弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:無痛分娩事故( 30 )

大阪大医学部付属病院の妊婦健診と分娩の分担連携システムなど新たな取り組み

時事通信「無痛分娩集約を検討=健診と出産「すみ分け」-事故防止へ対応模索・大阪」(2017年10月8日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医が書類送検された事故など、無痛分娩(ぶんべん)中の死亡例が相次いで表面化する中、府内の医療機関では、分娩を設備や体制の整った中核病院に集約する試みなど、再発防止への取り組みが進められている。

 大阪大医学部付属病院は無痛分娩希望者を対象に、妊婦健診は提携した地域の個人医院などが行い、出産が近づくと同病院に転院させ分娩する仕組みの導入準備を進めている。
 欧米では、複数の産科医や麻酔科医が24時間体制で対応できる大病院に分娩を集約する「オープンシステム」が一般的だが、日本では地域の医院が健診から出産までを担うことが多い。事故多発の一因には、麻酔技術の不足や緊急時の体制不備があるとされる。
 阪大病院の木村正教授は新たな仕組みについて、「『最後まで同じ先生』でない不安はあるかもしれないが、代わりに高い安全を提供できる」と話す。健診から産後までの具体的な流れや費用面などを詰めている段階で、「地域と協力してモデルケースをつくりたい」と展望を語る。

 分娩中の異変を重大事故につなげないため、訓練に力を注ぐ地域病院もある。大阪府泉佐野市の「谷口病院」は、出血多量や心肺停止で中核病院に搬送が必要な場合の訓練を年に数回実施。谷口武医師は「訓練しておけば、焦らず対応できる」と話す。
 無痛分娩も行うが、麻酔後の経過観察などのチェックは徹底。万一に備え、緊急搬送先の中核病院との連携も日頃から深めている。「どんな施設でも絶対の安全はない。異変が起きた際の対応が求められる」と強調した。
 
 厚生労働省の研究班で長年、出産時の死亡例などを調査する三重大医学部の池田智明教授は「集約が不可能な地方もある。日常的に相談できるなど個人医院のメリットも大きい」と指摘。その上で、望ましい施設を選ぶポイントとして、医師と看護師がリスクを説明しているか▽緊急時の連携体制が十分か▽いつ陣痛が来ても無痛分娩に対応できるか-を挙げる。同教授は「妊婦側も危険性を認識することが必要だ」と話している。」


安全なお産のための取り組みが各病院で進むことを期待します.
同時に,各病院の努力だけではなく,制度的に安全なお産が可能となるように,また妊産婦が施設を選択できる情報を得有られるように,産科医療システム全体についても検討改善すべきと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-10-09 00:39 | 無痛分娩事故

和泉市の産婦人科医院院長を今年1月の無痛分娩事故について業務上過失致死の疑いで書類送検(報道)

NHK「無痛分べんで死亡 人工呼吸など不十分か 院長を書類送検」(10月6日)は,次のとおり報じました.

「ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院で「無痛分べん」で出産した31歳の女性が死亡した事故で、警察は女性が呼吸ができなくなった時に人工呼吸を行うなど十分な対応をしていなかったとして院長を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

書類送検されたのは大阪・和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」の老木正彰院長(59)です。

ことし1月、クリニックで大阪・枚方市の長村千惠さん(31)が麻酔で陣痛の痛みを和らげる無痛分べんで出産中に意識不明の状態になりました。
女の子の赤ちゃんは産まれましたが長村さんは10日後に低酸素脳症で死亡しました。
警察によりますと、院長が局所麻酔をした際に針が深く刺さりすぎて麻酔が余分に効いてしまい呼吸ができなくなったと見られ、長村さんは途中で「息がしにくい」と訴えていたということです。

また複数の専門医に意見を聞くなど捜査を進めた結果、警察は、呼吸ができなくなった時に院長が強制的に肺に酸素を送る人工呼吸を行うなど十分な対応を取らなかったため死亡した疑いがあるとして、6日、業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

警察のこれまでの調べに対し院長は「容体の変化が早く対応が追いつかなかった。パニックになった」などと説明しているということです。
院長の代理人の弁護士はNHKの取材に対し「現時点でコメントすることはありません」と話しています。
父親「娘の死をむだにしないで」
院長が書類送検されたことを受け、亡くなった長村千惠さんの父親の安東雄志さん(68)が大阪市内で会見し「娘の死をむだにせず、二度とこのようなことが無いようにしてほしい」と訴えました。

安東さんは三女の千惠さんについて、幼い頃から頑張り屋でしっかり者だったので、無痛分べんができる病院として老木レディスクリニックを選んだことについても「千惠がやることだったらと安心しきっていた」と話しました。
千恵さんの容体が分べん中に悪化してから救急車で運ばれるまで心肺停止の状態が続いていたということで、安東さんは「なぜ救命措置ができなかったのか」とクリニックの対応に疑問を呈しました。
千惠さんが亡くなったあと2歳の長女は夜中に急に泣き出して「ママに会いたい。ママに会いたい」と繰り返していたということですが、最近は笑顔を見せるようになってきたということです。
安東さんは麻酔医が立ち会うなど体制が整っている病院以外では無痛分べんをやるべきではないと指摘し「娘の死をむだにしないようにこういうことが二度と起こらないようにしてもらいたい」と述べました。
人気高まる無痛分べん
無痛分べんは出産の際に麻酔を使って陣痛を和らげる分べん方法で、近年人気が高まっています。
厚生労働省の研究班が10年前に行った調査では、無痛分べんが実施された割合はすべての出産の2.6%と推計されていました。
しかし、ことし日本産婦人科医会がおよそ2400の施設を対象に行った調査では、昨年度行われた無痛分べんは全国で3万6000件余りで全体の6.1%で、増える傾向にあります。

また、このうちの5割が病院ではなく、規模が小さい今回のような「診療所」で行われていたということです。
トラブル相次ぎ産婦人科医会などが対策
無痛分べんの事故やトラブルが相次いでいることを受け、国や専門家の間では対策が検討されています。

日本産婦人科医会はことし4月、無痛分べんを行う際には十分な医療態勢を整えることを医療機関に求める緊急提言を行ったほか、全国およそ2400の分べん施設を対象に実態調査を行い、無痛分べんによる事故が全国で何件起きているのかなど調査と分析を進めています。
厚生労働省もことし8月、産科や麻酔科の医師などでつくる研究班を立ち上げ、無痛分べんの安全な実施手順の作成や、医師への研修態勢の整備などを進めています。
専門家「トラブルに難しい対応必要なことも」
これまで1000件以上の無痛分べんを手がけた経験のある大阪大学大学院麻酔・集中治療医学教室の大瀧千代講師は、無痛分べんは正しい安全管理のもとで行えば非常に効果的な医療行為だと話しています。
その一方で「無痛分べんでは分べん中ずっと麻酔の管理に注意する必要があり、何かトラブルが生じた場合には難しい対応が必要になることもある。十分な医療態勢が整わない場合は事故につながるリスクがある」と述べ、無痛分べんでは安全のために十分な態勢を整えることが必要だと指摘しました。」


朝日新聞「無痛分娩めぐる死亡事故、父親が医院側を提訴へ 大阪」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老木(おいき)レディスクリニック」で1月、麻酔で痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で出産中の長村千恵さん(当時31)=同府枚方市=が意識不明になり、その後死亡した事故で、父親の安東雄志さん(68)=同府富田林市=が6日、大阪市内で記者会見を開き、「娘の死を無駄にせず、事故が二度とないようにしてほしい」と訴えた。医院側に損害賠償を求める訴訟を起こすことも明らかにした。

 安東さんは、同クリニックでの出産について、「千恵が選んだのなら間違いないだろうと思った。後悔している」と声を詰まらせた。生まれた次女は間もなく9カ月。「自分の命に代えて産んでくれた。元気に育ってほしい」と話した。

 府警は6日、院長(59)を業務上過失致死容疑で書類送検している。損害賠償訴訟では、千恵さんが呼吸困難に陥った後に適切な処置がなされなかったとされる点や、麻酔科医が立ち会っていなかったことなどについて問う方針という。」


産経新聞「娘の死、無駄にしないで」無痛分娩の死亡女性の父が会見」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老(おい)木(き)レディスクリニック」で1月、出産時の痛みを麻酔で和らげる「無痛分(ぶん)娩(べん)」で出産した長(なが)村(むら)千恵さん=当時(31)=が死亡した事件で、クリニックの院長(59)が業務上過失致死容疑で書類送検されたことを受け、父親の安東雄志さん(68)が6日、大阪市内で会見した。麻酔ミスから呼吸困難となり、亡くなった千恵さんについての思いを語り、「娘の死を無駄にしないでほしい」と再発防止を訴えた。

 1月10日の出産当日、クリニックまで送る車内での会話が最後になった。腰痛を抱えていた千恵さんは、負担の少ない無痛分娩を選択。クリニックの評判がいいことを熱っぽく語っていた。「今考えると、本人も不安だったんだと思う」と安東さんは唇をかんだ。

 千恵さんの死後、自ら院長に聞き取りをするなど原因を追いかけ続けてきた。大阪府警の捜査では、呼吸不全の千恵さんに対し人工呼吸すら行われなかったことが判明。「なぜ蘇生措置ができなかったのか」と疑問は消えない。

 千恵さんは三女で「頑張り屋で、しっかりした娘だった」という。結婚して、3年前に第1子となる女児を出産。孫を連れて実家に顔を出してくれることが、安東さんにとって何よりの楽しみだった。

 帝王切開で生まれた千恵さんの次女は、元気に育っているという。「千恵が自分の命に代えて空気を子供に送ったのでは」と話し、「同じことが二度と起こらないよう娘の死を医療の発展につなげてほしい」と述べた。

 一方、会見に同席した安東さんの代理人弁護士は、クリニック側への損害賠償請求訴訟を検討することを明らかにした。」


毎日新聞「無痛分娩 遺族「再発防止を」 院長書類送検」(2017年10月7日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老木(おいき)レディスクリニック」で無痛分娩(ぶんべん)に臨んだ長村千恵さん(当時31歳)=同府枚方市=が死亡した事故で、大阪府警が院長(59)を業務上過失致死容疑で書類送検したことを受け、長村さんの父親の安東雄志さん(68)=同府富田林市=が6日、大阪市内で記者会見した。安東さんは「娘の死を無駄にせず、二度と悲惨な事故が起きないようにしてほしい」と訴えた。

 院長から当時、「やれることは尽くした」と言われたという安東さんは会見で「それでも娘は亡くなった。落ち度があったと院長に考えてもらいたい」と話し、「残された2歳の孫は夜中に『ママ』と泣き出す。可哀そうだ」と涙ぐんだ。

 同席した山口健一弁護士は「麻酔が効きすぎて呼吸困難になっていたのに、アレルギー反応と院長が誤解した。呼吸回復の措置が遅れた上、人工呼吸器なども使わなかった」と対応を批判。医院の体制についても「麻酔科医が常駐していないのに、複数常駐しているかのようにホームページでアピールしていた」と疑問視した。損害賠償を求め提訴も検討しているという。【村田拓也】」


読売新聞「無痛分娩死で院長「パニックで人工呼吸できず」」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「 老木 レディスクリニック」で1月、麻酔で出産の痛みを和らげる無痛 分娩 をした女性が死亡した事故で、担当した男性院長(59)が府警の調べに、「人工呼吸をしようとしたが、パニックになりできなかった」と供述していることが、捜査関係者への取材でわかった。

 府警は、救命に必要な処置を怠ったとして、6日に院長を業務上過失致死容疑で書類送検する。

 無痛分娩を巡り、医師が書類送検されるのは異例。院長は容疑を認めている。

 捜査関係者によると、女性は同府枚方市の長村千恵さん(当時31歳)。院長は1月10日、長村さんに局所麻酔を実施。長村さんが呼吸困難を訴えたのに、経過観察を怠って容体急変の兆候を見逃したうえ、急変後も人工呼吸を行わず、同20日、搬送先の病院で、低酸素脳症で死亡させた疑いが持たれている。

 院長は「容体変化が急で、対応が追いつかなかった」とも話しているという。子どもは搬送前に帝王切開で生まれ、無事だった。

 司法解剖結果などから、長村さんは麻酔が効き過ぎて呼吸困難に陥ったことが判明。こうした場合、器具を使って人工呼吸を行えば回復が見込めるが、院長は帝王切開を優先したという。」


読売新聞「容体急変に対応できず、ミス重ねる…無痛分娩死」(2017年10月6日)は,次のとおり報じました.

「見落としや誤診、判断ミス――。

 大阪府和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で無痛分娩をした女性が死亡した事故で、書類送検された老木正彰容疑者(59)が容体急変などに対応できず、ミスを重ねていたことが、府警の捜査などで明らかになった。重大事故が相次いで発覚し、安全対策の検討が始まった無痛分娩。専門家からは早期の対応を求める声も上がる。

 「息がしにくい」。第2子のお産に臨んだ長村千恵さん(当時31歳)は1月10日午後3時32分、局所麻酔を受けた後に呼吸苦を訴えた。スタッフから「すぐに楽になるから」と声をかけられてうなずいたが、意識を失った。

 老木容疑者は、麻酔薬に対する急性アレルギーが起きたと判断。治療薬を投与したが、血圧や脈拍などは下がり続けた。長村さんにじんましんや血管拡張などのアレルギー症状はみられず、医療関係者は「明らかな誤診だった」とする。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.(私が担当したのは神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故の件です.こちらは示談で解決済みです.)
上記報道の2017年1月の老木(おいき)レディスクリニックの無痛分娩事故は,報道で判断する限り,明らかに有責で,院長が責任を負うべきと思われます.
また,単にこの院長が責任を負うだけではなく,同様の事故が起きることのないよう,無痛分娩実施のあり方を整備していくことも必要と思います.

【追記】

読売新聞「無痛分娩死、急変時処置「蘇生に有効と言えず」(2017年10月08日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院「老木レディスクリニック」で1月、無痛分娩をした女性が死亡した事件で、専門医らでつくる医療事故調査委員会が報告書をまとめ、院長・老木正彰容疑者(59)(業務上過失致死容疑で書類送検)による容体急変時の処置について「蘇生に有効とはいえなかった」と指摘していたことが、わかった。

 府警も緊急対応に過失があったとしており、医学的見地からもミスが裏付けられた。

 2015年に始まった医療事故調査制度に基づき、第三者機関「医療事故調査・支援センター」(日本医療安全調査機構)が実施。産婦人科医や麻酔科医らが、老木容疑者らから聞き取りなどを行った。

 読売新聞が入手した報告書によると、同医院で出産に臨んだ長村千恵さん(当時31歳)は、局所麻酔が効き過ぎたために容体が急変した。老木容疑者は呼吸を確保するため、気道に管を通す気管内挿管を実施したが失敗し、母体の血流を改善させるために帝王切開を実施。この判断について「(血流の)改善が主たる効果で、蘇生のための気道確保に有効とはいえない」とした。また、器具による人工呼吸が行われておらず、「著しい低酸素状態が(病院への)搬送まで持続していた」とも指摘。人工呼吸が優先されるべきだったとした。」



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by medical-law | 2017-10-07 11:09 | 無痛分娩事故

東京新聞,無痛分娩」医療体制確認を

東京新聞「相次ぐ重大事故 「無痛分娩」医療体制確認を」」(2017年9月26日)は,次のとおり報じました.

「お産の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」で母子が死亡したり、重い障害を負ったりする事故が相次いでいる。厚生労働省は研究班を発足させ、実態の把握と安全に出産できるための体制づくりを検討しているが、妊娠中の女性にとっては、無痛分娩を選ぶかどうか、お産をどこでするかの判断は待ったなしだ。無痛分娩に詳しい麻酔科医の意見を聞き、事故が相次ぐ背景と選択の方法を探った。

 (小中寿美)

 事故は四月以降、次々と発覚した。いずれも麻酔後に容体が急変し、一部は民事訴訟や刑事告訴に発展している。「直後に急変した症例は、おそらく無痛分娩が直接的な原因」。都立多摩総合医療センターの麻酔科指導医、田辺瀬良美(せらび)さん(44)は話す。

 考えられるのは麻酔薬が血管内に入って起こる「局所麻酔薬中毒」や、脊髄の近くまで管が入り「全脊髄くも膜下麻酔」の状態になったこと。いずれも日本産科麻酔学会ホームページの「無痛分娩Q&A」に「まれに起こる不具合」として掲載されている。想定されるリスクというわけだ。

 「通常は麻酔薬を投与するたびに管を吸引し、血液や髄液が逆流しないことを確認する。少しずつ投与し、異変に気付いて対応すれば大事には至らない」と田辺さん。万が一急変したらスタッフを集め、心臓マッサージなどの救命に当たることが肝要という。

 しかし、母子を救えない事例が相次いだ。田辺さんは、背景に▽担当した医師が合併症の予防や対策に習熟していない▽人手が足りず麻酔後の監視が不十分▽急変時の訓練や準備をしていない-などの状況があったと推測している。

 無痛分娩が普及する欧米では施設の集約化が進み、産科の病棟に麻酔科医が常駐。いつ陣痛が来ても専門医が無痛分娩に対応する体制が整っているという。一方、国内は分娩の半数が診療所で行われ、麻酔科医は不足。人手を確保するため陣痛を誘発する「計画分娩」が行われ、陣痛促進剤を使うことが多い。子宮の収縮が強くなりすぎるなど副作用のリスクも加わる。

◆麻酔医の習熟必要

 日本産婦人科医会の調査によると、分娩全体に占める無痛分娩の割合は二〇一六年度が6・1%。国が〇八年に調査した〇七年の2・6%から急増。ニーズは確実に高まっている。

 心臓に持病があるなど出産にリスクがある女性の場合、無痛分娩を選択できれば帝王切開を避けられる可能性が出てくる。妊婦の負担を軽減できるのは大きなメリットで、「痛みや極度の疲労を避けられるなら、二人目を産んでもいいと考える人もいるはず」と田辺さんは話す。田辺さん自身、第二子の出産では無痛分娩を選択した。

 今は病院で行うすべての無痛分娩に携わる田辺さんだが、「こつをつかむのに苦労した」という。お産の進み方や痛みの感じ方は人それぞれ。無痛分娩の麻酔は投与が長時間にわたるほか、薬の量や種類を調整するなどの技術が必要になる。この技術に習熟した専門の医師は少なく、「体制が整わないまま、なし崩し的に広まったことが重大な事故につながったのでは」とみている。

 無痛分娩を考えている妊婦は、お産する場所をどう選べばいいのか。「病院の体制を必ず確認すること。医師が複数いて、可能なら麻酔科医が麻酔を担当しているところがいい」。帝王切開や器械分娩となった件数や合併症などのリスクについて尋ね、しっかり説明できるかどうかもチェック。計画分娩か自然の陣痛に対応するかも確認し、持病やアレルギーがある場合は申告する。「利益とリスクをよく考えて選択を」と助言している。

<無痛分娩> 脊髄と背骨の隙間に背中側から細い管を挿入し、局所麻酔薬と医療用麻薬を継続的に注入する「硬膜外麻酔」が一般的。お産の痛みを伝える脊髄に近いため、強い鎮痛効果がある。疲労が少なく産後の回復が早いとされる一方、頭痛や尿が出にくくなるといった副作用や、鉗子(かんし)・吸引分娩が増えるなどリスクも。保険適用外で10万円前後の追加費用がかかる。」



上記を整理すると,
▽担当した医師が合併症の予防や対策に習熟していない → 研修し習熟した医師を認定
▽人手が足りず麻酔後の監視が不十分 → 医療体制の充実した認定施設のみで実施
▽急変時の訓練や準備をしていない → 継続的研修義務
が必要となります.

合併症の予防や対策に習熟していない医師でも担当でき,人手が足りず麻酔後の監視が不十分で急変時の訓練や準備をしていない施設でも無痛分娩を実施できる現状を変える必要がありまう.


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-26 22:55 | 無痛分娩事故

順天堂大学順天堂医院が陣痛促進剤投与後の子宮破裂による死産の事案で提訴される(報道)

毎日新聞「無痛分娩 死産、順天堂を提訴 入院の女性と夫」(2017年9月19日)は,次のとおり報じました.

「順天堂大順天堂医院(東京)で2015年、麻酔を使って出産の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」の際に子宮が破裂して死産になったのは医師らの過失が原因だとして、入院していた女性と夫が病院を運営する学校法人と医師らに計約1億4000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

 提訴は15日。訴状によると、女性は15年2月4日、第1子を出産するため順天堂医院に入院。知らない間に陣痛促進剤を投与され、6日に心肺停止状態に陥り、死産となった。

 医師らが自然に陣痛が来た状態で陣痛促進剤を投与し、子宮が収縮していたのに、麻酔で痛みが消されたため破裂の兆候を見逃したと夫婦は主張。必要な対処を怠り、子宮の全摘出で妊娠ができなくなったとしている。順天堂医院は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。」


報道の件は私が担当したものではありません.貞友義典先生が原告代理人です.
上記報道からは,陣痛促進剤の使用により過強陣痛となり子宮破裂に至った事案のようですが,陣痛促進剤を使用するときは必ず分娩監視装置を付けますので,麻酔を使用していても医師が過強陣痛等を見逃すことは本来ないはずです.分娩監視装置の記録はどうなっていたのでしょうか.

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by medical-law | 2017-09-19 07:00 | 無痛分娩事故

朝日新聞社説,無痛分娩安全確保へ基準作りを/京都新聞社説/読売新聞社説/山陽新聞社説

2017年9月9日の朝日新聞社説「無痛分娩 安全確保へ基準作りを」は,「安心して赤ちゃんを産めるよう、医療界は全国の実情を調べるとともに、安全確保のための基準作りを急がねばならない。」と述べています.

「お産が大きな病院に集約されてきている欧米と違い、日本ではおよそ半分を診療所が担う。無痛分娩も半数以上は診療所でおこなわれている。

 麻酔を専門で担当する医師を常駐させることが難しい場合、異常時に備え、産科医や看護師、助産師は日ごろからどのような態勢をとるべきなのか、近くの医療機関とどのように連携するかについても、具体的に検討することが欠かせない。

 医師らが正しい知識と技術を習得できる場を整備するとともに、研修などを受けて技量を備えた者を学会で認定し、それが利用者にもわかるようにしておく仕組みも必要だ。

 出産時の妊婦や新生児の死亡率でみると、日本は最も安全にお産のできる国だ。それでもリスクがなくなることはない。麻酔のメリット、デメリットを含め、医師は正確な情報を伝え、妊婦や家族は疑問があれば納得するまで話を聞く。お産に関してもそんな姿勢が大切だ。」


2017年9月⒌日の京都新聞社説「無痛分娩  安心して臨める体制を」は,「医師は合併症などのリスクを十分に説明し、妊婦側もしっかり理解して選択したい。」と述べています.

「総合病院での出産が主流の欧米と違い、日本では小規模な医院やクリニックでの出産が多い。麻酔の専門医が少ない事情もあり、未熟な医師が、母子の容体急変時の救命体制が不十分なまま、世の中のニーズや営利を優先して施術している可能性がある。
 無痛分娩は一般的に、脊髄に近い「硬膜外腔(がいくう)」に細いチューブで麻酔薬を注入する。注入箇所を誤れば、薬が効き過ぎて妊婦が意識を失ったり、母子ともに障害を負ったりすることがある。
 今年1月と5月に相次ぎ亡くなった女性のケースは、それぞれ大阪、神戸のクリニックでの施術後に意識不明になったという。京都では12年と16年に京田辺市の同じ医院で母子が重い障害を負った例が判明。家族が小規模な産科の安全体制に疑問を投げかけている。
 大阪と、12年の京都のケースはそれぞれ業務上過失致死、同傷害の容疑で捜査中だが、国や医学界も過去の事故を詳しく調べ、改善点を洗い出して再発防止につなげねばならない。研修や訓練による個々のスタッフのレベル向上に加え、産科と麻酔科の連携、大病院と診療所の間の緊急時のサポートなどを強化したい。」


2017年8月25日の読売新聞社説「無痛分娩 事故抑止へ問題を洗い出そう」は,「無痛分娩でもレベルアップを図るべきだ。専門医の学会が中心となり、安全に実施するためのガイドラインを策定する必要がある。研修なども増やしたい。診療所で妊産婦の容体が急変した場合に、即座に対応できるよう、大病院との連携体制を強化することも欠かせない。無痛分娩には一定のリスクが伴う。出産する側も、それを認識することが大切である。疑問点や不安な面があれば、医師から十分に説明を受け、納得した上で、出産の方法を選択したい。」と述べています.

2017年08月26日の山陽新聞社説「無痛分娩 安全に実施できる体制を」は,「研究班は無痛分娩の安全な管理体制や研修のあり方などについて検討し、提言をまとめるという。妊産婦が、より安心して無痛分娩を選べる対策を示してもらいたい。」と述べています.

 「欧米では総合病院での出産が一般的だが、日本では小規模な診療所で出産する人も多い。16年度に国内で実施された無痛分娩のうち、半数以上は診療所で行われている。無痛分娩の大半は安全に実施されているようだが、気になるのは医療体制が十分とはいえない施設でも行われていることである。

 神戸市の産婦人科医院で15年9月に無痛分娩で出産した女性と生まれた子どもが重い障害を負ったケースでは、麻酔薬を注入した後、院長は外来診察に行き、女性が呼吸困難に陥った時にそばにいなかった。事故当時、院内の医師は院長1人だったという。女性は意識が戻らないまま、今年5月に死亡した。

 麻酔は麻酔科医でなくても施すことができ、産科医1人の診療所でも無痛分娩は可能だ。だが、麻酔を使う以上はリスクを伴う。経過を十分に観察すべきなのはもちろん、容体急変に備えて、他の医療機関との連携態勢なども整えておく必要がある。」



無痛分娩事故問題についての方向性(実態調査,ガイドライン作り等)は見えてきたように思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-09-09 15:03 | 無痛分娩事故

神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故の男児死亡報道

神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故の男児(平成27年9月2日生まれ)が平成29年8月15日に兵庫県小野市の病院で亡くなりました.神戸市西区のクリニックの産科医が硬膜外麻酔後の観察義務を怠った過失により,男児は搬先の病院で帝王切開で出産しましたが,重症新生児仮死及び低酸素性虚血性脳症の重篤な後遺障害を負い,意識がなく体が動かない状態が続き,2歳を待たずに亡くなりました.遺族(夫)は,母に一度も抱かれることなく亡くなった長男が,今はむこうの世界で二人一緒になり,母に抱かれている,と思うしかない,と言っていました.妻に続いて長男まで亡くした遺族(夫)は深い悲しみに沈んでいます.
このような事故は,二度と起こしてはいけないと思います.
厚生労働省の研究班の検討がはじまりましたが,医療体制の充実等につながる具体的成果を期待いたします.

読売新聞「無痛分娩の1歳男児死亡…出産時に重い障害」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「出産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩を巡り、神戸市西区の診療所で2015年に起きた事故で、重い障害を負って誕生した男児が今月15日に亡くなっていたことがわかった。1歳11か月だった。読売新聞の取材に遺族が明らかにした。同じく重い障害を負い意識不明だった母親は今年5月に35歳で死亡している。
 事故は15年9月、おかざきマタニティクリニックで起きた。母親が、無痛分娩の麻酔薬を注入された直後に急変。搬送先の大学病院で帝王切開により男児を出産したが、母子ともに意識不明の寝たきりになった。」


産経新聞「『無痛分娩』で意識不明の1歳長男も死亡 神戸のクリニック」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市西区の産婦人科医院「おかざきマタニティクリニック」で平成27年9月、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で長男を出産した女性に重い障害が残り、その後死亡した事故で、意識不明となっていた長男も今月15日に死亡していたことが30日、遺族の代理人弁護士への取材で分かった。1歳11カ月だった。
 弁護士によると、長男は出産直後から脳に障害を負い、肺炎を患うなど重篤な状態が続いていたという。
 女性は27年9月2日に出産。男性院長が背中から脊髄近くに細い管を入れ麻酔薬を注入して無痛分娩に臨んだが、院長が外来診察のため女性のそばを離れた後、呼吸困難になった。事故当時、院内に医師は院長1人だった。
 女性は大学病院に搬送され帝王切開で出産したが、母子ともに寝たきりの状態が続き、女性は今年5月に35歳で死亡した。クリニックは昨年12月、男性院長が麻酔注入直後に離れた過失を認め、示談金を支払った。


毎日新聞「無痛分娩事故 1歳長男も死亡 神戸」(2017年8月30日)は,(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「麻酔で出産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)を巡り、神戸市の産科診療所で2015年に起きた事故で、重い障害を負って生まれた男児(1歳11カ月)が今月15日に亡くなったことが遺族の代理人弁護士への取材で分かった。母親も重い障害で意識不明となり、今年5月に35歳で死亡している。
 事故は神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」で15年9月に発生。母親は背中から管を差し込み、麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受けた直後、容体が急変。搬送先の別の病院で帝王切開で生まれた長男は、母親とともに脳に大きなダメージを負い、意識不明の状態が続いていた。医院側は昨年12月にミスを認め、遺族に示談金を支払っている。
 無痛分娩については、京都府京田辺市や大阪府和泉市の医院でも母子が死亡したり、重い障害が残ったりする事故が起きている。【藤田愛夏】」


朝日新聞「無痛分娩の女性死亡事故、男児も死亡 神戸の産婦人科」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市の産婦人科医院で2015年、麻酔でお産の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)をした女性と生まれた男児が重い障害を負い、女性が今年5月に死亡した事故で、男児も今月15日に死亡した。1歳11カ月だった。
遺族によると、女性は神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」で無痛分娩のための麻酔を受けた直後に体調が急変。意識不明のまま今年5月に35歳で亡くなった。搬送先の病院で帝王切開で生まれた男児も、重い脳性まひとなり、意識不明の状態で入院していた。男児の症状は重く、肺炎にかかるなどしていたという。
 女性の夫は今夏、厚生労働相や関連する学会あてに、安全対策を設けることや、体制が整っていない施設での無痛分娩の実施制限の検討などを求める文書を出している。
 同医院の院長は「改善を積み重ね、外部の専門医に、十分な再発防止策は講じられていると判断された」などとするコメントを、8日に出している。(石塚翔子)」



共同通信「無痛分娩、神戸の1歳長男も死亡」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市西区の産婦人科医院「おかざきマタニティクリニック」で2015年9月、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で長男を出産した女性に重い障害が残り、その後死亡した事故で、意識不明となっていた長男も今月15日に死亡していたことが30日、遺族の代理人弁護士への取材で分かった。1歳11カ月だった。
 弁護士によると、長男は出産直後から脳に障害を負い、肺炎を患うなど重篤な状態が続いていたという。
 女性は15年9月2日に出産。男性院長が背中から脊髄近くに細い管を入れ麻酔薬を注入して無痛分娩に臨んだが、院長が外来診察のため女性のそばを離れた後、呼吸困難になった。」


毎日放送「無痛分娩で重い障害の男児も死亡 神戸の産婦人科医院」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「おととし9月、神戸の産婦人科医院で出産時の痛みを和らげる「無痛分娩」で出産後に母親が死亡し、自身も重い障害を負っていた1歳の長男が8月15日に死亡していたことがわかりました。
 おととし9月、神戸市西区の産婦人科医院「おかざきマタニティクリニック」で、出産時の痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した母親が意識不明に陥り、今年5月に35歳で亡くなりました。遺族の代理人によりますと、生まれた長男も脳に重い障害を負って意識不明のままでしたが、8月15日に1歳11か月で亡くなったということです。
 無痛分娩をめぐっては、今年の春以降に母親や子どもが亡くなったり、障害を負ったりする重大事故が京都や大阪などで相次いで発覚していることを受けて、厚生労働省が実態調査などを進めています。 」


朝日放送「「無痛分娩」事故 1歳男児死亡 神戸」(2017年8月30日)は,次のとおり報じました.

「神戸市の産婦人科医院で「無痛分娩」をめぐって起きた事故で、意識不明だった1歳の男の子が、今月、亡くなっていたことがわかりました。
男の子の母親は、2015年9月、神戸市西区の「おかざきマタニティクリニック」で、麻酔を使って痛みを和らげる「無痛分娩」で出産に臨みました。しかし、背中から注入した麻酔が脊髄の中心近くにまで到達したため、呼吸困難に陥り、別の病院に緊急搬送されて男の子を出産しました。母子ともに意識不明の状態が続き、母親は今年5月に35歳で亡くなりましたが、今月15日に男の子も死亡していたことがわかりました。「無痛分娩」をめぐる事故は京都や大阪でも相次いでいて、遺族側は「医療体制の充実を図ってほしい」とする要望書を厚生労働省などに提出しています。」



谷直樹

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by medical-law | 2017-08-30 11:56 | 無痛分娩事故

「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究」班第1回公開検討会

本日,「無痛分娩の実情把握及び安全管理体制の構築についての研究」班第1回公開検討会が開かれましたので,傍聴いたしました.

研究代表者の海野信也氏から,本研究の概要について,次のとおり説明がありました.

研究の概要
・無痛分娩については、平成21年度に厚生労働科学研究「妊産婦死亡及び乳幼児死亡の原因究明と予防策に関する研究」において、分担研究「全国の分娩取り扱い施設における麻酔科診療実態調査」により調査が行われているが、これ以後に無痛分娩に関する全国施設調査は行われておらず、その現状は不明である。しかしながら、無痛分娩時に発生した重篤事例が報告されているため、実態把握と安全管理体制の構築が急務である。
・現状の実態把握と分析を行い安心・安全な管理体制を構築することが緊急に必要である。
・具体的には、日本産婦人科医会と連携して無痛分娩の実態に関する実態把握および正常分娩と比較した際の安全性などについての分析を行い,それを元に安全管理に関する研究を行う。 
・研究組織としては、産婦人科・麻酔・周産期領域など、無痛分娩に関わる職種に幅広く参加してもらうことで、迅速な分析と適切な安全管理体制の構築を進めていく。


研究班の基本方針
・特に,検討のプロセスの公開・透明化に配慮して研究を進める。
・「今回の事故報道等に関連して日本社会に生じている無痛分娩の安全性に関する懸念」を,診療内容の透明化,公開,共有を通じて払拭していくための方策を立案,共有する。
・「医療安全に関してはダブルスタンダードは社会的に許容されない」という認識のもと、世界標準と同等のレベルの、病院・診療所で共通の安全対策の標準的方法に関するコンセンサス形成をはかる。

研究班の任務
・課題の抽出
 -医会調査の評価
 -諸外国のガイドライン等の検討
・無痛分娩施設の診療実態の透明化推進
・安全対策に関するコンセンサスの形成→標準的方法の提示
・安全な無痛分娩体制構築の前提となるチーム医療推進のための研修体制の構築
・公開フォーラムの開催等による社会への情報提供

研究の進め方
・本研究課題の性質上、検討内容が専門性の高いものとならざるを得ない。しかし、その一方で、社会的関心の強さを考慮すると、検討過程を可能な限り透明化することも必要となっている。今年度に限定された特別研究であり、迅速に進める必要がある。
・そこで,本研究では,「公開検討会」と「作業部会」という構成で、平行して検討を進める
 -「公開検討会」:構成員を絞り,情報の共有と課題の整理,対策のとりまとめを中心とする
 -「作業部会」:調査分析と対策案の立案等の専門性の高い検討を行う平行して検討を進める。
・検討過程で早期実施が妥当とされた対策については,とりまとめを待たずに,適宜,実施を提言する。
・研究班の締めくくりとして「公開フォーラム」等を開催して情報の共有を行う。


■ 研究の方法について
公開検討会のメンバーは,各団体,学会の推薦を受けた人が中心で,それぞれの団体,学会の考えを検討会に反映し,検討会の内容を各団体,学会に持ち帰ることが期待されています.
日本産婦人科医会(石渡勇氏,前田津紀夫氏),日本産婦人科学会(板倉敦夫氏),日本麻酔科学会(飯田宏樹氏),日本産科麻酔科学会(海野信也氏),日本医師会(温泉川(ゆのかわ)梅代氏),日本助産師会(石川紀子氏),日本医療機能評価機構産科医療補償(後信氏)が網羅されています.知ろう小児医療守ろう子ども達の会の阿真京子氏もメンバーです.

作業部会のメンバーは,臨床で無痛分娩に携わっている医師が中心です.
安全管理体制の構築のためには,①医会調査の評価・課題抽出,②諸外国のガイドライン検討を含めて諸外外国との比較,③日本における安全性向上の方策,④国民への情報発信の方法について検討するようです.
作業部会のメンバーは,天野完氏,池田智明氏,奥富俊之氏,角倉弘行氏,照井克生氏,永松健氏,橋井康二氏ですので,成果を期待できます.

■ 無痛分娩の実情把握について
無痛分娩の実情把握は,基本的に医会のアンケート調査に依るようですが,医会のアンケート調査は,約60%の回収率です.そして,安全な無痛分娩が行われず,事故が起きているのが,アンケートを返してこない40%のほうにあるとすれば,医会調査には,大きな限界があることになります.
神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故は,事故から死亡まで1年を超えている関係で無痛分娩後の妊産婦死亡14例に含まれていませんし,このクリニックが医会の調査に応じていないとすれば,実態が把握できていないことになるでしょう.

無痛分娩の実施率が年々高まり,診療所のほうが病院より高率に無痛分娩が行われていることを明らかにした点で医会調査は評価できますが,調査に限界がある以上,医会調査を補充し,実態を把握する手段も必要でしょう.

愛知の無痛分娩事故の遺族は,次のような要望をだしています

1 国は、日本医師会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会及び日本産科麻 酔学会(以下、「関係団体」)と協力し、日本における無痛分娩の実情(年間実施件数、実施医療機関の規模、急変時対応準備の有無、インシデント・アクシデントの件数等)を調査し、安全実現に向けた対策を立案して、速やかに実行して下さい。
2 前項の調査の際には、被害実態を十分に把握するために、医療機関からの聞き取り調査だけではなく、被害者・遺族からの情報を直接受け付ける窓口を設置して下さい。
3 日本医師会は、第1項の調査のために、日本医師会医師損害賠償請求保険において、過去に無痛分娩による母体死亡で保険金を支払った症例を抽出する等の方法で、事故実態の把握に協力して下さい。
4 国、日本医療機能評価機構及び関係団体は、産科医療補償制度において、無痛分娩時の母体死亡を含むすべての母体死亡についても補償を実施し、その原因分析と再発防止策の立案を行うことができるよう、制度の見直しを行って下さい。

これは,医会調査を補充し,実態を把握する方法として,検討に値するのではないでしょうか

また,実際におきた事故の実態を把握し,原因を分析することは,端的に実態を把握し,安全管理体制の脆弱な点を知るために必要でしょう.

今日の検討会では,複数の研究会メンバーから,上記のような医会調査の限界を指摘する発言もありましたが,医会を代表するメンバーから明確な説明がなく,医会調査を補充する実態調査の方法について検討されなかったのは残念です.今後に期待します.

■ 安全管理体制の構築について
医師の研修システムが変わって,今は麻酔科研修を十分受けないで産科医になる医師も少なからずいることが話題になりました.
北里大学のようなところでしっかり無痛分娩を勉強した医師が,開業医として無痛分娩を行っている限りは無痛分娩は安全ですが,無痛分娩実施率が高まり,多くの施設で行われるようになってくると安全ではなくなってくる,という問題意識はメンバーに共有されたように思います.

妊婦としては安全な施設とそうでない施設を見分けることができればよいのですが,今はそれはできません.それができない以上は,無痛分娩を希望する妊婦は,とりあえず規模の大きな施設を選ぶでしょう.高次医療機関に妊婦が集中すると,本来ハイリスク妊婦に対応すべき高次医療機関がハイリスク妊婦に対応できなくなりかねません.
そうならないように,妊婦がら無痛分娩を行う施設の診療実態が見えるようにすることは緊急の課題でしょう.

第1回で深い検討はありませんでしたが,現状の問題点が浮かび上がり,おぼろげながらも,安全管理体制構築の方向性が見えてきたようです.
今後に期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-23 23:18 | 無痛分娩事故

デイリー新潮,あくまで、体制が整っていない病院での無痛分娩が危険であるという話

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デイリー新潮「無痛分娩は本当に高リスク? フランスで出産した女性「無痛分娩は、“産まれてからの日々のスタート”のためにある」」(2017年8月18日)は,「長い痛みに苦しまず出産した母親は、すぐに子供を笑顔で抱きしめる余力を持てる。無痛分娩は、“産まれてからの日々のスタート”のためにあるのです」というフランスの医師の言葉を,高崎順子さんの『フランスはどう少子化を克服したか』から引用しています.

「海外では既に無痛分娩が主流でさえあり、米国で6割、フランスでは8割の人が無痛分娩を選択するという。」

「実は無痛分娩自体はリスクが高いわけではない。あくまで、体制が整っていない病院での無痛分娩が危険であるという話である。」


今朝のNHK「おはよう日本」でも無痛分娩についての放送があったそうです

無痛分娩は素晴らしい医療技術です.産科医療体制を整えて,日本でも無痛分娩を増やすことが望まれると思います.
産科医療事故を減らすためにも,この機会に,日本の産科医療は医師一人の医院でよいのか,議論していただきたいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-18 16:10 | 無痛分娩事故

神戸市西区のクリニックの院長医師から私に対する調停申立がありました

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神戸市西区のクリニックの無痛分娩事故をめぐって,新しい展開がありました.
クリニックの院長医師から,私に対する調停申立がありました.
8月7日付の調停申立書が,8月9日に突然送達されました.

1 遺族は再発防止に繋がる活動を今後も続ける決意です.

起きてしまった医療事故を起きなかったことにはできませんが,医療事故にかかわった人間は,加害者であれ,被害者であれ,同様の医療事故が再び起きることのないようにしたいと願うと思います.
ところが,少なくともこの調停申立書からは,院長医師が無痛分娩事故についてその重さを受けとめ真摯に反省している様子がうかがえず,再発防止のための決意と活動がうかがえません.これは,非常に残念なことです.
神戸市西区のクリニックの院長医師の代理人弁護士井上清成氏と一般社団法人日本産婦人科協会の事務局長池下久弥氏らが8月8日に,記者会見し,無痛分娩の医療体制整備の動きについて現実的ではないと否定したところからすると(会見で調停申立についても言及したそうです),この調停申立は,遺族の再発防止に繋げる活動に水を差そうとするものとも考えられます.

この調停申立書を読んだ遺族は,再発防止は社会的に有意義であり,それに繋がる活動を今後も続けていきたい,と決意を新たにしています.
また,代理人弁護士の役割は,示談を成立させればそれで終わりというものではありません.依頼者の再発防止の願いを実現するために,必要なことを行うことも大事な仕事です.

2 調停申立前に院長医師側から連絡,話し合いの求めはありませんでした.

普通は調停申立の前に,話し合いがあって,それが決裂してはじめて調停申立となるのですが,この件は,何の連絡もなく,いきなり調停申立書が送られてきました.
これはきわめて異例なことです.
申立人(院長医師)に,話し合いの姿勢はあるのでしょうか.

3 再発防止のための情報確認・情報提供は正当な行為です.

調停申立書は,「相手方が報道各社に対し,上記のような情報提供を行ったことを受け,公正中立な御庁の仲裁を仰ぎつつ,相手方との間で話し合いを行い,相手方との円満な調整を試み,改めて解決を図ることが適切妥当であると思料し,本調停申立てに至った次第である。」と結ばれています.

しかし,事故の再発防止のために,報道各社からの情報確認に答え,事実ができるだけ正確に報道されるように情報提供を行ったことは,正当な行為です.
報道各社は,遺族の言い分だけではなく,クリニック側の言い分も聞く必要があり,そのためにクリニックの実名を知る必要があります.遺族と遺族代理人である私が報道各社にクリニックの実名を伝えるのは当然です。なお,実名で報道するか否かは,各社が判断することです.
また,事故の再発防止のために,カルテ等の資料を確認し,診療経過等についてできるだけ正確な情報を厚生労働省,日本産婦人科医会,日本産婦人科学会,報道各社等に提供することは,目的が正当で手段が相当な行為です.非難される謂われはありません.

4 風評被害ではありません.

調停申立書には,「報道各社の本件クリニックに対する取材攻勢は落ち着いたが,現在,本件クリニック名でインターネット検索をすれば,本現在,本件各報道記事が検索上位に来る状態となっており,本件クリニックに風評上の被害が生じている状況である」と記載されています。

しかし,「風評被害」とは,“根拠のない噂による被害“をいいます.

示談書には,次のとおり書かれています.
「平成27年9月2日,乙が甲1に対する硬膜外麻酔後の観察義務を怠った過失により,甲1に遷延性意識障害,甲2に重症新生児仮死及び低酸素性虚血性脳症の重篤な後遺障害を負わせた医療事故(以下「本件医療事故)と言う。」について,甲1ないし甲3(以下「甲1ら」と言う。)と乙は,本日,以下のとおり示談した。」

院長医師が妊産婦に対する硬膜外麻酔後の観察義務を怠ったこと,その観察義務違反によってその妊産婦に遷延性意識障害を,子どもに重症新生児仮死及び低酸素性虚血性脳症の重篤な後遺障害を,それぞれ負わせたことは,院長医師も認めた事実です.(私がインターネット検索をしたところ報道記事が上位5位内に来ていませんでしたし,報道が神戸市西区のクリニックにどのような影響をあたえたかは知りませんが,仮に報道により何らかの影響があったとしても,)それは「風評」によるものではありません.

医療事故,医療過誤があった場合の正しい対応は,それを自ら認めて会見したり,サイトで謝罪と説明をすることです.謝罪と説明により,患者の信頼を得ることができます.
調停申立書には,患者情報であることから勝手に情報提供できないので対応に苦慮した旨のことが書かれていますが,遺族の代理人に連絡し,公表内容について同意を得ればすむことです.

また,調停申立書には,「新たに代理人弁護士を立てることで,報道各社の本件クリニックに対する取材攻勢は落ち着いた」と記載されています.そうであれば,仮に取材による混乱があったとしても,それは申立人(院長医師)ないし申立人代理人の対応に起因するものと考えるのが合理的ではないでしょうか.

神戸市西区のクリニックの代理人井上清成弁護士が会見し,「院内検討委員会報告書」の一部(再発防止部分)を公表したのは,2017年8月8日です.院内検討委員会を設置し,再発防止策を検討したのは,事故の報道前なのでしょうか,それとも報道後なのでしょうか.もし,報道後だとすると,事故の再発防止のためというより報道対策のためとみられてもやむをえないのではないでしょうか.そもそも,院内調査が行われたこと,再発防止策がとられたことを,遺族が報道で間接的に知るということ自体おかしなことではないでしょうか.

5 調停申立書は遺族の代理人にすぎない私を「相手方」にしています.

調停申立書には,「改めて解決を図ることが適切妥当である」と書いていますが,この件は示談ですべて解決しています.示談により解決したものを蒸し返すことは適切妥当ではありません.
示談は,クリニックの院長医師と無痛分娩事故の被害者3名との間で成立しています.にもかかわらず,この調停申立の「相手方」は,被害者の代理人である私です.いったいどうなっているのでしょう.

遺族は,無痛分娩事故の被害者が口を噤んでいたなら,次の事故が起きる,再発防止のために事故の事実を知らせる必要がある,と考えました.そこで,遺族は神戸新聞に連絡し,神戸新聞は遺族に取材しました。その後,神戸新聞から私に情報確認と情報提供の求めがあり,私は遺族の意思に基づき,代理人として情報確認と情報提供を行いました.

神戸新聞の報道後に,報道各社から,情報確認,情報提供が求められ,私は,遺族の意思に基づき,代理人として情報確認,情報提供を行いました.
また,各社から遺族への取材希望があり,私は,それを依頼者である遺族に伝え,日程調整を行い,各社は遺族に取材を行いました.

申立人(院長医師)は,報道について,「相手方自身の意見が多く含まれるものであった(甲4読売新聞,甲5朝日新聞)。」と調停申立書に書いています.
しかし,読売新聞に「遺族側の代理人によると」,朝日新聞に「遺族側の代理人弁護士によると」と記載されているとおり,遺族の代理人として述べたものです.

クリニックの院長医師が,遺族の代理人である私を「相手方」として調停を申し立てるというのは,おかしな話です.
離婚やDV(ドメスティックバイオレンス)事件では,相手方の代理人弁護士が標的にされることがありますが,医療過誤事件では異例です.

6 調停申立書には事実に反する憶測が記載されています.

調停申立書には,私が遺族に謝罪の件を伝えていなかったのではないか,という疑いが記載されていますが,そのようなことはありません.
神戸市中央区の麻酔分娩事故の報道があった直後に,当時の代理人であった弁護士(今回の調停申立の代理人とは違います)からクリニックの院長医師から謝罪にうかがいたいとの電話があり,そのことを遺族に伝えています.
それ以外にも事実に反する記載があります.

【追記】
第一回期日を平成29年9月29日と指定されましたが,私は答弁書を提出して欠席しました.
同日,調停不成立で調停は終了しました.


谷直樹

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by medical-law | 2017-08-13 20:48 | 無痛分娩事故

名古屋市内の診療所での無痛分娩事故の遺族が,国などに要望書提出(報道)

朝日新聞「無痛分娩事故の実態把握、国に要望 死亡した母子の遺族」(2017年8月12日)は,次のとおり報じました.
 
「名古屋市内の診療所で2008年、麻酔でお産の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」で出産した30代の女性と赤ちゃんがともに死亡していたことが分かった。女性の遺族は、無痛分娩を巡る国内の事故の実態把握などを求め、10日付で国などに要望書を提出した。

 遺族側の代理人弁護士によると、女性は08年12月、名古屋市内の産科診療所で無痛分娩に臨んだ。麻酔の直後に息苦しさを訴え、搬送先の大学病院で母子ともに死亡が確認された。遺族側は、麻酔の影響で呼吸困難になった可能性を主張。民事調停が成立したという。

 女性の遺族は、無痛分娩に伴う国内の事故について、「医療機関だけでなく被害者や遺族からも直接情報を集めることが必要」などと訴えている。無痛分娩を巡っては、大阪府や兵庫県、京都府で母や子が死亡したり重い障害を負ったりするなどの事例が相次いで発覚している。(石塚翔子)」


これは,私が担当した事件ではありません.
名古屋の堀康司先生らが担当した事件です.
無痛分娩事故の遺族が,報道に触発されて,次々と声を上げるようにようになったようです.
このような動きが,無痛分娩事故の再発防止につながることを切に希望いたします.

【追記】

読売新聞「無痛分娩巡り死亡した母子の遺族、再発防止に向けた実態調査求め要望書」(2017年8月15日)は次のとおり報じました.

「名古屋市の診療所(現在は廃院)で2008年12月、出産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)を巡り死亡した母子の遺族が、再発防止に向けた実態調査の充実を求める要望書を厚生労働省や日本医師会などに提出した。
 要望書は今月10日付。それによると、当時33歳の母親は、麻酔薬を投与された直後に容体が急変。搬送先の大学病院で死産した後、亡くなった。
 遺族は、医療機関の調査だけでなく、被害者や遺族からの情報を直接受け付ける窓口の設置を要望。医療事故に備えて医師が加入する日医の医師賠償責任保険の支払い状況を活用した実態把握なども求めた。」



谷直樹

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by medical-law | 2017-08-12 13:01 | 無痛分娩事故