弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:人権( 63 )

「学校事故、事件被害者全国弁護団」(略称・子どもの権利弁護団)11月発足へ

日本経済新聞「いじめ相談で弁護士が初の全国ネットワーク 11月発足へ」 (2013年8月25日)は,次のとおり報じました.

いじめを原因とする自殺や体罰など、学校で起こる問題について専門的な知識を持つ全国の弁護士が、被害者や遺族の相談窓口となる全国初のネットワークづくりを進めていることが25日、分かった。全国規模で情報や経験を幅広く共有。学校や教育委員会への対応に直接乗り出すなどして、被害者らを支援する。

 取り組みを進める野口善国弁護士(兵庫県弁護士会)らが今月12日、名古屋市で会合を開き、11月発足に向けた基本方針を確認した。設立時は70~80人の参加を想定。

 野口弁護士によると、ネットワークは「学校事故、事件被害者全国弁護団」(略称・子どもの権利弁護団)で、東京に事務局を置く。いじめ対応や虐待を受けた子供の保護、少年事件の弁護に長く携わってきたベテラン弁護士が、活動の中心的役割を担う。

 さらに(1)子供の権利を守る立場を貫く(2)被害者、遺族らの話に耳を傾けて心に寄り添う――との2点を条件に弁護士を募る。ベテラン弁護士からの推薦が必要だが、知識や経験は問わない。

 発足後はインターネット上に参加弁護士の名簿を公表。相談を受けた場合、学校や教委に全校生徒アンケートの実施や結果の開示を求めるなど、事実関係を明らかにするための交渉に当たる。

 学校側が事実を隠すケースや、自治体が設置した第三者委員会の在り方に問題があるケースでは、弁護団が学校や行政などを相手に訴訟を起こすことも検討。年に数回、全国大会を開き、各地での対応事例や経験を発表する機会も設ける。〔共同〕」


野口善国先生の著書には,「歌を忘れたカナリヤたち-子どもは必ず立ち直る」,「それでも少年を罰しますか」があります.

すでに各弁護士会にも相談窓口はありますが,昨今の状況に鑑みると,このようなネットワークの発足も大きな意義があると思います.


谷直樹

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by medical-law | 2013-08-27 09:02 | 人権

東京弁護士会、8月31日、虹がかかるまで ~本当は、いじめは嫌なんだ~

もがれた翼Part20 虹がかかるまで ~本当は、いじめは嫌なんだ~

また、もがつばの季節がやってきました.
演じる弁護士は本格的に練習しています.


「あらすじ
厳しい残暑と雨空が続く9月。
『子どもの人権110番』へ、中学3年生の少女からの一本の電話がかかってくる。
「ガッコウデ、イジメラレテ…」
新人弁護士の桐谷は、初めての子どもの権利擁護活動としてこの相談を受けることになる。
いじめの事実を認めてほしいという、少女の願いは親と学校の対立の中で空転し、桐谷は『子どものオンブズパーソン』への救済申立てを提案するが…。



日 時 2013年8月31日 昼の部:16時00分開演(15時30分開場)、夜の部:19時00分開演(18時30分開場)
場 所 赤羽会館講堂( 東京都北区赤羽南1-13-1) JR赤羽駅(京浜東北線、埼京線、高崎線、宇都宮線) 徒歩5分、地下鉄南北線赤羽岩淵駅 徒歩10分
地図(赤羽会館のHP)
入 場 各会600名(入場無料、全席自由、予約は承っていません)
演 出 米内山陽子(トリコ劇場/チタキヨ)
脚 本 坪井花梨(社会福祉法人カリヨン子どもセンター)
舞台監督 村田綾香
照 明 木村秀信
音 響 余田崇徳、橋本絢加
製 作 東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会
出 演 子どもたちと東京弁護士会の弁護士
主 催 東京弁護士会
共 催 北区
後 援 北区教育委員会
協 力 社会福祉法人カリヨン子どもセンター
お問い合わせ TEL03-3581-2205 東京弁護士会 人権課」



谷直樹

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by medical-law | 2013-08-21 02:47 | 人権

北海道新聞社説、検察開示証拠 公益利用を認めてこそ(8月17日)

北海道新聞社説「検察開示証拠 公益利用を認めてこそ」(8月17日)は、次のとおり論じました.

 
「刑事事件で捜査機関が公費を投じて集めた証拠は国民の財産である。これを前提に公益を目的とした証拠の利用の在り方を幅広く論議する契機とすべきだ。

 検察が開示した取り調べ映像を弁護士がNHKに提供したのは刑事訴訟法が禁じる証拠の目的外利用に当たるとして大阪地検は、大阪弁護士会にこの弁護士の懲戒を請求した。

 報道目的という公益性などから懲戒請求は著しく合理性を欠く。暴挙と言わざるを得ない。

 請求については、外部委員も加わった弁護士会内の委員会が調査、審議する。適正な判断を期待したい。

 映像は傷害致死罪に問われた男性の取り調べの記録で、裁判員裁判の法廷で再生された。検察官作成の調書は信用できないとして無罪が言い渡され、この判決が確定した。

 NHKは4月、取り調べの問題点を取り上げた関西地方の情報番組で映像の一部を放映した。男性らが特定されないような処理をしている。

 どこに問題があるというのか。

 確かに刑訴法は検察が開示した証拠の複製などを弁護士らが訴訟準備など本来目的以外で他の人に見せたり、渡したりするのを禁じている。大阪の弁護士の行為が形式的にこれに触れる可能性は否定できない。

 しかし、目的外利用をした場合でも懲戒請求などの乱用を防ぐ規定があるのを忘れてはならない。

 証拠が公開法廷で調べられたか、プライバシーなどの侵害はないかなどを考慮するというもので、地検の措置は権利の乱用にほかならない。

 目的外利用の禁止規定は2004年の改正で新設された。公判前に検察が被告側に証拠を開示する制度の導入に併せ、個人情報が含まれる証拠がインターネットで公開されるなどの弊害を防ぐためとされた。

 だが、目的外利用を一律に禁止しているため、当時の国会審議でも被告の防御権や報道の自由の観点から懸念や批判が相次ぎ、政府案を修正して乱用防止規定が加えられた。

 衆参両院の法務委員会は「(規定解釈は)国会論議を十分斟酌(しんしゃく)する」(衆院)などの付帯決議をした。

 今回の懲戒請求はこれを踏みにじるもので、国会は法案修正の不十分さを重く受け止める必要がある。

 報道や学術研究などで、取り調べの在り方など刑事司法制度の問題点を明らかにする。無実を訴える被告や弁護士が広く支援を呼びかける。

 こうした目的での証拠の提供や利用を明確に認める法改正が必要だ。判決が確定した刑事裁判の記録を閲覧、コピーできる制度はあるものの、これだけで十分とは言い難い。

 一連の経緯を考えれば立法府である国会主導で論議を進めてほしい。」


約2か月前の毎日新聞社説「法廷証拠と報道 懲戒請求は行き過ぎだ」(2013年6月23日)は、次のとおり論じました. 

「裁判の公開原則や国民の知る権利の観点に照らして、検察の対応は大いに疑問だ。

 法廷に証拠として提出された取り調べの録画映像を弁護士がNHKに提供したとして、大阪地検が大阪弁護士会に懲戒請求をした問題だ。

 NHK大阪放送局は4月、関西の情報番組で、密室の取り調べの問題点を指摘する番組を放送。その中で、傷害致死罪に問われ、無罪が確定した元被告の取り調べ映像を放映した。一時「自白」した供述調書と食い違う内容で、検察からDVDを証拠開示された弁護人が、元被告の了解を取って提供したものだった。

 映像は既に法廷で再生されており、提供は判決確定後だ。顔なども放映時にぼかされており、プライバシー上の問題もない。

 2004年の刑事訴訟法改正で、検察が開示する証拠の目的外使用を禁じた。公正な刑事手続きのため、被告や弁護人が裁判手続きやその準備以外の用途で証拠のコピーなどを提供できないと明文化したのだ。

 だが、この規定の新設には、弁護士会や報道界の反対が強かった。例えば、冤罪(えんざい)を主張する被告や弁護人が捜査の違法性を訴える目的で、記者やジャーナリストに訴訟記録を見せることができなくなってしまう。報道にとどまらず、刑事法学者が研究のために弁護人から記録の提供を受けることもできなくなる。

 もちろん、事件関係者のプライバシーがむやみに外部に流れる事態は避けねばならない。憲法上の要請でもある被告の防御権や、刑事裁判記録の公共財としての価値と折り合いをつけることが大切だ。

 立法段階や国会審議でもその点が焦点となり、弁護人への刑事罰は、「対価を得る目的で他人に渡した場合」に限定された。また、違反者への懲戒などの措置は「行為の目的や関係者の名誉毀損(きそん)があるか否か、既に公判で調べられた証拠かどうかなどを考慮する」との条文が付け加えられた。さらに、法成立時には「目的外使用の禁止条項の運用に当たっては、裁判公開の原則や被告・弁護人の防御権にも十分配慮する」と国会で決議されたのだ。

 懲戒請求は、提供を受けた報道側の萎縮も招く。慎重な運用を求めた立法経緯や国会の意思に照らしても、明らかに行き過ぎだ。

 現在、取り調べの録音・録画の法制化が法制審議会で議論されている。可視化の範囲を広げたくない検察が、殊更に取り調べ映像の提供を問題視したとの指摘も出ている。

 検察の対応に歯止めをかけるため、報道や学術研究など「公益目的の場合」は目的外使用の例外と明記するなど法改正も検討すべきだ。」



読売新聞社説「検察の懲戒請求/報道の自由が侵されかねない」(2013年6月4日)は、次のとおり論じました.

 「取材協力者の萎縮を招きかねない。検察の対応は問題である。

 裁判の証拠として開示された取り調べの録画映像をNHKに提供した弁護士について、大阪地検が大阪弁護士会に懲戒請求した。刑事訴訟法が禁じる証拠の目的外使用にあたるとの理由からだ。

 この禁止規定は、2004年の法改正で、検察から弁護側への証拠開示の範囲を広げた際に新設された。証拠流出により、証人への威迫や事件関係者のプライバシー侵害が起きるのを防ぐためだ。

 公正な司法手続きを担保する上で、必要な規定とは言える。だが、今回のケースにこの規定をあてはめることには疑問がある。

 映像には、傷害致死罪に問われた元被告が“自供”した供述調書の内容と矛盾するようなやりとりが記録されていた。無罪判決の根拠の一つとなった。

 弁護士が映像を提供したのは、判決が確定した後だった。映像は公開の法廷で既に再生され、傍聴人も目にすることができた。弁護士は提供にあたり、元被告の承諾を得ていたという。

 NHKは番組で放映する際、顔をぼかしたり、音声を変えたりするなど、プライバシーに配慮する措置をとっていた。

 映像の提供と放映によって、裁判への影響や関係者の名誉侵害が生じたとは考えられない。

 弁護士は「検察の取り調べの実態を社会に伝えたかった」と説明している。捜査の在り方を検証するという提供目的には、十分な公益性があると言えよう。

 目的外使用の禁止を巡っては、法改正時に、日本弁護士連合会が正当な理由があれば禁止対象から外すよう求めた。日本新聞協会も「取材の制限につながる危惧が大きい」との見解を表明した。

 国会でも議論となり、違反が疑われる場合にも、「行為の目的や態様、関係者の名誉侵害の有無などを考慮する」との条文が追加された経緯がある。

 大阪地検はこうした観点からの精査を十分行ったのだろうか。

 3月には、被害者が写っている実況見分写真などの開示証拠を動画サイトに投稿したとされる男が起訴された。悪質なケースについては厳しく対処すべきだ。

 しかし、公益目的の情報提供まで検察が殊更に問題視するのであれば、取材・報道の自由を侵害することにつながろう。

 公権力を使って収集した証拠は検察の独占物ではなく、公共財であることも忘れてはならない。」



検察の懲戒請求は理不尽このうえないので認められることはないでしょうが、萎縮効果を考えると、目的外利用の禁止規定自体の改正が必要と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-08-18 02:31 | 人権

琉球新報社説,法制局長官人事 「法治」の原則捨てるのか

琉球新報社説「法制局長官人事 「法治」の原則捨てるのか」(2013年8月7日)は,次のとおり論じました。


「あまりに強引な人事だ。安倍晋三首相は内閣法制局の山本庸幸長官を退任させ、後任に小松一郎駐仏大使を充てるという。
 長官人事は首相の専権事項というが、集団的自衛権行使の容認に向けた布石であるのは明らかだ。政府は「適材適所」(菅義偉官房長官)などと抽象的説明でかわすのでなく、この恣意(しい)的人事の是非を堂々と国民に問うべきだ。

 小松氏は条約畑の外務官僚で、名うての行使容認論者だ。2006年の第一次安倍内閣当時の外務省国際法局長であり、集団的自衛権行使容認を打ち出した当時の政府有識者懇談会に事務方として深く関わった。
 内閣法制局長官は同局の法制第一部長を経験した内閣法制次長が昇任するのが慣例だ。法解釈の継続性や職務の専門性を考えれば一定の説得力はある。そこに法制局未経験者が就くのも外務省出身者が就くのも前代未聞だ。

 安倍首相が再設置した有識者懇談会は今月下旬から議論を再開し、行使容認の報告書を秋にもまとめる。行使の手続きを定める国家安全保障基本法案も、早ければ秋の臨時国会に提出する構えだ。
 その法案提出を控え、容認論者をトップに据えて国会答弁に備えるつもりなのは間違いない。解釈改憲に逆らう法制局をけん制し、圧力を加える狙いもあろう。

 集団的自衛権について内閣法制局は「国際法上保有しているが、行使は憲法の限界を超え、許されない」との見解を保持してきた。
 憲法解釈は長年の政府答弁の積み重ねであり、精密な法解釈の結果である。政権の意に染まないからと言って答弁者の首をすげかえ、憲法解釈を変えるのなら、もはや法治国家と言えない。

 憲法9条を改正したいが、難しいから改憲の要件を定める96条を改正する。その96条先行改正論が批判を浴びたら、今度は集団的自衛権行使容認へと憲法解釈を変える。解釈変更に内閣法制局が抵抗するなら、今度は長官の首をすげ替える。正面突破が難しいから裏口から入ると言うに等しい。あまりに姑息(こそく)だ。

 第二次大戦後、戦争でどの国の人も殺さなかった国は日本を含め世界に6カ国しかない。憲法の平和主義の成果だ。集団的自衛権の行使は、戦後日本が積み上げてきたそうした国際的信頼を根こそぎ失いかねない。なし崩しで貴重な資産を失う愚を犯してはならない。」


内閣法制局長官は,国務大臣ではありませんが,国務大臣に準じる重要なポストです
憲法改正の布石のために,このような人事が行われたことは残念です,


谷直樹

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by medical-law | 2013-08-09 04:06 | 人権

国連の独立専門家セファス・ルミナ氏の「ミッション終了ステートメント」

セファス・ルミナ氏(Dr. Cephas Lumina)はザンビアの高等裁判所弁護士です.
2008年に国連人権理事会から「対外債務その他関連の国際的金融債務があらゆる人権、特に経済的、社会的及び文化的な権利の十全な享受に及ぼす影響に関する国連の独立専門家」に任命されました.
セファス・ルミナ氏は,日本での調査を終え,2013年7月19日,ミッション終了ステートメントを発表しました.

日本政府は,パリ原則に準じた国内人権機関設置に関する勧告・要請等を繰り返し受けてきましたが(法務省の外局として設立するのでは,独立性に問題があるでしょう.),セファス・ルミナ氏が,今回,以下のとおり,日本政府が,独立した「国内人権機関」(NHRI)を設立するよう,あらためて求めた点は,注目すべきと思います.

独立した「国内人権機関」の必要性

「日本はOECD加盟国中、独立した「国内人権機関(NHRI)」を未だ設立していない数少ない国の1つです。アジア太平洋諸国の間だけでも、パリ原則に完全に準拠した15のNHRIがあります。2012年8月の人権理事会における普遍的定期審査(UPR)のレポートによれば、日本政府は、「パリ原則に基づく国の人権機関としての人権委員会を設立する法案を国会に提出するために必要な準備を進めている」と繰り返し主張していました。

私は、日本政府はこの公約を果たすよう要請いたします。独立したNHRIは、日本が国際的な人権義務に順守することを支援するだけでなく、人権に基づいた開発アプローチを開発協力政策に組み込む取り組みにも役立つものと考えられます。」


「The need for an independent National Human Rights Institution

Japan is one of the few OECD countries which has not yet established an independent National Human Rights Institution (NHRI). Within the Asia-Pacific region, there are 15 NHRIs fully complying with the Paris Principles. In its report to the Universal Periodic Review of the Human Rights Council in August 2012, Japan reiterated that its Government was “making necessary preparations to submit a bill to the Diet to establish a human rights commission as a national human rights institution in accordance with the Paris Principles.”

I urge the Government to follow up this commitment. In my estimation, an independent NHRI would not only assist Japan in complying with its international human rights obligations, but could also contribute to efforts to integrate a human rights-based approach into development cooperation. 」


谷直樹

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by medical-law | 2013-07-23 02:24 | 人権

EEA,Late lessons II Chapter 5 - Minamata disease a challenge for democracy and justice

欧州環境庁(The European Environment Agency ,EEA)は,Late lessons2013年版で,水俣病問題を取り上げました.
執筆者は,Takashi Yorifuji,頼藤貴志氏 Toshihide Tsuda津田敏秀氏 and Masazumi Harada原田正純氏(故人)です.
ご一読をお奨めいたします.

Late lessons II Chapter 5 - Minamata disease a challenge for democracy and justice

Minamata disease, which can induce lethal or severely debilitating mental and physical effects, was caused by methylmercury-contaminated effluent released into Minamata Bay by Chisso, Japan's largest chemical manufacturer.
It resulted in widespread suffering among those who unknowingly ate the contaminated fish.

This chapter documents the story in three phases.The disease first came to prominence in the 1950s.

It was officially identified in 1956 and attributed to factory effluent but the government took no action to stop contamination or prohibit fish consumption.
Chisso knew it was discharging methylmercury and could have known that it was the likely active factor but it chose not to collaborate and actively hindered research.
The government concurred, prioritising industrial growth over public health.

In 1968 Chisso stopped using the process that caused methylmercury pollution and the Japanese government then conceded that methylmercury was the etiologic agent of Minamata disease.The second part of the story addresses the discovery that methylmercury is transferred across the placenta to affect the development of unborn children, resulting in serious mental and physical problems in later life. Experts missed this at first because of a medical consensus that such transfer across the placenta was impossible.The third phase focuses on the battle for compensation. Initially, Chisso gave token 'sympathy money' under very limited criteria.

In 1971 the Japanese government adopted a more generous approach but after claims and costs soared a more restrictive definition was introduced in 1977, justified by controversial 'expert opinions'. Legal victories for the victims subsequently made the government's position untenable and a political solution was reached in 1995–1996.

In 2003, the 'expert opinions' were shown to be flawed and the Supreme Court declared the definition invalid in 2004. In September 2011 there were 2 273 officially recognised patients.

Still, the continuing failure to investigate which areas and communities were affected means that the financial settlement's geographic and temporal scope is still not properly determined.

Alongside deep-seated issues with respect to transparency in decision-making and information sharing, this indicates that Japan still faces a fundamental democratic deficit in its handling of manmade disasters.

This chapter is followed by three short updates on the effects of mercury poisoning since Minamata; on attempts to contain it, including the 2009 global agreement to phase mercury out of economic activity; and on the need for better information about contaminant exposures to enable policymakers to make informed choices that balance the benefits of fish consumption against the assumed adverse effects of low-level methylmercury exposures.



谷直樹

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by medical-law | 2013-04-02 01:29 | 人権

BPO放送人権委員会,フジテレビ「イレッサの真実」について判断が分かれる

放送倫理・番組向上機構[BPO]放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)は,2013年3月28日,フジテレビ『ニュースJAPAN』が2011年10月に2回にわたって放送した企画「イレッサの真実」について第48号決定を下しました.

申立人の娘さんは,承認直後の危険性情報が伝えられていない状況でイレッサを服用して亡くなりました.
承認前に判明していた危険性情報の伝達に問題がある,と主張したのが申立人であり,それを認めたのが東京地裁判決です.
ところが,本件番組は,迅速な承認と安全性を対立させ,イレッサ薬害と東京地裁判決に疑問を投げかけた内容でした.「危険性情報の伝達の問題」から,「迅速な承認と安全性の問題」に,論点がおきかわっていました.そして,危険情報の伝達等が行われた2007年頃にイレッサを服用したがん患者のAさんの発言と承認直後の危険性情報が伝えられていない状況でイレッサを服用して娘さんを亡くした申立人の発言が対立するかのように受け取られる構成になっていました.

◆ 多数意見

多数意見は,「放送番組中において法的な意味での名誉毀損・人格権侵害はなかったと結論する。また、番組内容そのものに放送倫理上問題があったとまではいえない、と判断する。しかしながら、申立人を含む番組中の登場人物の対比のさせ方やコメントの使い方などにおいて、視聴者の誤解を招きかねない点があるなど、放送の一部に配慮不足があったと認められる。申立人である取材対象者の思いを軽視して長年の信頼関係を喪失したことは、報道機関として重く受け止める必要がある。取材者・放送人にとって取材先との信頼関係を喪失するという重大な事態を招いたことにつき十分に反省し、事前の取材・企画意図の説明や番組の構成・表現等の問題について再度検討を加え、今後の番組作りに生かすことを強く要望する。」というものです.

例えば,副作用情報が十分に説明されたうえで患者が治療の選択をすることが必要であるとする点で,本来は同じ立場にある申立人とがん患者のAさんとを本放送が対立的に提示したという主張について,多数意見は,.「ただし」→「しかし」→「ただし」という流れで,以下のとおり判断しています

「本件放送において、Aさんの発言意図は、効果と副作用の適切な説明を受けて医師の判断を聞いていれば「薬害ではない」とするものであるのに対し、申立人は、そのような説明のない治療を受けた状況下についての評価として「薬害である」と述べていると理解できる。

ただし、その番組構成は、視聴者にとって混同や混乱を招いたと思われる。しかも本件放送は、その冒頭において、「薬害」という受け取り方に幅がある言葉を使用した二人のコメントが続けて紹介されたために、対立的な立場として捉えられても致し方がない側面がある。視聴者は、当該場面で対立的な立場だという印象を受け、間違ったイメージを抱いたまま放送を見続ける可能性がある。その場合、結果として申立人の冒頭のコメントをもって、申立人の主張を「イレッサの存在自体を否定している」と受け取る者がいる可能性を否定はできない。しかも、番組構成上、9年前の状況に基づく申立人の主張と、現在の状況を元にしたAさんの発言や実態の紹介が、同じ土俵で、交錯してあらわれる。このために、視聴者は、よけいに混同や混乱を感じやすい結果になっている。

しかし、本件放送は、申立人のコメントを誤って伝えたものではなく、また、申立人の東京地裁への提訴当時の、副作用の危険性が警告欄等に十分に記載されていなかった添付文書から、この点が改訂された添付文書への変遷が映像によって示されている。また、本件放送においては、申立人の主張の一部を認めた東京地裁判決が、副作用の危険性を十分に記載しなかった提訴当時の添付文書の問題を根拠に申立人の主張を一部認めたことなどが伝えられている。このことから、本件放送の前編を見たとき、視聴者は、申立人の娘の診療当時にはイレッサに致死的な副作用のあることが添付文書に十分には示されておらず、申立人の娘が副作用に関する十分な説明を医師からも受けなかったであろうこと、および申立人とAさんが十分な副作用情報を得たうえで治療を選択すべきであるという点では同じ立場に立っていることを理解することができる。
冒頭で申立人のコメントとAさんのコメントを対比的に置いた本件放送の構成に前記のような問題があることは否定しがたいが、放送内容に虚偽がなく、番組全体を見たときには申立人の立場を理解することが可能である。したがって、この構成の問題について、放送倫理上の問題があるとまではいえない。

ただし、被申立人は、コメントそのものの引用に誤りがない場合でも、前提となる事実を説明しないままにコメントを冒頭で紹介したり、一見すると意見が正反対であるように見える他のコメントと対比したりするなどの構成のあり方によって、視聴者に誤解を与える可能性が生じることを認識するべきである。
この点に留意すれば、被申立人は、限られた時間内で、たとえばAさんと申立人とで対比的な構成を取るとしても、イレッサの致死的な副作用について、Aさんの治療環境は添付文書の警告欄に記載がなされ医師に致死的副作用が認識されている状況下のものであること、これに対して申立人の娘の治療環境においては、致死的ないし重篤な副作用情報が存在したにもかかわらず、副作用に関する十分な警告の記載が添付文書に存在しなかったことをより端的に示すことなど、それらの工夫をすることができたのではないか。そうすれば、致死的ないし重篤な副作用の発生する可能性のあることを、患者も認識した上で治療を選択すべきであるとする点では両者が共通していることを、視聴者がより容易に理解できたとも考えられる。」


◆ 少数意見

これに対し,林香里委員と大石芳野委員の少数意見は,以下のとおり,本件放送には放送倫理上問題があったというものです.

「委員会多数意見は、問題となる放送内容の事実関係を個別に検証し、それらが放送倫理上問題ありとはいえないと判断した。また、本件放送の企画意図について、被申立人から申立人への事前説明もあったという点で、コミュニケーションの齟齬はあったものの、この点でも放送倫理上、問題ないと結論している。

しかし、私たちは、以下の観点から、本件放送は、放送倫理上問題があったと判断する。
本件放送において問題にされるべき点は、内容の個別の真偽や、意思の疎通の有無というより、申立人がどのような全体の文脈に埋め込まれ、いかなる人物として登場しているか、そして本人はそれをどこまで承知していたかをめぐるものであると考える。その点において、被申立人は、申立人を長く知り得る立場にあるにもかかわらず、彼のこれまでの「イレッサの薬害」をめぐる主張や証言に配慮をせず、長年の立場と主張を番組内容に合わせる形で断片的かつ一方的に利用したという印象が否めない。

申立人の娘は、副作用を十分承知せずにイレッサを服用し、激しい副作用のために亡くなった。こうした体験をもつ申立人は、「薬害」についての問題提起をライフワークとしてきた。他方、被申立人は、「薬害」についてこれまで熱心に追跡・報道してきた実績がある。したがって、申立人と被申立人は、「薬害」の定義を真剣に考えてきたという点で、放送のテーマを十分に共有していると言える。申立人は、まさにこのうな経緯から、被申立人に多大な信頼を置き、取材にも応じてきたのだった。しかし、そうであるからこそ、申立人の立場からすると、本件放送において、自分のかねてからの主張が、以下に述べるような一方的な取り上げ方をされるのを見てショックを受けたことは、察して余りある。

① 本件放送は、被申立人の主張するとおり、「薬害の定義とは何かを根源的に問う」ものである。
そこで、番組では、薬の効果が劇的であり、かつ副作用も激しいイレッサという薬を例にして、「薬害」とは何かを、主に二項対立的論争として提示した。こうした二項対立は視聴者にとってわかりやすく、テレビ報道の手法として、そのような提示の仕方自体に問題があるとはいえない。
しかし、問題は、その際、申立人がイレッサの副作用で娘を亡くした者として、副作用とリスクの問題を強調して「薬害」と捉える側として提示される一方で、そのほかに登場する患者や医者は、副作用のおそれがあっても薬が効くという理由から「薬害」と捉えない側として描出されている点である。
この対照性には、薬が「効く(副作用小)/効かない(副作用大)」が重要な軸となっている。
しかしながら、申立人は、「薬害」をそのような対立軸で争ってきたわけではなく、また、申立人からすると、この定義は一面的なものである。他方、申立人のこうした「薬害」への理解については、被申立人(放送局)は、取材を通して十分認識してきたはずである。多数意見は、こうした提示の仕方を個別の事実に虚偽がなく、放送時間の制約という点を斟酌して、放送倫理上問題なしとしているが、私は、この提示の仕方こそ、番組全体の構想を規定する根幹部分であり、申立人と被申立人の関係に亀裂を起こしたと考える。

② さらに、前編最後の部分において、新薬の副作用による被害は、早期承認によって拡大するという医師の主張が挿入される。
これも放送局側の「薬害」定義の流れをつくる重要なコメントのひとつである一方、申立人の「薬害」の理解とは、実質的に係累点のないコメントだった。
申立人側から見ると、彼の「薬害」の争点は、あらかじめ知り得たはずの副作用が薬の説明書に明示されておらず、さらに副作用の程度も致死的な転帰をたどる極めて深刻なものである点の記載もなかったことであった。
申立人が主張するとおり、イレッサの承認時点においてすでに明らかだった情報の開示が十分ではなかったということが、彼の「薬害」の定義だったわけで、承認のタイミングの問題とは関係がない。
しかし、申立人は、本人の意志とは関係なく、このように構成された全体文脈の中に埋め込まれ、しかもキーパーソンとして引用された。そのことによって、申立人が自らの人生を賭けた「薬害」のライフワークを否定されたと考えても無理はない。

③ 多数意見では、被申立人が、申立人にあらかじめ放送局側の企画や取材意図を説明したということでもって、従来の事例にはあてはまらず、放送倫理上問題があると判断するには至らなかった。すなわち、多数意見では、申立人と被申立人の争いは、双方で了解したかどうかという「コミュニケーションの問題」とし、主に被申立人側が事前に説明はしたという点をもって、放送倫理上問題なしとしているのである。
しかし、ヒアリングの際、申立人は、もし以上のような今回の企画を承知していたとしたら、まったく異なった対応をしていたと証言している。
放送内容を精査した上で、このような申立人の証言をもとに考えるならば、本件放送をめぐる問題は、説明や了解の有無というコミュニケーションの問題のみならず、放送局側から見た薬害についての番組の一面的取り上げ方という番組内容、さらにそうした文脈に了解なく自分が位置づけられたことへの二重の怒りであろう。
総合すると、本件放送の全体の文脈は、がんの治療薬をめぐって「効く/効かない」「副作用リスク大/小」といった軸を中心に「薬害」の定義を問う。現代の医療現場において、そのようなテーマ設定をし、掘り下げていく報道は重要であり、私たちは、その取り上げ方そのものに異議を差し挟むつもりはない。
問題は、そこに異なる時間軸と対立軸で「薬害」を長年争ってきた申立人を登場させた点である。
申立人の立場―それは彼がイレッサによって娘を失った経緯からすれば十分正当性のあるものである―からすれば、本件放送は、「薬害」を一面的で不十分に扱ったと認識しても仕方がない。さらに、なによりも、そのような偏った文脈に、ほかでもなく、自らが人生を賭けた活動や言葉が、内容を承知せぬまま引用されてしまった無念さは想像に余りあり、申立人が本件放送を公正さに欠けると主張することには、十分な正当性があると考える。他方、放送局側は、申立人との長い交流や今回の報道のためにかけた十分に長い取材時間の中で、そうした認識の齟齬を予想できたはずではなかったか。
日本民間放送連盟の「報道指針」第2項「報道姿勢」(1)の中にも「取材対象者にし、常に誠実な姿勢を保つ」とある。これまで委員会でも、インタビューや収録シーンの位置づけに十分な説明と番組構成上適切な扱いが必要であることを指摘してきた(委員会決定5号、27号)。以上に鑑みて、私たちは、本件放送には放送倫理上問題があったと結論した。」


多数意見は,申立人を含む番組中の登場人物の対比のさせ方やコメントの使い方などにおいて視聴者の誤解を招きかねない点があるなど放送の一部に配慮不足があったと認められる,と認定しながら,番組内容そのものに放送倫理上問題があったとまではいえないという結論にいたっていますが,少数意見は,ストレートに放送倫理上問題があったという結論にいたっています.少数意見のほうが論理的で説得力があると思います.「ぎりぎりセーフ」というより「アウト」と判定すべき事案だったと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2013-04-01 02:40 | 人権

吉永小百合さん,国立ハンセン病療養所大島青松園訪問し,詩人塔和子さんと再会

吉永小百合さんは,ドキュメンタリー映画「風の舞~闇を拓く光の詩~」で塔和子さんの詩を朗読しました.映画「北のカナリアたち」の上映会を国立ハンセン病療養所大島青松園で開き,舞台挨拶を行いました.


四国新聞社「吉永小百合さん、大島青松園訪問/主演映画上映」」(2013年3月25日)は,次のとおり報じました.

「女優の吉永小百合さん(68)が24日、香川県高松市庵治町の国立ハンセン病療養所大島青松園であった主演映画の上映会に訪れ、舞台あいさつを行った。一般の参加者約100人に対し、映画の見どころのほか、同園在住の詩人塔和子さんとの出会いや、その詩の素晴らしさを紹介し、「この島の歴史を一人でも多くの人に知っておいてもらいたい」と訴えた。

 吉永さんは2003年、塔さんの半生を描いたドキュメンタリー映画「風の舞」で詩の朗読を担当。09年4月に同園を訪れて入所者と親交を深め、シダレザクラの苗木を贈るなどの交流が続いている。

 この日、上映されたのは北海道の離島を舞台にした「北のカナリアたち」。全国各地で上映会を開く中、塔さんとの再会を望む吉永さんが、主催する東映に働き掛け、同園での上映会が決まった。

 舞台あいさつで吉永さんは、「物語は違うけれど、苦悩する人の胸の内を描いた二つの映画と、二つの島を重ね合わせて考えることがある」と話し、「塔さんの詩に感激している。島の高台にあるモニュメント『風の舞』はぜひ見て帰ってほしい」と力を込めた。

 塔さんや入所者一人一人に声を掛けて回った吉永さん。「生きることに一生懸命になろうという塔さんの思いを、これからも伝えていく」と誓っていた。」



毎日新聞「吉永小百合さん:大島青松園を訪問 主演の「北のカナリアたち」上映会、入所者と再会喜ぶ /香川」(2013年3月26日)は,次のとおり報じました.

「女優の吉永小百合さんが24日、高松市庵治町の国立療養所大島青松園を訪れ、主演映画「北のカナリアたち」(2012年)の特別上映会で舞台あいさつを行った。入所する詩人、塔和子さんらとの再会を望む吉永さんが同園での上映会を望み、上映会が実現した。

 吉永さんは塔さんの詩に感銘を受け、詩をモチーフにした宮崎信恵監督の映画「風の舞」(03年)で、詩の朗読を担当した。その縁で塔さんと文通するなど同園の入所者と交流を続け、09年にも同園を訪れている。
 舞台あいさつで吉永さんは映画撮影時の秘話なども披露し、「きょうは皆さんと会えるのを楽しみにしていました。ゆっくりと楽しんでください」と話した。その後、会場を回って塔さんら入所者に声を掛け、再会を喜んでいた。
 吉永さんは「隔離されて入所した方々の厳しさは計り知れないものがあります。少しでもその思いが分かったらと思い続けています」と語った。【久保聡】」


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-29 03:14 | 人権

日弁連,新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(案)に対する会長声明

b0206085_1434967.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2013年3月22日,新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(案)に対する会長声明を発表しました.

「本年2月18日、政府は、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(案)の概要(以下「施行令案」という。)を発表した。

新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」という。)について、当連合会は、2012年3月22日、科学的根拠に疑問がある上、人権制限を適用する要件も極めて曖昧なまま、各種人権に対する過剰な制限がなされるおそれを含むものであるとして、成立に反対する会長声明を発している。特措法は第180回国会において可決成立したが、参議院において、「本法の規定に基づく私権の制限に係る措置の運用に当たっては、その制限を必要最小限のものとするよう、十分に留意すること。」、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言を行うに当たっては、科学的根拠を明確にし、恣意的に行うことのないようにすること。」との附帯決議がなされており、人権の制限が過度にわたることのないよう厳格な運用が求められる。ことに、特措法は、人権制限の具体的要件の定めを大幅に政令に委任していることから、政令は、人権を制限する権力行使を適切にコントロールしうるものとすることが重要である。

しかるに、施行令案は、特措法において多くの人権制限の前提となっている新型インフルエンザ等緊急事態の具体的要件を定めているが、その内容は極めて緩やかであり、かつ曖昧不明確であって、過度の人権制限を招来する危険性が高い。」

まず、特措法の定める、新型インフルエンザ等が「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるもの」であるという要件について、施行令案は、その具体的要件を、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度がいわゆる季節性インフルエンザにかかった場合に比して「相当程度高いと認められること」としているが、「相当程度高い」との要件は極めて緩やかかつ曖昧に過ぎる。また、「認められる」との要件についても、どの程度情報の蓄積が得られた段階で、どの程度の確度を要求するのか明らかでない。新型インフルエンザについては病原性を早期の段階で判断することは不可能であることが専門家により指摘されているところであり、国内発生初期の情報の不十分な時点で、明確な科学的根拠のないまま本要件に該当するとの判断がなされるおそれがある。特措法の上記要件は、極めて病原性の強い新型インフルエンザが発生した場合に限定する趣旨と考えられるが、施行令案の定める具体的要件はそのような場合に限定する機能を果たしていない。

また、特措法の定める、当該新型インフルエンザ等が「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある」との要件については、施行令案は、①確認された新型インフルエンザ等の感染者(症状等から感染が疑われる者も含む。)に対し新型インフルエンザ等を感染させた原因が特定できない場合、または②新型インフルエンザ等の感染者が不特定の者に対して新型インフルエンザ等を感染させる行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合、のいずれかに該当することで足りるとしている。すなわち、感染原因を特定できない感染者が1人でもいたり、感染後に人混みを歩いたり混雑した電車に乗ったりした感染者が1人でもいれば要件を充たすことになるが、新型インフルエンザ等の発生時にかかる事態が発生しない方が稀と考えられるのであり、これでは、特措法が新型インフルエンザ等緊急事態を限定するために前記のような要件を課した意味が全くない。

以上のとおり、施行令案の要件が緩やかかつ不明確であることにより、特措法の定める上記要件を逸脱する場合にまで新型インフルエンザ等緊急事態の成立が認められかねないものとなっている。これは、前記の参議院附帯決議の趣旨にも反する。

施行令における新型インフルエンザ等緊急事態の具体的要件については、極めて病原性の高い新型インフルエンザ等の感染が大規模に発生する差し迫った危険が生じた場合に適切に限定されるよう、より厳格かつ明確な要件を定めるべきである。」


重大な人権侵害のおそれ施行令なのに,反対の盛り上がりに欠けるのが気になります.


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-25 02:29 | 人権

労働政策審議会の障害者雇用分科会,精神障害者を障害者雇用促進法に基づく雇用義務の対象とすべき

日本経済新聞「精神障害者「雇用義務化を」 厚労省審議会」(2013年3月14日)は,次のとおり報じました.

「厚生労働省の労働政策審議会の分科会は14日、精神障害者を障害者雇用促進法に基づく雇用義務の対象とすべきだとする意見書をまとめた。これを受け、同省は改正法案を作成し、21日に開かれる分科会で議論する。分科会で合意が得られれば改正法案を今国会に提出し、5年後の2018年4月に施行したい考え。

 ただ企業側からは「精神障害者の雇用支援策を充実させ、効果を確認してから義務化に踏み切るべきだ」などと慎重な声も出ており、法改正の見通しは不透明だ。

 厚労省が雇用義務の対象と想定するのは精神障害者保健福祉手帳を持つ統合失調症、そううつ病、てんかんなどの患者。近年は精神障害者の就労意欲が高まり、大企業を中心に採用が増えている。

 障害者雇用促進法は企業や国、自治体などに一定割合以上の障害者を雇用するよう義務付けている。現行法は身体障害者と知的障害者が雇用義務の対象。企業の法定雇用率は1.8%で、今年4月から2.0%に引き上げられる。精神障害者の雇用が義務化されると、法定雇用率がさらに上がることになる。

 昨年6月時点の企業の障害者雇用率は1.69%。法定雇用率を満たさない企業は、国に納付金を支払う必要がある。」


労働・雇用分野における障害者の権利に関する条約は,障害者雇用率制度について積極的差別是正措置を講じることを求めています.
法改正実現までは紆余曲折があるでしょうが,とりあえず一歩前進です.

谷直樹

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by medical-law | 2013-03-14 19:54 | 人権