弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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裁判例から医師の説明義務を考える(9)

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今回は,出産に関する自己決定.選択のための説明について述べます.

■ ロングフルバース訴訟,ロングフルライフ訴訟

wrongful birth 訴訟は,先天的な疾患,障害がある子どもが生まれた場合に,親がその出産はwrongful birth であると主張し,選択のための情報提供義務違反を医師,病院に主張する訴訟です.

wrongful life訴訟は,その子ども自身が苦渋に満ちた人生が損害であるとして損害賠償を求める訴訟です.
アメリカの裁判所は,子どもによる請求を否定していますが,フランスの最高裁は,2001年,ダウン症候群の子どもに「生まれてこない権利」を認め,医師に損害賠償を命じています.

ダウン症候群は,妊娠15〜16週の羊水染色体検査で診断可能です.検査結果が出るまでに2〜3週間が必要です.ダウン症候群の障害は軽重様々です.

障害者の出生がwrongful birth,障害者の人生がwrongful lifeで,それが損害だとするこのような訴訟は,ナチスドイツを髣髴とさせ,健常者以外は生まれてはならないとの考えにもつながるのではないか,との懸念も指摘されています.
疾病を治療し障害を取り除く,障害者に対する社会的なバリアを取り除く,という一般的な方向に反するのではないか,という指摘もあります.

近年の諸外国のガイドラインは,染色体異常等の出生前診断を勧奨する内容になっています.日本では出生前診断を勧奨してはならないことになっています.

日本でも,wrongful birth 訴訟があります.

■ 1例目.京都地裁平成9年1月24日判決

平成5年11月に妊娠6週と診断された,39歳の妊婦が先天性ダウン症候群の長女を出生した例で,医師の羊水検査(染色体異常の検査)拒否と適切な助言がなかったことが問題になった事案があります.

京都地裁判決は,妊婦が羊水検査の実施を依頼したのは妊娠満20週1日で,医師は結果の判明が法定の中絶期間を経過するとしてこれを断った,と認定しました.
法定の中絶期間を経過することから,妊婦に,出産するか否かを検討の余地はなく,医師が羊水検査を断ったことで出産するか否かを検討する機会を侵害した,とは言えないとしました.

京都地裁判決は,出産準備のための事前情報として胎児に染色体情報を知る利益があるかについて,検討し,次の通り否定しました.

「羊水検査は,染色体異常児の確定診断を得る検査であって,現実には人工妊娠中絶を前提とした検査として用いられ,優生保護法が胎児の異常を理由とした人工妊娠中絶を認めていないのにも係わらず,異常が判明した場合に安易に人工妊娠中絶が行われるおそれも否定できないことから,その実施の是非は,倫理的,人道的な問題とより深く係わるものであって,妊婦からの申し出が羊水検査の実施に適切とされる期間になされた場合であっても,産婦人科医師には検査の実施等をすべき法的義務があるなどと早計に断言することはできない。まして,人工妊娠中絶が法的に可能な期間の経過後に胎児が染色体異常であることを妊婦に知らせることになれば,妊婦に対し精神的に大きな動揺をもたらすばかりでなく,場合によっては違法な堕胎を助長するおそれも否定できないのであって,出産後に子供が異常児であることを知らされる場合の精神的衝撃と,妊娠中に胎児が染色体異常であることを知らされる場合の衝撃とのいずれが深刻であるかの比較はできず,出産準備のための事前情報として妊婦が胎児に染色体異常が無いか否かを知ることが法的に保護されるべき利益として確立されているとは言えない」

京都地裁判決は,妊娠中絶に間に合う適切な時期でも,妊婦から相談や申し出すらない場合に,産婦人科医師が積極的に染色体異常児出産の危険率や羊水検査について説明すべき法的義務が一般的にあるとは認められない,としました.

この判決が,現在でもそのまま通用するかは,検討の余地があります.
次に述べるPM病の判決の影響が考えられるからです.

■ 2例目.東京地裁平成15年4月25日判決.東京高裁平成17年1月27日判決,最高裁平成17年10月20日決定.

遺伝相談を業務として行っている医師は,PM病(ペリツェウス・メルツバッヘル病)について医学知見に基づく正確な情報を提供する義務があるとし,当該医師が誤解を与る説明を行ったとして,説明義務違反を認めた判決があります.
当時,PM病は,伴性劣性遺伝が有力な原因で,PLP(プロテオリピッド蛋白)遺伝子の異常が見つかる症例が約20%存在し,PLP遺伝子の重複が関係している症例もあるらしいことがわかっていました,つまり.第1子がPM病の場合.第2子以降の子が男子であれば,PM病を発生する危険が相当程度ありました.

事案は,次のとおりです.
PM病が疑われる長男の両親が,平成6年11月,或るセンターの医師に対し,次の子どもをつくりたいが大丈夫か,と質問したところ,医師は「経験上,兄弟で同一の症状のあるケースはない.かなり高い確率で大丈夫.兄弟に(PM病が)出ることはまずない」と回答しました。その後,医師は長男についてPM病と確定診断しました。その後,産まれた次男は健常児でしたが,三男はPM病でした.

東京地裁平成15年4月25日判決は,両親は患者ではなく診療報酬もとっていないので契約上の説明義務はない,としました.
しかし,①そのセンターが心身障害児等に関する相談を事業内容のひとつとしていうこと,②現に両親からの出生相談も患児の診察の際に対応していたこと,③すでに障害を持った長男の介護・養育について重い負担を抱えている両親にとって切実かつ重大な関心事であったこと,④長男の診療行為と密接に関連する質問だったことなどから,当該医師は信義則上PM病に罹患した子どもの出生の危険性について適切な説明を行うべき法的義務があったと認定しました.
そして,医師の説明は,PM病に罹患した子が生まれる可能性は低いという誤解を与える不正確なものであったとして,説明義務違反を認定しました.

その控訴審である高裁判決,その上告審である最高裁判決も説明義務違反を認めています.
東京地裁の判決は説明義務違反と三男の出生との因果関係を否定しましたが,東京高裁判決は,因果関係を認めています(最高裁平成17年10月20日決定で確定).

東京高等裁判所判決,最高裁判所決定は,疾病,障害をもって出生した子どもを介護養育する「経済的な負担」を損害と評価することは,障害者の出生自体をマイナスと評価するものではなく,別の問題である,と考えています.
(判決の詳細は.医療問題弁護団五十嵐裕美弁護士の判例解説,医療問題弁護団武藤暁(ひかる)弁護士の判決解説をご参照してください.)

 
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by medical-law | 2010-10-31 14:41 | 説明義務

シェイプアップ

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デスクワークによる運動不足と,下半身太りが気になっていたので,巷で話題の「レッグマジック」の類似品を購入しました.
可動式の台に足を乗せて開閉運動をすることで,内股の筋肉が鍛えられてシェイプアップでき,さらには腰痛にも効果ありという,とっても魅力的なエクササイズマシンです.

届いた当日に早速乗ってみたところ,翌日はちょっとした筋肉痛程度.
意外と効果ないのかも?と疑いましたが,翌々日に,人生初というくらいの筋肉痛に見舞われ,一日ベッドから動くことができませんでした・・・.

アトラクション感覚で楽しく運動ができてしまうので,やりすぎは要注意です.
この筋肉痛がよくなり次第,回数を加減しながら運動を再開しようと思います.
私のレッグにマジックが起きる予感がします.

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by medical-law | 2010-10-30 10:08 | 日常

10月31日はハロウィン

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街中でときどき,かぼちゃのランタンなどを目にします.

先月,先生が北海道へ研修に行った際の,お土産は,全部,ホテルのお店で購入したものでした.
事務局は,ハロウィン風の帽子とクッキーなどの詰め合わせをいただきました.帽子とお菓子のセットは,はじめてでした.とても美味しくいただきました.

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by medical-law | 2010-10-29 16:47 | 休暇・休日

10月30日シンポジウム「医療基本法の制定を!」

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明日,10月30日,シンポジウム「医療基本法の制定を!」があります.
是非,ご参加をお願いします.

医療と憲法の間を結ぶ「医療基本法」,今その制定を求める動きがはじまっています.たしかな未来につながる医療をはぐくむために,基本法はなぜ必要なのか.患者と医療者が共に志す医療をしかと描いてみませんか. (参加費無料)

【日時】2010年10月30日土14時~17時(13時半開場)
【会場】明治大学駿河台キャンパス リバティタワー1階1012
【内容】  
基調講演「医療基本法はなぜ必要か」
 日野秀逸氏(東北大学名誉教授)

シンポジウム 医療基本法の制定を!
 飯沼雅朗氏(日本医師会前常任理事)
 海辺陽子氏(NPO法人がんと共に生きる会副理事長)
 尾身茂氏(自治医科大学教授)
 嶋森好子氏(東京都看護協会会長)
 田中秀一氏(読売新聞社医療情報部長)
 本田宏氏(済生会栗橋病院副院長)
                 五十音順

主  催 医療基本法制定推進フォーラム
共  催 明治大学医事法センター
連絡先 すずかけ法律事務所(鈴木利廣)
TEL 03(3941)2472 

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by medical-law | 2010-10-29 07:15 | 医療

第二東京弁護士会人権擁護委員会受動喫煙防止部会

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写真は,札幌の大通公園です.

昨日,第二東京弁護士会人権擁護委員会受動喫煙防止部会(部会長は岡本光樹(こうき)先生)の受動喫煙に関する勉強会にオブザーバー参加しました.

岡本部会長の講義と質疑,自由な討論が行われました.

その中で.私としては.マンションにおける受動喫煙問題が気になりました.

マンションのベランダで喫煙する人がいて,ホタル族と呼ばれています.このホタル族がいるマンションでは,タバコの煙(副流煙)のため.窓があけられない,ベランダに洗濯物を干せない,どこからともなくタバコの臭いが漂ってくる,という大変困った状況が生じています.

ホタル族の多くは,自室内の家族には有害な副流煙を吸わせたくない,自室をタバコ臭くし資産価値を下げたくない,などの動機で,ベランダでタバコを吸っています.有害性の認識の認識はあるのです.

ベランダはマンション所有者全員の共有部分で区分所有者の専用使用権が認められています.しかし,そこで有害物質を発散し他人に不快感を与え,他人の生命身体を危険にさらすことが許容されるか,が問題です.受忍限度論が言われることがありますが,たとえ微量でも,タバコ煙の不快感は,強烈で耐え難いものがあります.タバコ煙の場合,この量までなら生命健康に安全という安全域はありません.したがって,受動喫煙問題に受忍限度論はあてはまらないでしょう.

他人にタバコ煙が及ぶような形の喫煙,受動喫煙を強いる形の喫煙は,他人の生命身体,幸福追求権への侵害と考えられるのではないでしょうか.
人権問題として,受動喫煙問題にアプローチすることで,解決策を見出すことができるように思います.

すこし先の話になるのでしょうが.日弁連の人権大会で,受動喫煙問題のシンポジウムを行い,受動喫煙防止の具体的な提言をまとめることも考えられると思います.タバコ規制法の立法化も時間の問題でしょう.今,タバコ問題は大きく動きつつあります.第二東京弁護士会人権擁護委員会受動喫煙防止部会の今後の活動に期待します.


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by medical-law | 2010-10-28 08:02 | タバコ

弁護士会館 四会共催秋期美術展 はじまりました.

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今日から霞ヶ関の弁護士会館で,「第35回 四会共催 秋季美術展」がはじまりました.
四会とは,東京弁護士会,第二東京弁護士会,第一東京弁護士会,弁護士夫人むつみ会の4会です.
 
受付では,目録とともに,弁護士会館地下の喫茶無料券をもらえます.

出品は,書や写真,洋画,日本画などが多いですが,版画や鎌倉彫など,多分野にわたります。写真は弁護士の先生方の出品作品が多いです。秋らしい,いけばなが会場を華やかに彩ります.

私はひまわりを毎年描いて出品しています.
今年はほのぼのしたひまわりです.

会場 弁護士会館2階講堂(クレオA)
   地下鉄丸の内線 霞ヶ関 B1b直結
会期 平成22年10月27日(水)~
平成22年10月29日(金)
時間 10:30~18:00
最終日~15:00

入場無料
お気軽にお立ち寄り下さい.

事務局Ⅰ

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by medical-law | 2010-10-27 14:37 | 趣味

裁判例から医師の説明義務を考える(8)

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今回は,どのような立場にある医師が説明義務,説明配慮義務を負うか,について,述べます。

■ 大動脈弁置換手術の説明

チーム医療の総責任者である医師は,必ずしも自ら説明する必要はありませんが,患者,家族に対し,手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮する義務がある,とされています(説明配慮義務)。

大学病院心臓外科の主治医は,患者に対し翌日に予定された大動脈弁置換手術の必要性,内容,危険性について説明しました。翌日,別の医師(教授)が術者となり,主治医らが助手をつとめ,大動脈弁置換術が行われました。患者はその手術の翌日に死亡しました。

この事案で,最高裁は,次の判断を示しました.

①チーム医療の総責任者である医師(執刀医でも同じ)が自ら説明する必要はないが,患者,家族に対し手術の必要性,内容,危険性等についての説明が十分に行われるように配慮する義務がある,

②主治医の説明が十分なものであれば総責任者も説明義務違反の責任を負わない,

③主治医の説明が不十分なものであったとしても、主治医が説明をするのに十分な知識,経験を有し,総責任者が必要に応じて主治医を指導、監督していた場合には,総責任者は説明義務違反の責任を負わない,

最高裁は,主治医の具体的な説明内容,知識,経験,主治医に対する総責任者の指導,監督の内容等について原審が審理,判断していなかったことから,破棄差し戻しとしました.(最高裁平成20年4月24日判決.医療問題弁護団鶴見俊男弁護士の本判決解説をご参照ください.)

■ 未破裂脳動脈瘤のコイル塞栓術の説明

未破裂脳動脈瘤に対しコイル塞栓術を実施した際,コイルが回収できずに残存したため,患者は血流障害により脳梗塞で死亡した事案があります.担当医である脳外科医と執刀医である放射線科医は,互いに相手の医師が説明したと思い,手術による死亡の危険性について説明していませんでした.

裁判所は,「両医師とも,自分以外の医師が詳しく説明しているといった,極めて曖昧な言い方をしており,具体的にどこまでの説明がなされたか疑問が残る.」とし,説明義務違反を認めました(東京地裁平成14年7月18日判決). 


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by medical-law | 2010-10-27 11:28 | 説明義務

100円ショップで本格カプチーノ

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事務所では毎日必ずコーヒーを飲みます.
普段はブラックなのですが,たまに気分を変えたいときに登場するのがこのカプチーノミキサーです.

このカプチーノミキサーは,もともと私が自宅で使っていましたが,手軽にカプチーノが作れるので事務所用にも購入しました.なんと,100円ショップで入手できます!

牛乳を温め,お好みでバニラシロップ等のシロップを適量入れ,ミキサーで撹拌すると,きめ細かな泡のミルクが出来上がります.
それを濃くいれたコーヒーに乗せるだけで,まるでお店で飲むような本格カプチーノの完成です.

空気を含ませることで牛乳が倍の量になるので経済的ですし,ほんのり甘いミルクが乗った濃いコーヒーは,疲れた頭と身体を癒してくれるので,是非お勧めしたい一品です,

事務局H

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by medical-law | 2010-10-26 08:36 | 事務所

反論のタイミング

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写真は,北海道庁の池です.

今は昔の話になりますが,司法修習生のとき,弁護修習(実務)は札幌協和法律事務所の伊藤誠一先生から丁寧に教えていただきました.
当時,札幌地裁には,北海道の炭鉱で働きじん肺にかかった患者と遺族が国・企業に損害賠償を求めた事件が係属していました.伊藤誠一先生はその北海道石炭じん肺訴訟弁護団の事務局長でした.原告への聴き取り,合宿などにも連れて行っていただきました.伊藤誠一先生は,他にも,多数の民事事件,刑事事件を担当していました.

或る民事事件の弁論準備のとき,照会結果がまだ裁判所に来ていないのでなんとも言えない段階なのですが,原告代理人の伊藤誠一先生は,○○と主張しました.私も伊藤誠一先生と一緒に現場を見ています.ところが,被告代理人の弁護士は.即座に,その時間帯ではないけれど自分も現場に行った,△△だった,と反論しました.(事案は若干修正して記載しています,)その後,伊藤誠一先生は,あのように即座に反論する弁護士はいい弁護士だ,と褒めちぎっていました.そこで,私は.即座に反論すること,と弁護士の心得を1つ学びました.

そのときの被告代理人が高橋智(さとる)先生です.
高橋智先生も患者側で医療事件を担当し.ブログ書いています.
ブログは,充実し,綺麗な写真が掲載されています.
もっと,広く読まれてよいブログと思います.

2010年10月3日には,
「裁判官が刑事訴訟法の要件を厳密に認定すれば、人質司法や調書裁判は無くせるはずです。日本の刑事司法はあまりに検察官寄りになっていたと言わざるを得ません。裁判官が変わらねば、刑事裁判は変わりません。
 ついでに言うなら、医療事故も同じです。裁判所があまりに医師に気を遣いすぎです。医療事故裁判は立証の壁が高すぎます。」
と書いています.
同意です.

高橋智先生が,昨日,日本ブログ村のブログランキング(弁護士の部・札幌情報の部)に登録しました.http://www.takahashi-law.com/news/2010/10/post-711.html
是非,高橋智先生のブロクも読んでください.



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by medical-law | 2010-10-25 10:01 | 弁護士会

裁判例から医師の説明義務を考える(7)

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今回は,未成年者(子ども)への説明義務について,述べます。

患者の意思決定,選択のための説明は,患者本人に意思決定,選択の能力があるときは,患者本人に対し行います.そこで,未成年者に,意思決定,選択の能力があるかが問題になります.これは,年齢によって異なると考えられています.

■ 「児童の権利に関する条約」

「児童の権利に関する条約」(子どもの権利条約)は,子どもも大人と同様に自律的な主体として,12条で意見表明権等を保障しています.

「第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。」

具体的な意思決定,選択の能力は,その判断する事項とその発達の程度によって異なります.日本民法では,財産に関するものについては,親権者の同意のない未成年者の意思表示は原則として取り消すことができます.意思能力を欠く未成年者の意思表示は当然に無効です.日本民法は,遺言ができる年齢を15歳以上と定めています.

■ 医療行為の判断能力

では,医療行為については,どのように考えられているのでしょうか.

「医療行為の意義・内容・判断力は個々人により相違するため,機械的に決定すべきではなく,医療行為の性質にもよるが,15歳程度の通常人の判断能力が備わっているか否かを基準とすべきであろう。」という見解もあります.(浦川道太郎・金井康雄・安原幸彦・宮澤潤編集「医療訴訟」34頁,浦川道太郎執筆部分)
また,「疾病や診療行為の種類により要求される理解力・判断力の程度は異なる。例えば,輸血実施についての同意能力の目安を考えるならば,12~15歳程度の理解力・判断力といえる。」という見解もあります.(古川俊治「メディカルクオリティ・アシュアランス―判例にみる医療水準 第2版」43頁)

親が行くことなく,従業員の運転する車で子を医院に行かせ,急性胃炎と誤診され,結局糖尿病昏睡による呼吸困難で亡くなった16歳の若年性糖尿病患者の事案で,初診時に医療契約の締結を認めた裁判例があります(広島地裁尾道支部平成元年5月25日判決).この裁判例では,「高校一年生で社会生活経験が浅いため,病気の症状を的確,正確に告げる能力が十分であったとは考えられない」などの理由で,7割の過失相殺が認められ,損害賠償額が減額されています.

13歳で脳動静脈奇形(AVM)の全摘出手術を受け,術中出血のため術後重篤な左片麻痺の障害が残り,その12年後に死亡した事案で,医師の説明義務違反が認められています.
判決は,説明義務の相手方を患者と両親とし,患者・両親への説明が当時得られた最善の情報に基づいて手術を受けるかどうかを決定するには十分ではなかったとして,患者の自己決定が侵害されたと認定しています.
担当医は,手術を受けることにより症状が改善され,薬を飲まなくてよくなること,手術を受けなければ生命の保証はできず,手術によって障害が残る可能性はあるがリハビリテーションで治ることなどを説明しました.
医師は治療方法の選択をするために適切な情報を提供する診療契約上の義務を負っていて,このような説明内容では,その義務を尽くしたとは言えない,と裁判所は認定しました.(東京地裁平成8年6月21日判決,医療問題団弁護団横山哲夫弁護士の判例解説をご参照.).

■ 判断能力のある未成年の場合

判断能力のある未成年者の場合,親は未成年者自己決定を援助する役割を負っていますから,未成年者が了解すれば医師は親にも説明することになります.

■ 判断能力のない未成年の場合

判断能力のない未成年者の場合,医師は,親権者へ説明し,親権者が未成年者に代わって判断することになります.その場合,親権者は,未成年者の「最善の利益」を考慮し,未成年者がなすであろう判断,客観的に合理的な判断を選択することが求められます.

患者の親権者が丸山ワクチンに固執した事案で,親は,医師に,医療水準に沿った合理的な判断に反する療法を要求する権利まではない,とされています(東京地裁昭和63年10月31日判決).

平成20年に消化管内の大量出血で重体となった1歳男児への輸血を拒んだ両親について,家庭裁判所は,親権を一時的に停止する保全処分請求を認め,男児は救命された,と報じられています(日本海新聞2009年03月15日).

谷 

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by medical-law | 2010-10-24 17:16 | 説明義務