弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:人権( 63 )

弁護士の肖像,奧野善彦先生

アトニーズマガジン2015年3月号の弁護士の肖像に,奧野総合法律事務所・外国法共同事業所長弁護士の奧野善彦先生(東京弁護士会・司法修習18期)が載っていました.
乳児のときの御写真と現在の御写真がそっくりで,雰囲気も似ています.
三つ子の魂百まで,栴檀は双葉より芳し,と言いますが,本当なんですね.

奧野善彦先生は,弁護士奧野彦六先生(元東京弁護士会会長)のご子息で,事業再生に強みを持つ法律事務所の所長で,株式会社整理回収機機構の代表取締役社長にも就いた先生なので,順風満帆の歩みと思っていましたが,口述試験で落ちて就職するなどご苦労をしていたことが分かりました.
その経験が,「人や社会を救う。弁護士は、その志を常に持っていなければならない。そして、どんな困難にも立ち向かわなければならない」という言葉につながるのでしょう.
学法石川の卒業生で,福島との絆を大事にしていることも分かり,福島県内からの依頼も多いことが納得できました.

奧野善彦先生は,中央大学正法会の大先輩でもあります.ちなみに,自民党副総裁の高村正彦先生(司法修習20期)も正法会の大先輩です.

一層のご活躍をお祈り申し上げます.

 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-10 02:06 | 人権

最高裁が大法廷回付、民法750条と733条について憲法判断へ

民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定めています.平成八年二月二十六日法制審議会総会決定の「民法の一部を改正する法律案要綱」は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。」となっていますが、未だに改正は実現していません.東京高裁は民法第750条について違憲ではないと判決し、上告されました.

民法第733条は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と定めています.平成八年二月二十六日法制審議会総会決定の「民法の一部を改正する法律案要綱」は「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができないものとする。」となっていますが、未だに改正は実現していません.広島高裁岡山支部は民法第733条について過剰な制約とは言えず違憲ではないと判決し、上告されました.


最高裁第3小法廷は、平成27年2月18日、それぞれの訴訟について大法廷に回付し、大法廷で審理することにした、と報道されています.
最高裁大法廷で、上記条文の違憲性について判断するようです.

毎日新聞「最高裁大法廷回付:家族の規定に泣いた原告「実情見て」(2015年2月18日)は、次のとおり代理人弁護士のコメントを報じました. 

「夫婦別姓には「家族の一体感が損なわれる」との反対意見が根強いが、国連からも是正を促され続けている。榊原富士子・弁護団長は「一歩進み、うれしい気持ちでいっぱい。『憲法違反』と最高裁に書いてもらいたいのが切なる気持ちだ」と話した。」
「一方、再婚禁止期間の見直しを求めた訴訟を起こした岡山県総社市の女性は、大法廷回付の知らせを聞くと「自分のようにつらい思いをする人がいなくなってほしいと訴訟を起こした。夢に一歩近づいたかな」と喜んだという。暴力を振るう前夫と裁判を経て離婚したが、再婚まで7カ月かかった。代理人の作花(さっか)知志弁護士は「明治期の遺産を、家族観が変わった今にふさわしい憲法判断で改めてほしい」と期待を寄せた。」


NHK「夫婦別姓 最高裁大法廷が憲法判断へ」(2015年2月18日)は、次のとおり代理人弁護士のコメントを報じました.

「弁護団の榊原富士子団長は「結論がどうなるかは分からないが、最高裁の積極的な姿勢を感じる。夫婦別姓のニーズは高まっているので、憲法判断が変わる機は熟していると思う」と話していました。」

別姓訴訟を支える会のサイト」ご参照
弁護士作花知志のブログ」ご参照

法の下の平等(憲法14条)は、とても重要な権利です.
現行民法750条は国際的にも非常に特殊な立法です.
現行民法733条の「六箇月」に根拠はありません.100日で十分です.
時代遅れの民法の規定に憲法違反の判断が下されることを期待します.

  谷直樹

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by medical-law | 2015-02-19 01:40 | 人権

IDEAジャパン,シンポジウム「ともに生きる 尊厳の確立を求めて」

IDEAジャパンは,明日2015年2月7日土曜日13時から16時,シンポジウム「ともに生きる 尊厳の確立を求めて」を国立ハンセン病資料館映像ホール(東村山市青葉町)で開催するとのことです.

谷直樹

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by medical-law | 2015-02-06 04:44 | 人権

最高裁調査、「特別法廷」問題でハンセン病元患者証言

NHK「ハンセン病元患者 特別法廷を証言」(2014年12月24日)は、次のとおり報じました.

「かつてハンセン病の患者の裁判が隔離された療養所などの「特別法廷」で行われていた問題で、熊本県の療養所の元患者などが、最高裁判所の聞き取り調査に対して差別的な扱いのもとで審理が行われた当時の様子を証言しました。

かつてハンセン病の患者に対する裁判が隔離された療養所などに設けられた「特別法廷」で行われたことについて、最高裁判所は「差別的な扱いだった可能性がある」として、23日から九州や沖縄に担当者を派遣して元患者などへの聞き取り調査を行っています。
2日目の24日は、午前中、熊本県合志市の療養所、「菊池恵楓園」で、昭和30年代に行われた特別法廷に立ち会った福岡市の元弁護士、稲澤智多夫さん(95)が「裁判の前に消毒を受けさせられ、法廷では裁判官や検察官が感染を恐れて、審理を早く終わらせようとしていた」と当時の様子を証言しました。
午後からは「菊池恵楓園」で、元患者の杉野芳武さん(83)への聞き取りが行われました。
杉野さんは、特別法廷の裁判は期日の告知もなく、周囲に幕が張られて傍聴できないようにしていたなどと説明したということです。
聞き取り調査は25日まで続けられ、最高裁は、来年の夏ごろには検証結果をまとめて公表したいとしています。

元患者「大きな汚点」
最高裁判所の担当者に「菊池恵楓園」で行われた特別法廷の様子を説明した元患者の杉野芳武さんは、「法の番人である裁判所がハンセン病の患者が置かれている状況にそっぽを向いてきたのは大きな汚点だ。裁判官も患者に対して誤った認識を持っていたのか検証してほしいと伝えた」と話していました。

えん罪と主張する裁判も
24日聞き取り調査が行われた熊本県の療養所、「菊池恵楓園」では、元患者などで作る団体が、えん罪の疑いがあると主張している殺人事件の裁判も行われました。
昭和26年から27年に、現在の熊本県菊池市で起きたいわゆる「菊池事件」です。
ハンセン病患者が殺人などの罪に問われたこの事件の裁判は「菊池恵楓園」などに設置された「特別法廷」で行われ、被告の家族を除いては傍聴できませんでした。
被告は無実を訴えましたが、死刑判決を受け、昭和37年に死刑が執行されました。
元患者の団体は、この特別法廷では裁判所の職員が提出された調書などを箸で挟んで示したり、裁判官が早く審理を終えるよう求めたりして、公正な審理が行われなかったと主張して裁判のやり直しを求める活動を続けています。」

ハンセン病元患者は、高齢化していますので、今回の聞き取り調査は事実上最後の機会です.
司法・裁判の問題が真摯に検証されることを期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-25 01:15 | 人権

最高裁平成26年10月23日判決,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法の解釈

平成24年(受)第2231号 地位確認等請求事件,最高裁(一小)平成26年10月23日判決は,次のとおり,女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させた事業主の措置をめぐり,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律9条3項の解釈について違法があるとして,原審(広島高裁)判決を破棄し,差し戻しました.

主 文

原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人下中奈美,同鈴木泰輔の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件は,被上告人に雇用され副主任の職位にあった理学療法士である上告人が,労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ,育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから,被上告人に対し,上記の副主任を免じた措置は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」という。)9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して,管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人は,医療介護事業等を行う消費生活協同組合であり,A病院(以下「本件病院」という。)など複数の医療施設を運営している。
上告人は,平成6年3月21日,被上告人との間で,理学療法士として理学療法の業務に従事することを内容とする期間の定めのない労働契約を締結し,本件病院の理学療法科(その後,リハビリテーション科に名称が変更された。以下,名称変更の前後を通じて「リハビリ科」という。)に配属された。

(2) 上告人は,その後,診療所等での勤務を経て,平成15年12月1日,再びリハビリ科に配属された。その当時,リハビリ科に所属していた理学療法士は,同科の科長を除き,患者の自宅を訪問してリハビリテーション業務を行うチーム(以下,「訪問リハビリチーム」といい,その業務を「訪問リハビリ業務」という。)又は本件病院内においてリハビリテーション業務を行うチーム(以下,「病院リハビリチーム」といい,その業務を「病院リハビリ業務」という。)のいずれかに所属するものとされており,上告人は訪問リハビリチームに所属することとなった。

(3) 上告人は,平成16年4月16日,訪問リハビリチームから病院リハビリチームに異動するとともに,リハビリ科の副主任に任ぜられ,病院リハビリ業務につき取りまとめを行うものとされた。
その頃に第1子を妊娠した上告人は,平成18年2月12日,産前産後の休業と育児休業を終えて職場復帰するとともに,病院リハビリチームから訪問リハビリチームに異動し,副主任として訪問リハビリ業務につき取りまとめを行うものとされた。

(4) 被上告人は,平成19年7月1日,リハビリ科の業務のうち訪問リハビリ業務を被上告人の運営する訪問介護施設であるB(以下「B」という。)に移管した。この移管により,上告人は,リハビリ科の副主任からBの副主任となった。

(5) 上告人は,平成20年2月,第2子を妊娠し,労働基準法65条3項に基づいて軽易な業務への転換を請求し,転換後の業務として,訪問リハビリ業務よりも身体的負担が小さいとされていた病院リハビリ業務を希望した。これを受けて,被上告人は,上記の請求に係る軽易な業務への転換として,同年3月1日,上告人をBからリハビリ科に異動させた。その当時,同科においては,上告人よりも理学療法士としての職歴の3年長い職員が,主任として病院リハビリ業務につき取りまとめを行っていた。

(6) 被上告人は,平成20年3月中旬頃,本件病院の事務長を通じて,上告人に対し,手続上の過誤により上記(5)の異動の際に副主任を免ずる旨の辞令を発することを失念していたと説明し,その後,リハビリ科の科長を通じて,上告人に再度その旨を説明して,副主任を免ずることについてその時点では渋々ながらも上告人の了解を得た。
その頃,上告人は,被上告人の介護事務部長に対し,平成20年4月1日付けで副主任を免ぜられると,上告人自身のミスのため降格されたように他の職員から受け取られるので,リハビリ科への異動の日である同年3月1日に遡って副主任を免じてほしい旨の希望を述べた。
上記のような経過を経て,被上告人は,平成20年4月2日,上告人に対し,同年3月1日付けでリハビリ科に異動させるとともに副主任を免ずる旨の辞令を発した(以下,上告人につき副主任を免じたこの措置を「本件措置」という。)。

(7) 上告人は,平成20年9月1日から同年12月7日まで産前産後の休業を
し,同月8日から同21年10月11日まで育児休業をした。被上告人は,リハビリ科の科長を通じて,育児休業中の上告人から職場復帰に関する希望を聴取した上,平成21年10月12日,育児休業を終えて職場復帰した上告人をリハビリ科からBに異動させた。その当時,Bにおいては,上告人よりも理学療法士としての職歴の6年短い職員が本件措置後間もなく副主任に任ぜられて訪問リハビリ業務につき取りまとめを行っていたことから,上告人は,再び副主任に任ぜられることなく,これ以後,上記の職員の下で勤務することとなった。上記の希望聴取の際,育児休業を終えて職場復帰した後も副主任に任ぜられないことを被上告人から知らされた上告人は,これを不服として強く抗議し,その後本件訴訟を提起するに至った。

(8) 被上告人は,被上告人が運営する病院,診療所等の各部及び各科に配置する管理者の任務,権限,責任及びその任免について,「管理職務規定」を定めており,同規定が対象とする管理者の範囲は,部長,科長,課長,師長,医長,主任又は副主任の職位にある者とされている。また,被上告人の職員の給与については,その職種,経験,学歴,勤続年数等に応じて決定される基本給のほか,扶養手当,管理職手当等の諸手当があり,管理職手当の金額は,その職位ごとに定められており,副主任の場合は月額9500円とされていた。

3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,上告人の請求をいずれも棄却すべきものとした。
本件措置は,上告人の同意を得た上で,被上告人の人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行われたものであり,上告人の妊娠に伴う軽易な業務への転換請求のみをもって,その裁量権の範囲を逸脱して均等法9条3項の禁止する取扱いがされたものではないから,同項に違反する無効なものであるということはできない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,以下のとおりである。

(1)ア 均等法は,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに,女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することをその目的とし(1条),女性労働者の母性の尊重と職業生活の充実の確保を基本的理念として(2条),女性労働者につき,妊娠,出産,産前休業の請求,産前産後の休業その他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない旨を定めている(9条3項)。そして,同項の規定を受けて,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則2条の2第6号は,上記の「妊娠又は出産に関する事由」として,労働基準法65条3項の規定により他の軽易な業務に転換したこと(以下「軽易業務への転換」という。)等を規定している。
上記のような均等法の規定の文言や趣旨等に鑑みると,同法9条3項の規定は,上記の目的及び基本的理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり,女性労働者につき,妊娠,出産,産前休業の請求,産前産後の休業又は軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは,同項に違反するものとして違法であり,無効であるというべきである。

イ 一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ,上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば,女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが,当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。
そして,上記の承諾に係る合理的な理由に関しては,上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって,上記措置の前後における職務内容の実質,業務上の負担の内容や程度,労働条件の内容等を勘案し,当該労働者が上記措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たか否かという観点から,その存否を判断すべきものと解される。また,上記特段の事情に関しては,上記の業務上の必要性の有無及びその内容や程度の評価に当たって,当該労働者の転換後の業務の性質や内容,転換後の職場の組織や業務態勢及び人員配置の状況,当該労働者の知識や経験等を勘案するとともに,上記の有利又は不利な影響の内容や程度の評価に当たって,上記措置に係る経緯や当該労働者の意向等をも勘案して,その存否を判断すべきものと解される。
均等法10条に基づいて定められた告示である「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号)第4の3(2)が,同法9条3項の禁止する取扱いに当たり得るものの例示として降格させることなどを定めているのも,上記のような趣旨によるものということができる。

(2)ア これを本件についてみるに,上告人は,妊娠中の軽易業務への転換としてのBからリハビリ科への異動を契機として,本件措置により管理職である副主任から非管理職の職員に降格されたものであるところ,上記異動により患者の自宅への訪問を要しなくなったものの,上記異動の前後におけるリハビリ業務自体の負担の異同は明らかではない上,リハビリ科の主任又は副主任の管理職としての職務内容の実質が判然としないこと等からすれば,副主任を免ぜられたこと自体によって上告人における業務上の負担の軽減が図られたか否か及びその内容や程度は明らかではなく,上告人が軽易業務への転換及び本件措置により受けた有利な影響の内容や程度が明らかにされているということはできない。
他方で,本件措置により,上告人は,その職位が勤続10年を経て就任した管理職である副主任から非管理職の職員に変更されるという処遇上の不利な影響を受けるとともに,管理職手当の支給を受けられなくなるなどの給与等に係る不利な影響も受けている。
そして,上告人は,前記2(7)のとおり,育児休業を終えて職場復帰した後も,本件措置後間もなく副主任に昇進した他の職員の下で,副主任に復帰することができずに非管理職の職員としての勤務を余儀なくされ続けているのであって,このような一連の経緯に鑑みると,本件措置による降格は,軽易業務への転換期間中の一時的な措置ではなく,上記期間の経過後も副主任への復帰を予定していない措置としてされたものとみるのが相当であるといわざるを得ない。
しかるところ,上告人は,被上告人からリハビリ科の科長等を通じて副主任を免ずる旨を伝えられた際に,育児休業からの職場復帰時に副主任に復帰することの可否等について説明を受けた形跡は記録上うかがわれず,さらに,職場復帰に関する希望聴取の際には職場復帰後も副主任に任ぜられないことを知らされ,これを不服として強く抗議し,その後に本訴の提起に至っているものである。
以上に鑑みると,上告人が軽易業務への転換及び本件措置により受けた有利な影響の内容や程度は明らかではない一方で,上告人が本件措置により受けた不利な影響の内容や程度は管理職の地位と手当等の喪失という重大なものである上,本件措置による降格は,軽易業務への転換期間の経過後も副主任への復帰を予定していないものといわざるを得ず,上告人の意向に反するものであったというべきである。
それにもかかわらず,育児休業終了後の副主任への復帰の可否等について上告人が被上告人から説明を受けた形跡はなく,上告人は,被上告人から前記2(6)のように本件措置による影響につき不十分な内容の説明を受けただけで,育児休業終了後の副主任への復帰の可否等につき事前に認識を得る機会を得られないまま,本件措置の時点では副主任を免ぜられることを渋々ながら受け入れたにとどまるものであるから,上告人において,本件措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たものとはいえず,上告人につき前記(1)イにいう自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできないというべきである。

イ また,上告人は,前記のとおり,妊娠中の軽易業務への転換としてのBからリハビリ科への異動を契機として,本件措置により管理職である副主任から非管理職の職員に降格されたものであるところ,リハビリ科においてその業務につき取りまとめを行うものとされる主任又は副主任の管理職としての職務内容の実質及び同科の組織や業務態勢等は判然とせず,仮に上告人が自らの理学療法士としての知識及び経験を踏まえて同科の主任とともにこれを補佐する副主任としてその業務につき取りまとめを行うものとされたとした場合に被上告人の業務運営に支障が生ずるのか否か及びその程度は明らかではないから,上告人につき軽易業務への転換に伴い副主任を免ずる措置を執ったことについて,被上告人における業務上の必要性の有無及びその内容や程度が十分に明らかにされているということはできない。
そうすると,本件については,被上告人において上告人につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障があったか否か等は明らかではなく,前記のとおり,本件措置により上告人における業務上の負担の軽減が図られたか否か等も明らかではない一方で,上告人が本件措置により受けた不利な影響の内容や程度は管理職の地位と手当等の喪失という重大なものである上,本件措置による降格は,軽易業務への転換期間の経過後も副主任への復帰を予定していないものといわざるを得ず,上告人の意向に反するものであったというべきであるから,本件措置については,被上告人における業務上の必要性の内容や程度,上告人における業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り,前記(1)イにいう均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできないものというべきである。したがって,これらの点について十分に審理し検討した上で上記特段の事情の存否について判断することなく,原審摘示の事情のみをもって直ちに本件措置が均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらないと判断した原審の判断には,審理不尽の結果,法令の解釈適用を誤った違法がある。

5 以上のとおり,原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記の点について更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官櫻井龍子の補足意見がある。

裁判官櫻井龍子の補足意見は,次のとおりである。

上告人が妊娠中の軽易業務への転換を請求したことに伴う本件措置が均等法9条3項に違反する措置であるか否かの判断については,以上の法廷意見のとおりであり私も賛同するものであるが,本件の第1審,原審では,育児休業から復帰後の配置等が同項等に違反するか否かについても争われ,判断の対象とされているものであり,予備的請求原因として位置付けられるため当審における判示の対象には含まれていないものの,上告受理申立て理由の一つとして主張されていることも踏まえ,その点に関し,以下,念のため,私の意見を補足的に申し述べておきたい。

1 原審認定事実によると,被上告人は,上告人が平成21年10月12日に育児休業から復帰した際も副主任の地位に復帰させていないが,この措置(以下「本件措置2」という。)について,原審は,上告人が配置されるなら辞めるという理学療法士が2人いる職場があるなど復帰先が絞られ,軽易業務への転換前の職場であったBが復帰先になったところ,Bには既に副主任として配置されていた理学療法士がおり,上告人を副主任にする必要がなかったのであるから,均等法等に違反するものでも人事権の濫用に当たるものでもない旨判示する。

2 しかしながら,本件措置2についても,以下のとおり,原審の判断は十分に審理が尽くされた上での判断とはいえないといわざるを得ない。

(1) 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(以下「育児・介護休業法」という。)は,育児休業,介護休業制度等を設けることにより,子の養育又は家族の介護を行う労働者の雇用の継続等を図り,その職業生活と家庭生活の両立に寄与することを目的とする(1条)ものであり,そのため,労働者が育児休業申出をし,又は育児休業をしたことを理由として,解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(10条)と定めるものである。
同法10条の規定が強行規定と解すべきことは,法廷意見において均等法9条3項について述べるところと同様であろうし,一般的に降格が上記規定の禁止する不利益な取扱いに該当することも同様に解してよかろう。
本件の場合,上告人が産前産後休業に引き続き育児休業を取得したときは,妊娠中の軽易業務への転換に伴い副主任を免ぜられた後であったため,育児休業から復帰後に副主任の発令がなされなくとも降格には当たらず不利益な取扱いには該当しないとする主張もあり得るかもしれないが,軽易業務への転換が妊娠中のみの一時的な措置であることは法律上明らかであることからすると,育児休業から復帰後の配置等が降格に該当し不利益な取扱いというべきか否かの判断に当たっては,妊娠中の軽易業務への転換後の職位等との比較で行うものではなく,軽易業務への転換前の職位等との比較で行うべきことは育児・介護休業法10条の趣旨及び目的から明らかである。
そうすると,本件の場合,主位的請求原因に係る本件措置の適否に関する判断が差戻審において改めて行われるものであるが,予備的請求原因に係る本件措置2の適否に関する判断の要否は措くとしても,本件措置2については,それが降格に該当することを前提とした上で,育児・介護休業法10条の禁止する不利益な取扱いに該当するか否かが慎重に判断されるべきものといわなければならない。

(2) もとより,法廷意見が均等法9条3項について述べるところを踏まえれば,そのような育児休業から復帰後の配置等が,円滑な業務運営や人員の適正配置などの業務上の必要性に基づく場合であって,その必要性の内容や程度が育児・介護休業法10条の趣旨及び目的に実質的に反しないと認められる特段の事情が存在するときは,同条の禁止する不利益な取扱いに当たらないものと解する余地があることは一般論としては否定されない。
そして,上記特段の事情の存否に係る判断においては,当該労働者の配置後の業務の性質や内容,配置後の職場の組織や業務態勢及び人員配置の状況,当該労働者の知識や経験等が勘案された上で検討されるべきことも同様であろう。

(3) とりわけ,育児・介護休業法21条及び22条が,事業主の努力義務として,育児休業後の配置等その他の労働条件についてあらかじめ定めておき,労働者に周知させておくべきこと,また,育児休業後の就業が円滑に行われるよう,当該労働者が雇用される事業所の労働者の配置その他の雇用管理等に関し必要な措置を講ずべきことを定め,さらにこれらの運用に係る指針(平成16年厚生労働省告示第460号。平成21年厚生労働省告示第509号による改正前のもの)において,育児休業後には原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われていることを前提として他の労働者の配置その他の雇用管理が行われるように配慮すべきことが求められているなど,これら一連の法令等の規定の趣旨及び目的を十分に踏まえた観点からの検討が行われるべきであろう。これらの法令等により求められる措置は,育児休業が相当長期間にわたる休業であることを踏まえ,我が国の企業等の人事管理の実態と育児休業をとる労働者の保護の調整を行うことにより,法の実効性を担保し育児休業をとりやすい職場環境の整備を図るための制度の根幹に関わる部分である。
本件においては,上告人が職場復帰を前提として育児休業をとったことは明らかであったのであるから,復帰後にどのような配置を行うかあらかじめ定めて上告人にも明示した上,他の労働者の雇用管理もそのことを前提に行うべきであったと考えられるところ,法廷意見に述べるとおり育児休業取得前に上告人に復帰後の配置等について適切な説明が行われたとは認められず,しかも本件措置後間もなく上告人より後輩の理学療法士を上告人が軽易業務への転換前に就任していた副主任に発令,配置し,専らそのゆえに上告人に育児休業から復帰後も副主任の発令が行われなかったというのであるから,これらは上記(2)に述べた特段の事情がなかったと認める方向に大きく働く要素であるといわざるを得ないであろう。
3 なお,上告人は育児休業を取得する前に産前産後休業を取得しているため,本件措置2が育児・介護休業法10条の禁止する不利益な取扱いに該当すると認められる場合には,産前産後休業を取得したことを理由とする不利益な取扱いを禁止する均等法9条3項にも違反することとなることはいうまでもない。

(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木勇 裁判官 山浦善樹)


女性が妊娠した場合,軽易な業務に替わるのは医学的に合理的で必要なことですし,女性がそれを希望するのは当然です.ただ,軽易な業務に替わることで,降格,減収となると,軽易な業務を希望することを躊躇することになるでしょう.ひいては,そのような取り扱いは妊娠出産についての障害となり得ます.ですから,妊娠した女性が軽易な業務に替わっても不利益をうけないように,役職,給与について十分配慮しなければいけないでしょう.法の趣旨を正しく解釈すると,本最高裁判決のように原則禁止,例外的に許容となるはずです.

原審の裁判官は,原則・例外の位置づけをせずに,人事権の裁量の範囲を広く認めた点に問題があるでしょう.

また,本判決は,妊娠した女性のみならず,種々の事情で一時的に軽易な業務に移らざるをえない労働者の待遇,給与についても影響を及ぼすのではないか,と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2014-10-26 03:20 | 人権

最判平成26年7月14日,不開示決定時に行政機関が行政文書を保有していたことの立証責任は取消請求者にある

NHK「沖縄返還密約文書公開訴訟 原告の敗訴確定」(2014年7月14日)は,次のとおり報じました.

「昭和47年の沖縄返還の際に、日本とアメリカが密約を交わしたとして元新聞記者などが外交文書の公開などを求めていた裁判で、最高裁判所は原告側の上告を退け、文書の公開を認めなかった2審の判決が確定しました。

昭和47年の沖縄返還の際にかかる費用をアメリカの代わりに日本が支払うという「密約」が交わされたとして、元新聞記者などが行った当時の外交文書の情報公開請求に対し、国が6年前「文書は存在しない」として公開を認めない決定をしたため、裁判になっていました。
1審は国に公開を命じましたが、2審は3年前「すでに廃棄された可能性が高い」として訴えを退けたため、原告の元記者側が上告していました。
14日の判決で最高裁判所第2小法廷の千葉勝美裁判長は、「行政機関側が存在しないとした文書の公開を求める裁判では、請求者側に文書の存在を立証する責任がある」という初めての判断を示しました。
そのうえで「文書は外交交渉の過程で作成されていたとしても、国の調査の結果などを踏まえると、情報公開請求があったあとも存在していたとは認められない」と述べ、原告側の立証が不十分だとして上告を退けました。
これにより、文書の公開を認めなかった原告敗訴の判決が確定しました。

原告の元記者「情報公開の精神をないがしろ」

訴えを起こした元新聞記者の西山太吉さんは、「最高裁の判決は『密約』の文書がないことを正当化しているだけで、情報公開の精神をないがしろにして、特定秘密保護法を推し進める現在の政治の姿勢が表れている」と話しました。
また、「『密約』の文書はアメリカと日本が共同で作ったもので、日本側にないというだけでは済まされない。歴史的にも重要で、本来は永久に保存されなければならないのに、文書を保存し国民に伝えるという情報公開の精神がまったく考慮されていない。民主主義の崩壊だ」と述べました。

情報公開専門家「足かせになる判決」

最高裁判所が文書があることを証明する責任は請求者側にあると判断したことについて、情報公開の制度に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、「最高裁の判断によって情報公開を請求する側が文書の存在を証明する責任を負うという状況が固定化することになり、情報公開をする一般市民にとって足かせになる判決だ。請求する側はどんな文書があるかわからずに請求することが多く、文書の存在を証明することは事実上不可能に近い」と批判しています。
そのうえで「本来であれば、どんな文書が存在するかは、それを管理する行政機関が責任を負うべきなのに、きょうの判決によって文書は存在しないと言いやすい状況にも陥りかねない。行政機関は、情報公開を求める市民に対して、参考となる情報をこれまで以上に提供することが求められる」と指摘しています。

官房長官「国の主張認められた」

菅官房長官は午後の記者会見で、「最高裁判所において被告側勝訴の判決が言い渡された。国の主張を認めた高裁判決が是認されたと考えている」と述べました。
また、菅官房長官は、高裁判決で「すでに破棄された可能性が高い」と指摘されている文書の再調査について「考えていない」としたうえで、「平成23年4月から公文書管理法が施行されていることを踏まえ、重要な歴史的な事実を検証することができるよう適切な行政文書ファイルの保存管理に努めていきたい」と述べました。」


最高裁平成24年7月14日判決は,つぎのとおり判示しています.

「2 情報公開法において,行政文書とは,行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び電磁的記録であって,当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして,当該行政機関が保有しているものをいうところ(2条2項本文),行政文書の開示を請求する権利の内容は同法によって具体的に定められたものであり,行政機関の長に対する開示請求は当該行政機関が保有する行政文書をその対象とするものとされ(3条),当該行政機関が当該行政文書を保有していることがその開示請求権の成立要件とされていることからすれば,開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負うものと解するのが相当である。
そして,ある時点において当該行政機関の職員が当該行政文書を作成し,又は取得したことが立証された場合において,不開示決定時においても当該行政機関が当該行政文書を保有していたことを直接立証することができないときに,これを推認することができるか否かについては,当該行政文書の内容や性質,その作成又は取することができるか否かについては,当該行政文書の内容や性質,その作成又は取得の経緯や上記決定時までの期間,その保管の体制や状況等に応じて,その可否を個別具体的に検討すべきものであり,特に,他国との外交交渉の過程で作成される行政文書に関しては,公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国との交渉上不利益を被るおそれがあるもの(情報公開法5条3号参照)等につき,その保管の体制や状況等が通常と異なる場合も想定されることを踏まえて,その可否の検討をすべきものというべきである。
3 これを本件についてみるに,前記1の開示請求において本件交渉の過程で作成されたとされる本件各文書に関しては,その開示請求の内容からうかがわれる本件各文書の内容や性質及びその作成の経緯や本件各決定時までに経過した年数に加え,外務省及び財務省(中央省庁等改革前の大蔵省を含む。)におけるその保管の体制や状況等に関する調査の結果など,原審の適法に確定した諸事情の下においては,本件交渉の過程で上記各省の職員によって本件各文書が作成されたとしても,なお本件各決定時においても上記各省によって本件各文書が保有されていたことを推認するには足りないものといわざるを得ず,その他これを認めるに足りる事情もうかがわれない。」



最高裁は,文書の存在(廃棄)が争われるとき,その立証責任が請求者側にある,という考えを示し,情報公開請求に対して国が不開示の決定をした時点で国が文書を保有していたという立証が足りない,としました.
「開示請求の対象とされた行政文書を行政機関が保有していないことを理由とする不開示決定の取消訴訟においては,その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負うものと解するのが相当である。」という部分は,保有していない,という立証が不存在の立証ですから困難なことを考慮し,取り消しを請求する者に,保有していることの立証を求めたものと思われますが,外部の人間に保有の証明責任を課すことになり,事実上不可能なことを求めていることになります。
さらに,本件について,「その開示請求の内容からうかがわれる本件各文書の内容や性質及びその作成の経緯や本件各決定時までに経過した年数に加え,外務省及び財務省(中央省庁等改革前の大蔵省を含む。)におけるその保管の体制や状況等に関する調査の結果など,原審の適法に確定した諸事情の下においては,本件交渉の過程で上記各省の職員によって本件各文書が作成されたとしても,なお本件各決定時においても上記各省によって本件各文書が保有されていたことを推認するには足りない」とし,過去に存在した文書が,廃棄されていないという推認ができない,としたのですが,これは公平に反し不当ですし,事実上立証不可能なことを求めていると言えるでしょう.
残念な最高裁判決です.

谷直樹

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by medical-law | 2014-07-15 00:29 | 人権

日弁連,「集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」

日本弁護士連合会(日弁連)は,2014年7月1日,「集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」を発表しました.

「本日、政府は、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行った。

集団的自衛権の行使容認は、日本が武力攻撃をされていないにもかかわらず、他国のために戦争をすることを意味し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものである。

集団的自衛権の行使は、憲法第9条の許容するところではなく、そのことはこれまでの政府の憲法解釈においても長年にわたって繰り返し確認されてきたことである。

このような憲法の基本原理に関わる重大な変更、すなわち憲法第9条の実質的な改変を、国民の中で十分に議論することすらなく、憲法に拘束されるはずの政府が閣議決定で行うということは背理であり、立憲主義に根本から違反している。

本閣議決定は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」等の文言で集団的自衛権の行使を限定するものとされているが、これらの文言は極めて幅の広い不確定概念であり、時の政府の判断によって恣意的な解釈がされる危険性が極めて大きい。

さらに、本閣議決定は、集団的自衛権の行使容認ばかりでなく、国際協力活動の名の下に自衛隊の武器使用と後方支援の権限を拡大することまで含めようとしている点等も看過できない。

日本が過去の侵略戦争への反省の下に徹底した恒久平和主義を堅持することは、日本の侵略により悲惨な体験を受けたアジア諸国の人々との信頼関係を構築し、武力によらずに紛争を解決し、平和な社会を創り上げる礎になるものである。

日本が集団的自衛権を行使すると、日本が他国間の戦争において中立国から交戦国になるとともに、国際法上、日本国内全ての自衛隊の基地や施設が軍事目標となり、軍事目標に対する攻撃に伴う民間への被害も生じうる。

集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定は、立憲主義と恒久平和主義に反し、違憲である。かかる閣議決定に基づいた自衛隊法等の法改正も許されるものではない。

当連合会は、集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定に対し、強く抗議し、その撤回を求めるとともに、今後の関係法律の改正等が許されないことを明らかにし、反対するものである。」


日弁連を構成する52の単位会すべてが,すでに反対の声明を発表していました.
我が第二東京弁護士会の「集団的自衛権行使容認の閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」(2014年7月1日)は,以下のとおりです.

「報道されたところによれば、本日、安倍内閣は、これまでの政府の見解および憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行いました。
 憲法第9条の改正手続すら経ることなく、閣議決定により集団的自衛権の行使を容認することは、立憲主義を完全に否定する暴挙と言わざるを得ません。
 すなわち、日本国憲法第9条は、「戦争と、武力による威嚇または武力の行使」を放棄するとともに、「陸海空軍その他の戦力」の保持を否定し、徹底した非戦・平和主義の立場をとっています。憲法第9条が存在する以上、国家として自衛のため必要最小限度の実力を保持することが認められるとしても、その行使の要件としては①我が国に対する急迫不正の侵害があること、②この場合にこれを排除するために他の適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力行使にとどまることが必要であり、他国のために武力を行使する集団的自衛権が①の要件を欠くものとして認められないのは当然の帰結であって、従前の政府見解および憲法解釈は、この当然の帰結を確認したものです。
 憲法第9条は、悲惨な第二次世界大戦に対する深い反省から、徹底した恒久的平和主義を定めたものであり、その価値は普遍的なものであります。そして、日本国憲法は、立憲主義に基づき、一時の政治的熱狂により国民の利益(将来の国民の利益)が安易に侵害されないよう国家権力を拘束するものであり、この立憲主義を担保するため憲法改正手続(憲法第96条)を定め、憲法規範の変更に対し熟慮と慎重さを求めています。
 今回の閣議決定は、このような立憲主義を否定し、憲法第9条を変更しようとする暴挙であります。当会は、政府に対し、強く抗議するとともに、今回の閣議決定を撤回し、日本国憲法の立憲主義を堅持するよう求めるものです。」


谷直樹

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by medical-law | 2014-07-03 08:56 | 人権

ABP,人権と環境の観点から東電を「投資してはならない対象」に指定し株売却

ロイター「オランダ年金基金が東電株売却、原発事故処理への懸念で」(2014年 1月 8日)は,次のとおり報じました.

「[アムステルダム 7日 ロイター] -オランダの公務員年金基金ABPは7日、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)株式を昨年売却したことを明らかにした。福島第1原発の問題めぐり、ABPが安全性や環境への影響について繰り返し協議を申し入れたものの、東電側が応じなかったため、としている。ABPは、東電を1月1日付けで投資してはならない対象に指定した。」

「ABPは7日発表した声明で「東電は、福島原発事故発生時、およびその後も、われわれの基準に違反していた。東電は、一般市民の安全についての認識が乏しかったと言える」と指摘した。

Geers氏によると、ABPは自分たちの懸念について繰り返し東電との協議を試みたが、東電からの返答はなかったという。

ABPは、投資禁止対象リストを毎年見直している。禁止対象には、クラスター爆弾製造会社などが含まれている。

東電については、ABPが社会責任投資のガイドラインとしている国連グローバル・コンパクトの10原則の内の「人権」と「環境」の2原則に関する目標を満たしていないと判断したとGeers氏は説明した。」


国連グローバル・コンパクトの定める4分野(人権,労働,環境,腐敗防止)10原則は,いずれも世界的に採択・合意された普遍的な価値として国際社会で認められているものです.国連グローバル・コンパクトは,企業が影響の及ぶ範囲内で「人権」,「労働」,「環境」,「腐敗防止」の分野における一連の本質的な価値観を容認し,支持し,実行に移すことを求めています.

人権
原則1 企業は、国際的に宣言されている人権の保護を支持、尊重すべきである
原則2 企業は、自らが人権侵害に加担しないよう確保すべきである

環境
原則7 企業は、環境上の課題に対する予防原則的アプローチを支持すべきである
原則8 企業は、環境に関するより大きな責任を率先して引き受けるべきである
原則9 企業は、環境に優しい技術の開発と普及を奨励すべきである

たしかに,東電が,これらの原則をみたしているとは言い難いですね.

日本では,大和証券,三井住友銀行,三井生命,住友生命,みずほファイナンシャルグループなど181企業・団体が国連グローバル・コンパクトに加入していますが,同様の判断で株式売却となるのではないでしょうか..


谷直樹

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by medical-law | 2014-01-10 07:52 | 人権

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が病気を持つ者への差別であること

公益社団法人日本精神神経学会、一般社団法人日本てんかん学会、日本うつ病学会、日本認知症学会、特定非営利活動法人日本不整脈学会、一般社団法人日本睡眠学会、一般社団法人日本神経学会と一般社団法人日本脳卒中学会は、平成25年11月6日、参議院法務委員会に、以下の「「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に関する再要望」を提出しました.

「平成25年11月5日、衆議院本会議にて「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が可決されました。
同法案は危険運転致死傷罪の対象として一定の病気注1を取り上げる予定とされています(第三条第二項)。
しかし、これらの病気による事故率が他の要因と比較して高いという医学的根拠はなく、同条項は法の下の平等に反し、これらの病気に対する差別を助長し、病気の早期発見や適切な治療を妨げるものであり、同時に、これらの病気を有する人にいたずらに不安を与え、社会生活に重大な影響を与えることから、私たちは同条項の削除を要望しました(関連6学会による平成25年9月30日付け衆議院法務委員長あて「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に関する要望書)。
本法案は衆議院にて原案のまま可決されましたが、同条項の適用は特定の病気に対してではなく、症状に着目してなされることが本法の趣旨であるはずです(法制審議会刑事法部会での議論、衆議院法務委員会における政府・法務大臣の答弁)。
しかし、法案条文では「病気として政令で定めるものの影響により」と、適用用件を特定の病気に限定しており、特定の病気を持ちながらも症状を有しないものに対する不当な不利益や特定の病気を持つものへの差別を生ずるおそれがあります。
以上より私たちは、以下を求めます。

                               記

1.第三条第二項の危険運転致死傷罪の対象となる「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」を、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気の症状として政令で定めるもの」と修正すべきである。

                                             以    上

注1:統合失調症、てんかん、再発性失神、無自覚性の低血糖症、躁うつ病(法令において「躁うつ病」はうつ病と双極性障害を含む)、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」



3条2項は、「 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。」というものです.前項と同様というのは、「十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。」という意味です.

参議院法務委員会では、11月12日、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案(第百八十三回国会閣法第五二号)(衆議院送付)について谷垣法務大臣、奥野法務副大臣及び政府参考人に対する質疑が行われました.
11月14日には、参考人京都大学大学院法学研究科教授塩見淳氏、京都交通事故被害者の会古都の翼小谷真樹氏、公益社団法人日本てんかん協会副会長久保田英幹氏及び公益社団法人日本精神神経学会法委員会主担当理事三野進氏からの意見聴取の後、各参考人に対する質疑が行われました.

参議院で、この法案が病気を持つ者への差別となることのないよう、修正が行われることを期待します.

谷直樹

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by medical-law | 2013-11-18 03:06 | 人権

選択型実務修習プログラム

東京の弁護士会では,各委員会に委託して,選択型実務修習プログラムを実施しています.
私は,昨日,消費者委員会からの要請で,「医療と人権」というテーマでお話しました.
患者側弁護士の4つの活動(事件活動,無償のボランティア活動,研究活動,教育普及活動)は,いずれも人権と正義のためであることをお話しました.
事前に,パワーーポイントで作成したファイルを送っておいたのですが,なぜか配布されておらず,受講生のみなさまにはご迷惑をおかけしました.

谷直樹

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by medical-law | 2013-10-01 09:41 | 人権