できないのか」と憤っている。

 ◇処置適否判断に写し提供不可欠

 救急記録の項目は多岐にわたる上、対象者の容体や処置内容を専門用語で書いたものもあり、遺族による閲覧だけでは処置の適否などを判断できない可能性もある。遺族への救急記録開示を巡り、2012年に都に改善を求めた医療問題弁護団副幹事長の五十嵐裕美弁護士は「遺族は身近な人の最期の状況を知る権利があり、医師のカルテは国の指針に基づき提供されている」と指摘。「他の自治体は対応しているのに、都が死者のプライバシーを理由に提供しないのはおかしい。閲覧だけでは書き写しても原本と同じものとは確認できず、裁判などにも使えない」と批判している。」


死者のプライバシーを盾に遺族の知る権利を侵害している東京消防庁の取り扱いについては,司法による是正を検討してもよいのではないでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2016-04-04 09:32 | 人権